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Canard-meet-kagari_第36話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 21:36:20

第36話

「まったく冗談ではないよ」
 クルーゼがぼやきながら半壊したイージスを回収する。
 本来ならばラクスとの人質交換が完了の直後、アークエンジェルに奇襲を仕掛けるつもりだったのだが、ストライクの一撃を受けたイージスは左の手足を失い、仕方なくクルーゼが救助したのである。
「ありがとうございます。クルーゼ様」
「いえ、気になさらないで下さい。
 アスラン、君もご苦労だったな」
「隊長、目先の感情に囚われてストライクと足つきを討つ機会を逃してしまい」
「いい経験になっただろう。
 君も疲れただろうからラクス嬢のことは私に任せて、先に部屋に帰って休みたまえ。
 それと今回の件に関するペナルティは覚悟しておけよ」
「はっ!分かりました」
 アスランが敬礼し立ち去るとラクスがクルーゼに向き直り、小声で話す。
「ところでクルーゼ様、通信をお借りしたいのですが」
「お休みになられた方がよろしいのでは?」
「皆さんにわたくしが元気なことを速く知らせたいのです。ああその前に……」
「はい?」
「シャワーをお借りできますか?」
「御意、それと軽い食事も用意しましょう」
「助かります」


 一方アークエンジェルではラクスを逃がした六人に処分が下されようとしていた。
「被告達は、自分の行動が艦の安全をどれほど脅かしたか、全く理解していません」
 検事の発言に弁護人が異議を申し立てる。
「今の発言は、類推に過ぎません。議事録からの削除を求めます」
「削除を許可します」
 裁判長が短く告げる。
「えーと…そもそも、民間人を人質に取るというのは、コルシカ条約4条に抵触すると思いますが」
「今回の行動は、同条特例項目C、戦時下における措置に相当します」
 検事の言葉に弁護人のムウが慌ててその項について探す。
「え?特例項目C?知らねぇよそんなの……
 あーしかし、人質を解放したからこそ、捕虜となったカガリ・シモンズ嬢を救出でき、かつ当面の脅威だったイージスをカナード・パルスが撃破し、我々は窮地を脱したということで……」
「それは結果論に過ぎません」
 ハマリすぎなバジルール検事がピシャリと言い放った。
「なんでフラガ大尉が弁護人なんだよ」
「知らないわよ」
「なあ。これからオレ達、どうなるんだと思う?」
「……」
 サイが隣に座るカナードに心配そうに囁くが返事は返ってこない。
 カナードは瞳を閉じ、腕を組み考えを巡らしているようだった。

 ヒソヒソと話し合う五人を裁判長――マリューが注意する。
「被告人は静粛に。
 被告人たちの行動は、軍法第3条B項に違反、第10条F項に違反、第13条3項に抵触するものであり、
 当法廷は同人を銃殺刑とします」
 その言葉に被告人席の全員が凍りつく。
「ちょ、まって下さい。カナードの話を聞いてくれませんか」
 サイの言葉に士官三人が顔を見合す。
 今まで何も言ってこなかっただけに何を言ってくるか恐ろしいが無下には却下できない。
「……解りました。カナード・パルス意義申し立てはありますか」
「……」
 マリューの問いかけの前にカナードは黙したまま答えない。
「ちょっと!何とか言ったらどうなのよ!このままだと銃殺なのよ!!」
 フレイがカナードの襟首を掴む。
「クー」
 寝ている。
 銃殺を言い渡されたこの状況で
「起きんかバカモノ!!」
 額に青筋を立てたナタルの怒声が艦長室に響き渡った。
「んあ?裁判ごっこは終わったのか?」
 欠伸をしながら腕を伸ばすカナード。
「この法廷は略式とはいえ軍事法廷だぞ!それを裁判ごっこなどと……」
「裁判ごっこだろ。俺もコイツラも軍籍はない、軍事法廷で裁く権限を持っている訳がないだろ?」
「っぐ」
 カナードはふてぶてしく笑うとマリューに向き合う。
「それでも銃殺にしたければ勝手にしろ。ただし俺なしで生き残れるならの話だがな」
 銃殺だと脅かして最近の勝手な行動にお灸を据えるつもりだったマリューは大きく溜め息を付く。
「カナード・パルス、サイ・アーガイル、フレイ・アルスター、トール・ケーニヒ、ミリアリア・ハウ、カズィ・バスカークを無罪とし、彼等には今後、熟慮した行動を求めるものとし、これにて本法廷を閉廷します……」


 シャワーを浴び身を清め、軽い食事を取ったラクスは、クルーゼの部屋の通信回線を使い世界中の彼女の同志たちに自らの無事を連絡した。
「ご無事で何よりですラクス様」
黒髪の少女がまず無事を祝うとサブウインドウが開き一組の男女の姿が映し出される。
「まったくヒヤヒヤさせないで欲しいよ。
 この所ろくに眠れやしなかったじゃないか」
「それはコーヒーの飲みすぎでショ?」
「はっは、まいったな」
 男は自分に絡み付いていた女のツッコミを受けて苦笑する。
 そこでもう一つサブウインドウが開き、捻くれ者が登場する。
「なんだ無事だったのか。今度の任務は棺桶の護衛だと聞いていたが……相変わらず悪運がお強い」
 男の言葉にラクスは気にした様子はない。彼女の器の大きさと慈悲の心がなせる業だ。
「ええ、お陰さまで。あと半日でお会い出来るというにわざわざ言いに来るなんて、よっぽどわたくしの事が心配でしたんでしょうね。ご迷惑をおかけしました」
「なっ!!」
「はっは。何だそういうこと?素直じゃないね」
「ち、違う!!何を言い出すんだこのクソアマ!!
 今度またふざけた事ぬかすとそのピンクの頭カチ割って、お花畑なノウミソをストローでチューチューするぞ!!」
「そんな事をしたら、あの二人が黙っちゃいないぞ」
 コーヒーを片手に男が言うとまた一つサブウインドウが開いた。
「繋がった!!」
 蒼い髪の少年――ヴェイアがウインドウの中で喜びの声をあげる。
「まあ!!ヴェイアさん。地球への降下準備で忙しいと思ってましたが」
「そんなのは、もうとっくに済んでるよ」
 正直に言えば、まだ機体のOS調整が残っているのだが、兎にも角にもラクスの無事を確認したかったのだ。

「ほら、君もラクスに何か言いなよ。僕より心配してただろ?」
 ヴェイアは手を伸ばし、画面の外に出ていたもう一人の少年を画面の前に引っ張り出す。
「や、やあラクス、元気そうだね」
「はい。お守りが効きました。それにアスランも一生懸命でしたし」
「そう……」
 少年は力なく頷くとその後に意を決して言う
「ラクス、ゴメン。僕が……その……僕がストライクを強奪に成功していれば、連合の戦艦に囚われる事もなかったのに」
「気になさらないで。あなたがストライクを奪わなかったから、あの艦に乗ってる多くの罪無き人々をあの二人が守る事ができたのですから」
「あの二人?それはひょっとして僕の……」
「カナード様もカガリ様もわたくしに親切にしてくれた良い人たちでした。
 今度は一緒にお茶が飲めるといいですわね」
「え……うん、そうだね。きっといつかそんな日が来るよ」
 そう、これはこの少年の心からの願いだった。
 今まで自分を育ててくれた叔母夫婦を失い、クルーゼに引き取られ、アノ子やラクス、この仲間と出会いはしたものの、彼のどうしようもない孤独感は埋められなかった。
 だが自分と血の繋がりのある人間ならば自分と近しい存在ならば、この苦しみを解き放ってくれるかもしれない
 彼がそう思ったのは、クルーゼの側にアノ子が居たからかもしれない。
 アノ子は自分の存在に苦しむクルーゼに生きる目標を与えていた――だから自分もカナード・パルスやカガリ・ユラ・アスハと出会えれば、この苦しみを埋められるかもしれないと思ったのだ。
「皆さんには迷惑を掛けて申し訳ありません。計画は予定道理に進めて下さい」
ラクスが全員に言うとまたも不満の声が上がる。
「ハァ?ストライクを潰すんじゃないのかよ。
 その為に来たと思っていたのだが」
「貴方の仕事はラクス様の護衛です。今からなら追悼式典に間に合いますから」
「チィ。ストライク退治はクルーゼ隊のお坊ちゃん任せか」
 黒髪の少女の言葉に男は小さく舌打ちすると少女はラクスに向き直る。
「ラクス様、他になければこれでお開きにしたいのですけど」
「ええ。面倒をかけて申し訳ありませんでした。
 ああ、申し訳ありませんが軌道上の回線はそのままでお願いします」
「分かりました。では皆さん本日の会合は以上です」
「やれやれ。少年達、作戦の成功を美味いコーヒーを用意して待ってるよ」
「じゃあランデブー後……ああヴェイア、もう一人の方に貸した20000アードは必ず返せよ」
「え!!」
 一体何にそんな大金を使ったのか、ヴェイアは頭をフル回転させるが特に心当たりはない。
 何に使ったのか聞こうと思った時には男の姿はすでになかった。
(酒代だけじゃないよな……となると博打か女。
 博打だったらまだいいけど、女は簡便してくれよ)
 チラリとラクスを見ながらヴェイアは肩を落とし溜め息を付くとラクスが声をかける。
「ヴェイアさん」
 一瞬ドキリとするヴェイア
「な、なんだいラクス」
「すまないが少し席を外してくれるかな。「彼」に大事な話があるんだ」
「分かりました」
 ヴェイアが画面から消えると少年がラクスとクルーゼに訊ねる。
「話ってなんだいラクス」
「お話というのはアスランの事です」
「アスランの!?いったい何があったんだい?」
 アスランの身に何かあっただろうかと案じる少年にクルーゼが言いにくそうに――本人はショックを受ける少年の顔が早く見たいのだが――言う。
「実はな、アスランもSEEDを持つ者らしいのだ。
 それもかなり高いレベルで発現した……もしかしたら完全レベルの発現者かもしれない」
「何だって!!本当なんですかラウさん!!」
 少年はクルーゼに問い詰める
「確証はない。しかしアスランは完成体に最も近いとされるカナード・パルスを一度とはいえ凌駕し退けた。
 その事をよく考えてみたまえ」
「じゃあアスランも僕と同じようにメンデルで……」
「いや違う」
「そんなのありえないじゃないですか。SEEDは母体の影響を受けやすく人口子宮なしでは そういう風にコーディネイトしても発現しないって」
 そうだから不安定なSEEDを完全に発現させるために一人の男は狂気の実験を繰り返したのだ。
「言い方が悪かったようだ。アスランは鋼鉄の子宮や神を気取った愚か者達の手も借りてない いわばナチュラルのSEEDなのだ」
 少年は愕然とする顔がクルーゼにはたまらなく愉快だった。
(面白くないだろうなアスランは自分が数多の兄弟の犠牲の果てに、その業を背負い手に入れた力を 何の代償もなく持っていたというのだ。
 いやそれだけではない、アスランは君が密かに好意を寄せているラクス・クラインまでも)
「それで僕にどうしろと」
 少年の質問にクルーゼが答える。
「君には覚悟していて欲しいだけだよ。
 いつか君の友人を討たねばならぬ日が」
「クルーゼさん!!」
 ラクスの強い声がクルーゼの言葉を遮る。
「わたくしがキラを呼んだのは、そんな話をする為ではありません!!」
「ではどうしろと?最終計画が発動すればアスランと戦う事になるのは自明の理、その時SEEDを持つアスランに対抗できるのはスーパーコーディネイターの「彼」しかいない」
「最終計画はあくまでも破滅に向かう世界を終わらせる為の最後の切り札です。
 それまでに、理想的な形でこの戦いを終わらせコーディネイターとナチュラルの融和を進める……
 それが今のわたくし達がなすべき事です」
 そうラクスはクルーゼに言うと画面の少年に向き直る
「だから迷わずに計画を完遂してください。
 わたくしは貴方とアスランが戦う姿なんて見たくありません」
「……分かったよラクス。僕は授かった力の全てを使って必ずみんなが幸せになれる平和な世界を切り開いてみせる」
 少年のその言葉にクルーゼが待ってたとばかりに発破ををかける。
「それでこそ人の夢を背負い生まれてきたスーパーコーディネイターだ。
 君ならば人の郷を断ち切る事が出来ると私は信じているよ」
「ハイ!」
 気持ちよい返事をする少年をクルーゼは内心せせら笑っていた。
(フン、人類の夢と叫びながら命をオモチャにした男の子供が平和のためと言いながら、その手に武器を持ち多くの命を散らせるか……まったく血は争えんな)
「話というのは以上です……ああ、それと」
 ラクスが申し訳なさそうに言葉を区切る。
「なんだい?」
「ごめんなさい。貴方にもらったお守りなんですが、アークエンジェルに忘れてしまったんです。
 なんてお詫びをしてよいのか」
「い、いいんだよ。気にしないで」
「でも大切な物だったんでしょ?」
 自分にソレを渡すときに過去に少年の命を助けたモノだという言葉を思い出しながらラクスが問いかけると、少年は首を振って答える。
「君が無事ならそれでいいんだよ」
 もしもラクスがそのお守りについての詳しい経緯を知っていれば忘れる事など絶対になかったのだが、今となっては仕方がないことである。
「そうですか。どうかご無事で」
「わかった。ヴェイアにも伝えておくよ」
(これでいいんだ。これで……)
 少年は大切な思い出の品を失ったことを転機だと思った。
 アレは安穏な平和を貪り、自分自身や世界の事に目を向けなかった過去の自分の日常の象徴それをいつまでも女々しく持っていたからストライクとイージスという計画に必要な機体を取りこぼし、ラクスを危険な目に遭わせてしまった、だからこれは無力だった過去の自分との決別なのだ。
(そう今の僕は人の夢から生まれたスーパーコーディネイターなんだ)


「ん?なんだこりゃ」
 ラクスの使っていた部屋の片付けをしていたカガリは、シーツを直していた手を止め、枕の下にあったモノを手に取る。
「鳥のハネ?」
 いや違う、片面が緑でもう片方が黄色で塗られているプレートだ。
「わすれものかな?まっ今度会ったときに返しておくか」
 気楽にポケットに入れたソレには小さく「AtoK」という文字が刻まれていた。
 部屋を出たカガリは士官室からゾロゾロと出てきたカナード達と鉢合う。
「よう!どうだった?」
「何にもお咎めなし。ただ合流するまでトイレ掃除をしろってさ」
「そうか。じゃあ私も手伝うぞ」
「ホント?ありがとう。たすかるわ」
「当然だろ。私を助ける為にみんなががんばってくれたんだからな」
 和気藹々とする少年少女の中でカナードはただ一人つまらなそうにしていた。


「ウ〜ム」
「何か問題があったのですか?」
 アスラン身体データを見ながら軍医が唸る。
「いや、問題はないが……君の回復力は異常だね。
 流石はパトリック・ザラの息子だ」
「どういう事ですか?」
「あら?お父上から聞いてないの?」
「父はあまり昔のことはしゃべりませんから」
「う〜ん。医者の間では有名な話なんだけどな
 二十年くらい前にザラ国防委員長が過激派のブルーコスモスの罠にかかって全身に数十発の弾丸を受け、一度は完全に心停止したにもかかわらず見事に死の淵から生還したって話なんだけどね」
「そんな事が……」
額に汗を滲ませながら答えるアスラン
「まあ僕も又聞きしただけだからホントの話か知らないけどね。
 君は知らないかな?例えば銃弾の後とか、ほら一緒に風呂に入った時とかさ」
「いえ」
 アスランが物心付く前は一緒に暮らしていたから風呂にも入る事はあっただろうが、アスランが五歳になった頃にテロに巻き込まれる事を恐れたパトリックによってコペルニクスに逃がされ、一緒に暮らすようになったのはアスランが十三歳になってからだから、もう一緒に風呂に入る年齢ではない。
(もっとも俺が寝た後に母さんとはよく一緒に入ってたみたいだが……)
 夜中にトイレに起きたアスランは、偶然にもその現場を目撃してしまい、
 思春期だったアスランの軽いトラウマとなってしまったのだ。
(あの数日後だったんだよなラクスと初めて会ったのは……)
 いきなり子供の話をされた事を思い出してるアスランに背後から球体が直撃する。
「ハロー、ヒサシブリヤナー」
「まあ、ハロいけません。大丈夫でしたかアスラン?」
「ラ、ラクス!?」
 アスランの想像から出てきたかのようなラクスの登場にドギマギするアスランを余所に、ラクスは検査結果を軍医に渡す。
「よし何所も異常なし。
 本国に帰ったら、もう少し詳しい検査をすると思いますからそのつもりで。
 ああ、もちろんその時は女性の医師ですから、安心して下さい」
「そうですか」
「ハロ、ハロ、アスラーン」
 耳をパタパタさせて跳ね回るハロを見てラクスが微笑む
「ハロがはしゃいでいますわ。久しぶりに貴方に会えて嬉しいみたい」
「ハロには、そんな感情のようなものはありませんよ」
「そうなんですか。では今度はそんなハロをお願いします」
「いっ!?」
 いくら掛かるか考えながら額に汗を流して驚くアスラン。
 その様子を見ていた軍医は立ちあがる。
「さてコーヒーでも淹れてくるか。君達も飲むだろ?」
「い、いえ。お気になさらずに」
「遠慮するなよ。僕のコーヒーは美味いんだ。
 もっともあの『砂漠の虎』には負けるがね」
 若い二人に気を利かせた軍医が立ち去ると気まずい雰囲気が二人を包む
「ラ、ラクス」
「はい?」
 思い切って話しかけたアスランはラクスの顔を見ると頭が真っ白になり何を言っていいか分からなくなる。
「あっ…いえぇ…あ…その、何所も怪我はしてませんか?ほら、
 イージスが攻撃された時にどこか打ったとか……それに人質にされたりと、いろいろありましたから…」
「私は元気ですわ。あちらの艦でも、みなさんがよくしてくれましたし」
「そうですか」
 会話がどうしても続かない。昔からアスランは口下手なのだ。
 しかもこういう場合に婚約者どうしで何を話したらよいのかてんで分からない。

「アスラン」
「は、はい」
「どうしても、あの艦と戦わなければいけませんの?」
「それは!!……はい。連合のMS開発は絶対に阻止しなければいけません。
 ザフトの為にも散っていった仲間の為にも」
「その為にあの艦に乗るオーブの民間人の命は構わないと?
 彼等は乗りたくて、あの艦に乗ったのではないのですよ」
「それは……」
 答えることなど出来ないアークエンジェルにヘリオポリスの難民が乗り込む事になった原因はアスランにあるのだ。乗ってる本人達は乗りたくて乗ったわけじゃない、自分のせいだ。
 それなのに自分は国の為、仲間の為に殺そうとした。
 それはあまりに身勝手な行為だ。
 ショックを受けるアスランの頬にラクスの手が優しく振れるが、アスランは、その手を振り払った。
「辛そうなお顔ばかりですのね。この頃の貴方は……」
「ニコニコ笑って戦争は出来ませんよ」
「何と戦わねばならないのか……戦争は難しいですわね」
 気まずい沈黙が二人を包む。
 そしてそれを破ったのはアスランだった。
「あの……ラクス」
「はい?」
 アスランは勇気を、戦場でMSに乗って戦うのとはまったく違う勇気を振り絞る。
 他の誰にどう思われても構わないが、彼女にだけは知って欲しかった。
 自分が命令道理に敵を倒すだけの殺人人形ではないと。
「何と戦わなければいけないのか俺にはわかりません。
 しかし貴女を傷つける相手となら俺は迷わずに戦います。
 今までも、そしてこれからもです」
「……そうですか」
 ラクスがどこか悲しみが混じった声で微笑みながら答える。
 そう決まっていたのだ。
 この瞬間から、アスランの、ラクスの、そして世界の運命は……