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CEvsスペゴジ第06話

Last-modified: 2014-03-10 (月) 15:43:52

作戦開始から3分



キラとアスランは結晶体に覆われた町を見て、声を失った。

町に立ち並ぶビルには逃げ遅れた人々のものであろう血痕が大量に付着し、

路上には腐敗した無数の遺体が転がっている。それも一つや二つではなく大量に、だ。

前大戦、前々大戦において多くの悲惨な光景を見てきたつもりだったが、この町のそれは比べ物にならない。

アスランは苦虫を噛み潰したような顔を、キラはこの光景を作り出した根源であるクリスタル1に対し、ひどい嫌悪感を持った。



突如として、無数の結晶体が降り注ぐ



キラとアスランは即座に機体を動かし、それらをかわし辺りを見回す。

彼らの正面数百メートル先に目標であるクリスタル1が確認された。

クリスタル1は2機を睨み続けている。その目に友好的な感情などあるはずも無く、だからといって憎悪に満ちたものでもない。

ただ睨みつけているだけである。

彼らは無数の結晶体をかわしながら、先に仕掛けたのはアスランであった。

アスランの駆るジャスティスは、背部に装備されているリフター『ファトゥム-00』に装備されているビーム砲でクリスタル1に攻撃を仕掛けた。



そう、『ビーム』で攻撃をしたのだ。前回のブルーフレームとの交戦時、クリスタル1はバリアを展開しビームを無力化ないし反射して見せた。

本来ならば作戦会議のときに見ているものであるが、会議中戦闘データは公開されずは会議終了後に個人で見ろと言うことになっていたのだが、

アスランは仕事に没頭してしまいあろうことかそのデータを見ていなかったのだ。

もっとも、見ていたとしてもリフターに装備されているビーム砲をレールガンに換装するのには、構造上ドラグーンの仕様変更以上に時間がかかってしまう。



今回もやはりクリスタル1はバリアを展開、放たれたビームをそのままジャスティスへとはじき返す。

アスランは一瞬驚いたが、即座に機体を動かし反射されたビームを回避する。

そして、そのままクリスタル1へと接近、ジャスティスの得意とする格闘戦を仕掛けるつもりである。

そのことを理解したキラは、フリーダムのレールガンをクリスタル1に向け次々と叩き込んでいく。

無論クリスタル1とて、ただやられっぱなしではない。無数の結晶体をフリーダムに向けて打ち出していく。

が、キラは回避するそぶりを見せずそのままドラグーンを射出、ドラグーンによって結晶体を次々に撃ち落としていく。

そうこうしている間にジャスティスはクリスタル1に肉迫、巨大でグロテスクな腹部に痛烈な蹴りを一撃叩き込む。

クリスタル1はジャスティスを捕らえようとするが、ジャスティスは即座に離れ、

隙が出来たクリスタル1へフリーダムのドラグーンが次々と叩き込まれていく。



交戦開始から3分



キラ・ヤマトは焦っていた。これまで経験したどの戦いよりも焦っていた。

現在、彼は未知の宇宙生物…クリスタル1と対峙している。

彼はクリスタル1へ次々と攻撃を当て、時折襲ってくる結晶体を撃ち落す。もしくはアスランの援護を行う。

それを延々と続けている。

そう、『延々と続けている』のだ。

これまでキラはクリスタル1に何十発、何百発と攻撃を当てている。MS相手ならば既に勝敗は決している。

だが、クリスタル1は依然と倒れようとしない。依然とその巨体を世界に誇示していた。

一瞬、『自分は無駄なことを行っているのではないのか?』と思ってしまうが『大丈夫、効いている』『余裕があるように見えるが倒れるのを堪えるので精一杯だ』

と先ほどの考えを否定し、もう少しで倒せると思うことにした。

一旦ドラグーンを呼び戻し、リロードすると再び射出する。

そして、MRS(マルチロックオンシステム)を起動させ、一つの光点・・・クリスタル1に無数のロックをかける。

ストライクフリーダムの最大の砲撃である『ドラグーンフルバースト』を撃つつもりなのだ。

それに気づいたアスランは、クリスタル1から離れる。



ジャスティスが離れると同時にフリーダムから無数の砲弾がクリスタル1に放たれる。

クスフィアレールガン、ドラグーンから次々と弾丸が巨体へと撃ち込まれた。

砲撃が終わったあと、全弾撃ち尽くしたドラグーンを呼び戻し、次の攻撃に備えリロードする。

リロードしている間、キラはクリスタル1を見ていた。クリスタル1の目は閉じられており、わずかに巨体が震えているだけである。

『これならばいける!』とキラは勝利を確信していた。アスランも同様だ。

ドラグーンのリロードが終わり、再び射出。同時にMRS起動しクリスタル1に対し再びロックをかける。

キラが、アスランが、そしてオーブ司令部から見守っていたカガリが、自分たちの勝利を確信していた。





その時だった。町の空気が一瞬で凍りついたのは。

突如、クリスタル1の目が開かれた。憤怒に染まったその目を。

甲高い雄たけびが上がる。これまでは無かった怒気をはらんで。

キラは一瞬、それに気押しされたが引き金を引こうとする



が、それを感じ取ったのだろうか、クリスタル1はフリーダムに向け一筋の光条を放った。

無論、当たるわけにはいかずフリーダムはそれをかわした。



しかし、クリスタル1が放った光条はそのまま『捻じ曲がり』ドラグーンを一つ粉砕した。そしてそのまま二つ目、三つ目と次々とドラグーンを粉砕していった。

これに驚き、キラは慌ててドラグーンを呼び戻すが、既にドラグーンは全て破壊された後であった。

クリスタル1はフリーダムを落とさんとばかりに、再び光条を放った。

その攻撃を、キラはフリーダムを器用に動かしながら回避していたが突然、機体に衝撃が走った。

それも一度だけでなく二度三度連続して、だ。

衝撃の正体は、つい先ほどまで余裕でかわしていたはずの結晶体だった。その結晶体が今、フリーダムの腹部ビーム砲に殺到しているのだ。

(これが奴の狙いだったのか!)

と心の中でぼやいたが、次々襲ってくる衝撃に意識を刈り取られた。

フリーダムは成す術も無く結晶体の猛攻に晒され、そのまま付近のビルへと突っ込み、突っ込んだビルはそのまま倒壊した。



「キラァッ!!くそう!」

アスランとてキラを助ける気が無いわけではない。むしろ助けようとしていたのだ。

しかし、無数の結晶体がジャスティスを執拗に追い回し、フリーダムへの支援を妨害していたのだ。

そして今も、結晶体の攻撃は続いている。それも捻じ曲がる光条つきで。

装備されているライフルでクリスタル1へ攻撃をしているが、まったく効果が無い。



(やつは正真正銘の化物か!)



今更ながら、アスランは相手の出鱈目さを感じていた。

出撃する時、『今回の任務も無事に終わるだろう』と思っていたが、ここまで一方的な状況になるとは全く思っていなかった。

アスランはクリスタル1をフリーダムから少しでも引き離すため、ライフルを撃ちまくる。が、とうとうライフルの弾が切れた。予備の弾倉も既に使い切っている。

即座にライフルを捨て、ブースターを吹かし再び接近戦を挑む。しかし無数の結晶体がジャスティスの接近を拒むように襲い掛かる。

それらを回避するが、機体に衝撃が走った。結晶体の影に隠れていた光条が襲い掛かったのだ。それによりジャスティスの右腕が破壊される。

光条は続けて左腕を破壊しようとするが、流石にそれまで受けるわけにいかず回避する。しかし、捻じ曲がった光条はリフターに襲い掛かりそれを粉砕した。

ブースターを吹かしてバランスを取ろうとするところに結晶体が襲い掛かり、ジャスティスはそのまま墜落…はせず、地面スレスレで止まっていた。

止まっているからと言って、何かに引っかかっていたりする訳でもない。周囲にはビルはおろか結晶体すらない場所ないのだから。

にもかかわらずジャスティスは空中で動きを止めている。その場に縫い付けられたように、だ。

アスランは何度かジャスティスを動かそうとし、ブースターを吹かすがまったく動く気配が無い。全開出力にしても、まったく動かない。



が、突如としてジャスティスはすさまじい速度で動いた。いや、動いたと言うより吹き飛んだと言うべきだろう。

吹き飛ぶように動いたジャスティスは激しく大地に激突した。

すさまじい衝撃にアスランは気を失う。が、再び大地に叩き付けられ即座に現実へと引き戻される。

アスランはジャスティスを動かすが、ジャスティスは先ほどと変わらずまったく動こうとはしない。にもかかわらず、ジャスティスは動いている。自分の意思とは関係なく。

アスランは思った。今、ジャスティスを動かしているのは自分ではなくあの化け物だ、と。そう思う間もジャスティスは再び大地に叩きつけられる。



それから何度も、何度も何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も…大地へと叩きつけられた。

アスランの意識は何度も浮き沈みし、何度目かの衝撃を最後にその意識は











二度と浮かんでこなかった。











倒壊したビルの残骸が崩れ、その中から満身創痍のフリーダムが現れる。

兵装ウイングには備えられているはずのドラグーンは無く、腹部から無数の結晶体を生やしていた。

そんなフリーダムのコクピットで、キラは周囲を見回しながら考えていた。

『アスランはどこにいるのだろうか?』『クリスタル1はどうなっているのだろうか?』

その答えは、存外直ぐにわかった。

現在、フリーダムのいる位置から少し離れたところでクリスタル1の姿が確認された。最後に見たときと変わらぬ姿のままで。

そのクリスタル1は何かを見つめている。キラはその視線の先が気になりメインカメラを動かす。

動かした先にあったのは、ジャスティスだ。両腕両足頭部がまったく無い状態で宙に浮かんでいる、だ。

それは、余りにも衝撃的だった。これまで多くの戦いのなかで、アスランをここまで痛めつけられたのは自分くらいだった。

もっともそれは、ブランクが回復していない状態でだが。再びじゃスティスに乗るようになった今のアスランが相手だと、キラもかなり苦戦するだろう。

そのアスランがここまで手酷くやられているのだ。驚かないはずが無い。

クリスタル1はジャスティスをつまらなさそうに眺めていた。そして、何の脈絡も無くジャスティスは地面へとたたきつけられ…爆発した。



キラは目の前で起こったことを信じられなかった。親友であるアスランが、パイロットとしても優秀なあのアスランが、こうもあっけなく終わってしまうなど。

即座にキラは、爆散したジャスティスの周辺を望遠カメラで食い入るように見回した。

『もしかしたら既に脱出しているかもしれない』と考えて。

が、アスランの姿は無かった。代わりに見つかったのは、













アスランがよく使っていたヘルメットだけだった。









キラは吼えた。コクピットの中で泣き叫んだ。

そして、クリスタル1を憎悪を込めて睨んだ。アスランを殺した、クリスタル1を。

その視線に気づいたのだろうか、クリスタル1もキラを睨んだ。キラの放つ憎悪が可愛く感じられるほどの凄まじい殺意を込め。

キラはその目を見て、一瞬で恐怖した。先ほどの憎悪も恐怖によって上塗りされた。





そして、分かった。いや、分かってしまった。





この化け物は、殺すと言うことにためらいなど無い。そして、自分たち人間を敵として見ていない。ただ、調子に乗って周りを飛ぶ鬱陶しい虫けら程度にしか見ていない。





圧倒的な殺意に飲まれたキラは、身動き一つ出来なかった

クリスタル1はしばらくフリーダムを睨んでいたが、甲高い雄叫びを上げ浮遊した。

上空へと移動しながら、その姿を飛来したときのものに変えると、何処かへと飛び去った。

その姿が消えたことを確認すると、キラの意識は闇へと落ちた。