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Canard-meet-kagari_第40話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 21:37:35

第40話 デュエル

「ふう、間にあったか」
ナタルは安堵の溜め息を付く、しかし気を取り直し、指示を出す。
「シモンズ機に帰艦するように伝えろ。アークエンジェルは回頭し、ナスカ級に応戦しつつ後退」
「了解!」
ミリアリアがカガリ機に通信を開くと
「なっ!来てくれただろ!!これで大丈夫さ。あの着膨れガンダムも前みたいにケチョンケチョンにしてくれるさ」
と興奮の冷めない様子でまくし立てた。
「そうね。副長から帰還命令が出てるから早く戻ってきなさいよ」
「ああ。分かった」
カガリとの通信が終わるとミリアリアは、ほっと溜め息を付く。緊張の糸が一気にほぐれたようだった。
正直カガリのMAが撃墜されかけた時はどうなるかと思ったが、これで一安心だ。
そのときミリアリアはストライクのステ−タスボードの中の一つが点滅しているのに気づいた。
最初にオペレーターの仕事をやる時にナタルに注意して見ておくようにといわれていた場所だ。
これまでカナードがバッテリー配分を完璧に行いながら戦っていたので、
心配ないと思い最近はあまり注意してみなくなっていたが、それでもちょくちょく気にしていたので、
ミリアリアには、すぐにこれが何を表しているのかが分かった。
「大変です。ストライクのバッテリーがありません!!」
「何っ!!」
一難さってまた一難、アークエンジェルは再び窮地に追い込まれようとしていた。
「あとどれ位もつの?」
「現在残量28いや23%です!!」
マリューの質問にミリアリアが答えると、サイが
「敵ナスカ級が照準」と短く報告した。
「か、回」
マリューが言い終わらぬ内に、すぐさま回避行動に移るノイマン、さらにそれをトールが的確に各エンジンバランスを取りサポートする。
結果、アークエンジェルは間一髪の所でなんとか避ける事に成功したのだった。
「……艦長、提案があります」
この一連の騒ぎの中で片時も目を放さずにストライクとデュエルの戦いを見続けいてナタルがマリューにゆっくりと進言する。
(正直言って賭けだが、今はこれしか方法がない)
彼女の今まで見ていた画面の中のストライクの装甲からは色が消え失せていた。

一つ目の誤算は、バッテリー消費の早さだった。
元々、バスターとの戦いでかなりのバッテリーを消耗させた後、窮地のアークエンジェルに駆けつけるために
スラスターを盛大に噴かしたので、ここに着いた時にはバッテリー残量は四割を切っていた。
まあ、それでも何とかなると高をくくっていカナードだったのだが、二つ目の誤算があったそれは……
「ちょこまか動くな!!この着膨れガンダム!!」
カナードは最初、鈍重そうなアサルトシュラウドを見て、武装と引き換えに機動性を削ったのかと思ったが、
そうではなかったのだ。改造されたデュエルは、各部に増設されたスラスターを使い、エールストライクや
イージスと同等の機動性で、ストライクの攻撃は尽く回避していったのだった。
「いやああああああ」
イザークの気合と共にデュエルがビームサーベルを振るう。
ストライクは回避すると、すぐに反撃に転じ、ビームライフルを撃つが、イザークはその攻撃を読んでいた。
リニアカノンの砲等がストライクを追って旋回し、ストライクを追撃する。
発射の直前にリニアガンを受けたストライクは仰け反り、目標を大きく外してまう。
「どうした!ストライク!?これで終わりじゃないだろう!!!」
GATシリーズ専用の通信回線を使い、イザークが挑発する。
(コイツ!!後で絶対後悔させてやる……それにしても慣れてるな)
これが三つ目の誤算だった。イザークは今まで戦ったガンダムのパイロットの中で誰より
もデュエルを使いこなしていた。
もちろん反応速度などはアスランの方が上だった。
しかしアスランの操縦についていけないイージスとは違い、
デュエルはイザークの手足様に彼の操縦に従い動いていた。
それらの誤算が合わさった結果、大苦戦となったのだ。
とうとうカナードは、バッテリー消費を抑えるためにPS装甲の電源を切った。
しかし、それはストライクがバッテリー切れ間近だということがイザークに知らせる行為だった。
「まずいな……」
バッテリーの残りはあと僅か、アグニは撃てて一発だろうとカナードが分析していると、
アークエンジェルから通信が入る。

「カナード!聞こえる?!ソードストライカーを射出するから、換装する為の時間を稼いで!!」
「そんな事言ったってな!!」
ストライクの脇をビームが通り過ぎる。それに続き今度はレールガンの追撃、はっきり言って隙がない。
今、デュエルの前でそんな事をすれば直ぐに自分とストライクは宇宙の塵になってしまうだろう。
「大丈夫、副長が作戦を考えてくれたわ。今そっちに送るから……」
「……なるほど、悪くない」
送られてきた指示に目を通しながらカナードが肯く。これなら換装の時間を稼げ、
上手くすれば換装をする前にデュエルを倒す事が出来るかもしれなかった。
「位置計算とかはコッチがやるから、タイミングに気をつけて」
「わかった。ムウのように上手く出来るか判らんがやってみる」
アークエンジェルはカタパルトを開き、ソードストライカーを射出する準備を整えている。
カナードは機体を操りデュエルの攻撃を避けつつ、アークエンジェルへ向かう。
さらにアークエンジェルから送られてくるデータを見ながら、片手でキーボードを叩き、
最良のタイミングをはじき出すと、ランチャーストライカーを外し、発射されるソードストライカーとドッキング体勢に入る。
「この俺の目の前で換装だと!?舐めるな!!」
それを黙って見逃すイザークではなかった。
憤怒の形相でビームライフルを構えるイザークだったが、しかし……
「3、2、1……今だ!!」
「何っ!?」
切り離されたランチャーストライカーから時間差でアグニが発射された。
予気せぬ攻撃にイザークは回避行動に移ることも出来なかった。
「うっ」
身構えるデュエルを余所に、発射されたアグニの火球はデュエルの真横の空間をなぎ払い、空しく進んでいった。
「ック!!ハズしたか!!どうもこういうのは苦手だ」
しかし換装するためのスキを作り出すことは出来た。
アグニの余波を受けたデュエルは弾き飛ばされ、大きくバランスを崩している。今がチャンスだ。
アークエンジェルから射出されたソードストライカーに機体を合わせるカナード
「させるかよ!!」
なんとか体勢を立て直したデュエルが、ドッキング体勢に入り無防備なストライクにグレネード弾を撃ち込む、
爆炎の中に消えるストライク、そして爆炎が晴れるとそこには無数の水色の残骸が浮かぶのみだった。

「あっけなかったな……」
イザークが小さく呟く、やっと自分の仇敵を倒したというのにイザークの心には何の喜びも浮かんではこなかった。
あるのは――失望だった。
機体に慣れていないとはいえ自分が完膚なきまでに負けた相手
それがバッテリー切れ寸前とはいえ、こうもあっさりと自分に倒されるとは……
「"切り札"を使うまでも無かったか。やはり俺が張り合うに値するのはアスランだけということか……ん?」
イザークは目を凝らす、画面の中に浮かんでいるのはソードストライカーの破片ばかりで
ストライク本体の破片は何一つ無かった。
「ない!?ヤツは何所だ!??」
ピピピっと電子音が成りイザークは反射的に上を見上げる。
「上か!!」
着弾の直前に何とかソードストライカーのバックパック部分だけを装着し、天頂方向に回り込んだストライクがレーザー対艦刀を振り被りこちらに迫ってくる。
「くうっ!!」
間一髪、デュエルはシールドを構え、ストライクの斬撃を受け止める。
それに対しストライクは背中のスラスターを吹かし、強引に押し切ろうとする。
「アサルトシュラウドの出力を嘗めるな!!!」
デュエル全身に増設されたスラスターが火を吹き上げ、力で抑え込もうとしたストライクを逆に押し返していく。
そして、この瞬間こそイザークの"切り札"の出番だった。
待っていたぞ!!この時を!!」
アサルトシュラウドの左肩のミサイルポッドのハッチが開き、組み合った状態のストライクに目掛けて全弾発射される。
「何!?グアッ!!」
意表を突かれたカナードとストライクはミサイルの爆発に吹き飛ばされる。
一方、イザークとデュエルはそうではない。着弾の瞬間にシールドを構え、全身に増設されたスラスターを操り、
爆風をしのぎ、体勢の整っていないストライクに斬りかかる。

「ック」
AMBACを使いなんとかストライクにシールドを構えさせるカナ−ド、しかし……
「無駄だ!!」
イザークは、斬りかかるデュエルの右肩のレールガンを連射し、ストライクのシールドを砕いていく。
「これで終わりだ!!ストライク!!」
シールドを失い無防備なストライクに、デュエルのビームサーベルが振り下ろされる。
ストライクは手に持ったシュベルトゲーべルを構え、ビームサーベルを受けようとする。
「無駄なことを!!」
シュベルトゲーベルのレーザ刃の干渉を受け、若干切断力が弱まったが、
デュエルのサーベルはシュベルトゲーベルを両断した。
(勝った……!!)
止めの一撃を振り下ろそうとして踏み込もうとしたデュエル。
しかしイザークは本能的に、その一撃を躊躇し、デュエルをバックステップさせた。
「チィ!勘のよいヤツだ!!」
折れたシュべルトゲーベルの柄を構えながらカナードが呻く。
「カナード、予備のシールドを打ち出すわ」
「頼む!!」
通信に答えながら闘志に燃えるカナードの瞳は、バチバチと火花を上げるデュエルの首筋を凝視する。
シュベルトゲーベルが両断されたその瞬間、カナードは柄頭からビーム刃を出し、
踏み込んできたデュエルの首を狙っていたのだ。
「流石だ!そうでなくては……倒し甲斐が無い!!」
最強の敵と互いの持てる技量を駆使した死闘の中でイザークは今までにない高揚感を味わっていた。
相手との攻防の中で自分をより高次な存在へと高めていく……これこそが真の闘いの姿なのだとイザークは直感した。
「倒すだと!?やれるものならやってみろ!!」
射出されたシールドを受け取ると、カナードもまた笑みを浮かべながら、この決闘を楽しんだ。

ムウは考えていた。
どうすれば、この状況を打破できるのか?
(怒りで直線的な攻撃しかしてこないから、避けれるけど……このままだといつか死ぬな)
元々、MAとMSとでは機体性能が違いすぎるのだ。
クルーゼが以前に乗っていたジンハイマニューバーとでさえ良くて互角だったのだ、
それなのにクルーゼが新型のシグーに乗り換えられたのでは旧式のゼロでは勝負にならないのは当然だ。
(こんな事ならレナにMSの操縦習っておけば良かったな……いや無理か。俺にはMSの操縦は出来ない)
やる前から諦める、悪い癖だとは自分でも思っている。
人前では『不可能を可能にする男』なんて言っているが、実際は運と偉大すぎる父親から
受け継いだ僅かばかりの才能で生き延びてきたにすぎないのだ。
(我ながら、ちゃらんぽらんな生き方だよな……だが)
ここでは終われない。美味いモンを腹いっぱい食いたいし、上等な酒を浴びるほど飲みた
い、そして何より……
「いい女ひとり抱いてないのに、このまま終われるかよ」
生き残る事――ムウはそのことに全神経を集中させた。
(だがどうする?ガンバレルはあと一つ、しかも弾が残ってねえ)
この事はたぶんクルーゼにも勘付かれているだろう。
その証拠にシグーはガンバレルが後ろに回り込んでもあまり注意を向けているようではなかった。
「だったら逆手に取ってやる」
ムウが勝負に出た。

ガンバレルをシグーの背後に回りこませ、牽制――毎度おなじみの戦法だ。
クルーゼにとっては児戯にすぎない幼稚な攻めだ。シグーは背後のガンバレルに最低限の注意をしつつ、ゼロ本体を見据える。
(やはりな……見切りの良さが命取りだぜクルーゼ)
勝負は一瞬だった。
両者は同時に発砲し、シグーはリニアガンの弾丸を回避し、ゼロはリニアガンの砲塔にシグーのライフルを受け、全ての武器を失った状態だった。
「私の勝ちだな、ムウ」
「そいつは……どうかな?」
「何!?ッ!!」
ライフルを突きつけ、勝利宣言をしたクルーゼは脳髄に稲妻が閃くと反射的に機体を反らそうとするが、既に遅かった。シグーのコックピットが機体背面に大きな衝撃を受け震える。
「なんだと!?」
背後に回りこんだガンバレルがシグーの背後に激突したのだった。
スラスターユニットを根元からへし折り、機体のメインフレームにもダメージを及ぼすほどの強烈な一撃を受け、行動不能となるシグー
やはりムウは『不可能を可能にする男』だった。
追い詰められて、危機的状況にあっても、それを打破する奇策が湧いて出てくる。
これはナチュラルでありながら知力、体技、共にコーディネイターに勝っていた父とは違うムウ独自の才能だった。
「だが……勝つのはやはりこの私だ!!」
「何!?どういうことだ!!」
「フフフ……」
クルーゼの笑い声が不気味に響き渡った。

「どうなってる?」
ブリッチに飛び込んできたカガリにミリアリアが振り返る。
「遅かったじゃない?」
いつものカガリなら帰艦したら、すぐにブリッチに駆け込んでくるはずだった。
「ああ、ソードやシールドを出すのを手伝っていたら遅くなった」
「ああ、そうだったの」
「それよりストライクはどうなった?」
「え、え〜と……」
どっちが優勢なのかが分からないミリアリアが返答に困ると代わってナタルが答える。
「互角だ。ストライクの方は武器のリーチが短いのによくやっている」
「へ〜そうなのか、いけ!そこだ!!あっ!!何やってるんだバカ!」
「ハア……」
自分の解説などまったく聞いていないカガリに溜め息がこぼれるナタル
「ん?」
その時ナタルはブリッチ周辺の望遠映像を映した画面の中の一つに目が止まった。
(これは空間が揺らいでいる?)
注意して見ないと気づかないほどの極僅かなほどの揺らぎ、それは巨大な人の形をし、いまゆっくりと右腕を突き出した。
「これは……X207」
ナタルの気がついた時には、もう遅かった。
虚空から出現した三本の槍は、加速によりコロイド粒子が剥離させながら真っ直ぐにブリッチに迫る。
しかし、それらはブリッチを目前にした所で、突然、爆散した。

クルーゼの立てた作戦はこうだった。
バスターがストライクを引き付け、その隙にデュエルがアークエンジェルを攻撃する。
さらに万が一、ストライクが間に合った場合に備えてガモフからミラージュコロイドを
展開しながら発進した自分のブリッツがアークエンジェルに止めを刺す。
この二段構えの作戦は全て順調に進んでいた。
新たなMSが現れるまでは……
「なんだ?」
突然の出来事にブリッツのコクピットの中で二コルが呻く
「敵の増援?ここまで来て」
ブリッツのレーダーは、はっきりとランサーダートを打ち落とした敵を捕らえていた。
(この反応……MSか?しかも今の攻撃はビーム?)
間違いなく連合のMSだろう。
ヘリオポリス以外にも連合のMS開発計画が進行していたとは、
驚きだったが今はアークエンジェルを墜とすことが先決だった。
「ランサーダートを撃ち落した腕、只者じゃない。 
 けど、こちらの姿は見えないはず!!だったら……このまま接近してブリッチを!!」
低出力のブリッツのレーザーではブリッチを一撃で沈めるのは難しいと判断したニコルは
ブリッチをビームサーベルで焼き切ろうとアークエンジェルに迫る。
しかし今度は、ブリッツに向かい降り注ぐ銃弾の雨、それらはビームではなくジンが一般的に使っている重突撃機銃やバズーカだった。
「見えているのか!?どうして??」
正確な射撃に驚くニコル、AMBACを使い攻撃を避けつつ、アークエンジェルに向かおうとするが、
ブリッツが避けた所に新手から回避不能な一撃がブリッツに迫る。
「くっ!」
反射的にPS装甲の起動ボタンに手が伸びる。
それが仇ととなった。
「今だ!!ゴッドフリート標準、てーっ!!!」
反射的にシールドを構え、ゴッドフリートを防ぐブリッツ
しかし凄まじいエネルギーを防ぎきれず機体に大ダメージを負ってしまう。
「くゥッ!!シールド強度40パーセント、バッテリー残量35パーセントにまでダウン!!……退くしかないのか」
悔しさに打ち震えながらニコルは、ゆっくりと機体を踵返した。

正体不明のMSを警戒しつつ、ブリッツが撤退すると、デュエルやナスカ級も後退し
ようやくアークエンジェルは、この最大の危機を脱する事ができたのだった。
「助かったわ……けどさっきの攻撃は一体?」
「艦長、望遠映像を出します」
メインスクリーンに映し出された一体のMSにマリューは驚きの声をあげる
「あれは……Xナンバー!?」
真っ白な装甲に、輝くツインアイ、紛れも無いガンダムの姿がそこにあった。
「なんなの……あのMS?」
マリューが呟く、ヘリオポリスで開発した五機のXナンバーの特徴を持つ機体。
しかしヘリオポリスで開発された機体は五体だけだ。あんな機体は見たことがなかった。
マリューは記憶の糸を辿り、以前にハルバートン提督に見せてもらった月でプロトタイプが仕上がったばかりの
量産型MS『ダガー』の事を思い出すが、
その機体と目の前の機体は似ても似つかない形状をしていた。
正体不明のMSの登場に混乱するアークエンジェルのクルーの中、ただ一人、そのMSの正体を知るカガリは小さく呟いた。
「あれは……P03!?」
アークエンジェルに、また一つ波乱が巻き起ころうとしていた。

?