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CCA_電波◆Oa7bLA.9Wg氏_第2話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 18:11:17

 地球連邦新興外郭部隊ロンド・ベル。ラー・カイラム級戦艦のラー・カイラムを旗艦としてクラッ
プ級巡洋艦ラー・ザイム、ラー・エルム、ラー・チャターの4隻からなる部隊は、その足を止めて地
球へと艦首を向けていた。その先では、大気圏の摩擦熱で表面を焼かせながら落下軌道を取る5th
ルナがあった。
 ラー・カイラムのブリッジ、艦長のブライト・ノアはノーマルスーツのヘルメットを外して地球へ
と落ちていく5thルナを見つめて溜め息を吐いた。
「5thルナを止めることが出来なかったとはな……」
 その言葉の通り5thルナは阻止限界点を突破しており、作戦失敗を悟ったブライトはMS部隊の
帰還を命じた。そして今、帰還したMSの収容と修理、整備を行なって一時の休憩を余儀なくされた

「ネオ・ジオンの艦隊はどうだ?」
 ブライトはオペレーターに視線を向けて問う。オペレーターはすぐさま振り返って顔を顰めて首を
横に振った。
「ダメですね、ミノフスキー粒子を散布して撤退をしています。本隊は無理ですが分隊の方なら可能
ですが」
「そうか……」
 オペレーターの言葉を聞いてブライトの表情も僅かに曇った。5thルナも止められずネオ・ジオ
ンの艦隊すらも殲滅出来なかった。これでは何の為に今までやって来たのか、そんな愚痴を声には出
さずに心に留めるに抑えた。
「艦長!!」
 突如、脇の扉が開いた。大きな声を出してブリッジに入ってきたのはヘルメットを脱ぎ、白のパイ
ロットスーツを着たアムロだった。アムロは床を一蹴りして無重力の場を進むと、艦長席に座ってい
るブライトの横に身体を止めた。そしてアムロは悔しさが混じった声で呟いた。
「シャアの目論見を食い止められなかった」
 ブライトとアムロは互いに視線を合わせずに地球に落ちていく5thルナを見つめていた。
「お偉方はシャアを甘く見過ぎていたんだよ。それでようやく動けたと思ったら俺達だけときた」
「言うなよ。コロニーをしらみ潰しに探し回ってこれだ。スペースノイドは連邦政府に少なからず反
感を抱いてるからな、連邦政府も俺達もシャアにまんまと一杯食わされた」
「だが、これでは―――」
 アムロはやり場のない怒りを吐き出そうとした瞬間、地球の一部が大きな爆発を起こした。5th
ルナが地表に衝突してその衝撃で爆発と衝撃波を巻き起こしたのだ。宇宙から見ても分かるのだから
地球に居る人達はそれを肌で感じているに違いない。そして、あの場に居た人達は理不尽に死んでい
ったのだ……。
「クソッ!シャアめ……ッ!!」
「アムロ……」
 握った拳は血が出かねないくらいに力を込めていた。ブライトが落ち着かせようと名前を呼ぶが、
アムロの表情は怒りと後悔が混ざっている。暫くすると爆発は収まって、ドーナツ状に雲が穴を空け
ていた。

 
 

「ガンダムを取りに行く」
「今からか?」
 アムロの言葉にブライトは怪訝な表情をする。既にロンド・ベル隊はネオ・ジオンの陽動部隊を追
撃する事を決めて、今、正に航路は動こうとした瞬間だった。
「ああ、奴を倒すにはガンダムが必要だ」
「しかし、まだ完成してはいないだろう?」
「ラー・カイラムで仕上げるさ」
 ブライトはアムロの無茶な言葉にアナハイムの開発スタッフに同情したが、いかんせん時間が足り
ない。いつまたシャアが動き出すかわからない。状況は待ってはくれないのだ。
「仕方ないか。我々はこのままネオ・ジオンを追うが……」
「わかっている。何かあったらすぐに戻る」
 アムロは敬礼してブリッジから出ていく。アムロがブリッジから居なくなったのを見届けるとブラ
イトは立ち上がり、
「格納庫にジェガンとゲタの準備をさせろ。ジェガンが出たと同時に我々はネオ・ジオン艦隊追う! 」
 艦長の言葉にブリッジクルーは全員顔を引き締めて、了解、と声を揃えて応じた。

 

 CE73年。

 

 二年の平和を謳歌していたプラントは瞬く間に打ち砕かれていた。新型艦ミネルバの進水式を目前
に控えたプラントの軍事工廠「アーモリーワン」に於いて、三機の新型MSが強奪された。迎撃に向
かったザフトのMS部隊もカオス、ガイア、アビスの前には歯が立たなかった。
「アハハハッ、これじゃあ連合のパイロットの方がマシじゃねぇ?」
 アビスに搭乗したパイロット、アウル・ニーダは両肩シールドを羽ばたくように拡げて胸部のカリ
ドゥス複相ビーム砲と共に計七門のビームの奔流が数機のディンを貫いて爆散した。アビスは次の獲
物を探そうと―――コクピット内部に警報が鳴り響いた。レーダーはアビスの背後に熱源を示してい
る。
「―――!?」
 アウルはそれに気付いて振り返れば半壊した状態のゲイツRがビームライフルの銃口をアビスに向
けていた。アウルは咄嗟に両肩のシールドで身を守るように包む。
「………アレ?」
 アウルは思わず間抜けな声を出した。いつまで待っても自機に衝撃が来ない。メインカメラから様
子を伺うように見ると、ゲイツRは全身を深緑に塗装されたカオスに後ろからビームサーベルでコク
ピットを貫かれていた。
 バチッ、という音が鳴るとゲイツRは全身から力を失ったようにモノアイが消えて前のめりに崩れ
落ちた。カオスはつまならそうにゲイツRの頭部を踏みつけ、ゲイツの頭部は軽く火花を起こして爆
発する。
『調子に乗り過ぎだぞアウル』
 カオスに搭乗したスティング・オークレーはアウルの動きを諌めた。その言葉に多少の癇に障った
アウルだが、スティングのカオスに助けられたので反論しようにも言葉が出ない。子供っぽさを大き
く残した彼にとって年上のスティングの大人びた言葉は反感を覚えるのも仕方ないと言えば仕方なか
った。
「ちぇっ、悪かったよ」
 だが基本的に素直なアウルは呟くだけにした。そんなアウルにスティングは苦笑する。
『そろそろザフトの連中も冷静になる頃だからな。その状態で相手にするのは御免だぜ』
「ヘッ、別にいいけどね」
『数やエネルギーの問題もあるんだよ……っと、ステラはどうした?』
 スティングとアウルは話しをしながらも手は一切休めてはいない。上空から攻めてくるMSにはア
ビスが牽制と破壊を行い、地上から攻める敵はカオスが相手をしていた。
 二機の機体は背中合わせに互いを守る。カオスはビームライフルを撃ちながらもう一つ強奪した機
体のガイアを探すが見つからない。アビスは両肩のシールドの先端にある二門の砲塔からビームを発
射、二対のビームがディンの左肩とシグーの頭部と胸部を直撃して地上へと叩きつける。
「そんなの知るか―――って、居た」
 アウルがモニターに映し出されたガイアの映像を見る。ガイアは左手にシールドを持ち、右手には
柄を握ってビームサーベルを展開した。刀剣状になったビームの刃は全身を緑色に塗装された一つ目
の機体に向けられている。
「アレってザフトの新型だっけ?」
『ああ、確かザクって量産型MSだ』
 ガイアと相対するザクはガイアに応じるように左肩のスパイクシールドからビームトマホークの柄
を抜いた。同時にトマホークの刃先はビーム刃が形成され、ガイアにビームトマホークを向けた。静
止する二機は互いに出方を伺っていたが先に動いたのはガイアだった。
『不味い……っ!』
 そう叫んだのはスティングだ。ガイアはザクを断ち切ろうと迫るが、対するザクはビームトマホー
クを握る腕を振りかぶっていた。勢いをつけて振り切った手からはビームトマホークが離れ、空中で
回転しながらガイアに襲い掛かる。ガイアもそれに気付いて何とかシールドで防ぐが衝撃までは殺せ
ない。
「あのバカッ!!」
 アウルはガイアが体勢を崩した瞬間、既に懐に飛び込んでスパイクを持った右肩を向けてタックル
を仕掛けたザクを見て叫ぶ。衝突、そして衝撃をまともに喰らったガイアは一瞬宙に浮いて背中から
倒れ込んだ。ザクのパイロットはガイアが倒れたのを見てようやく息を吐く。

 

「――――ッ!?」

 

 その時、後ろへと脚部のサブスラスターから光を吐き出して跳んだ。数瞬後、先程まで居た空間に
ビームが通過した。ザクのパイロット、アスラン・ザラは警戒音が鳴るコクピットで此方に来た二機
のMSの存在を理解した。
『おいおい、大丈夫かステラ』
 カオスがザクの後ろに現れ、スティングは倒れているガイアに搭乗しているステラ・ルーシェに声
をかける。ガイアはゆっくりと立ち上がって体勢を整えて眼前のザクにビームサーベルを構えた。
「アスラン……」
「大丈夫だ、君は俺が必ず……クッ!?」
 瞬間、頭上からビームの雨がザクへと降り注いだ。アスランは反射的に左肩のスパイクシールドを
前面に突き出して防ごうとするが右腕は貫かれ、爆発。ザクは体勢が崩れながら横にあったビルにぶ
つかり、尻餅をついた体勢でその動きを停止させた。
『甘いってね』
 空中からザクを射撃したアビスはガイアの後ろに着地する。モニター越しにアビスがやった事に気
付いたアスランは衝撃に悶えながらカガリの心配し傍らに居るカガリに振り返った。
「大丈夫か、カガ―――カガリっ!?」
 カガリは頭から血を流して動かなかった。アスランは冷静さを失いそうになったが気絶しているだ
けだと知ると息を吐く。だが、状況は未だに危険だ。ガイアはトドメを刺そうとビームライフルへと
持ち替えて銃口を向けている。

 

 くそっ!カガリすら守れずこんなところで……!!

 

 アスランは心の中で罵倒する。しかし、突然空から三機のMSに向けて一機の戦闘機が側面に取り
付けられた20mmの機関砲が絶え間なく撃ち放たれる。カオス、ガイア、アビスはその戦闘機に注
意が逸れた。
「なんだ……?」
 アスランは一人の介入者に疑問に思う。
 戦闘機は弧を描くように空から地上、そして空へと舞い上がる。その間にも撃ち続けられた機関砲
のせいか三機のMSは一瞬動けなかった。空へと舞い上がった戦闘機にはそれだけで良かった。戦闘
機に追随するように空から現れた二機の戦闘機が一列に並ぶ。
「何を―――」
 する気だ。とアスランは言いかけて驚いた。三機の戦闘機は空中でドッキングしてMSへと姿を変
えたのだ。MS―――インパルスは背部に装備された二本の対艦刀を抜いてザクの目の前に降り立っ
た。そして二本の対艦刀の柄を繋げ合わせて巨大な剣となり、レーザー刃発生デバイスがレーザー刃
を形成した。
 インパルスのパイロット、シン・アスカは怒りを込めて目の前の強奪されたMSに向かって叫ぶ。

 

「また戦争がしたいのか!アンタ達は!!」

 

 少年は守るための力を望み、争いを求める者達を断罪する。皮肉にもその力が新たな悲しみを呼ぶ
という事にシンはまだ気付かなかった。 

 

「………ん?」

 

「どうかしましたか大佐?」
 ネオ・ジオン総旗艦レウルーラ。ブリッジでは赤を基調とした制服を着たシャア・アズナブルが天
井を見上げていた。その様子を怪訝に思った女性、ナナイ・ミゲルは心配そうにシャアを見る。
「いや、誰かが叫んだような気がしてな……」
「叫び、ですか……?」
「気のせいだろう。それよりナナイ、現在の状況を報告してくれ」
 シャアはそう言うとナナイは気にせずに、はい、と頷いて答える。
「5thルナは無事にチベットのラサに落下。現在艦隊は本来の航路を迂回して分隊との合流ポイン
トに向かっています。後に大佐はシャトルでロンデニオンに向かって貰い、連邦政府との交渉を行う
予定です」
「迂回?」
 シャアは一つの単語に疑問に思った。現在ロンド・ベル隊は分隊の追撃を行なっており、本隊が取
る航路には問題はない筈だ。分隊は陽動も兼ねている為にロンド・ベルは尚更、此方の動きには気付
いていない。
「はい、先程連絡が来ましてこのままの航路で行くと連邦軍とぶつかります。それを回避する為に迂
回をします」
「連邦軍が?スペースノイドを刺激しないようにコロニーから出て来れない筈だが」
「どうやら我々の持っている情報が食い違っていまして」
「そうか……今後、情報管理は徹底させろ」
 そう命令して床を蹴ってブリッジから出ていきナナイも後ろから付いて行く。通路を移動しながら
シャアは先程の感覚を思い出していた。
 感情のままに叫ぶ声。そこには悲しみと怒りが満ちていて泣いているようにも感じた。思わずシャ
アは苦笑を漏らす。そんな時代は既に通り過ぎた道だ、今の自分は人類至上最悪の虐殺者になろうと
している。このやり方が間違いなんて理解している。だがそれでも人類は変わらず争いを続けて、憎
しみ合っているのだ。そう、ニュータイプ同士ですらも……。

 

「アムロ、お前は今の私を笑っているだろうな……」

 

 呟く言葉には自嘲しかない。返す相手も居ないそれは空気となって消えていく。その背中に乗せた
悲しみを気付く者は誰も居なかった。