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CCA-Seed_98 ◆TSElPlu4zM氏_第26話_後編

Last-modified: 2007-11-10 (土) 18:22:36

「――くそっ!奴らめ!」
「エドル、早く引き返せ!全滅するぞっ!」
「今さら、引き下がれるか!」

 サイーブのバギーが近付いて来て引き返す様に言うが、等のエドルは一瞥して吐き捨てた。
 ザフト軍のモビルスーツがミサイルを一斉に発射すると、続く様に戦闘ヘリからもミサイルが発射された。

「馬鹿が――不味い、ミサイルが!?」

 自分達の方に向かって飛んで来るであろうミサイル群を目にして、サイーブとエドルは顔を顰めてすぐにアクセルを踏み回避に入ろうとした。
 その瞬間、一条の光の帯が走り、サイーブ達の目の前からミサイル郡の一部を消し去った――。

「……た、助かった……だと!?」
「……地球軍が……!?どう言う事だ?」

 エドルとサーイブは突然の出来事に目を丸めて驚きの声を上げるが、ビームが打ち消したミサイルは約半数だけであって残りは全て着弾し、多数の車両が爆発に巻き込まれていた。
 その光景はサイーブ達と離れた場所にいたキサカ達の目にも映っていた。

「……ミサイルを打ち消した!?……まさか!?」

 キサカはアークエンジェルのブリッジ上で狙撃をするモビルスーツ――νガンダムを驚愕の表情で見詰めた。
 地球軍は攻撃こそして来る物の、その攻撃での戦死者はほぼ皆無に等しく、レジスタンスへの直接攻撃と言う意味ではザフト側がほとんどだった。
 ――地球軍はわざと外している!?もしや、これは……。
 キサカの心中に地球軍の行動に対する答えが徐々に浮かび始めた。
 だが、他のミサイルの着弾により仲間達の死を目にしたカガリには、そんな事など関係は無かった。

「こんなの偶然だ!アフメド、行くぞ!」

 カガリは怒りに顔を歪め、両軍の行為に対して吐き捨てる様に怒鳴った。
 三人が乗るバギーはザフト軍のモビルスーツ群へと向かって疾走して行った。

 目の前には砂が舞、痛い程の陽射しが照りつけている砂漠が見えている。
 カタパルトデッキでキラの乗るストライクは、今や遅しと言った状態で出撃を待っていた。

『キラ、作戦開始よ。気をつけてね。ストライク、発進どうぞ!』
「キラ・ヤマト、ストライク行きます!」

 ストライクのコックピットにミリアリアの声が響くと、キラはスロットルを開いて勢い良くカタパルトから飛び出して行く。
 キラはスラスターを軽く噴かしながらストライクを着地させると前方へと目を向けた。
 そこにはνガンダム、アークエンジェル、そして先に出撃したスカイグラスパーからの空爆に加え、ザフト軍モビルスーツ、バクゥと戦闘ヘリが合流し、蜘蛛の子を散らした様に逃げ惑うレジスタンス達の姿があった。
 しかし、レジスタンス達はまだ攻撃を諦めていない様子で、レセップス、そしてアークエンジェルへと向かおうと走り回る。

「……来た!そんな装備で無駄だって事を、どうして分からないんだ!」

 キラはアークエンジェルへと向かおうとするレジスタンスの一部の車両に向かってトリガーを引いた。
 ストライクの右肩に装備された一二〇ミリ対艦バルカン砲が火を噴き、何とかバギー達は蛇行する様にして回避して行く。

「早く……早く逃げてよ!」

 諦めの悪いレジスタンスに向かって、キラは苛立ち隠そうともせずに再びトリガーを押し込んだ。
 そこへ、アークエンジェルの守りの為に移動して来た一機のバクゥから通信が入る。

『ストライク、援護する!』
「――っ!……ありがとうございます!」

 今はザフト軍との連携を取っている為に無下にする訳にもいかず、キラは一瞬顔を顰めながらも、悟られない様にバクゥのパイロットに礼を言った。
 バクゥの攻撃は容赦無く、レジスタンス達を追い立てる。既に数台が餌食となり、破壊された車両からは炎が上がっていた。
 キラはストライクを前方へとジャンプさせると、眼下で走り回るレジスタンス達を睨み付ける。

「……どうして……早く逃げろって言ってるだろっ!」

 ストライクは着地すると、既に破壊され引っ繰り返っているバギーを砂と共に蹴り上げた。
 宙に舞ったバギーは部品をばらまきながら、近付く車両の前方へと激しい音を上げて落下して行った。
 キラはその車両に向かって追い立てる様にイーゲルシュテルンを放つと、そのうちの数台がアークエンジェルへの攻撃を諦めて、主力に合流する者と逃げる者とに別れて行く。

「そうだ、それで良いんだ……」

 素直に逃げて行くバギー達を見据えながらキラは呟くと、諦めの悪い車両へと目を向けた。

「あなた達は――!」

 キラは怒りの声を上げながら一二〇ミリ対艦バルカン砲を発射した。
 そうして粗方の車両がアークエンジェルの近くから離れて行くと、コックピットにアムロからの新しい指示が飛び込んで来た。

『これ以上の狙撃は無理だ!キラ、前へ出ろ!』
「了解!」

 キラは頷き、目線をレジスタンスの主力が占める方へと向けた。
 ザフト軍のモビルスーツと戦闘ヘリが徐々に前に出始め、レジスタンスはその数を明らかに減らしていた。
 いくらアムロと言えど、両者が近付けばアグニの熱量では双方にダメージを与える事になり兼ねなず、狙撃をするにも限界が来たと言った状況だった。
 ストライクを戦場へと正対させると、キラは援護のバクゥへと回線を開いた。

「済みません、僕は前へ出ます!アークエンジェルをお願いします!」
『了解した、守りは任せろ!』

 バクゥのパイロットからの返答が返って来ると、キラはスロットルが解放してペダルを思い切り踏み込んだ。
 ストライクは砂を巻き上げ、その巨体を舞い上がらせた。

 一方的な戦況を見詰めるバルドフェルドは、如何にも「面白い物」を見せてもらっていると言う表情を浮かべていた。
 バルドフェルド自身、別にレジスタンスを一方的に倒して行く展開が楽しい訳では無い。その「面白い」と思う対象は共同戦線を組んでいる地球軍の事だった。
 いや、地球軍の特に狙撃による支援を行っている、νガンダムのパイロット、アムロ・レイが面白いと言えば言いのかもしれない。
 先日の戦闘で途轍もないの能力を見せ付けたアムロが、今はレジスタンスを直接狙うのでは無く、明くまでも足止めに徹している様にバルドフェルドには見えた。
 しかし今の所は確証は無く、感と言う奴がそれを告げてるのだ。
 だが、それだけで停戦協定を不意にする訳にも行かず戦闘を見守っていると、レセップスのブリッジにアムロの声が響いた。

『アンドリュー・バルドフェルド、そちらの機体が突出して来ている。正面への砲撃を中止して、代わりにこちらはストライクを前面に押し出す!』
「……了解した。正面はこちらに任せてもらおう。ストライクは援護と言う事で頼む」

 バルドフェルドは一度、肩を竦めて腰に手を当て苦笑いを浮かべて答えた。
 この戦闘自体、始まって五分程も経っていないが、数度の砲撃のうち少なくとも一度は、ザフト軍側から打ち出されたミサイルの約半数を撃ち落としている。
 そして、二度目はミサイルの四分の一だけと言う絶妙に難しい事をやっているのだ。
 バルドフェルドは苦笑いが止まらない様子でぼそりと呟く。

「……参ったな。もしかしたら、これは欺かれたのかもしれんなぁ」
「アムロ・レイは面白い事するわね」
「ああ、打ち消したミサイルを全弾を撃ち落とした言う訳でも無いからな、判断に苦しむ。恐らくあそこで戦ってるパイロット達は、連携が合って無い程度としか思って無いだろう」
「しかもこのタイミングで、ストライクの彼を前線に送り込むんですものね」
「三度目があったら見過ごす事が出来なかったが、それを上手い具合に逸らされた感じだ」

 アイシャが目を細めて笑みを見せると、バルドフェルドはアムロの技量と判断に感心した様子でモニターへと目を向けた。
 モニターには、逃げ回りながらも必死に反撃を試みるレジスタンス達が映し出され、人はどこまで無謀になれるのかと、バルドフェルドはレジスタンス達の行動に改めて呆れ返った。
 戦闘の成り行きを見続けるバルドフェルドの顔をアイシャが猫の様に見上げながら覗き込む。

「ねえ、攻撃目標を切り替える?」
「……いいや。あれだけでは、ただの偶然と言われても可笑しく無いからね。それに実際、向こうがレジスタンスに攻撃しているのは事実だ。下手に言い掛かりを付ける訳にも行かないだろう」
「フフフッ、そうね」

 バルドフェルドは笑みを浮かべて問いに答えると、アイシャは寄り添うかの様に少しだけ体を近付けると、笑みを湛え窓の外に目を向けた。

「さて、乱戦になって来た以上、僕達は僕達でやらせてもらうとしよう。――残りのレジスタンスの掃討に掛かれ!」

 モニターへ目を向けていたバルドフェルドは、アイシャの腰に片手を回すと軽くウインクをしてから、部下達に向かって声を張り上げた。

 カガリ達の目の前を再び光の帯が通り過ぎて行く。νガンダムから発射されたビームは、飛来するミサイルの一部を打ち消した。
 キサカはこのミサイルを打ち消す行為が、二度目であることに益々地球側に何らかの意図があるのではと確信を深めた。
 ――が、その時、遅れてザフト軍機から発射された一発のミサイルが飛来して来た。

「――ちっ!――不味い!」
「――あっ!何を――」

 キサカはカガリが構えるランチャーを奪って放り捨てると、片腕でカガリを抱えてバギーを飛び降りた。
 カガリを庇う様にしてキサカは体を丸めて砂丘を転がり落ちて行く。
 やがて砂丘の向こう側から激しい爆発音と振動、そして舞上げられた大量の砂がキサカの背中に降り注いだ。

「……うっ……」

 砂とは言え、それだけの量が降り注げば痛みもする。キサカはカガリを守る為に痛みに耐える。
 大量の砂の雨が降り止みキサカが急ぐ様に体を起こすと、カガリは恨めしそうな表情をちらりと見せる。

「……うっっ……。キサカ、何を……!?」

 カガリが体を起こし周りを見ると先程まであった砂丘は吹き飛び、アフメドが運転していたであろうバギーが引っ繰り返った状態で炎に包まれたいた。

「……アフメド!?……おい、嘘だろ!?」

 想像もしなかった事にカガリは両手を着いて、ただ呆然と燃え盛るバギーを見詰める。そして、その頬に涙が流れた。
 二人の傍に一台のバギーが砂を巻き上げて停車した。

「――キサカ、乗れ!」
「サイーブ!?無事だったか!」

 キサカは呆然と泣くカガリを引き摺る様にしてバギーに放り込むと自らも飛び乗った。

「早く脱出するんだ!」
「ああ!」

 サイーブはキサカの言葉に頷くと、すぐにアクセルを踏み込んだ。
 走り始めたバギーの上で、目を真っ赤にしたカガリが怒鳴った。

「お前達、何を言ってるんだ!?アフメドが、仲間がやられているんだぞっ、悔しく無いのか!?」
「まだ分からないのか、カガリ!何も考えずに先走った結果がこれだぞっ!」
「だからって!――っ!」

 キサカの言葉に、カガリは怒りを抑える事無く言い返そうとした――。
 その瞬間、ザフト軍の戦闘ヘリから撃ち出されるバルカン砲の弾丸が彼らの乗ったバギーに向かって襲い掛かって来た。

「「――っ!?」」
「――うわぁー!」

 キサカは息を飲み、サイーブは回避する為にブレーキを踏んでハンドルを切った。カガリの悲鳴が響くと、三人を大きな振動が襲った。
 バギーを大きな影が覆い、弾丸を弾く様な音が響く。

「……えっ!?死んで……無い……!?」

 目を瞑っていたカガリが目を見開き、泣き腫らした目で、呆然と影の正体を見上げた。
 そこには片膝を着いたストライクの姿があった。

 キラはペダルを踏み込み着地体勢に入った。
 そこへ一台のバギーを眼下に捉える。運が悪い事にストライクの着地地点に入っている。
 しかもザフト軍の戦闘ヘリが、そのバギーに攻撃しながら接近して来ていた。

「――何で、そんな所に!?そこのヘリ、退いてください!」

 慌てたキラは戦闘ヘリに向かって回線を開き回避する様に怒鳴ると、ストライクは砂を巻き上げて着地する。そして体勢を崩す様に左膝を着いた。
 一度、発射した弾は戻る事などは有り得ない。当たり前の如く、戦闘ヘリがバギーに向けて発射した弾丸はストライクの装甲へと当たり、弾かれて行った。
 ストライクの正面のモニターには、カガリ達の姿を捉えていた。

「――ちっ!」

 キラは舌打ちをすると、コンソールパネルのスイッチの一つを押した。
 ストライクの右肩のガンランチャーが音を立てパージされる。それは彼らを逃がす為の時間稼ぎでしかない。
 外されたガンランチャーがゆっくりと砂の上に落ちて行く。そして、ガンランチャーの底辺が砂に埋もれると、そこを支点に横に倒れ、風圧が砂を舞い上げた。

「どうして君達は、ラクスの、みんなの努力を無駄にしようとするんだ!なんで分からないんだよっ!」

 モニターに映るレジスタンス達に向かって、キラは怒鳴りながら右手の操縦桿を思い切り引いた。
 ストライクは片膝を着いたままの体勢で、バギーに向かって拳を振り上げる。

『――!アクセルを踏め!』

 大柄な男性――キサカの声を外部マイクが拾うと同時にストライクは拳を振り下ろした。
 間一髪、三人が乗ったバギーは走り出し、その後にストライクの拳が砂へとめり込む。
 キラは遅れてストライクを立たせると、疾走して行くバギーに向かってイーゲルシュテルンを発射した。

「お、おい、大丈夫か!?」

 トリガーを引くキラに向かって、ザフト軍戦闘ヘリのパイロットから慌てた様子で通信が入って来た。

「はい、大丈夫です」
『こっちは当てる気は無かったんだ!本当に済まない!』

 戦闘ヘリのパイロットからは、不意で当ててしまった事で停戦が後和讃になってしまってはと言う感じで、必死に謝っている様子が伺えた。
 元は敵とは言え、彼らとて必死にこの停戦を無事に終わらせようとするのが伝わって来る。

「いいえ、割り込んでしまって済みませんでした。早く掃討に掛かりましょう」
『ああ、了解した!』

 キラは首を振って答えると、ヘリのパイロットは安心した声を返して来た。
 ストライクと戦闘ヘリは、それぞれの役目を果たすべくその場で別れた。

 アークエンジェルから見える限り、レジスタンス達は約半数近くを失い撤退を始めていた。
 逃げ遅れたレジスタンスの者達は狩られる事になるだろうが、それは自らが招いた結果であり仕方の無い事でもあった。
 収束へと向かい始めた事を確認したアムロは、ブリッジに仕上げの指示を飛ばす。

「ブリッジ、主砲を!レジスタンス達が逃げる方角より、やや右へずらして撃て!逃げ遅れたレジスタンス達の前方を通過させて追撃を遅らせろ!」

 アムロの指示は逃げ遅れた者達を囮にして、既に脱出した者達を確実に逃す為の物だった。
 もっと早い段階でレジスタンスが撤退をしていれば、もっと多くの命が助かったのだろうが、この段階になってしまっては仕方の無い選択とも言えた。
 指示を耳にしたマリューが、ナタルへと顔を顔を向ける。

「ナタル!」
「了解!ゴットフリート左舷起動!一〇時方向へ向けろ!距離一二〇〇、パワー半減発射準備!」

 ナタルは頷くと、声を張り上げて指示を飛ばして行く。
 アークエンジェルの左舷ゴットフリートが迫上がると砲塔がやや左へと旋回し、砲身は逃げ遅れたレジスタンス達の前方へと向けられた。

「――ゴットフリート、ってー!」

 ナタル声と共にゴットフリートから光が放たれた。
 ビームは誰もいない空間へと走って行く。そして逃げ遅れたレジスタンス達の前方を遮ると、遥かその先に着弾して大きな爆発と共に大量の空へと砂を舞い上げた。
 その効果があってか、ザフト軍の攻撃隊の動きが一時止まり、その上空をスカイグラスパーが既に逃げたレジスタンスを追う様に飛んで行った。

「ムウ、頼んだぞ」

 スカイグラスパーの動きを確認したアムロは、機体を見詰めながら呟いた。
 逃げたレジスタンスの追跡に入ったムウとトールは、約二キロ程先に砂煙を確認すると、レセップスへと通信回線を開いた。

「あー、こちら地球連合軍所属、ムウ・ラ・フラガ少佐だ。レセップス、聞こえるか?これよりレジスタンスの追跡に入る」
『あー、こち――セップス、聞こえている。――は了解した。無理の無いて――に追跡をして欲しい』
「了解!」

 バルドフェルドの声がノイズ交じりで聞こえて来ると、ムウは少し軽い口調で返答した。
 軽くスロットルを開けたスカイグラスパーは、「早く逃げろよ」と言う意味も込めて、レジスタンス達の後方から近付き始めた。
 レジスタンス達は時折ランチャーで攻撃して来るが、距離がある為に簡単には当たる事は無い。
『エンデュミオンの鷹』と呼ばれるムウを、素人に毛の生えた程度の者達が撃ち落そうと考えるのが間違いなのだ。
 ある程度飛んだ所で、後部シートに座るトールが報告の為に声を上げた。

「後方、約三〇〇〇、ザフト軍の戦闘ヘリが追跡して来ます!」
「……こりゃ、不味いな。あの馬鹿ども同じ方向に逃げてやがる。追手が来てるってのに、散りながら逃げろってんだよ」
「どうするんですか?」

 ムウは一瞬、遥か後方を飛ぶ戦闘ヘリへと目を向けて確認をすると、トールがどう対応するのかと聞いて来た。
 その瞬間、再びスカイグラスパーに向けてレジスタンスからのランチャーが発射される。
 ムウは軽く操縦桿を倒して機体を真横に倒して攻撃を回避する。トールは徐々に慣れて来たのか、悲鳴を上げる事も無かった。
 体勢を戻したムウは軽く上昇させると、眼下にレジスタンスを見ながら口を開いた。

「あんな物で俺を落とせる訳無いのになぁ……。こりゃ、ミサイルの一発もお見舞いした方が良いかもな」
「撃つんですか?」
「いつまでも追跡してる訳には行かないし、やるしかないでしょ」

 トールの問いに、ムウはおどけながら答えた。
 ここまで来ればアムロの作戦は成功したも同然なのだから、勿論ムウは彼らを殺すつもりなどは無い。後はレジスタンス達が追跡され難い様に逃げてくれれば良いだけなのだ。

「さてと。お前ら、もう一発おまけしてやるから、とっとと散って逃げろってんだよっ!」

 ムウはスカイグラスパーを少し降下させると操縦桿のボタンを押し、レジスタンスの一団へ向けてミサイルを二発発射した。

 砂漠に横たわる数多くの破壊された車両からは、炎と煙が舞い上がり、逃走したレジスタンス達を除く反抗者の掃討は完全に終了していた。
 ザフト軍は一応、ラクス・クラインがいる事もあり、モビルスーツと戦闘車両等などには戦闘の後始末を行わせている。
 しかし目の前の戦場での出来事が終わっただけであって、未だ逃走したレジスタンスは健在であり、隊長であるバルドフェルドは、追跡に向かわせた戦闘ヘリからの報告を待っている所だった。

『こちら、スカイグ――パー、ムウ――ラガだ。聞こ――てるか?』

 レセップスのブリッジにスピーカーを通して、逸早くレジスタンスの追跡に入ったムウの声がノイズ交じりに響いた。

「こちら、レセップス。アンドリュー・バルドフェルドだ」
『レジスタ――は北東の方角へ向かっ――るが、散開し――げ始めた。これ――追跡は不可能だ』

 バルドフェルドはインカムを耳に当ててムウの声に応じると、追跡の報告が返って来た。
 一瞬、眉を寄せたバルドフェルドはダコスタへと顔を向ける。

「……ヘリはどうした?」
「地球軍モビルアーマーの後方、約三〇〇〇を追跡中です」
「連絡して確認しろ」

 ダコスタの代わりにオペレーターがヘリの所在を報告すると、ダコスタがオペレーター確認する様伝えた。
 一分程経って戦闘ヘリからの報告が纏まると、ダコスタがバルドフェルドにその確認内容を告げる。

「どうやら連絡の通りの様です」
「ほう、そうか……。まあ、そうなら仕方あるまい。ヘリに帰艦命令を出せ。それから、エンデュミオンの鷹殿にもご帰艦いただけ。感謝の言葉を忘れるなよ」

 報告を聞いたバルドフェルドは、微かに苦笑を浮かべて指示を出した。
 アイシャが少し可笑しげにバルドフェルドに顔を向けた。

「アンディ、どうするの?」
「ん?協定もあるからね、今は何もしないさ。それに彼らのお陰で残りは殲滅出来たのだから、その辺りは感謝しなくてはね」
「益々やりたくなっちゃった?」
「ああ、勿論だとも。それも停戦が終わるまで我慢すれば良い事だ」

 バルドフェルドはアイシャの問いに笑みを浮かべて頷くと、そのままレジスタンスが逃走した方角へと目線を向けて、再び口を開いた。

「だがその前に、悪い子にはきっちりお仕置きをせんとな」
「そうね」

 アイシャは軽く微笑んで頷いた。
 そうして窓の外を見続けていると、後ろから一人のオペレーターがやって来た。

「隊長、本国よりの命令が届いています」
「ん、分かった。……ほう、連合事務次官の娘を助けていたとはな。これでは人質交換だな」

 オペレーターから薄い紙の束を二つ受け取り、数枚捲って内容を確認すると、バルドフェルドは命令を皮肉るかの様に口元に笑みを浮かべた。
 そして、もう一つの命令書の紙束を捲り始める。

「――!?……おいおい、これは冗談か何かのたぐいか?」

 バルドフェルドが手にしている命令書がその握力に寄って折れ曲がった。
 一瞬ブリッジに緊張が走り、その場にいた全員がバルドフェルドに目を向けた。明らかに砂漠の虎が見せているのは怒りでしかなかった。

「隊長……?」
「見てみろっ!」

 何事かとダコスタが声を掛けると、バルドフェルドは手にしている紙束を乱暴に突き出した。

「これって……本当ですか!?」

 紙を受け取り、目を通すダコスタは目を丸くして声を上げた。
 そこにはバルドフェルドに取っては多いに不満であろうが、この土地を好きにはなれないザフト兵に取っては最高の命令が記されていたのだった。

 何とか追っ手を振り切り生き残ったレジスタンスの者達は、自らの前線基地とも言える本拠地へと無事に生還を果たしていた。
 だがその損害は大きく、無謀な行動に賛同して戻って来た者の数は半分にも満たない。
 そして今、その行動を先導したエドルが全員の前で組織のリーダーであるサイーブに殴り飛ばされていた。

「――馬鹿野郎がっ!」
「――あぐっ!」
「エドル、お前が勝手に煽って先走った結果がこれだ!」
「……なんだとっ!?地球軍の野郎どもがザフトと手を組んだ所為だろうが!」
「自分で煽っておいて、ふざけた事を言ってんじゃねえ!」

 サイーブは口元の血を拭って反論をして来るエドルを見下ろしながら罵声を浴びせた。
 それを見ていたカガリが止めに入るべく、サイーブに向かって怒鳴った。

「やめろ、サイーブ!奴らがザフトと手を組まなければ……アフメドや他のみんなだって死なずに済んだかもしれないんだ!」
「……それは無いな。あの場で地球軍が先に攻撃して来なければ全滅していただろう。お前達は気付かなかったのか?」

 全員の目がカガリに向けられるが、その言葉を否定する様にキサカが歩み出て来た。
 カガリは一瞬絶句するが、怒りを募らせキサカを睨んだ。

「なっ!?なんだと、キサカ!?」
「あの攻撃の当初、地球軍が一発でも当てて来たか?」
「実際にザフトと手を組んで攻撃をして来たし、あの時だってストライクが私達を押し潰そうとしたのをキサカだって知っているだろ!」
「ストライクに一度は助けているんだぞ」
「あんなのは偶然だ!」

 反論するカガリにキサカは諭す様に言うが、当のカガリはそれを認めようとはしなかった。
 戦場での事を逐一思い出しながら、キサカは自分なりの推論を導き出す。

「あのストライクの動きは、私達を逃がす為の時間稼ぎだ。そうでなければ、バルカンがあると言うのにパーツを切り離してまで殴りに来る理由が無い」
「……ああ、癪な話しだが奴らに助けられたな」

 キサカの言葉にサイーブは顔を歪めて苦々しげに頷いた。
 納得出来ないカガリは声を張り上げて二人を怒りをぶつける。

「ならどうして、奴らはザフトを討たない!?」
「カガリ……お前は俺達とあの軍艦に行って話しを聞いただろう。地球軍はザフトの勢力下で停戦している上に、しかも船は動けないと来てる。理由は明白だ。迂闊な行動が、どう言う結果を招くか分かったか?」
「……し、しかし、地球軍は元々ザフトの敵じゃないか!あの時ザフトを倒してしまえばアフメドが死ぬ事は――」
「――ふ、ふざけるなっ!あんな連中が俺達を助ける様な真似をする訳無いだろっ!俺は間違ってねえ!」

 キサカの言葉に反抗する様に、カガリは犠牲になった少年や仲間達を死へと追いやった原因を必死に説こうとするが、それを遮る様にエドルが立ち上がって怒鳴った。
 結果的にキサカが放った言葉は、カガリだけではなく、エドルやその行動に乗った者達へも突き刺さっていた。

「お前が自分のやった事を棚に上げて言うんじゃねえ!……分かってんだろうな?こいつを連れて行け!」

 サイーブは再度殴り飛ばすと、先程の戦闘に参加する事の無かった者達が倒れたエドルの両脇を固める様にして基地の奥へと引き摺って行く。
 引き摺られて行くエドルはサイーブに懇願するかの様な声を上げた。

「お、おい!?嘘だろ、サイーブ!?」
「サ、サイーブ!?」
「この土地の者じゃないカガリには関係の無い事だ、黙ってろ!」

 余りの事に慌てたカガリは困惑しながら止める様にの目を向けるが、それがサイーブの怒りに火を着けた。
 元々、カガリもキサカもこの土地の人間では無い。
 サイーブ達からすれば、このレジスタンス組織に協力と支援をしてくれているからこそ置いているだけであるのが本音なのだろう。

「だ、だけど!?」
「サイーブの言う通りだ。我々が口を出す事では無い」

 食い下がろうとするカガリの肩に、キサカは手を添えると首を振って諭した。
 何者であれ、土地以外の者が介入する事を嫌うと言う、古来よりの考え方があるからこそ、このレジスタンスのが成り立っている理由でもある。
 サイーブの言う通り、この土地の者で無いカガリには決定権は無く、これ以上の介入は許される事は無かった。

 アークエンジェルの医務室の扉が空気の抜ける音と共に横へと開いた。
 扉の両脇に立つ警備兵二人がそろって顔を向ける。

「ふわぁ……。私、疲れてしまいましたわぁ……」

 扉からはDNA鑑定を終えた疲れからか、体をしならせる様に伸びをするラクスの姿があった。
 少しばかり間抜けな光景に、警備兵の緩い視線が淡いピンク色をした髪の少女に向けられた。

「……あらぁ。……えーっと、お仕事ご苦労様ですぅ」

 伸びを終えたラクスは誰かに見られると思っていなかった様で、目をぱちくりとさせると笑顔を作って誤魔化す様にお辞儀をした。
 警備兵は呆気に取られながらも、その緩さに釣られてか少しばかり頭を下げると、ラクスはそのまま「失礼すますぅ」と言って、まるで逃げるかの様に小走りで医務室を後にした。
 そうして曲がり角まで来て医務室が見えなくなると、ラクスは自分に宛がわれている部屋へと向かって歩き出した。

「……途中、外が騒々しかった様な気がするのですが、何かあったのでしょうか……?」

 ラクスは検査の途中、外が慌しかった事を思い出して呟くが通路には窓など無く、外の様子を確認する事など出来ない。
 自室か展望デッキで外の様子を確認すれば良いかと思い直して歩みを進めていると、前方からアムロとキラが歩いて来るを見つけた。

「ご苦労様です!あのぉ、キラ、何かあったのですか?」

 足早に二人の元へと駆け寄ると、ラクスは挨拶をしてキラに外で何か起こったのかを聞いた。
 シャワーを浴びたばかりの為、髪が乾き切っていないのキラは、その様子から外の事を知らないのを知ると、ラクスが血生臭い事を知る必要は無いと思い、笑顔を見せて答える。

「うん、ちょっとね。でも大丈夫。もう済んだし、ラクスが心配する様な事じゃ無いから。それよりも今、終わったの?」
「はい!ついさっき終わったばかりですわ」

 ラクスは満面の笑みを浮かべて頷いた。
 その若い二人にお喋りにアムロは微笑ましい物を感じるが、昨日、キラに「ラクスと関わり過ぎるな」と言った事もあって、神妙な顔を見せた。

「俺は行っているぞ」

 アムロはブリッジに向かう為に、キラに一言声を掛けると返事を待たずに歩き始めた。
 慌ててキラは返事をすると、思い立った様にアムロを呼び止める。

「あ、はい!……あのアムロさん、待ってください!」
「なんだ、キラ?」
「……あの……」

 アムロは数歩歩みを進めた所で顔を向けると、キラは言い淀みながらラクスへと視線を向けた。

「ん?」

 キラの目線の先を追う様にアムロもラクスへと目を向けると、当のラクスは心配そうな表情を浮かべて傍らに立つキラを見詰める。
 昨日、アムロに言われた事もあって、最初に認めてもらわねばとキラは思っていた。

「……あ、あの、アムロさん。ラクスと関わり過ぎるなって言ってましたけど……、僕はラクスの事が好きで……、それで……」

 目線をアムロへと戻し、恐らく反対するであろう自分の師匠に意を決した様に、キラはラクスへの想いを告げた。

「私もキラの事が大好きですの!」

 ラクスは一瞬目を丸くするが、傍らに立つ恋人となった少年の行動が嬉しいのだろう。
 心からの笑みを見せると、自分の腕をキラの腕に絡めて幸せそうな表情をアムロに見せた。
 その二人の行動にアムロは呆気に取られるが、若い二人を見て若さと言う物を感じ、改めて自分が歳を取った事理解して苦笑いを浮かべる。

「……そう言う事か。自分達で決めた事なら僕が反対をする必要は無いさ。僕とキラが同じ目に合う訳でも無いだろうからな。二人とも、これから大変だろうが頑張れ」
「「はい!」」

 思わぬエールを送られ、二人は嬉しそうな顔を見せて頷いた。特にキラは反対されるであろうと思っていただけに、その喜びようは一入の様だった。
 笑顔を見せる若い二人を見て、親心の様な物が働いたのかアムロはキラに告げる。

「……キラ、今日はゆっくり体を休めろ」
「えっ、良いんですか!?」
「立て続けに戦闘があったばかりだぞ。流石に体を休めないと持たないだろう。それに野暮な真似はしたく無いからな」

 キラが驚いて聞き返すと、アムロはキラの肩を軽く叩いてそのままブリッジへと歩いて行った。
 残された二人は、アムロの言葉に顔を赤く染めて寄り添いその背中を見送った。
 アムロが通路の向こう側に消え、キラは緊張が切れたのか軽く息を吐いた。

「ふぅ……良かったぁ」
「ええ。まるでアムロ大尉はキラのお父様の様ですね」
「……色々教えてもらってるし、父と言うより面倒見の良い兄みたいな感じかな。アムロさんが長男なら、次男がムウさんで。……昨日はラクスに関わるなって言われたから反対されると思ってたんだ。だからアムロさんにラクスとの事、認めてもらえて驚いてる」
「キラは地球軍の所属ですし、私はプラントの人間ですもの。それだけ心配していたんでしょうね」
「……うん。本当に認めてもらえて良かったよ」

 笑顔で言うラクスの言葉に、キラは実感が湧いて来たのかしみじみと頷いた。
 横顔を見詰めるラクスは、絡めた腕の力を緩めるとキラの正面へと回る。

「キラ……私、うれしかったですわ」

 ラクスは愛らしい笑みを見せると爪先立ちをしてキラの唇にキスをした。