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Canard-meet-kagari_第30話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 21:34:56

第30話

「私は、私のワガママを……」
 そこから先は途切れてしまって分からないが、フレイにとっては、こう聞こえた。
『私はワガママを叶える。手段なんか選んでられない!!』と、そしてフレイは気がつくと、少女の安らかな歌声の漏れる部屋の前に来ていた。
(私は、このワガママだけは絶対に叶えてみせる)
 フレイは意を決して、部屋のロックを空ける。
「アナタは?」
 ドアの方を見るラクスに、フレイはゆっくりと口を開く。
「話があるの……」
「わたくしに?」
「アンタ、ザフトの偉い人の娘なのよね。だったらアンタ、ザフトを止めなさいよ!!」
「ザフトが来ているのですか?」
「そうよ、サイとパパが危ないの!だから止めなさいよ!!」
「解りました。ザフトの目的は私のはずです。私をブリッチまで連れて行ってください」
 静かに言い放つラクスの眼光がフレイを射抜く、穏やか瞳の中に力強い何かを感じ、フレイはたじろぐ。
「何なのよ……アンタ」
「わたくしはラクス・クラインです」

「護衛艦、バーナード沈黙」
「ジンが二機、ローに向かって行きます!」
 オペレーターの矢継ぎ早の報告を聞きつつ、コープマンは苦々しい顔で椅子を叩く。
「おのれ!ザフトめ!!」
 戦闘開始から三十分足らずで、先遣艦隊の戦力は既に半数を切ろうとしていた。
「防衛網を突破したジンが一機、こちらに来ます!!」
「対空砲火、打ち落とせ!!」
 イーゲルシュテルン、ヘルダートがジンに向かっていくが、ジンはそれらを巧に回避し、キャットゥスをブリッチに向ける。
「やられる……」
 ブリッチの誰もが死を覚悟した、その時に突如ジンが何所からともなく来た砲弾を浴びてバランスを崩す。
「今だ、撃ちまくれ!!」
 コープマンは僅かな隙を見逃さず、ジンの撃墜を命じるが一歩遅く、ジンは集中砲火を掻い潜り離脱する。
「ふう、何とか命びろいしましたな艦長」
 額に脂汗を浮かばせたジョージがコープマンに向き直る。
「しかし、今の攻撃は一体……」
 コープマンの疑問に答える様にオペレーターが答える。
「本艦に接近するMAが一機、おそらくさっきの攻撃は、このMAからかと……」
「何?接近中のMA所属を明らかにせよ」
 コープマンの通信にサイが答える。
「こちらアークエンジェル所属のメビウスです。これより援護します」
「その声……サイ君か!?なんでMAに乗ってる!?君は民間人だろう!!
 いや、そんな事よりどうして来た!!君までこんな所に来たら誰がフレイを守るんだ!!」
「すみません、けど僕はフレイが悲しむ顔は見たくないんです」
「君は……」
 ジョージが呆れていると、コープマンが笑いながら答えた。
「事務次官、良い婿殿をお持ちですな」
「え、まあ…!!危ないサイ君!MSが」
 サイが慌てて振り返ると先程のジンが今度はサイのメビウスに狙いを付ける、先程の仕返しのつもりだろう。
 ジンは重突撃銃を構えるが、その刹那にジンはビームライフルを受けて爆散する。
「いただき!!」
 飛び出してきたストライクは、破片の中から重突撃機銃を左腕で掴み、メビウスに近寄る。
「ストライク……なんで」
 サイが呆然と呟くと、ストライクか通信が入る。
「俺のストライクを動かし、しかも傷までつけた事はオマエの意地に免じて大目に見てやる。
 だが今、助けた借りは必ず返してもらうからな覚悟していろ」

「ストライクを確認!!足つきも此方に来るようです」
 オペレーターの報告を聞き、クルーゼはシグーのコクピットで唇を歪ませる。
「よし。アスラン、準備は出来ているか?作戦通りに行くぞ!!」
 イージスのPS装甲は、最高硬度の赤を主体としている為、その分バッテリー消費が激しいのだ。
 だからクルーゼの指示によって、先遣艦隊の攻撃には参加していなかったのだ。
 もしも参加していたら先遣艦隊はもっと早くに全滅していた事だろう。
「了解しました。アスラン・ザラ、イージス出る!!」
 囚われの歌姫を救う赤き騎士が今、戦場を駆け抜ける。

「あれがストライクか……」
 画面に映る白いMSにジョージは感嘆の声を上げる。
 自分がオーブとの交渉に関わっていただけに、Gシリーズへには特別な思い入れが沸くのだ。
「艦長!アークエンジェルが反転して、こちらに向かってきます」
「……バカなっ!ストライクに通信を繋げ」
 コープマンは、そうオペレーターに命じるとストライクに告げた。
「ストライク並びにメビウスに告げる。これよりジョージ・アルスター事務次官を乗せた脱出艇を射出する。回収の後、速やかにアークエンジェルに帰投せよ」
「この俺に逃げろだと?冗談を言うな。俺が来たからには勝たせてやる」
「勝つだと?そんな事が……」
「兵器の性能が戦いの優劣を決めるものではない。要は戦い方だ。
 ……チィ!もう来たか。俺が今から送る戦術コードを全MA部隊に送れ!」
 そう言うとストライクは一方的に通信を切り、ジンに向かっていく。
「これは!!」
 サブスクリーンに映るストライクから送られてきた戦術にコープマンは驚嘆の声を上げる。
「全MA部隊に、これを送れ!!ザフトの鼻っ柱をへし折る事が出来るかもしれんぞ」
「了解しました」

 カナードは味方のMA部隊の動きを見つつほくそ笑む。
「ようし、それでいい。イージスが来る前に一気に決める」
 カナードはストライクを敵の中心に向かわせる。敵のジンは数に任せてストライクを包囲するつもりのようだ。
「ジンにしては動きはいいが、所詮はただ数を揃えればいいと思ってるバカ共が!!
 組織戦というものを教えてやる!!」
(使わせてもらうぞ、メリオル……)
 カナードは心の中で、共にこの戦術を考えたユーラシアの士官の名前を呼ぶ。
 そして左腕の重突撃機銃、右肩の120mm対艦バルカン砲と2連装350mmガンランチャー、頭部のイーゲルシュテルン、これらの火器が一斉に火を噴きジンに襲い掛かる。
「消えろ!消えろ!!消えろ!!消えろぉおおおおっ!!!!!」
 ストライクの怒涛の攻撃がジンの腕を、肩を、足を、スラスターを奪っていく。
 砲撃の雨を避けつつ、ストライクに攻撃を加えるジンもいるがストライクに致命傷を与える事はできない。
「そんな攻撃でストライクのフェイズシフトを破れるものか!!!」
 だがストライクの猛攻はここまでだった。カナードはストライクのセンサーが高熱源反応をキャッチすると、素早く機体を操り回避する。
 間を置かずして、ストライクのいた空間を超高出力のビームがなぎ払う。
「来たな!!」
 太陽を背にしたイージスが以前より格段に速いスピードでスムーズにMS形態に変形し、ストライクに襲い掛かる。
「彼女を返せ!!」
 イージスに乗ったアスランが攻撃を加えつつ、回線を開きカナードに呼びかける。
「珍しいな。お前の方から話してくるとはな!!!」
 カウンターの攻撃を加えつつカナードが答える。
「今日こそ教えてもらうぞ!あの男、キラ・ヤマトの居場所を!!」
「そんな事より、彼女を……ラクスを返せ!!」
「ラクス?………ああ、あのピンクの女か」
「知っているんだな!やはりアークエンジェルに……」
 ラクスの生存を確認したアスランはジン部隊に通信を出す。
「ストライクは俺が抑える。残存部隊はアークエンジェルへ向かえ」
 通信を受けたジン部隊はストライクの攻撃で機動力を落とした機体でアークエンジェルへ向かっていく。
「そんなに上手くいくかな?」
「何っ!……あっアレは!!」
 ジン部隊に、後方で体勢を立て直したメビウス部隊が襲い掛かる。カナードによって傷つけらたジン部隊はメビウスの猛攻を避ける事が出来ずに、一機、また一機と墜されていく。
「馬鹿な!MAごとき……」
「余所見をしてると暇はないぞ!!」
 ストライクのサーベルがイージスに襲い掛かる。
「グゥ!!」
 アスランは懸命にシールドで防ぐがストライクは、エールの推力を使いジリジリと押していく。
「また俺の勝ちだな。教えてもらうぞキラ・ヤマトの居所を!!」
「そうかな!!」
 イージスの蹴りが飛ぶ、カナードはスラスターに逆噴射をかけそれを回避するがビームサーベルの発生器が切断される。
「グッ!!貴様!!」
 カナードとアスランは互いにライフルを、サーベルを、バルカンをぶつけ合う。
 両者の力は均衡し、しだいにその速度を増して行く。そして二人は遥かなる境地へと導かれようとしていた。

 飛び出していったストライクを失うわけには行かない為に、先遣艦隊の支援に向かったアークエンジェル。
 ブリッチではカガリ達の処分は取りあえず保留にされ、各々の仕事を仲間の為にいつも以上に励んでいた。
「護衛艦バーナード、及びロー撃沈を確認」
「サイ機のシグナルを確認……良かった生きてた」
 カガリとミリアリアが顔を見合わせる。
「ストライクはどうなっている」
「ストライクはジンを一機撃墜、その後……敵MS部隊に突っ込んでいきます」
「何やってるんだ!アイツは!!フラガ大尉にゼロを何時でも出撃できるように伝えろ」
 ナタルが叫んだその時にブリッチの出入り口が開き、フレイとラクスが入って来る。ブリッチの誰もが唖然とする中でナタルが口を開く。
「お前達、何をしている」
「この娘がアイツ等を止めるから、アイツ等に話をさせて!」
「その娘は、最高評議会議長の娘でも民間人だぞ!」
「どうだっていいからてよ!してくれなきゃオーブの民間人を不当に徴用したって訴えてやるんだから」
「なっ……」
「ちょっと!!」
 言葉なく固まるナタルにマリューにラクスも懇願する。
「お願いです。彼等の目的は、わたくしのハズです。絶対に私が手出しをさせません」
 凛と言い放つラクスに誰も言い返せないでいるとブリッチに格納庫のゼロからムウが通信を入れる。
「どうやら、そんなの必要ないみたいだぜ」
「え?」
 一同がメインスクリーンを見るとストライクが怒涛の連射でジンを撃っていく。
 一方ジンはストライクに重突撃機銃を撃つがPS装甲の前では何の役にも立たない。
「凄い!」
 一方的な展開にフレイが声を上げる。この為に、カナードがランチャーの肩アーマーをストライクに装備させたのかとナタルは思った。
 しかし、その連射も太い火線が横切ると終わりを迎える。赤い機体、イージスが来るとストライクは、イージスに掛りっきりになり、その隙にジンがアークエンジェルに迫る。ストライクの攻撃によって機体にダメージを負ったものの致命傷とは言いがたく、ジンはまだまだ戦闘続行は可能だった。
「クッ!フラガ大尉!」
 ゼロの出撃を要請するナタルだったがムウは調子良く答えた。
「まっ見てろよ。ココからが肝なんだ」
「は?それはどういう……」
 ナタルが言いかけたその時に、向かってきていたジンの一機がMA部隊の集中砲火を浴びて沈んだ。残った他の機体もMAに追い立てられ、包囲され傷ついていく。
「絶対的防御力を持つ者を、敵の中心に突入させ引き付けつつ機動力を奪い、そして傷ついた敵機を後方に控えていたMA部隊が駆逐する……恐ろしいまでに計算された戦法だ」
 ナタルの驚愕した表情で呆然と言うと、普段の戦場とは逆に展開されるMSとMAの追いかけっこに釘付けになった。
「いつ見ても恐ろしい戦法だよ」
 月面で見たときの事を思い出しながらムウが呟くがブリッチいる誰もが、MAに追い回されるMSという最高の見ものに熱狂している為に誰も気に留めない。
「よし、そこだやれ!!」
「アッ!おしい!!」
 口々に野次を飛ばすクルーの中でカガリが口を開く
「でもズルくないか?殆ど動けないような敵を狙うなんて……」
「何言ってんのよ。サイ達が無事に帰ってくるんだったらズルイだとか言ってられないわよ」
「そ、そうだな」
 フレイの剣幕に負けたカガリは同意すると、その隣のラクスの顔を見る。ラクスの顔からは血の気が完全に消え失せ、ワナワナと震えながら、目を見開きメインモニターを見詰めている。
 無理もないかとカガリは思った。
 同胞が嬲り殺し遭ってるのを見て気分が良い人間なんているはずはない。そう思ったカガリは部屋に戻そうとラクスに近づく。
「ほら、部屋に帰ろう」
「……いけません」
「へ?」
 カガリはラクスの肩に掛けようとしていた手を引っ込める。ラクスは鬼気迫る顔でカガリにすがる。
「早くアレを止めて下さい」
 その言葉にカガリの顔が曇る
「無理だよ……辛いだろうけど今は部屋に帰ろう」
「違うのです。早くあの二人を止めて下さい!!」
 カガリは、ようやくラクスが見ているモノがMSの虐殺ではなく、凄まじいスピードでビームサーベルを交えているストライクとイージスだという事に気がついた。
「駄目です!アスラン!!それ以上、その力を使ってはいけません!!」

(何だ……これは………)
 イージスのコクピットでアスランが呟く。
 ストライクの動きが、攻撃がアスランにはスローモーションの様に見える。もちろん自分が動かすイージスの動きも同様だ。
 しかし、実際には操縦桿をフルスロットルまで押し上げ、ジンやシグーでは追いつく事すら不可能な速度で戦闘をしているのだ。
 互いにライフルの向きから発射角を読み、回避している為、当てられないと悟った両者の戦いはビームサーベルを主体とした格闘戦に移り、フェイントを織り交ぜての攻防を繰り広げている。
「この!」
 ストライクのフェイントを読み、左腕のビームサーベルを振るう、しかしシールドで防がれ、カウンターの一撃が飛ぶ。
AMBACを使い、ギリギリで回避するイージス、そしてすぐさま反撃に転じるがストライクのシールドで防がれる。
「チィ!!一体どうなっているんだ」
 四肢に装備されたビームサーベルを展開させつつ、アスランが呻く。アスランにとって、こんな感覚は生まれて初めてだ。
 この感覚の正体が何なのかアスランには皆目見当がつかない……しかし
「今はコイツを抑える事に専念しなければ……ラクスを救う為に!!ぬおおおおおおおお!!」
 アスランは四肢のビームサーベルを起動させ、ストライクに斬り掛った。

「やるな!だがこのストライクガンダムとは反応速度が違う!!」
 イージスのビームサーベルを全て受け流しつつ、カナードは驚いていた。
 まさか今の自分と同程度の反応速度を見せるパイロットがいるなどとは夢にも思っていなかったからだ。
 最初の内はカナードが優位に立っていたのだが、攻防を繰り返す内にアスランの反応速度が速まっていき、今では、気がつくと激闘の中で精神は極限まで高められて、かつて特務部隊Xでザフトのエースとの戦いの中で、何度も経験したあの感覚の中に居るカナードと互角の戦いを繰り広げているのだ。
 OSを調整した分、機体の反応速度はストライクが上な為、戦いはカナードのほうが僅かに押している。しかし、武装の面では両腕、両足にビームサーベルを装備しているイージスに分がある為に攻めきれず、なかなか決着がつかずにいた。
「まあいい、戦局はほぼ決してるんだ。今は楽しませてもらう!!」
 カナードは全力でぶつかる事が出来る相手との戦闘に酔いしれた。そこに大きな策略があることに気づかずに……

「さあ、道は開かれた。ラウ・ル・クルーゼ出るぞ」
 クルーゼは、仮面に隠されていない口元を歪ませると愛機のシグーを駆り出撃する。
 ストライクはイージスの、MA部隊はジンの相手をしている為にアークエンジェルを守る者は殆どいない。一名を除いて……
「やはり来たかムウ・ラ・フラガ!!」
 クルーゼの脳髄に稲妻が閃き、宿敵の存在を彼に知覚させる。
「お見通しなんだよ!貴様の小細工なんか!!」
「フン、止められるものかな?このシグーを!!」
「ほざけぇ!!」
 ゼロのガンバレルが展開し、シグーを囲し砲撃するが、その尽くをシグーは回避する。
「シグーの運動性の前では、そんな子供騙しが通じると思っていたのか……そこだ!!」
 シグーの重突撃機銃をムウは持ち前の勘で回避するが、これもクルーゼの計算の内だった。回避位置を予測したクルーゼは左腕のバルカン砲でゼロを射抜く。
「グウ!しまった……」
「本来なら止めを刺す所だが今はそんな事をしてる場合ではない。
 貴様はそこで見物していろ」
 シグーは真っ直ぐにアークエンジェルに向かう。最大加速しながらアークエンジェルの対空砲火をかい繰り、重突撃機銃とバルカンでそれらを確実に無力化していく。
「これで終わりだ……」
 アークエンジェルの艦橋にシグーが重突撃機銃を向ける。
 しかし引き金を引く直前に再びクルーゼの脳髄に稲妻が走り、艦橋にいるラクスの存在を知覚させる。
「なぜ……なぜ貴女がそこに居るラクス・クライン!!!」
 動きの止まったシグーにヘルダートとイーゲルシュテルンが降り注ぐ、慌ててシグーが回避したその時に全周波数を通じて、宙域にいる全ての人々に平和の歌姫の声が響き渡る。
「わたくしはプラント最高評議会議長のシーゲル・クラインの娘、ラクス・クラインです。
 展開しているザフトに告げます。
 現在、わたくしはアークエンジェルによって保護を受けている身です。
 アークエンジェルを攻撃するという事は、わたくし討つという事です。直ちに兵を引きなさい。」