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DEMONBANE=DESTINY_rqMQ9OXgM6_01

Last-modified: 2013-12-22 (日) 20:47:24

―――親父殿、母上……初めまして、またお会いしましたね
天に神はなく――されど、世はこともなし
それは果たされた誓約、終わりし物語の新なる始まり

嵐の気配があった。
魔術理論の急速な進歩は旧き力の復活と新たな力の台頭、そのふたつを人類の闘争にもたらした。
即ち、オカルト技術と巨大ロボット。
戦場は呪術が荒れ狂い、鋼鉄の巨人が疾駆する異形の姿へと様変わりしようとしていた。
加速する魔術闘争。
激動する時代。
世界を、暗雲が覆い尽くそうとしていた。
嵐の気配があった。
人はその時代をこう呼ぶ。
大嵐の時代(グレート・ウォー)、と。

『八月党』、それは旧神と呼ばれる『正義』の神を崇め、旧神の呪法を駆使して邪教集団と闘争する組織であり集団。
彼らを構成するのは教主とされる男と『旧神の加護』を受けた超人達。
そして、彼ら超人の振るう力は外法の賜物である魔術。
旧神の加護を受けたと陶酔する彼らは狂信者であり狂戦士だった。
邪神と思しき行動と彼らに受け止められれば、それ即ち、破滅の宣告。

曰く、アーカムシティで紡績業を営んでいた店が邪神崇拝者と疑われた。
次の日、その店は跡形もなく叩き潰され、主人は原型を留めていなかった。
曰く、ある本屋が魔導書を扱っていると疑われた。
翌々日、その本屋はコンクリートでできていたというのに燃え尽くされ、溶かされ尽くしていた。店主は灰すら残っていなかった。
人智を超えた外道の力、彼らの破壊活動にアーカムシティの住民は皆、戦慄する。
しかし、だが、しかし。
抗う術を持つものが、そこにいた。
それは、覇道財閥。
地下秘密基地にて邪神眷属、邪神教団と対抗する、人類の守護機関。
覇道瑠璃を指令とし、あのルルイエ海戦でブラックロッジに勝利を収めた戦士達。
それは、ミスカトニック大学図書館特殊資料室。
邪神、若しくはそれに匹敵する呪力を込められた妖器物(アーティファクト)をおぞましきモノから守り抜く守護者達。
ヨグ=ソトースの血を分けられたというウィルバー・ウェイトリィの襲撃を退けた、アーミティッジ達『三銃士』が所属した守護機関。
そして、今、新たに、二人。

※※※

「何故だ!?何故、我らの呪法が通じない!!??」
「在り得ぬ!!旧神の力なのだぞ!?四属性による完全な防護が何故!?」
八月党本部、地下大聖堂。
地下に張り巡らされた通路は一種の迷路、旧神の加護により呪術的脈動を続けるそこは魔術師の侵入さえも拒絶する強固な要塞。
数多くの邪悪を退け、数多くの侵入者を駆逐した無敵の城郭。
だが、今この要塞は外敵の侵入を許していた。
地下とは思えぬ白一色で作られた広い通路、白の裏に脈打つ魔導動力の音、鼓動(ビート)、鼓動(ビート)、鼓動反響(ビートハウリング)。
そして、その鼓動を切り裂き歪な十字剣が人を超越した異端能力者を次々と屠る。
運良く紛れ込んだ侵入者を駆逐するだけと思いこんでいた超人の傲慢を、十字剣はいとも簡単に打ち砕いていく。
「あぎゃば!」
「ぎゃぼりゃ!」
彼らが崇める旧神の術により創造された呪法装甲、あらゆる攻撃を無にするはずの無敵の鎧が、紙屑のように切り裂かれていく。
対抗しようとした超人参名が同時に飛びかかるが、その行動も無に帰す。
非ユークリッド力学的に乱舞する十字剣、着地した彼らは三枚に下ろされていた。 なおも飛び続ける。
切り裂かれる超人勢力は一人、二人、三人……数、数多。
白の通路は崩れ落ちた超人で埋め尽くされる。
「戻って来い」
不意に、空間全体を突き抜けるように、澄んだ少年の声が通路に響いた。
未だ多く残る彼らを無視し、十字剣は声の主に従い弧を描いて還る。
超人の体液をぶちまけられた通路のはるか奥、十字剣の主はそこに立つ。
主の手に収まる十字剣、持ち主を認識し、超人たちは驚愕した。
歪な十字剣を握り締めるは、紅の外套を身に纏う短身痩躯の少年。
その澄んだ翡翠の瞳は眼前、外道の知識を駆る超人軍勢を睨みつけている。
「貴様が侵入者か!我らへのこのような振る舞い、それすなわち旧神への反逆! 万死に値する大罪なるぞ!!」
「旧神、か。ふん、笑止千万だな」
「な、なに!?」
侮蔑の表情で吐き捨てる少年に超人は激昂する。
「貴様、全知全能たる旧神を愚弄するか!!彼の神によって旧支配者は封印された! 我らはその意志を継ぎ邪悪から世界を護る戦士だぞ!!」
「その救世の戦士とやらが罪無き民を害するか、愚かだな」
冷たい視線が一人前に出た超人を射抜く。
「邪神討伐こそが我らの大義名分!邪神に組するものには死あるのみ! そのために生じる犠牲ならば相仕方なし!!」
その声色と姿勢に揺るぎはない、むしろ陶酔さえある。
全くもって腹立たしい。
「それが他者を蹂躙する理由になるか。それが全ての免罪符になるか。 実に、片腹痛いな」
翡翠の瞳が更に冷たい色を帯びる。
「貴様っ……!!我らの理念を理解できぬか!!」
「巫山戯るな、貴様らも所詮は只の邪法の使い手。自惚れるなよ、下郎」
「言わせておけば!!」
生き残った超人達が次々戦闘態勢を取る。彼らの後ろからは黒山の増援。
なんという短絡思考、いよいよ少年の顔は苦々しいものになる。
「愚者もここに極まる……か。己がどのようなモノかも理解せずに」
閃光、十字剣は非対称の双振りの剣に成る。
「魔道に生きる身なれど、魂(ココロ)は騎士道(ツルギ)に奉げたり。 ―――外道、断つべし」
その双剣を目にし、魔術装甲の仮面の下、超人達が気づく。
「貴様は――!」
走る動揺、畏怖がありありと。
しかし、九朔は意に介さず彼らを睨みつける。
「サタンの下僕、邪神奉仕の覇道財閥の懐刀、そして悪の根源――!」
「世界に悪をもたらすCCD(邪神眷属群)――!」
「忌むべき書を駆る者――!」

――魔 書 人 九 朔【グリモワール・クザク】!!! 

畏怖と憤怒の掛け声。同時、超人軍勢が雪崩打った。 その数凡そ参拾。
九朔は自分を呑み込まんとする破壊者を凝と睨みつけた。
彼らの攻撃の威力は言うまでもなく絶大、生身の体を持つ者が喰らえば有無を言わさず肉片となるだろう。
だが、それを大十字九朔は怯むどころか、
「―――仕る」
突撃した。 それはまるで、冗談のような光景だった。
突撃と同時、旧神の加護を受け、四属性を利用した力場を形成した超人達、彼らを中心に五芒星に似た呪文法陣が瞬時に通路全体へ拡がる。
これにより全ての魔術は意味を成さなくなり、敵は無力に、自分達はより無敵になるはずだった。
しかし、
「甘い!!」
奔る壱撃、
「温い!!」
貫く弐撃、
「侮るか!!」
踊る参撃、死撃、護撃。
無力になったはずの大十字九朔に超人八名が伍閃で切り伏せられていた。
脅威に慄き間合いを広げる超人壱拾数名。 刃を振りぬき、その刀身についた体液を拭う九朔。
しかし、その彼を死角から襲う超人壱名がいた。
振り上げられた腕は彼の脳漿をぶちまけようと限界まで張り詰められている。
「牙ァァァァァァアァアァァ!!!!」
落雷に匹敵する速度を持って九朔を襲う双腕。
しかし、
「―――血は灼け、爆ぜる」
九朔の後ろから伸ばされていた腕、その手から暴虐の白焔が放たれる。
連続するマズルフラッシュ、超人はそれが何かを認識する早く意識を断絶した。
更に続く圧倒的暴力は超人の体を噛み砕き、間合いを広げ防御体勢に入っていた他の超人六名も薙ぎ倒す。
撒き散らされた硝煙、イブン=ガズイの粉薬が反応して通路を綺羅綺羅と煌めかせる。
「まったく。騎士殿、しっかりなさいな」
何時からそこにいたのか、硝煙の奥から紅の少女が姿を現す。
紅、紅、紅。装束から靴、帽子に至るまで、更には髪も瞳も紅。
子細に至るまで紅一色の少女である。
微笑む少女の唇に浮かぶ妖しい彩、超人の視線がそれに縫い付ける。
見下ろす先、少女の右手には、女性の持ち物としては到底似つかわしくない得物が握られていた。
赤と黒の彩色を施された暴虐の象徴、自動式魔銃――クトゥグアである。
「あれしきの雑魚、我には脅威たり得ぬ」
「分かってるわ。ただの冗談よ」
「理解している」
「うふふっ」
少女と少年が背中合わせに銃舞と剣舞の型をとる。
「さあ、騎士殿。この英雄(ヒーロー)気取りの人外魔性、とっちめちるわよ?」
「心得た」
二人の間にそれ以上の言葉は必要ない、騎士と少女が戦舞<イクサマ>う。
弾丸が穿ち、剣が削ぐ。
弾丸が抉り、剣が裂く。
装甲は砕かれ、裂かれる。
四肢はもがれ、散らされる。
拳撃をかわし叩き込まれる弾丸、脚撃を逸らし翻る双剣。
術式魔砲と思しき光弾、紅の自動式魔銃が打ち抜き霧散させる。
爆裂する蹴打と拳打、双子の剣が悉く去なし裂く。
蒼と赤の暴虐、超人軍勢は見る見るうちにその数を減らして逝く。
累々と積み重ねられていく骸、抵抗は激しく、しかし無意味。
全方位射撃、全方位剣撃、全方位拳撃、全方位脚撃、全てが無効。
双子の戦舞に死角なし。
圧倒的銃舞<ガンブ>と剣舞<ケンブ>は瞬く間に全ての超人を沈黙させた。

「おしまい、ね」
「ああ。それにしても―――」
九朔の視線が目の前の超人の屍体を見据えた。
注視する九朔、ごぼりと音を立て装甲に包まれた肉体が崩れた。
どろどろと、黒と緑が入り混じった穢れた粘液が通路いっぱいに広がる。
同時、他の超人の肉体も崩れ容を失う。
漂う悪臭、それは腐爛した何ともいえぬ饐えた匂いだ。
「……やはりな」
九朔の瞳がその粘液の奥に潜む術構成を見破る。
「これの何が旧神か……反吐が出る」
「最悪ね。ほんっと」

白の通路の奥に佇む祭壇、超人たちには聖なる場所に見えたそれも、しかと見れば、蠢く闇と淀んだ瘴気が満ちている。
そこは、不定形の異形が跋扈する、冒涜的な角度に地獄めいた装飾を施された、人外の智慧を用いて作り上げられた異界であった。
「……見つけたぞ」
両手に左右非対称の剣を握り少年が立つ。
その横にはもう一人、紅装束に身を包んだ紅の少女が。
「色々手間取っちゃったわ。でも、観念してちょうだいね」
軽い口ぶりとは裏腹に、握り締められた赤黒の自動拳銃は祭壇に立つ男を逃すまじとその銃口を向けている。
視認し、祭壇を囲む信者達は紅朔と九朔から教主を護ろうと襲いかかる。
閃光、マズルフラッシュと剣閃が煌めく。
超人が崩れる。

「貴様ら、自分たちが何をしているのか分かっているのか?」
九朔は問いただす。
「天誅!!」
またも襲いかかる超人たち、崩れ落ちたものは皆、腐臭を放つ粘液になる。
「貴様らが信仰しているのは旧神などではない、邪神だ!」
そう。旧神と彼らが呼び信仰するものは邪神。
放つ咆哮。しかし、その言葉は彼らには通じない。
なぜなら、彼らには己こそが正義であり、紅朔/九朔は悪なのだから。
それを、この場に在る超人軍勢の信徒の誰もが信じている、盲信している。
おそらく、教主も。
九朔は祭壇の上で自分たちを見据える男を見る。
超人軍勢と同じような呪術的施術を受けてはいるが、彼奴は只の人だ。
魔術師の勘がそう告げる。
「騎士殿、来るわよ」
「承知した」
雪崩打つ超人を迫る側から討つ紅朔と九朔。
裂かれ、穿たれ、抉られ、斬られ、散らされ、砕かれる。
超人信者達はそのたびに粘液状物質に。
「きりがないわね」
「ああ」
先ほど切り伏せた数がほんの一握りだったことを実感させられる。
だが、これは自分たちの敵になりえない。
崩れ落ちた超人軍勢は肉体を溶解させ、床へと染み込んで―――
「――染み込む、だと?」
その異常に気づく。

振向き、今斬捨てた一名を見据える。
「――――――!」
人の耳では聞き取れぬ言語、それが意味するものに一瞬気づくのが遅れた。
いや、既に手遅れだ。
そう、これは――
「招喚の儀式ッ!!」
「騎士殿ッッ!!」
大歓声、祭壇に集った超人たちが己の腕を天高く突き出した。
そして、
「―――旧神よ、顕れ出でよッッ!!!」
教主の言葉、祭壇が聖堂が三次元的認識を凌駕した宇宙的角度に捩れた。
「なッ!?こ、これはッ!?」
少年が驚きの声を上げる。
世界が罅割れた音がした。
祭壇と空間にずれがあった。
空間と地面がずれていた。
光と闇がずれている。
闇と闇が捩れている。
光と光が崩れている。
壁と壁が非ユークリッド的な容に歪んでいる。
世界と世界の壁が怒涛の唸りをあげて崩壊する。
決壊する世界の音が紅朔と紅朔の耳を聾した。
修復されたはずの世界に、何か凄まじい何かが現われようとしていた。
「顕れよ!!顕れよ!!世界に光を!!世界に光を!!」
狂信者達に応え、世界の、次元の壁が罅割れ、砕けた。
ヒカリがセカイに溢れ出た。

次元の壁を破壊して、空間を捻じ切り、引き裂き、巨体が顕れる。
胎内から産まれ堕ちる赤子のようにそれは聖堂という子宮を突き破る。
「10101000001101000001100001100001
1010000011001010101010!!!!!!!!!!1111
11000!!!!00000001100000!!!!!!!!!!!!」
人語に変換不可の雄叫びが大地を揺るがした。
瘴気が霧散する、暗雲が蒸発する、廃墟が砕け散る。
圧倒的神気が周囲を覆いつくす。
「くっ!!なんという凄まじい神力……ッ!!」
『旧神の印』により防護したとはいえ、一瞬で砕け散った聖堂。
その余波で信徒の大半が巻き込まれ消し炭になった。
が、生き残った者はその光の巨人を神々しいものと認識し、涙を流す。
自分と紅朔の周りを渦巻く字祷子反応の絶大さに九朔の額に
一筋の冷や汗が浮かぶ。
「在り得ぬ。このような……くッ!」
「我らの肉は旧神へ……我らの魂は旧神に……!!」
叫び、呼ばれたかのように光の中へ飛び込んでいく信徒達、それらを媒介としてか光の巨人はその肉体をこの世界へと顕現化できる状態へ着々と構築している。
「私の愛する信徒達よ、旧神に奉げよ!我と共に邪悪を滅ぼそう!!」
「ふざけないで!!!」
紅朔の表情がその言葉に怒りで染まる。
「否、我らは巫山戯てはおらぬぞ!これこそが……ああ、これこそがッッ!」
その瞳は恍惚と倒錯、悦楽の色。
紅朔を歯牙にもかけず、教主がその光に己の姿を相対させる。
巨人は更にこちらへと肉体を移行させている。

光を覆う魔術紋様、そこには幾兆、幾京、幾垓の高密度情報が記されている。
それが意味するのは神格に近い異形の招喚。
そしてこの光!おぞましい異界の七色と無色が彩成す輝ける闇黒!
もしこのようなものがこの一帯に顕れれば、引き起こす魔術災害はあの13番区画・焼野を超えるとも知れない規模となる。
ならば、こちらに出てくる前の今しか撃退する方法はない。
「騎士殿……!」
「認識している。あのようなものが旧神などであってたまるか。あれは憎むべきもの、邪神の力を得た異形だ!!」
そう、二人は眼前に在る光り輝く闇の真の姿を見極めていた。
これは、決して旧神の力――そう、彼らの父母が戦い抜いて人々の為に築いた優しいものではない。
身を震わす咆哮に暖かさはない、死の冷たさだけ。
それは生を歌う命の唄ではない、それは嘲笑う悪意だ。
これは邪悪、憎むべき宇宙的悪意、それは外宇宙の神(アウター・ゴッド)!!
彼奴らが信仰したのはつまり、旧神とは真逆の邪神。
彼奴らが召喚したこれは彼奴らの妄想が生んだ邪悪なる異形。
この光り輝く闇がもたらすのは破滅、破壊、絶滅、終焉。
故に、邪悪を許さぬ正しき怒りを胸に秘める故に、これを打ち祓う!
紅と翡翠の瞳に刃金の意志が宿る。
「呼ぶぞ!/呼ぶわよ!」
同時に発せられた言葉、それが合図となる。
天を衝く剣指、蒸発し消え去った雲の更に上空、満天の星が輝く。
紡がれる口訣、それは正しき怒りによって為される憎悪の宣誓。
だが、それは決して怨嗟ではない。
それは邪悪に抗う、切なる祈り。

 憎悪の空より来たりて
 正しき怒りを胸に秘め
 我らは、魔を断つ剣を執る

 汝、気高き双刃―――デモンベイン!!!

虚空より、爆砕する空気を伴い鋼鉄の機神が顕現した。
紅朔/九朔を中心として実体化し、荒れ狂う大気を身に纏いそれは降り立つ。
その巨体、全身に刻まれた魔術紋様が唸りをあげている。
その瞳、意志を宿さぬはずのそれが眼前の邪悪を睨みつける。
それは邪神でありながら邪神であることを否定した神の模造品。
それは鋼鉄の肉体を持つ、この世界を冒さんとする魔を断つ刃。
それは人々の切なる祈りと明日への願いを託された翼。
それは『人のため』の鬼械神<デウス・エクス・マキナ>である。
「同調<アクセス>!!」
九朔と紅朔は共にそれぞれのコクピットへと転送される。
それは必然と言うべきなのか、彼らの父母と同じ形である。
二層に別れたコクピット、下層に紅朔、上層に九朔。
九朔はデモンベインの四肢となる、その拳と脚はデモンベインの拳と脚となる。
紅朔はデモンベインの血潮となる、彼の巨体に溢れる水銀(アゾート)となる。
三位一体、これこそがデモンベインの真骨頂。
「我らを無礼るなよ、贋物!」
「そうよ!嘘つきってのは怖いんだから!」
相対する、巨人と機神。

次元の壁を突き破り半身を引きずり出した状態で顕現した巨人。
光に穿たれた黒い二つの孔がデモンベインを見据える。
戦いの火蓋は今にも斬り落とされようとしていた。
だが、
「―――何?」
光の巨人の手前、教主の男が恐怖の表情を浮かべていた。
同時、九朔/紅朔もその方に視線を送る。
光の巨人がある。
それは異界の無限色で輝くおぞましい光だ。
しかし、今、その光体が確かに異変を生じていた。
崩れていた。
光が崩れ、肉が崩れ、巨人はその光体を捩じらせていた。
「10101000001101000001100001100001
1010000011001010101010!!!!!!!!!!1111
11000!!!!00000001100000!!!!!!!!!!!!」
それはまるで苦痛の叫びを上げているように聞こえた。
慌てふためく男、だが、光の巨人は体を捩じらせ、呻いている。
それは彼の神性が引き起こした事象ではなかったのか驚愕が混じっていた。
残ったほかの信者も同様に。
そして、
「溶けてる……」
ごぼり、そんな音を立てて、巨人が解け、溶けた。
次元の裂け目は消え去り切り取られた半身が聖堂の床に叩きつけられる。
粘液状になっていたそれに、教主だった男と信者達の体が呑みこまれた。
大轟音、質量を持ったそれが雪崩落ち聖堂が粘液に飲み込まれる。

「****‘?=〜”’$$$$$###!!!!!!!」
光に咲いた二つの点と洞穴、まだ残っていた顔のような部分が雄叫びをあげ痙攣する。
しかし、どろどろに崩れた光体の中では原型を留めることができず、とうとうそれも光り輝く粘液の中に溶けた。
それは想像を超えた展開。
余りにも呆気ない終焉だった。
巨人が溶解する寸前、シャンタクを起動させ飛びのいていたデモンベイン。
コクピットの中、九朔も、紅朔も目の雨で起きた事態を飲み込めずにいる。
「魔術汚染はないようだが……」
「折角デモンベインを呼んだのに……ね」
呆然としてはいたが、しかし、このままこの異界の輝く闇を放置するわけにもいかなかった。
この闇が何時暴走を起こして自分達の護るべき人達を害するか分からないのだ。
「仕方あるまい。紅朔、コイツを始末するぞ」
「りょーかい。でもいったい、これって何だったのかしら?」
「さあな。ただ、『八月党』は旧神気取りの邪神教団だっただけだ」
「不可解な事がいっぱいよ?」
「確かに。だが、それは追々調べれば良いことだ。いくぞ」
「はいはい」
眼下の異形を昇滅させるため、デモンベインは必滅の術式を唱える。
それは光ある世界に害成す闇黒を滅する宣誓。
「――光射す世界に」
「――汝等闇黒住まう場所なし」

「「飢えず、渇かず、無に還れッッ!!」」

魔術紋様が光り輝き、右手に収束する超高密度の魔力。
シャンタクは最大加速、デモンベインが閃光を引き連れ急降下する。
闇夜を裂くその様、それはさながら流星のようだった。
「レムリア・ソニック・インパクトッッ!!!」
破滅の宣誓、異界の光へ超超音速の破壊鎚が突立てられた。
発生した無限熱量、聖堂を覆い尽くす字祷子の崩壊。
だが、次の瞬間、
「なッ!?」
「嘘ッ!?」
液状になり聖堂を満たした巨人の体が夥しい光を発した。
これを最初から待ちかねていたかのように粘液が震え湧き上った。
膨れあがる粘液、その中から半固形の触手が数多飛び出す。
デモンベインに絡みつく。
「身動きがッ!」
「駄目!シャンタクでも振り切れ――っ!!」
そして、触手はデモンベインを呑み込んだ。
同時、デモンベインを取り込んだ粘液、無限質量を内包されたそれが弾けた。
中から零れた異界の光が埋め尽くす。
聖堂が、大地が、空が、瘴気が、生命が、呑まれる。
「う、うわああああああああああああああああ!!!」
「きゃああああああああああああああああああ!!!」
激しい衝撃、光に飲み込まれたデモンベインの中、紅朔と九朔は自分たちの肉体が字祷子の単位に分解されるのを感じた。
それは見知った感覚だった。
それは幾度も感じた字祷子の振動だった。
そう、それは、
「「次元跳躍……ッ!?」」

Biginning――end

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