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DEMONBANE-SEED_ですべのひと_0

Last-modified: 2013-12-22 (日) 06:30:17

夢の中。

―――おそらく、夢の中。



前も後ろもおぼつかないような感覚。

どこか宇宙空間を漂うそれに近いだろうか。

だが、周りが違う。



それは全てが巨大。

それは全てが矮小。

それは全てが速く。

それは全てが遅く。

それは全てが―――

それは―――



―――夢の中。

その一言では、済まされなかった。





それは、無限にして夢幻の宇宙。

有り得ざる「死霊秘法の主」が踏みしめた/踏みしめる/踏みしめられなかった戦場。

魔を断ち、神をも殺す剣が駆ける/駆けている/駆けた世界。



その世界を、ただのちっぽけな人間が―――

神々に背き、遺伝子に手を加えられた、ひとりの少年が、

無限にして夢幻の宇宙を、漂う/漂っていた/漂っている。



ふと、少年は気になった。

自分はどうなるのだろうか。

この数多の宇宙を、永遠に漂い続けるのだろうか。



夢だとしても、たとえこれが夢であろうとも、

自らの考えはあるし、時に記憶もある。



己のしたこと。

自由の翼を断ち切ったこと。

復讐を終わらせたこと。

父の/母の/妹の/先輩の/想い人の仇を。敵を。

自分の手で、討った。



これでいい。

これで、全てが終わった。

理不尽な一方的な間接的な、おまけで正義の味方な「虐殺者」は、消えた。

だからもう、戦うことはなく―――





―――本当にそうなのかな?





声とともに、舞台は変わる。

そこは、かつて自分のいた場所。

そうだ。あれは―――



「うぉわああっ!?」



機銃。

とっさに横っ跳び。



上から、機銃。

遮蔽物に隠れられたのは幸いだったのだろうか。



上から。

周囲は、死の臭いに満ちていた。



上に。

脚を撃ち抜かれ、腕を撃ち抜かれ、それはまだ幸運だ。

中には胸を撃たれ、もう手遅れな人間。

頭を飛ばされ、胴体だけの人間。

そして、もはや人間というより肉片。



上に。

では、あれは何だ。

上に、上に!





白かった。

白い脚。蒼い胸。紅い翼。

見間違うものか。間違いはない。



―――「インパルス」。

これは、俺のしたこと。

インド洋、あたりだったか。

それでも、あの時は

強制労働されていた人を助けるために―――



―――戦争はヒーローごっこじゃない!





また、反転。



姫様がいた。

形だけを、理念だけを理想とした親の理想を継いだ人間。



憎かった。

攻めてきた連合も憎い。家族を殺したフリーダムも憎い。

けど、一番憎かったのは。

真っ向から連合とぶつかっていったオーブ。

逃げ遅れた人々を見捨てたオーブ。

……そして、当時最大の責任者、アスハ。



だから、俺は平気であの言葉を言えたんだ。



「―――さすが綺麗事は、アスハのお家芸だなッ!」





今は、どうか。



きっと無理だ。

結局俺は、人殺しに変わりはない。

俺の手は血にまみれている。

見た目は何もついていないが、鼻をつんざく臭いさえする。



結局、戦うことで誰かが不幸になっていく。

今更気づいたことは、軍人も人間だってこと。

ヒーロー気取りの俺がやったことも、向こうから見れば大虐殺だ。



救われる人もいるかもしれない。

だけど、俺のような人間がまた生まれてくるであろうことをして、

まだ「大切なものを守るため」と言えるのだろうか?



何のために、俺は戦っていた?



教えてくれ。

誰でもいい。俺はどうしたらいい。

俺はどうしたら、本当に大切なものを守れるんだ。



―――ステラ。



そして、無限にして夢幻の宇宙に戻ってきた。



変な夢だ。

いや、これが冥府か?

少なくとも、その考えは否定する。

こんなにも眩しくて、安らげて、光が溢れるところが―――

―――光?



違う。

俺には分かった。



ステラだ。

ステラがここにいるんだ。

光が、ひとつの形をつくる。



「少しだけ、会いにきた……会いにきたよ」

俺が守れなかった少女。

手は尽した。友人の助けもあった。



「わたし、シンに【昨日】をもらったの」



嘘だ。

結局、俺が止められなかった。奴を。



「ステラは昨日をたくさんもらった。だから、明日を見れるの」



違う。

奪ったのは俺だ。君の明日を。

そうだ。結局、一番許せないのは自分。



「……だけどね、シン」



責めてくれ。

せめて君の手で、思いっきり。

他人を傷つけることしかできない俺を。

せめて、君の手で断罪を―――



「シンは、明日が同じなの」



―――え?

思わず、間の抜けた声が出てしまう。



「シンの明日は、変わらないの」



意味が分からない。

君は何を言おうとしている?



「シンは、とらわれてしまったの」



何に?

君は俺に何を伝えたいんだ?



「そう、それはね、全部―――」





瞬間、世界が動いた。

ステラが遠ざかる。



「……シン、もう時間がなくなっちゃった」



待ってくれ。

俺はまだ何も、君に伝えちゃいない。



「シン―――」



ステラ。

待ってくれ、せめて一言だけ。

謝らせてくれ。

俺の過ちを。俺の所業を。

俺は君を―――



「自分を信じて。折れちゃダメ」



―――ステラ!



「また! また、あした……!」



―――ステラ!





「ステラァァァ―――ッ!!」





しろい、へや。

しろい、ベッド。

しろい、カーテン。

しろい、かべ。



ここは病院。おそらく。

怪我があるのか、身体中が痛む。

間違いない。

俺は、「目覚めた」。

終わりのないような夢から。

悪夢から。



覚めても「悪夢」なのかもしれないが。

俺は、確かにこの世界で「目覚めた」んだ。





   機神咆吼デスティニーベイン

    DestinyBane



    PHASE-1 「The call of...me?」





新しい朝が来た。

希望の朝だ。



話は少し遡り、教会前。

登りかけの太陽の光が照らすは、此処アーカムシティの街並み。



それを、わざわざブチ壊しにするのは。



「まったく、何故にして我輩がこんな

 雑用的かつパシリ的な何かをせねばならんのであるか。

 まあいい、このスーパーウェスト無敵ロボ28號IC21

 〜光速のロケットでつきぬけろ!〜が完成したあかt」

「博士、煩いロボ」



台詞を遮られ、色々な意味でヤバ気なうねり方をしている我輩。

そんな彼、世紀の大天才ドクターウェストと相棒のエルザは、

今回はこの目の前の、灰色のものを回収しに来たのである。

なお、早急かつスピーディな作業を実現した上で騒音を極力抑え、

そして緊急時には「エルザ、V−○AX発動!」の一言により

空の蒼き流星となって夜の運河を滑るように、

悲しい瞳で愛を責めながら離脱するのである。キユキユキユ。



ちなみに今回は作業関係で小型である。

Mサイズといえば賢明な愚民もしくは読者ならお分かりのことであろう。

そろそろエルザが煩そうなので、口惜しいところであるが一旦切りあべし!?



「博士、無駄に文字数取らないでほしいロボ」



まったくもってその通りである。反論不可。

「さて、ではちゃっちゃとテキパキと完璧パーペキパーフェクトに

 この雑用でさえもこなしてみせるので……ん? どうしたエルザよ」

「博士、熱源ロボ!」



衝撃。



「ぐへぁ!? え、エルザ!何事かこれは!」

「博士、緊急用のブースターが起動状態になったロボ! 何か下にいるロボ!」

「な、ぬわぁぁんと!?」



何がどうなった。

確認するまでもなく、緊急用ブースターが唸りを上げ始めている。



「なんだかすっげえやばいロボ」



誰かが外から攻撃をしたに違いない。

それにしてはレーダーには何も反応が……



「あ」



その時、離脱形態に変形中にサブカメラが捉えた。

今にも発進しそうな破壊ロボが。

下にいる、



正義の味方を。



「め、メェタトロォォォン!? 正義の味方が闇討ちとは卑怯千万であるぞ、

 我輩もこういう場では正々堂々と策略を―――」



仮面の女が、メタトロンと呼ばれた者が告げる。



「正義を語った覚えはない」



発進。

蒼き光を纏い、空の彼方に飛んでいく。



「な、なんということであるか!? この無敵ロボの量産化が決定した暁には連邦など」

「その企画、打ち切り決定ロボ」



ロケットでつきぬけたという。



「それに、私達が騒げば近所迷惑にもなるしな」



子供達が起きるから、と心の中で付け加えておく。



しかし、どうしたものか。

メタトロンは思案する。この灰色の機械、どう処理すればいいのか。

そもそもこれは何なのか。

巨大な剣を持った人型だということ以外、何もわかりはしない。

処理のしようがないし、彼女ひとりでは無理だ。

誰か、これを代わりに処理できるような者は―――



いた。



ひとつ思い当たりがある。

行動を実行するべく、まずは朝食を作ろう。

そうして、仮面の女は姿を消した。



―――最悪だ。

いつも通り飯をたかりに来たところまではよかったんだが。



なんだこの灰色は。

道を埋め尽くす灰色。

デモンベイン程じゃないが、かなりドでかい物体X。

しかし、邪魔だ。とても邪魔。激しく邪魔。

なんとかしてこれを動かさないと、

教会への道を塞がれてはライカさんやガキんちょが困るだろう。

そして何より俺が困る。死ぬ。普通じゃないけど普通に。



「ふむ、しかしこの形……」

「またお前関係か、アル?

 本当にお前といると毎日がマクー空間だ」

「いや、これはどこのア○ロ・○イかと思うてな」

「そのリアクションはどうだよ古本」

「だが主よ。此は魔術も何もない、ただの機械人形だ」



魔術とは関係ない。

ページ集めには関係なさそうだ。

しかし腹が減った。早く何とかしたいものだと頭を捻っていたら。

「あら、九郎ちゃん、アルちゃん。おはよう」



この教会のシスターの声だ。

やはり外には出られないのか、窓から身を乗り出している。

俺も一先ずは、おはようと返す。

アルもうむ、と。とことんコイツは偉そうだな。いいかげん慣れたが。



「で、ライカさん。大丈夫なのか? これ」

「そうなのよぉ、朝起きたら突然こんなものがあって。もう邪魔で邪魔で」



困ったな……本気で。

このままでは皆が不自由する。飯も食えない。

だからといって。



「九郎、アトラック=ナチャで持ち上げてどかすぞ」

「いや、何処にだよ」



そう、主に場所とか場所とか場所とか。

場所的問題がまずあるのだ。

しかも、こいつがもしむやみに動いたとしたらと考えると危険で仕方ない。



「……仕方ない、姫さんに頼むか」



覇道財閥。

このアーカムシティの実質的な支配者。

そして、その若き総帥・覇道瑠璃。

俺は彼女に雇われて探偵をやっている。

デモンベインも財閥の所有物だ。

もしかしたら、格納庫のスペースでも借りられるかもしれない。



「決めた。まずは姫さんのところで何とかしてもらうか」

「心当たりでもあるの?」

「ああ、少しな。すぐにでも行ってきて―――ってアル!?」



ナニジデヤガルンディスカクサムハ。



「見ての通りだ。中に人がいるようだと判断できたからな、

 外部からハッチを開放しようというのだ」

「自分で勝手に納得して行動するな! もし仮に爆破装置でも作動したら……」

「こういう類は外部からの起爆は考えられんよ」

「だからって。お前はもう少し慎重という言葉を……」





いたよ。



ハッチが開放された。

コクピットの中には、人間がひとり。

赤いパイロットスーツのようなものに身を包んだ人間。

気絶しているのか、動く様子がまるでない。

が、やることは一つ。

―――せめて、彼を病院に。







「フフ……やはり、シナリオの急な再構築が目に見えるよ」



闇が、覗く。



「さあ、この繰り返ししかない世の中にスパイスが混じると、どうなるかな?」



闇が、嘲う。



「ああ、元々甘いから、あとは素敵なものばかりたくさんでいいか。

 ……楽しみだよ、シン君。九郎君」



そして、闇は消える。





―――ここは、何処だ。



少なくとも艦の医療室ではない。

備品の型もずいぶんと古いものだ。

はっきり言って、窓から見える風景にも見覚えゼロ。

というか、果たしてまだあんな街が残っていたのだろうか……?

どうしたものか。全くわけのわからない状況に、

シン・アスカはもはやお手上げ状態だった。

いくらザフトの赤服といえど、右も左もわからない現状では身動きひとつ取れないのだ。

「当然ながら、武器はなし……か」

正直不安だ。

目覚めて少し後に看護師が来たが、

調子の悪いところを訊かれたくらいで、こちらが状況を訊く隙などなかった。

普通に困った。



どうしようもないので、一旦考えるのをやめた。

無心になりたい。今まで詰め過ぎてた。少し疲れた。



ふと。

ふと思い出すは、あの奇妙で奇怪な夢。

「人殺し……か」

あのときのフリーダムと同レベル。

自分は一体何人殺したのだろう。

インパルスは、自分の手で何人殺めたのだろう。

分からない。

俺は別段記憶力に優れてはいないし、「ああいうこと」はあまり覚えていたくもないし、

俺はエレガントな人でも全然ない。

「……待てよ」

インパルス。

自分がここにいるということは、その過程でインパルスから降ろされたということ。

なら、インパルスはどうなる。

あれは軍の試作機だ。

そうそう人に奪われていいものではない。データだけでも。

間違ってデータをどこか消されたりしたら、それだけでも大打撃だ。

まずい、インパルスが!?



「―――失礼します」

喉から出かけた言葉は、唐突にかけられた一言で行き場を失った。



「貴方が、シン・アスカですか」

「そうですけど……貴方は?」

歳は、自分とは特に変わりなさそうだ。

格好からして、生まれのいいお嬢様なんだろう。

自分の名前を知っているということは、

何かパイロットスーツの名前でも見たか。

つまり、このひとが助けてくれたのか、そのひとの知り合い……?

「わたくしですか? 先にわたくしが名乗る必要がありましたわね。

 申し訳ありません。わたくしは、覇道瑠璃と申します」

覇道。

どこかで訊いた覚えのあるような。

……いや、まさか。

「……どうなさいました?

 現状が掴めず混乱しているというなら、無理もありませんわね。 何処か別のところから飛ばされてきたようですから。報告によれば」

いや、そういうことではなく。

確かにそうでもなければこんなところに突然来たりもしないが。

多分何か俺と直接話したいようなことがあるんだろう。

そうでなければ、こんな人がわざわざ俺の前に来るものじゃない。

ただ、今俺が気になるのはむしろ。



「覇道……って、一代で財閥を立てたあの!」

「そうですわ。覇道財閥はお爺様が一代でお立てに……どうしました?」



まあ、記憶違いはまずない。

伊達に赤服を着ている訳じゃない、おそらくアカデミーで習った人物だ。

一代で巨大な財閥を立てたなどという真似はそうそうできもしない。

少なくとも、習った限りでその名字に当てはまるのは―――

覇道鋼造という偉人、ただ一人!



嫌な考えが頭をよぎった。

その覇道鋼造の孫が今俺と同じぐらいだということを考えると、

真逆! まさかまさか!

「い、今CE何年何月何日ですか!?」

「……CE? 何なのです、それは?」

CEを知らない。間違いない。確定の色が濃厚だ。

……俺は、過去に来ているのか!?



唐突で不可思議な理不尽が、俺を襲ってきた。





その後のことはあまりよく覚えていない。

少なくともインパルスの無事は確認した。

修理でもしたのか、ちゃんと全てが問題なく動いた。

どうやって修理をしたのか謎だが。

その後が、身辺を整えたり住居のこととかいろいろありすぎた。

一応財閥はある程度支援はしてくれる。

もとの時代に帰るためには力を貸してくれるが、

それでも生活の為には近いうちに働かなきゃならない。

で、最大のポイントは。

この時代が、CE成立のさらに前である西暦であること。

一先ず、暮らしに慣れることが先決だ。

皆の時代に戻るために、ひとまず今を生きよう。



で、今俺は道案内の人に連れられ、このアーカムシティという街を散策している。

服も買って、最低限のものを揃えてもらって。

青年の方――九郎といったか――は、その重荷で潰れそうだが。

「あの……俺が持ちましょうか? やっぱり自分の荷物ですし……」

「いや、このままで良い。

 あやつにトレーニングを課していると思えばよいだけだ」

いや、潰れそうなんですが。もういかにも。



少女の方は確か、アル・アジフの化身とか言ってた。

なんでも魔導書の精霊だとか。

といっても、俺にはよくわからないが。

本であるという証拠も見せられた。

タネも仕掛けもなく、半身を紙の束にした。

……どうやら、この時代に慣れるには相当の時間が必要なようだ。



「あ、アルぅ? こんなに揃えるもん多かったか……?」

「黙ってキリキリ歩け。なに、あとは仮の住まいに置けば済むことだ」

一人で持つにはいくらなんでも重すぎないかという量だが、

まだ話ができるくらいなのか。だいぶ鍛えているみたいだ。



「しかし、そろそろ昼食の時間だな。

 今日こそはまともな飯を頼みたいものだが」

「まともな? 今まで何を食べてたんです?」

返ってきた言葉は。

「そこらへんにあるものを……」

「何なんですかそれは!?」

そのあとさらに、返しに「お前は猫を食ったことがあるか」と言われて押し黙ってしまう。

どれだけ極限状態なんだ、あんた達は。

「仕方ない。ライカさんのとこにでも行くか」

「ライカさん?」

「ああ、この近くの教会のシスターさ。孤児の世話もしたりしている」

「どこぞの極貧探偵の世話もな」

「それを言うなって!?」

しかし、本当にこのふたりは口喧嘩が多い。

むしろお笑いに近いような気がするが。とりあえず仲がいいと捉えておこう。

「そうだ、確かお前を見つけた時もライカさんの教会の前だったな」

「汝の仮の住居も近くにある。理由があるなら、少々の寄り道ならば問題はあるまい」

「そうだったんですか。だったら、俺も行かないと」

少なくとも、会う必要はある。

謝るのか感謝の言葉を伝えに行くのか、どちらかとなると困るが。

というわけで、俺もその教会に向かうことになった。



「ライカさーん、めしー」

いや、一言目がそれなのか。

「めしー」

さらに続くなよ魔導書。



教会の中では、三人の子供が遊んでいた。

ひとりは女の子みたいだ。

「あ、九郎だ!」

「ライカ姉ちゃんならおでかけ中だよ?」

「……っ」

三者三様。

どうやら女の子の方は人見知りが激しいようだ。

「こいつらはジョージ、コリン、アリスン。

 さっき言ってた子供達さ」

この子達か。

こんな幼い子が親の温もりを奪われた。

孤児。

この子達も、俺と同じような境遇だったか。



―――思考が暗転しかけたとき、

「お兄ちゃん……?」

と、子供らしい純粋な瞳で見つめてくる。

このアリスンって子、どこかマユのことを思い出したりする。

いや、性格違いそうだし年齢もあわなそうだけど。

「おなまえは、何ていうの?」

「ああ、俺は……シン・アスカ。シンでいいよ。

 この近くに住むことになったんで、よろしく頼むよ」

「シンお兄ちゃん……」

「よろしくな、シン兄ちゃん!」

「シン兄ちゃん、時々でいいから遊びにおいでね」

え……っと、最初のがアリスンで、次がジョージ。最後のがコリンだったか?

一応、すぐ頭には入りそうだ。



そんな中、誰かがこの場に入ってきた。

「ただいま……あら、お客さん?」

『おかえりなさい、ライカお姉ちゃん!』

三人の声が揃う。この人がライカさんか。

「ライカさん! ちょうどよかった、実は……」

九郎が話を――俺のことなんだろうな――切り出そうとした時。

「九郎ちゃん……」

うわすっげえ憐憫の目。

「嗚呼、ちゃんと仕事が見つかったと思ったら、

 失敗に失敗続きで天引きに棒引き、

 結局前とほとんど変わりはないわけね。そうなのね。

 このライカ、やっと九郎ちゃんが安心して生活できると信じていたのに。

 結局何がどうあれたかられて絞り尽されるのね。

 あまりにあんまりだわぁ。よよよ……」

「そういうことじゃなくて!

 いや確かに当たっているところも多分に……だから違うって!」

当たってはいるんかい。少しは否定しろよ。

「今回は此奴の件でここに来た。

 此奴が、あの時の機械人形に乗っていた人間ぞ」

「ど、どうも……シン・アスカです。先日はすみません」



ライカさんはホッと胸をなで下ろして、

「よかったぁ。またたかりに来たんじゃないかと……」

「ということで、飯でも交えながら積もる話でもどうかな、と……」

「(゚д゚)」

こっち見んな。なんで九郎の方じゃないんだ。



「いただきます」

『いただきまーす』

さわやかな昼食の挨拶が、アーカムシティの空にこだまする。

この教会に集う子供達(+α×3)が、今日も無垢なる笑顔で、昼の食事を味わっている。

って、これはどこの女学院だよ。

しかし、実際こんな食事は久しぶりだ。

子供達がいて、母親役がいて。

それだと九郎が父親役か。少し頼りないが。

アル・アジフはとりあえず保留。



……家族、みたいだ。

「あらあら? どうしたの、シン君?」

聞こえていた? 声には出していないつもりなのに。

「シンお兄ちゃん……どうしたの?」

アリスンまで。

「そんなに美味かったのか? ライカ姉ちゃんのご飯」

ジョージの言っている意味がわからない。確かに美味いが。

「どうしたのさ、泣いたりなんてしちゃって」



言われて気づく、頬を伝う何か。

とても優しくて。

とてもあったかい。

そんな世界に、触れたからなのか。

いつからか、涙が溢れていたのに、やっと気づいた。



こんな―――こんなところにあった。

優しくてあったかい世界。

君を連れていく、あの時そう決意した、目指した世界。



それは、彼女への悔恨なのか。

自分が本当に欲しかったものなのか。

どっちにしろ。

この涙は、暫く止まりそうにはない。



こうして、俺のここでの生活が始まったんだ。

シン・アスカの………アーカムシティでの奇妙な生活が。



PHASE-1「The call of...me?」

  Phase shift down...





      ―次回予告―

 ひょんなことから、アルの断片の力に巻き込まれてしまったシン。

それは強大すぎる力。時空を操る力。

乱れに乱れた世界の理は、「あらざるべき出会い」を導き出す。

「イレギュラー」と「イレギュラー」。その出会いは、世界に何をもたらすのか。



次回、機神咆吼デスティニーベイン

  「DE MARIGNY'S CLOCE」

 憎悪の空より、来たれ! デモンベイン!!





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