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DEMONBANE-SEED_ですべのひと_02_3

Last-modified: 2013-12-22 (日) 19:21:55

大誤算だった。

奴が、鬼械神を招喚できるとは。

正直、生身での格闘戦なら分があった。

だが、自分が不利だと悟ったのか、急に離れて鬼械神を招喚してきた。

対抗してデモンベインを招喚したまではいいが、

今度は遠距離からチマチマと射撃をしてくる。

射撃武器がバルカンしかないデモンベインにとっては、

最悪の相性となる機体だ。

「せめて叩き落とすことができれば……

 アル、断鎖術式で届きそうか?」

「結論から言えば無理だ。どうあがいても先に此方のエネルギーが尽きてしまう」



やっぱか。かといって、今のデモンベインじゃ攻撃方法も何もなし……畜生、どうすりゃいいんだ!

「落ち着け、九郎! 汝が欠ければ誰が倒せるというのだ、これを!」

そう。ド・マリニーの時計の引き起こした状態のことは忘れていない。

メタトロンが都合よく来てくれるとは考えられない。

というか、それはアテにしてどうする。

つまりは、いわゆる絶対絶命。

「なら、どうすりゃいいんだよ! クトゥグアは駄目だろうし……」

「当然だ! アーカムシティごと滅ぼすつもりか!」

……もう本当にどうしようもない。

せめて、デモンベインが飛べたら。

せめて、飛べる機体があったら――

「……九郎!」

「ど、どうしたアル? 損傷が酷かったりしたのか……?」

「そうではない、あれを見よ!」

注意して、眼を凝らして。

確認した。

どこからか現れたそれは、戦闘機のような翼をもって、

あの鬼械神に突撃をかけているところだった。

銀色の、翼が。





奇襲。

敵が白い機体に集中して攻撃しているならば、

不意を衝いて敵を崩すのは効果的だ。

ウィンダムは火力は並で防御が頼りないが、せめて一撃持てば―――

背部の翼を破壊するまで持てばいい。

そうすればおそらく飛行不能になり、敵は落下する。

あとは近接特化の白い機体に立ち回ってもらえばいい。2対1ならば有利になるだろう。

先ずはミサイルを惜しげもなく放つ。足を止めなければ始まらない。

敵はそれをかいくぐり、接近。

構えるは右手にサーベル。

相手もいつの間にか実体剣を装備していた。シールドは正面に構え、サーベルを振り上げ。

勿論、正面からやり合おうとは思っていない。



俺は、そのまま機体を回転させる。

露になるのは、シールドで隠していた左手。

スティレット、というものらしい。投げつける。

敵の考えを追い付かせないタイミングでの攻撃。

爆発音が聞こえたその時も、まだ回っていた。

そのまま。



結果として、実体剣はウィンダムの脚部を切り落とした。

そして、ウィンダムの手元には―――シールドのみ。



刺さっていた。

斬られる直前に投げつけたビームサーベルは、完璧に翼を裂いて、

今もなお刺さっていた。



浮力の安定を若干奪った今。

チャンスはここしかない、そう思った俺は

マウントしていたビームライフルを取り出し、羽を狙い撃つ。

流石に何発も外れたが、一発は羽に命中、

投げつけたサーベルもろとも落ちる。



姿勢制御で精一杯なのか、

上昇はせずに、実体剣を投げつけてくる。

避けられるか。全力をかけてブースターを全開、回避―――。



信じられないことが起こった。

有り得ないことが起こった。

凍りついた。

パックのジェットブースターが。

最初から、離れれば負ける相手だったのは分かっていたが。

まさか、真逆、こんな幕切れになろうとは。

あとは、こちらだけが落ちるのみ。

幸いこの高度からではまだ大丈夫。機体は。

これではパイロットが、俺が墜落の衝撃で怯んでいる間に次の一撃が―――



「すまなかった」

来なかった。

「もう、大丈夫だ」

命を賭して、敵に挑んでくれた者に声をかける者。

大十字九郎。

「全く、唐突に現れては勝手に無茶をしおって」

相も変わらず辛辣な言葉を投げつける者。

アル・アジフ。



俺が見た光景。

それは、白い機体が黒い機体の羽を蹴り砕いた光景。



浮力の片方が得られなくなり、落下する黒い機体。

其処を見計らい、白い機体が何らかの動作をしだした。

陣が見える。

機体の後方、後光のような碧の陣。輝く魔法陣。

「光射す世界に、汝ら暗黒棲まう場所なし!」



俺は、何もかも忘れて見入っていた。

「渇かず、飢えず、無に還れ!!」

まるでこの光景を、この儀を、この口訣を

「レムリア―――」

忘れないように、心に、魂に刻みつけるように

「―――インパクトォォォォォッ!!」

見入っていた。





決まった。

あとは術式を送り込み、一言。

それだけ。

それだけなのに。

何らかの不安。

もやがかかった心。



……わからない。

いつまで妾を苦しめるのか。

あれは在らざるもの。

あれは有らざるもの。

そうではないか。

疑うのか。己を。

狂える詩人たる我が父により生み出され、幾百もの戦場を駆けた妾を。

それだけはならない。

だが、これは何だ。

頭から離れない光景は。

有り得ない、記憶にもない、こんな光景が。

何故、このような光景が―――



―――ならばエドガー、妾は汝と契約する



「…………!」

己の声が、聞こえた気がしたのは。



だが、今は振り払う。

そうでないと、先に進めるものも進めない。

妾の目的も、忘れたものではない。

だから。

だから、今は。

「―――昇華」



俺が飛び出してから、一分足らず。

たった二発の攻撃で、黒い機体を完全消滅させてしまった。



思うように動かない体に鞭を入れ、外に出る。



白い機体は近くまで下がってきていて、

黒い機体のあった場所は何らかのフィールドに覆われているようだ。

「……デタラメだ」

圧倒的な勝利。

射程内に持ち込めばこれほどまでに決まるものなのか。



白い機体から、誰かが出てきた。

近付いてくるその者は、銀の長髪の男と、その肩に乗った……何だコレ。

俺は二人(?)とも知らない。

微妙に警戒していたところに。

「……シン? お前、何でこんなところに」

え。

そうは言われても、迷いに迷って気づいたらここにというか、

そもそも何で俺の名前を……



「って。その声、九郎?」

「え、ああ。このカッコはちょいとワケありで……」

勿論、そんな格好は初めて見る。

しかしこの際どうでもいい。

他にもっと、訊きたいことがある。



「で、何でアンタはそんなものに乗ってるんだよ!

 さっきの黒い機体もわからない。どういうことだ?

 あいつらは一体なんなんだ? アル・アジフの断片と何か関係しているのか?」

「汝も少しは落ち着け」

小さいのが口を挟む。なんだ、アルか。しかし何故こうも小さく……

痛い。石を振り回すな。魔法だかなんだかので。

「とにかく、話は後だ。先ずはさっさとページを回収するか。

 シン、その機体は動きそうか? 動かないなら、このデモンベインに乗ってくれ」

デモンベイン。

それが、この機体の名前か。

でたらめで。

極端で。

火力と格闘戦能力ばかりが突出している。



これが、この巨体が。

魔を断つ剣。無垢なる刃。



デモンベイン。









遅かった。

事態は既に収拾がついたらしく、現場には誰もいなかった。

此処に行けば「デモンベイン」と会えるかもしれない。

これまでも、不可解な事態の起きる現場には必ず出没していた。

ならば今回も、と思い張り込もうとすればあっと言う間に時間が流れ―――この通り。

結局何の事態にもも遭遇せず、終わってしまった。

一般人ならば、助かったと思えるだろうこの事態。

私にとっては死活問題だ。

現段階で新聞社にかけあおうとしても到底無理だろう。

なれば、探すしかない。

もうすぐ覇道財閥の者が此処を封鎖するだろう。

せめて何か、謎の機体でもあれば記事を書ける可能性があるのに。



やっとめぼしい物を見つけた。

何かはわからないが、この大きさや形から

巨大ロボットに間違いはないだろう。

一瞬躊躇はしたものの、やはり仕事優先の思考が脳内会議で勝ち、

コクピットのようなものの近くに寄る。



……ひとりでに開いた。



中から人が出てきた時、私は硬直した。

動けなかった。

何故なら。

「う、動かないでください!」

理由は単純明快。というより見ればわかる。

銃で脅されている。

銃口を突きつけられている。

「僕の質問に答えてください」

少年の声。

私は頷くしかなかった。



「貴方は、地球連合もしくはザフト軍と関係ありますか?」

いいえ。

というより、初めて聞いたわそんな軍隊。

「……そうですか。 ここは何処なんですか?」

アメリカのアーカムシティです。

「アーカム……? 心当たりがありませんね。

 とりあえず、この機体を隠せるところはありませんか?」

……すみません、そこまで広い空間は心当たりはありません。

「そうですか。困ったな……

 後で厳重にロックでもかけて、一旦は置いておくしかないか……」

と、とりあえず話を聞かせてくれませんか?

「わかりました。その代わり、僕にも欲しい情報はたくさんあります。

 後でいいですから、僕に教えてくれませんか」

いいですよ。ところで、あなたの名前は……



「―――キラ・ヤマトです」



―――後日、覇道邸。

「瑠璃お嬢様、今朝の新聞でございます」

朝食の終わった瑠璃に、手渡される新聞。

「ありがとう、ウィンフィールド」

「ですが、一面のこの記事、どう対処したものでしょう……」



ちなみに、今のうちに言っておく。

その日、あらゆる方面で大騒ぎになった記事は。

ただちに発禁モノになったという。



「……ウィンフィールド」

「……はい」

「この記事を書いた人間と、記事内の人物に直接会いに行きます!

 早急に大十字さんとシンさんをお呼びなさいっ!」

何故こんな記事の存在を許したのか。

自らが真実を見なければ気が済まなかった。



その日のデイリーアーカムの一面。

「謎のロボット、出現 ―――デモンベインの戦闘跡」

その文責、リリィ・M・ブリッジ。





PHASE-2「DE MARIGNY'S CLOCK」

phase shift down...





   ―次回予告―

 生きていたフリーダム。

沸き上がる激情と、復讐への後悔がシンの心を揺るがす。

そして、アーカムシティを駆ける二つの闇。

その手を差しのべる先に、果たして誰がいるのか。

次回、機神咆吼デスティニーベイン

PHASE-3「Life goes on」

衝動のままに、駆け抜けろ! インパルス!!







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