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Char-Seed_1_第21話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 19:31:38

赤い彗星の撃墜という作戦を完遂させ、アスラン達は帰投して談話室に集まっていた。
副長のアデスが談話室に三人を呼び出したのだ。
6つの空虚な瞳が鈍く光をなし、
まるで完成寸前で1ピース足りないパズルを目の前にしたような絶望が場を支配していた。

三人の中心にはアデスが持って来たダンボールが異質な存在感をかもし出していた。

ダンボールにはニコルの遺品が詰まっていた。何でも、両親に送り届ける前に多少ならば形見分けをしてもよいとのことだった。

「始めるか……」

沈黙に耐えられなくなったディアッカがダンボールに手をかけ、イザークもそれに続いて中身をまさぐり始めた。
出てくるのは生活用品ばかりで、暮らしの質素さを物語っていた。

「あいつは飾り気の無い奴だったからな……」

イザークは年齢に似つかわしくない遠い目で遺品を見つめ、アスランは未だ黙りこんでいた。

「マニュアルか……?いや……」

ディアッカが取り出したのは膨大な量の楽譜。
名無しのものが殆んどで、ニコルが生み出したことを示唆していた。
各々それを一曲づつ手に取り、ダンボールを閉じた。
アスランは未だ現実を受けとめることが出来ず、
ひょっとしたら何事も無かったかのようにニコルが現れるのではないかとすら思っていた。

三人でニコルの部屋へ行った時、決定的な瞬間が訪れたのだった。

――三人の眼前に広がる、何も語らぬ、真っ白で残酷な部屋――

決して戻らないのだ。いくら科学が進歩しようとも、いくらコーディネイターが優秀だろうと、
決してニコル・アマルフィという人間は戻らないのだ。

「うっ……ううっ……くそぉ……」

アスランは膝をつき、声を上げて泣いた。
そんなアスランを、イザークとディアッカは何も言わず憐憫の目で見つめ、
アスランの悲痛な嗚咽は何時までも虚空に響き続けていた。