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DEMONBANE-SEED_種死逆十字_第12話1

Last-modified: 2008-05-03 (土) 21:03:35

『たああああ!』
 連結したエクスカリバーを両手にソードインパルスが斬りかかる。大きく、何度も振り回される連結刃を、オーガアストレイは紙一重でかわし続ける。
『クソ、当たれぇ!』
「闇雲に振り回すだけでは当たらぬ! 敵の動きと己の剣筋を見極めろ!」
 痺れを切らし、振りかぶって全力で振り下ろされた一撃も同様にかわされる。逆に力を込めた刃は地面に深く突き刺さり、インパルスに大きな隙を生む結果となる。
「笑止千万! 剣に振り回されるなど論外ぞ!」
 オーガアストレイが刀を抜き、斬りつける。先刻のインパルスの比ではない目にも止まらぬ連撃が、立て続けにインパルスの関節を切り裂く。
 実体剣ではVPS装甲を斬り裂くことは出来ない。だがフレームが装甲に覆われていない関節部ならば、その理屈は通用しないのだ。
『うわあぁ!?』
 両腕を落とされたインパルスが、勢いよく背中から引っくり返った。
「未熟者」

 
 
 

『なんとか距離を取らなければ……!』
 後退しながら、ブレイズザクファントムがライフルを連射する。大半が足元を狙った牽制だが、一発がオーガアストレイの肩をかすめる。
「む……」
 オーガアストレイが足を止めた瞬間、ブレイズウィザードからミサイルが放たれる。十数発のミサイルが大きく弾幕を広げ、オーガアストレイに迫る
 何発かは迎撃出来ても、全弾回避は不可能。それを見切ったティトゥスは、躊躇することなくフルスロットルで前進した。
 正面からのミサイルが四、五発肩や肘に命中するが、ダメージを無視して突っ切る。残りのミサイルを置き去りに、ザクとの距離を一気に詰める。
『しまっ……!』
 素早く武器を持ち替えようとするザクだったが、もう遅い。ヒートホークを掴もうとした右腕を刀の一閃が斬り落とす。
「判断は素早く正確。しかし思い切りが足りんな」

 
 
 

『当たって! 当たって! 当たってったら!』
「標準だけに頼るな! 敵を捉えるのではなく、相手の動きを捉えろ!」
 ガナーウィザードから放たれる高出力ビームをかわし、ガナーザクウォーリアとの距離を詰める。重装備のガナーザクには、回避も後方に逃れる術もない。
『近寄られたっ……もうこれ邪魔!』
 ウィザードを強制排除し、ライフルを構えて連射するザク。オーガアストレイは突撃を止め、足の動きと脚部スラスターで回り込むようにザクの側面へ動く。ビームはオーガアストレイの側面すれすれを通り過ぎていく。
 がら空きの側面へ、オーガアストレイが斬り込もうとするが、
「っ!」
 振り向いたザクが素早くライフルを撃つ。頭に狂いなく放たれたビームを、咄嗟に引いた刀身で弾く。
 二撃目を撃たれる前に、今度こそ止めることなく剣を振り下ろす。一刀両断。
「……ふむ」

 
 
 

「流石といったところか」
 無数のビームを、ジグザグの軌道でオーガアストレイはかわし続ける。前方の空には、両肩に砲門を展開したセイバーの姿。
「……疾っ!」
 降り注ぐ攻撃の最中、肩に当てた右手の刀を高速で振りぬく。セイバー目掛け飛ぶ、鎌居太刀・空の真空波。セイバーが回避行動に移る、攻撃が一瞬途切れる瞬間に空の左手を振り跳躍、そしてフル・ブースト。
『くっ、だがまだ距離は十分……何!?』
 態勢を立て直したセイバーの頭部に何かがぶつかった。跳躍の寸前左手で投げていたアーマーシュナイダーだ。VPS装甲にダメージはなかったが、視界が隠れた一瞬に距離は縮まっている。
 ライフルと盾を捨て、ビームサーベルを二刀流に構えるセイバー。自ら距離を詰め先手必勝とばかりに振り下ろされたサーベルを、柄を持つ腕に腕をぶつける事で止めるオーガアストレイ。
「流石だが……まだ甘い!」
 セイバーを思い切り弾き飛ばし、がら空きになった腰部に一閃。二つに分かれたセイバーが落下していく。
「早々若者に抜かれるわけにはいかんのでな」

 
 
 

 シミュレーター用の機器を繋いだオーガアストレイから降りるティトゥス。エイブス班長に二、三託け、
格納庫からパイロットの控え室に移動する。
 そこにはパイロットスーツも脱がず、椅子や床にぐったりと倒れ伏すシン、レイ、ルナマリアの姿。一人少ないなと部屋の窓から格納庫を見渡せば、開いたセイバーのコクピットにアスラン。ヘルメットを脱ぎ、息が荒いのが遠めにも見て取れた。
「……拙者もだが、まだまだよな」
 ため息まじりに、ティトゥスは呟いた。

 
 
 

第一二話『力の矛先』

 
 
 

『──で、そんな疲れた顔してるわけか』
 モニターの向こうでカガリが苦笑する。アスランもまた彼女へ苦笑を返した。
 カーペンタリア基地でわずかな休息を過ごしていたミネルバに、先日新たな任務が言い渡された。
 スエズ攻略中の友軍支援。潜水艦一隻と共に、前線であるマハムール基地へ向かえというものだった。
 肩書き上は連合の支配下だが、もともと独立の気配が強かったため協力を強いる連合への反発は強く、実際は内戦状態の様相を呈している。そこにザフトも入り込み、多くの勢力が入り乱れ複雑な状況を作っていた。
 FAITH着任早々厄介な仕事を、とタリアがぼやいていたのをアスランは思い出す。
 そして現在、ミネルバは潜水艦ニーラゴンゴを随伴させ海上を航行中なのだが……任務中とはいえ、当然パイロットに訓練はある。
 主にシミュレーターによる模擬戦だが、最近それはティトゥスと他の者達の対戦が中心となっていた。
 ティトゥスは現在のミネルバ所属パイロットの中で、最も実戦経験豊富な人物だ。戦闘能力はもちろん、相手の動きや戦法、欠点を見抜く力にも優れている。
 実力ある相手との戦闘、そして露呈した欠点の改善は、力量底上げの近道だ。何時の間にやら訓練はティトゥスが教官、それに次ぐ力量を持つアスランが補佐(といってもしごかれるのは一緒)という形式が出来上がっていた。
「しかも本人は訓練が終わった後、平気な顔でエルザと模擬戦してる……しかも生身で。とんでもない人だ」
 アスランの言葉に、もはやため息をつくこともなくカガリは納得したようだ。彼を含め、異邦人達の規格外さには二人ともとっくに慣れてしまっていた。
「けどそっちも大分疲れてるみたいだな。君のほうもあまり顔色が良くない」
『国内でも国外でも、会議会議の連続だ。無茶を言う連合を押さえるのも大変でな。ユウナやミナも走り回ってる。わたしだってこの通信が終われば、面倒な仕事に逆戻りだよ』
「君ならやれるさ、頑張れよ。キツければユウナ達に助けてもらえばいい」
 わずかな間のたわいないやり取り。この瞬間だけはカガリもアスランも、背負っている役目から解放される。
 だが今は、長々とそれに浸っている場合ではない。少しの談笑の後、アスランは切り出した。
「それよりも、今回はどうしたんだ? 顔が見たいから呼び出したわけでもないんだろう?」
『ああ。火急、というわけでもないが耳に入れておきたい用件があってな』
 アスランの言葉に、カガリの顔つきがオーブ首長のそれに変わる。
 オーブでの改修により、ミネルバ通信室ではオーブとの通信が可能となった。提示報告やさして重要でない通達はメール形式で簡素に行なわれるが、直接の会話で伝えなければならない場合などはメールで互いの都合を確認し、今のようにリアルタイム通信を行なうことになっている。
 メールも通信も、外部へのスクランブルはもちろん内部でもセキュリティがかかっている。経路接続のパスコードを知るのはカガリやアスランを含む、オーブとミネルバ合わせて十人弱というごく少数だ。
 それだけ念を入れなければならないほど、この秘密の協力関係は危険なものなのである。
『アークエンジェルの指名手配が完了したのは聞いているだろうが……有力な情報があった』
「本当か!」
 身を乗り出すアスラン。落ち着くよう言って、カガリは話し出す。
『南アフリカ合衆国からの情報だ。数日前かの国の南西海中で、周辺警備隊未確認艦の反応を確認。停船勧告には応じず、やむを得ず強攻策を取ろうとしたところ抵抗。艦船二機を中破、MS三機を大破させて逃走したらしい』
「……本当にアークエンジェルとフリーダムなのか?」
『天候が悪かった上あっと言う間だったらしいからな。記録映像も荒かった。ただ大きな翼を持ち、圧倒的な戦闘力を持つ機体といったら』
「フリーダムを連想させるのは当然、か……その後の行方は?」
『スカンジナビア王国方面に向かったのは間違いないらしい。あちらにも各方面から問い合わせてるが、今のところ情報無しだ』
 アスランはそうか、と言って黙る。外面は落ち着いているが、内面は荒れに荒れていた。関係のない国への明確な攻撃行動。もはや事はオーブやザフトだけの問題ではなくなった。
 もちろんカガリも、当然気付いている。
『死者だけはゼロ、というのがアイツらしいよ。だが、そんな事は問題じゃない』
 苦々しげな顔を片手で覆い、カガリが吐き捨てた。苦悩と憤りが混じった、低い声だった。
『これでオーブだけでなく、世界中で完全にテロリスト扱いだ。アイツら、もうどう転んだってタダじゃすまないぞ』
 沈黙が通信室を包む。かつての仲間の理解できぬ行動に、アスランは拳を握り締めた。

 
 
 

 剣戟が銃身にぶつかり、火花が散る。直後には刃と銃は離れ、ティトゥスとエルザの間合いは大きく広がった。
 カタパルトデッキの硬い床を踏み込み、ティトゥスが上下に広げた双刀を十字に構えて駆ける。眼前で、エルザがガントンファーを振り上げ迎撃の態勢を整えていた。
 剣閃。響く金属音。散る火花。風鳴り。金属音。火花散る。音と火の連続、連続、連続。
 四つの鋼鉄が、延々と刃鳴を散らす。見えるのは光のみ、実体はもう常人には見えぬ速度に達している。
 鳥の声も潮風も、遠めに見物するパイロットやメカニック達の視線も奇声もギターもティトゥスは既に知覚していない。ただ目の前にある、鋼のぶつかり合いにのみその意識は集中している。
 ──でなければ、押し切られる。
 視界を銀が覆う。顔面に迫る右のガントンファーの銃底。顔と背を反らせ避ける。空気の流れが髪の毛を数本飛ばす。当たれば体ごと吹き飛ぶ大振りな一撃。隙も大きい。
 背の反った状態のまま横っ腹目掛け左の刀を振るう。エルザの右腕が引き戻るが遅い。
 吸い込まれるように刀は腹部に斬り込もうとし──その軌道が突如強い力で止まった。ガントンファーはまだエルザの眼前までしか戻っていない。気付いた時には顎に鈍い衝撃が走り、ティトゥスは強制的に上を向かされた。
 右肘と右膝で刀を挟み止めたエルザが、左の蹴りをティトゥスの顔に叩き込む。その勢いのまま肘と膝を離して宙返り。人間には不可能に近い無理矢理な動きを易々やってのけた機械人形は、着地と同時にグッと両手を後ろに引き絞る。
 顔を引き戻したティトゥスは、今度は腹に衝撃を受ける。大きく吹き飛びながら、その視界には両手を掌底の形で突き出したエルザの姿が映った。
 ティトゥスは何度か甲板に体を打ちつけ、何とか立ち上がろうとする。だが息も荒い眼前に、底の見えぬ深い闇をたたえる銃口が突きつけられた。
「チェックロボ」
「……参った」
 刀を鞘に戻し、ティトゥスは小さく両手を上げた。

 
 
 

「エエエエェルザァァァァァァ! 流石、流石我輩の最高傑作! この結果は当然であろう!
 とはいえ無事であるか無傷であるか五体満足安産祈願であるかばっ!」
「エルザちゃんお疲れさまー!」
「エルザちゃん怪我してない?」
「き、貴様ら、我輩を足蹴にしてただで済むと思っているのかこの愚民どもがアーーーーッ!」
「うっせ■■■■! エルザちゃん喉乾いてない? ジュース買ってきたよ!」
「カッコよかったぜエルザっち! あ、アバヨ東」
「エルザ様ー! 踏んでくださーい!」
「エルザはロボットだから喉は乾かないロボ。でもくれるなら貰うロボ」
 ■■■■を踏み倒しエルザに駆け寄るメカニック陣。いつもながらアイドルに詰め寄る群集のような光景に、ティトゥスはため息をつく。追い討ちまで受けているウェストを哀れむ気はサラサラない。
「お疲れ様です」
 ティトゥスの傍にはシン達パイロット三人がドリンクとタオルを持って来ている。礼を述べて水分を喉に流し込み、汗を拭う。水分と一緒に体を伝う清涼感が心地良い。
「ホントすごいですよ。ロボットのエルザちゃん相手に生身であれだけ出来るなんて」
「まだまだよ。道を極めた魔術師ならエルザでも太刀打ち出来ぬ。せめて五分五分に戦えるほどにならねば」
「今回で三勝九敗。先は長いようですね」
 淡々というレイにティトゥスは頷く。ルナマリアは横でマジッスかという顔で冷汗をかいている。
「あの、ちょっといいですかティトゥスさん」
 今まで黙っていたシンの言葉にティトゥスは振り向く。不安げだが、何か決心を感じさせる真剣な表情。怪訝に思いながらティトゥスは聞き返した。
「どうした、シン」
「頼みがあるんです。俺に──」
「おーいティトゥス! データの整理が終わったぞー!」
 格納庫から響いたエイブスの声に、シンの言葉が遮られた。
「悪いがその話は後だ。先の模擬戦を検討してくる……終わったらそれを踏まえて再戦を行なうから、休んでおけ」
 その言葉に程度の差はあれ、三人全員がゲンナリとした表情を見せる。小さく笑みを浮かべ、ティトゥスは格納庫へと足を向けた。
 本人も気づかぬうちに、教官職が板についてきているようだ。

 

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