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Canard-meet-kagari_第20話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 21:32:19

第20話

「で俺に何の用だ?」
 格納庫に連れてこられたカナードは指揮官らしき男に尋ねた。
「さあな、指令が来られたら聞いてみるんだな」
 指揮官らしき男がそう言うとカナードの背後から声が聞こえた。
「全く凄いMSだな。装甲、パワー、反応速度どれを取ってもザフトのMSとは比べものにならない……ただパイロットに少し難が有るのを除いてな」
 カナードが振り返り驚くが、後ろから歩いてきたガルシアは気にせずカナードの前までやって来る。
「私がこの基地の指令だ……しばらくぶりだな」
「アンタだったのか……道理でこんなにも早く俺の正体がバレルわけだ」
「さっきの戦闘を偶然に見ていてな……あんな戦い方をするのはお前ぐらいだからな」
 ガルシアはアルテミスで見ていた先程の戦闘で、ストライクの動きを、かつて自分の元で鹵獲されたジンで戦っていたカナードの動きと重ね合わせ、パイロットがカナードである事を確信していたのだ。
「どうして俺が生きてると思った?」
 あのサイクロプスの爆発では生きていないと考えるのが普通だ。さらに万が一にも乗っていたジンが回収された時の事を考えて、ジンのコクピットを念入りに爆破し、完全に痕跡を消したのだ。
「アノ戦闘の後に貴様のジンを回収してな。コクピットが完全に壊れていたので軍では死亡したと思ってる様だが、私には直ぐにお前が爆破したのだと解ったよ。しかし貴様が我々を裏切り大西洋連邦に協力しているとは夢にも思わなかったぞ」
「大西洋に協力したわけじゃない」
 カナードはこれまでの経緯を説明した。
「という訳だ、だいたい、いつ後ろから撃たれるか解らんのに協力する訳ないだろう」
「なるほどな、少しは利口になった様だな」
「チッ、大体なんでアンタがアルテミスに居る?特務部隊Xはどうしたんだ!」
 特務部隊X、表向きにはユーラシア内の鹵獲MSを運用する特殊部隊だが、その真の目的は鹵獲MSを使った、ユーラシア製MSの開発計画、通称『X計画』の為のデータを収集する事である。
 開戦初期からMSの圧倒的戦闘力に目の当たりにしてきたガルシアが上層部に働きかけ、強引に立ち上げたX計画だったが様々な問題が彼の頭を悩ます事になった、その一番大きな問題と成ったのはMSのパイロットである。
 鹵獲されたMSを使い様々な条件化の作戦を遂行し、戦闘データを持ち帰る凄腕のパイロットという、無茶苦茶な条件に合うパイロットがユーラシア連邦内に居なかったのだ。当初はあの「サーペントテール」に依頼しようかと思ったが、予算の都合と情報の流出を避ける為に依頼するのは取りやめになった。
 そこでガルシアが探し出したのがカナードだった。

 カナードは当時ユーラシア内の軍事研究所でスーパーコーディネーターに関する研究の実験動物同然の毎日を送っていた。
 研究の一環として行われたMSの適性テストでカナードは驚異的なスコアを叩き出し、その記録を偶然目にしたガルシアは、彼こそが自分の探し続けたパイロットだと確信し、研究所の責任者に協力要請をしたのだがあまり良い返事は貰えなかった。研究所の責任者が貴重なスーパーコーディネーターの貴重なサンプルであるカナード失いかねないと判断したからだ。
 ガルシアは再三に渡り要請を出したが決まって答えはNOだった。しかしガルシアは諦めなかった、海兵隊員60人の猛者達を引き連れて研究所の責任者に直談判に行ったのだった。
 その威圧感に、連日の深夜の無言電話、夜道の帰宅途中に付け回す不審車、通勤途中に必ず起きる不可解な事故などに悩まされ、気が滅入っていた責任者はやっとOKを出したのだった。
 そして、カナードは特務兵という特別階級で特務部隊Xに参加、数々の作戦で華々しい戦果と貴重な実戦データをもたらしたのだが、グリマルディ戦線で、ザフトのエースとの戦闘に気を取られていた為、離脱するのが遅れサイクロプスに巻き込まれMIA認定を受けた。
 その後、キラ・ヤマトを探し各地を放浪し、ある情報屋からの情報を元にヘリオポリスにいた所をザフトの襲撃に巻き込まれ現在に至る。
「お前が居なくなった以上、もうデータはとれないのでな。X計画は次の段階に移ったのだ」
「ならココが……」
「そうだ。ここアルテミスが、我らユーラシア連邦の希望の光と成るだろうMSの誕生の地となる」
「そんな事を言う為に俺を呼んだのか?」
「違う、単刀直入に言おう。カナード戻って来い、貴様とこの大西洋のMSが有れば最強のMSが作り出せる。ユーラシアがザフトと大西洋連邦の二つを相手にしても勝ち残れる最強のMS……乗ってみたいと思わないか?」
「最強か……悪くないな」
 カナードはそう言うとガルシアの唇が歪む、当然だカナードが最強のMSと聞いて黙ってるわけがないだが……
「悪くないが完成までこき使われるのはウンザリだ……断る!」
「どうしても駄目か?」
「ああ、ここにその最強のMSが在れば違うのだがな、完成したら呼んでくれ。テストパイロットぐらいは引き受けてやる」
「仕方ない……此方も手荒な真似はしたくないのだがな」
 ガルシアが右手を挙げると隠れていた兵士達が一斉に銃口をカナードに向ける。
(ざっと二十人って所か……用意がいい狸親父だ)
 カナードは冷静に現状を把握する。
「貴様といえど、この数の兵士相手ではどうにもなるまい。貴様の意思など関係なしに嫌でも協力してもらう」
「手の込んだ事を……!」
「なあに、昔に戻るだけだ、MSが完成したら昔の様にエース狩りをさせてやる……その中には本物のスーパーコーディネーターもいるかもしれんぞ?」

 特務部隊Xが順調に実戦データを収集していく中で、より高度な戦闘データを得るために、ザフトの名立たるエース達を相手に狙いを付け挑みかかる、カナード達はこれをエース狩りと称して様々なエースパイロットと戦ってきた。危険度は高いが一時期のカナードにとっては最高の一時であった。
 カナードの全神経が極限まで集中し、その一瞬が引き伸ばされ相手の動きに知覚した様に感じ、攻撃を繰り出すたびに反応速度が上がり自分の限界を超え遥かなる高みにあと少しで到達出来るように感じるアノ感覚。その感覚を越えた先に自分の目指す者が居るのだと知ってか知らずか、一時期カナードはその感覚に試す事に夢中になった。しかし、カナードは、とある任務で凄腕のエースと戦って帰還した時に、日に日に高まっていく感覚の重大な爆弾に気づいたのだった。
 カナードの体に掛る負担が大きすぎる。研ぎ澄まされ過ぎた神経がカナードの気力と体力を極度に消耗させるのだ。また機体に掛る負担も大きく、特に間接部は無理な操縦で焼き切れかけていて、またOSもカナードの動きに追随しきれずにフリーズする寸前だった。
 そしてカナードの反応速度もジンの限界を遥かに凌駕し、機体との反応速度の差が戦場では命取りになりかねないレベルに成っていた為にカナードは、それ以来その感覚を封印してきた。唯一の例外は月面で赤い高機動型ジンと戦った時だけである。
「とりあえず、このMSの制御システムを解析できるようにしてもらおうか」
 ガルシアは、そう言うとカナードにOSのロックを解除を促す。しかし、カナードは不敵な笑みを浮かべている。
「どうした、早くしろ」
「欲張りすぎは元も子もなくすぞ、閣下殿」
「何?」
 ガルシアが怪しんだ、その時にカナードはポケットから取り出した例の黒い立方体を取り出す。
 縦が10センチ、横が5センチ、幅が2センチくらいの黒い立方体だった。中央には黒と黄色ストライプに囲まれたカバーガラス付きの赤いボタンが付いている。
「動くなよ、このボタンを押せば……このMSは自爆する」
「何だと!?」
「この機体には秘密保持の為の自爆装置が内蔵されている。コイツはその遠隔起爆スイッチだ!!部品一つ残さないほどにバラバラにされるのは困るだろう?」
「止せ、そんなハッタリ……」
「なら試してみるか?俺は爆風を利用して逃げるがな」
 これがカナードの切り札だった。

 万が一、素性がばれた時は自爆放置を盾に脅し、ストライクと一緒に逃げるつもりだったのだ。
 もちろん、これはカナードのハッタリだった。GAT-Xシリーズに秘密保持の為の自爆装置が内蔵されているのは事実だが、その遠隔起爆装置などは内蔵されていない。もし在ったなら他のGAT−Xシリーズが強奪した時に使っていたハズである。
 今、カナードが持っているのはカズィに作らせた物で外見をそれっぽく作ったガラクタだった。しかし、カナードはそんな事など微塵も感じさせない自信満々の態度でガルシアたちに言う。
「もしも俺を見逃してくれるなら、このMSのデータをくれてやる、それと輸送船を一つ用意しろ、このMSを持って逃げるには足が要る」
「そんな要求呑めるものか!」
 側で話を聞いてたガルシアの副官が怒鳴るがガルシアが手で制する。
「我々には貴様の力が必要だというのに……」
「俺はユーラシアでは死んだ事になってるのだろう?なら死んだ人間の事は諦めるんだな」
「…………」
 ガルシアは暫く黙って考えていたが、そして口を開く
「良いだろう、その話受けよう」
「指令!」
 近くにいた副官が止めようとするがガルシアの考えは変わらない。
「機体に自爆装置が内蔵されてるのは、機体を調べた技術者から聞いている紛れもない事実だ。そして我が軍に今必要なモノはMSだ。特に大西洋が作ったMSを全て失うのなら、その価値は計り知れないものになる」
「交渉成立だな。アンタには俺が逃げるまでの人質になってもらう」
「何?」
「アンタの事だ、どうせ何か仕掛けるつもりだったんだろう?面倒なのはゴメンだ……」
 ガルシアは自分の打算が一切通じない相手に心底ウンザリして言った。
「まったく、厄介な相手だ……そうそう厄介ついでだ。おい例の物を」
 ガルシアはそう言うと、部下にある物を持ってこさせた。
「コイツは……」
 部下が持ってきたのはノーマルスーツだった。デザインは一般の連合のノーマルスーツと変わりないが、通常と違い赤と黒と暗灰色のそれは、かつてカナードが特務部隊Xで着ていた物と同じだった。カナードが着ていたのはサイクロプスの余波で壊れたのだが目の前にあるのはその予備だ。
「いつまでも置いておかれたら迷惑だからな、持って行け」
「ありがたく貰っとくよ。他のスーツだと動きずらいからな」