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Char-Seed_1_第03話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 19:26:47

ジンとストライカーパックをアークエンジェルに積み上げ、シャアは艦橋に向かった。
その道中、避難民を収容したのか、場違いな民間人がちらほらと目に映った。
その殆んどが女子供や老人で、住宅街のシェルターから逃げ込んだ人々だと容易に想像出来た。
戦艦特有の複雑な構造に辟易しながらシャアは艦橋に出た。
扉の開く音に反応したのか、軍服を身に纏った面々がシャアに視線を注いだ。
シャアは気にせず、立ち尽くしているマリューに近付いた。

「ラミアス大尉、状況を知らせてくれ」
「艦長以下、主だった士官は殆んど戦死されました……
今、ここにいるのは訓練兵の下士官が殆んどです……」

深刻な面持ちで呟くマリュー。

「艦の運用は不可能か?」
「それはバジルール少尉に……」
「ナタル・バジルール少尉であります」

マリューの言葉に答えるかのように一人の女性士官がCIC席から立ち上がり、シャアに敬礼した。
東洋系なのだろうか、凛とした面立ちと黒髪が特徴的で、
実直な雰囲気を漂わせている。

「シャア・アズナブル少佐だ。よろしく頼む」
「あ、赤い彗星とお会い出来て光栄です」

英雄との対面に緊張したナタルは、
声を微かに震わせながら尊敬の眼差しを向けた。

「そう身構えなくても構わんよ。続けてくれ」
「は、はい。航行だけなら出来なくはありません。
しかし、戦闘は困難かと……」
「練度の問題か?」
「いえ、マンパワーです」
「……」

歴戦の勇士であるシャアですら、人手はどうしようもなく、頭を抱えた
――かのように見えた

「いや……当てが無い訳ではない」

シャアの言葉に、明らかな疑念を抱いた二人。
しかし、シャアの表情には確信めいたものがあった。

==========

「君達に来てもらったのは外でもない、頼みたいことがある」

ブリーフィングルームに集められた5人の男女は困惑の極みにあった。
後方で様子を伺っているマリュー、ナタルの両名も同様だった。

「実は、先の戦闘の影響で、この艦は致命的に人手が足りない。
そこで、情けない話だが、君達に艦の仕事を手伝って頂きたいのだ」

加速する困惑――
一人の青年が口を開いた。

「……それって、志願しろということですか?」

メガネをかけた茶髪の青年――
サイ・アーガイルだ。

「そうだ。民間人に戦闘行動は許されないからな」
「じょ、冗談じゃないですよ……」

怯えを隠せず、がたがたと震えだしたカズイ・バスカーク。

「戦争なんて……したくないわよ……」
「だよなぁ……」

唯一の女性、ミリアリア・ハウは消え入るような声で呟き、
隣にいるトール・ケーニッヒもそれに賛同した。

ほら見たことかと言わんばかりの後方の二人がシャアの目に映った。

「そう悪いことでもない。君達は理工系の学生だろう?
技術屋を志しているのなら、これほど箔が付くことは無い。
そうだろう、大尉?」
「えっ……ええ。ステータスにはなります。
従軍経験があるだけで、技術屋としては一人前扱いされますから」

急に会話の矛先を向けられ、たどたどしくもマリューは答えた。

――しばらく沈黙が流れた。
各々の考えをまとめているのだろう。

「……それでも、戦争なんてやりたくありません……」

今まで黙りこんでいた青年
――キラ・ヤマトが沈黙を破った。

「戦争が嫌で、ヘリオポリスに来たんです……。
そもそもこんなことになったのも、貴方たちのせいじゃないんですか!?」

いきりたってシャアに詰め寄るキラ。
しかし、シャアは一歩も引かない。

「それは認めよう。しかし、君たちはこの艦から降りられないことは確かだ。
ヘリオポリスはもう人が住むには荒れ果ててしまっているからな。
つまり、君たちは私達と行動を共にすることは不可避で、この艦には人手が足りない。
それが何を意味するか、分からん訳ではあるまい」

シャアはサングラスを外し、真っ直ぐな瞳で5人を見つめた。

「こちらの不手際を棚上げした厚かましい頼みとは分かっている。
だが、恥を忍んで再び皆にお願いしたい。
どうか、頼む……」

頭を垂れ、身も千切れんばかりの声で懇願したシャア――
「……分かりました……手伝いましょう!」
「まぁ、仕方ないもんな」
「トールがやるなら……」
「皆がやるなら……」

先立って了承したトールに、一同は思い思いに呼応していった。
渋っていたキラも、結局は志願することとなった。
==========

「足手まといを作っただけでは有りませんか!」

ブリッジにて、ナタルがシャアに厳しく詰問した。
野戦任官の新兵など、荷物になるだけだというのがナタルの主張だった。
現在、ブリーフィングルームにて、マリューによるマニュアル確認が5人に施されている。

「そうは思わんがね。元々彼等は理系だし、
若さ故に飲み込みも早かろう」

ナタルをのらりくらりとかわしながら、シャアはコーヒーをすすった。
インスタント特有の粉の感触が舌障りだが、
軍用品に多くは期待出来ないのは何処の世界でも同じであるとシャアは思った。

「しかし……」
「では他に何か妙案があるのか?少尉?
是非、お聞かせ願いたい」
「敵です!」

ナタルが閉口する間も無く、通信士からの叫びが二人の耳に入った。

「詳細は!?」

ナタルが振り返り、気を取り直して尋ねた。

「シグー、一機です!」
「少佐!……?」

ナタルが再びシャアに目を遣ると、既にシャアはいなかった。

==========

赤いパイロットスーツに着替え、シャアはデュエルのコックピットに体を滑り込ませた。
――元々乗る予定だったので、専用色に塗られたパイロットスーツがあったのは、好ましかった。
ジンクスを信じる性格ではないが、
シャアにとって赤とは何処と無く落ち着く色なのだ――

閑話休題。

カタパルトデッキに足を運び、出撃確認の通信を開いた。

「ああ、君は……」
『ミリアリアです。
これから私がパイロットの通信を担当することになりました。
でも、まだ手助けが無いと出来そうにないですけど……。
よろしくお願いします』
「美人に見送られるとは、いい時代になったものだ」
『やだぁ、少佐ったら……
『ふざけるなよっ!』

あっ……すみませーん』

叱られるミリアリアの姿が微笑ましい。

「ははは。では、進路はどうかね?」
「は、はい!オールグリーン、デュエル、発信どうぞ!」
「了解した!
シャア・アズナブル!デュエル、出るぞ!」

カタパルトが摩擦音を発しながら、赤いデュエルを戦場へと押し出し、
シャアはスキージャンプの要領で滑空し、スラスターを最大限まで吹かした。

「ん……?」

ふと感じる閉息感――

「プレッシャーか……
手強そうだな……」

ツインアイが捉えるのは白いシグー。
エースのぶつかり合いが始まるのだ。