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Canard-meet-kagari_第18話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 21:31:48

第18話

「マリュー・ラミアス大尉、ムウ・ラ・フラガ大尉、ナタル・バジルール少尉か……なるほど、君達のIDは確かに大西洋連邦のもののようだな」
 ガルシアが端末を操作し三人のIDを照会し大西洋連邦の軍人である事を確認し終えた。
「お手間を取らせて、申し訳ありません」
 ムウが言うのをガルシアは笑いながら答える。
「いや、なに…。輝かしき君の名は、私も耳にしているよ。エンディミオンの鷹殿。
 グリマルディ戦線には私も参加していた。ジンを5機落とした君の活躍には、我々も随分励まされたものだ」
 グリマルディ戦線、ザフトと地球軍が月を二分する大激戦を繰り返した最前線の事である。ムウはそこでガンバレル装備のメビウス通称「メビウス・ゼロ」を駆り、エンディミオンクレーター防衛戦ではジンを五機撃墜したのだった。
 通常MAとMSではMS一機に対しMA五機分の戦力である事からムウの腕の凄さがうかがい知れる。ムウの二つ名エンディミオンの鷹もここから来ている。
「あの『不死身のガルシア』にそう言って貰えるとは光栄の極みですな」
「なに、私などはただ逃げ回ってただけだよ……そのお陰でサイクロプスの暴走からも逃げ延びる事が出来たがね」
 ガルシアが意味ありげにニヤリと笑う。
「あの〜スミマセン、それでアークエンジェルの補給のほうは受けられるのでしょうか?」
 マリューが躊躇いがちに聞く。
「事情は理解しておるつもりだ……がすぐに補給をというのは難しいぞ」
「それはどういう事です?」
「知っての通りアルテミスは位置的に重要な拠点という訳ではない為、弾薬、食料共にそう多く備蓄は無いのだ。とても諸君等に補給する余裕は……」
「そんな!?時間を稼ぐ為の嘘は止めて下さい」
マリューが聞く。
「嘘?君は私が嘘を付いてると言うのかね?君達の大西洋連邦からの協力要請に応え、共にザフトと戦っていくには例え麦の一粒、銃弾の一発でも無駄には出来ないというのに、それなのに君達の態度を見ていると大西洋連邦には急に飛び込んできた戦艦に補給を与える余裕が有るようじゃないか?まあ、オーブに裏金を送ってMSと新型戦艦を開発させる余裕が有る様では無理もないか」
 マリューはガルシアが嫌味たっぷり言うの聞くと必死に弁明した。
「誤解です!!我々大西洋連邦とて苦しいのは同じです。指令の仰るような余裕はとても……」
「だったら、ここで補給の目処が立つまで、ここで大人しくしているんだな」
「しかし我々はザフト艦にも追われていすので……」
「ザフト?追ってるザフト艦とはコレのことかね?」
 マリューの言葉を聴いたガルシアが端末を操作するとメインスクリーンにガモフが映し出される。
「これは……ローラシア級?」
「見ての通り、奴等は傘の外をウロウロしているよ。先刻からずっとな。まぁ、あんな艦の1隻や2隻、ここではどうということはない。だがこれでは補給を受けても出られまい」
「しかし……」
 マリューが、なお言おうとするのをムウが手で制止し、マリューに変わって自分が言う。
「奴等が追っているのは我々です!このまま留まり、アルテミスにまで、被害を及ばせては……」
 それを聞きガルシアは笑いながら否定した。
「はっはっはっはっは!被害だと?このアルテミスが?奴等は何もできんよ。そして、やがて去る。いつものことだ。」
「しかし!司令!彼らは……!」
 なお食い下がろうとしないムウをガルシアは切り捨てる。
「ザフトが必死になる理由もわかる……だが、ともかく君達も少し休みたまえ。だいぶお疲れの様子だ。部屋を用意させる」
 もうこれで話は終わりだと後ろを向き、手を挙げる。すると部屋の隅に居た兵士が三人に近づき部屋に案内しようとする。
「そう言って我々を艦から引き離して、その隙にストライクのデータを盗むおつもりでしょう」
「少尉よせって!」
 ムウが制止するのを聞かずナタルは続ける。
「もし大西洋連邦がMSの開発に成功すれば戦後、大西洋連邦の発言力が増し、ユーラシア連邦としては、それが気に食わない……違いますか?」
「ハッハッハ、なるほど君は優秀な人物な様だな……だが我々にはそんなつもりは……」
「なら何の権利があってこんな事するのです」
ナタルの言葉を聞きガルシアは自嘲気味に笑う
「フッフッフ権利か……君の言う通りだ確かにユーラシアとしても大西洋連邦にMSを開発されるのは面白くない……しかし、それだけでは無い、我々にはアノMSもデータを知る権利が有るはずだよ」
「どういう事ですか!?」
「そもそも何故、大西洋連邦がMSを開発する時間が出来たと思う」
「それは……ザフトがプレマイオス基地攻略を諦めたためです」
「その通りだ、ザフトはエンデュミオンクレーターでのサイクロプスに巻き込まれ大損害を出した。そして月には他にも多数のサイクロプスがレアメタル採掘用の器材として、戦前に設置されているため、ザフトは迂闊に攻撃できない……だが何故ザフトはエンディミオンクレーターで大損害を出したのか、君はそれを知っているかね?」
「それは……」
ガルシアの質問にナタルが狼狽しながら答える。
「答えられないのなら、答えてやろう……あの時、大西洋連邦は我々ユーラシア連邦を囮にしてザフトの足止めをし、その上でサイクロプスをワザと暴走させたのだ!!」
「そんな……デタラメです!!」
「嘘かどうかは、そちらのエンディミオンの鷹殿に聞いてみれば解る……大方、口封じの為に昇進させられたんだろう?大尉」
 ガルシアの言葉にムウは唇をかみ締めている。
「では、ゆっくりと休みたまえ、アルテミスはまるで母の腕の中の様に君達に安らぎを与えるだろう」

 三人が連れ出されると司令室に通信を入れる。
「変わったことは有るか?」
「ザフト艦、ローラシア級、離脱します。距離、700。更に遠ざかりつつあります」
「分かった。後はライズに任せる。ある程度の距離が開いたら傘を閉じろエネルギーの無駄使いだ、それと引き続き対空監視を怠るなよ」
「はっ!」
 通信が切れると次にアークエンジェル制圧の指揮を執っている副官に連絡する。
「どうだ?」
「は!それが……モビルスーツのハード面の解析は順調に進んでますが、OSに解析不可能なロックがかけられていて、制御システムにアクセス出来ないのが現状です」
「チィ」
 ガルシアの舌打ちが聞こえたのか若干声を小さくして報告を続ける。
「今、技術者全員で解除に全力を挙げているということなんですが……」
「それよりも私の言った少年を確保出来たのか」
「それが……指令の仰った年頃の少年は数人いまして……中立国の民間人に手荒な事は出来ませんし、我々では判断が付かないのが現状で……」
 ガルシアは確保に向かった兵士達に目的の人物の画像データを送っていなかった。年格好だけを言えば通じると思っての判断だった。
「黒髪の目つきの悪い見るからに根性が曲がってそうなヤツだ……それと私もそちらに行こう、MSの前に連れて来い」
 通信を切りガルシアは、久しぶりに会う『大馬鹿者』にどんな嫌味を言ってやろうか考えながらアークエンジェルに向かった。

「はっ、黒髪の…目つきの鋭い少年ですか?ええ居ますよ。解りました」
 食堂を占拠したチームの責任者が通信を切り、真っ直ぐカナードの方に歩いていく。
「君、ちょっと我々と来て貰えるかな?」
(何故バレた?)
 カナードは内心焦りながらも平静を装い答える。
「何で俺が付いていかないといけない」
「君がアノMSのパイロットなんだろう?指令が君に話があるそうだから来て貰えるかな?」
「俺が?クッククハッハハッハッハ冗談は止めてくれ……俺はみたいなのがMSのパイロットなわけないだろう?人違いだ……」
 カナードがそう言った時にフレイが言う
「何を言ってるの?貴方がパイロットでしょう?」
「この女!!何を言うんだ!!」
「兵隊さん、この人がパイロットなんです。この人コーディネーターですから……」
 コーディネーターという言葉を聞き兵士が身構える。
「女!!余計な事を言うなと言ってるのが解らないのかっ!!!」
「キャッ!!」
 フレイはサイに抱きつき、顔をサイのシャツに埋めながらチラリとカナードの方を見る、その唇が歪んでいるのを見るとカナードの怒りは頂点に達した。
「このアマッ!!!」
 飛び掛ろうとするカナードを兵士が止める。
「君!!落ち着きたまえ……とりあえず来てくれるかな、君もここには居たくないだろう?妙な真似したら解るね……」
 他二名と共にカナードに銃を突きつけた兵士がカナードに言った。
 ボディーアーマーを着た完全武装の兵士を三人、それに対しカナードの武器は拳銃が一丁だけだった。
「クッ!!仕方がない……会ってやろう貴様等の司令官にな」
「お前っ……」
 カガリが心配して腕を掴むがカナードは気にせずにこう言った。
「切り札はある…」
「どういう意味だ?」
 カガリの質問にカナードは答えず兵士達に連れられていく。
「バイバ〜イ」
 フレイが満面の笑み共に手を振り、カナードを送り出す。
(このアマ……後で覚えてろよ……)