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DEMONBANE-SEED_ですべのひと_05_2

Last-modified: 2013-12-22 (日) 19:29:41

 目覚めは最悪だった。
首は痛い、他の場所もなんか痛い。
そんな時に限って異変が起こるって、なぁにこれぇ。
調査のため、離れの孤島に向かうことになった俺達だったが……。
頼むから言ってるそばから吐かないでくれ覇道総帥。
ちなみにこの人、昨晩のこと何も覚えていないそうな。
おお、ほわいほわい。
俺、帰っても覇道総帥とは絶対酒飲みたくない。
「あら、お疲れ? だめじゃない、ちゃんと次の日に備えて休まなきゃ」
ぐったりしている俺に声をかけてくれるライカさん。
ああ、やっぱりこういうときに気遣ってくれる言葉はいいよなー。
正直ありがたい。

ここが船の上じゃなかったらの話だけどさ。

「ら、らららららライカさぁぁぁん!? 何でアンタが此処に!?
 俺達仕事で行くんだけど!? 遊びでやってんじゃないんだよ!?」
「(・3・) あるぇー?」
軽く流さないでくれます? こっち、必死なんですけど。
……やばいことになりすぎている。
魔術的な意味で戦えるのは九郎+アル。俺は……まだ不安。
はっきり言おう。
ザフトで赤服やってる俺は自力で何とかする以上のことをできるとしても。
いつもボディガードも兼任している執事さんがどれだけ強いかはわからないが、
覇道総帥とライカさんの二人を守り抜くって、ちょっとこれしんどくないか?
しかし、今更送り返すという時間も……。

悩んでいる暇は、なかった。というより、消し飛んだ。
突如襲来したそれは、自身が見たこともない―――



「マユでーす」
……マユ?
「……ごめんなさい」
マユ、なのか? 本当に……
「マユでーす。ごめんなさい……」
何を謝る必要があるんだ。お前が生きてくれれば、それだけで俺は……!
感極まって抱きしめようとした瞬間、
 な ぜ か 俺の顔面をマユの拳が捉えていた。
「いってえなあ! 何すんだよ、マy」
ダイニダァ。

「前が見えねェ」
「お姉さんにいきなり襲い掛かってくるからです。一方的な行為は許しませんよ、ぷんぷん」
マユはライカさんだった。つまるところ、俺は寝ぼけていたらしい。
あまりに気がつかないからって、人の携帯から勝手にマユの着声を流すってどうよ、しかしながら。
それでも効いた自分が恥ずかしい。
誰だシスコンって言った奴。そこに直れ、今すぐ正座しろ。
「……あれ。そういえばライカさん、俺の携帯はどこにあったんだ?」
「え? シンちゃんの横に流されて……」
ちょっと待て。水に濡れたんだよな。何で壊れなかったんだ?
ロイガー、ツァール……何かしたんだろうか。
「「何も干渉していません」」
ですよねー。
……本当に、どうなってるんだ、この携帯は。
ともあれ、探すしかない。皆それぞれ合流に向けて歩いているところだろう。

ここで、今までの状況を整理してみる。
まず、ディープワンとか深きものどもとか言われている怪物。
あれは、邪神崇拝の中の化物らしい。
デザイン的に、一瞬ジン・ワスプとかゾノとかの水中MSを
思い浮かべたのはおいといて。
そいつらが俺たちの船を攻撃し沈め、そのせいで散り散りになった。
最大の懸念は、俺とライカさんのように皆誰かと行動できているか、ということ。
一人で孤立するのが一番危険、そして合流は最優先だ。
俺ができるのは、ロイガー、そしてツァールの力を借りた戦闘といいたいが、
生身での招還は今まで成功したことがない。
しかし、それで怯んでもいられないのがこの状況の困ったところ。
今ライカさんを護れるのは俺だけだ。絶対に失うものか。絶対に―――!!



「まずいな……」
タイミングの悪いことに、雨が降ってきた。
俺はともかくとして、ライカさんがまずい。
水着のまま雨に打たれ、そのままだと体調を崩しかねない。
この状態でそれはまずい……。
俺は拳銃と予備弾倉を上着から取り出し、制服をライカさんに手渡す。
「これ、せめて雨よけに」
「……シンちゃん、いいの?」
頷き、銃を構えながら先行する。
ここには何が潜んでいるかわからない。常識が通用しない相手もいる。
これは訓練ではない、戦場だ。
白兵戦の実戦がしょっぱなから化物なんて思わなかったが、
ここでしくじるわけにはいかない。

慎重に歩を進めること十数分。
洞窟と思わしき場所に辿り着いた。
「ひとまず、雨が止むまではこの中に居よう。
 このまま雨中を探索するよりかは、幾分かマシだ」
「主、ここから先に魔力の気配を感じます」
「おそらく深きものどもの拠点かと」
俺が持ちかけた提案に、ロイガーとツァールから飛んだ言葉。
そうだ、そもそも何のために船で出立したか。
「敵の襲撃時警戒する方向を絞ることが出来る。
 そのまま気配を追っていけば皆とも合流できるチャンスはある、けど」
ここは奴等のフィールドだ。どこにだって隠れることは出来る。
それならば、少しでも警戒の方向は絞れたほうがいい。
だが、迂闊に俺達だけで敵の本拠地に向かうのは危険だ。
俺一人だったら……迷わず中に突っ込んでいった。断言できる。
「ロイガー、ツァール。警戒を頼む……ライカさん、大丈夫?」
「私より、シンちゃんは大丈夫?」
死角を任せ、ライカさんを囲みながら……って、俺?
「何で俺なんですか、ライカさん」
「シンちゃん、そんなにガッチガチじゃあ駄目よ。
 四角い思考のシンちゃんに護られても、不安なんだから」
「ひどいこと言うなちくせう!?」
むう、と振り向いたそこに、ツンと突き立てられた彼女の指。
「うん、その方がよっぽどシンちゃんらしい」
俺を見つめながら微笑む彼女。ああ、これは九郎が頼りにするのも分かる気がする。
一瞬思考停止の後、真っ赤になりながら前を向いて。
「い、行きますよライカさんっ!?」
ああもう、と前に進みながら。少しだけ、張り詰めた思考が和らいだのを感じた。
本当に、この人には敵わない。
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