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DEMONBANE-SEED_種死逆十字_04_1

Last-modified: 2013-12-22 (日) 05:22:20

「……油断したか」

 目を覚ましたティトゥスが最初に確認したのは、自分が地面に倒れていることだった。とりあえず立ち上がりながら、回転し始めたした脳が状況の確認を始める。

 身体には先程の異形達と戦った際の傷以外にも、火傷や傷が増えている。服もかなりボロボロだ。しかし軽いとは言えずともそこまで大きな傷では無く、むしろ戦闘で受けた左肩の傷の方がよほど深い。

 次に周囲を見渡す。周囲には3m前後のクレーターが二つ出来ていた。更に辺り一帯に散乱した、焼け焦げた細かい金属片。どうやら先程倒した二体の異形が自爆し、自分はそれに見事巻き込まれたらしい。

(咄嗟に飛んでおらねば、死んでいたかもしれぬな)

 そう思いながら視野を更に遠くへと広げる。まだ煙や火の手は多少上がっているようだが、そう大規模というものでもない。サイレンや人の叫び声もまだ聞こえるが、当初と比べれば随分と小さい。どうやら事態はかなり収束しているらしい。

「拙者はどれほど意識を失っていたのか……む?」

 足を踏み出すとふと、何かが足先に当たった感覚。見るとそこには刀身の半分以上が無くなり、柄もボロボロになって転がる己の刀の姿。異形に突き立てられたまま、あの爆発の中心にあったのだから当然の有様、むしろ原型を少しは留めているだけでも奇跡だろう。

「……長い間、ご苦労であった」

 刀を拾い上げ、謝意の言葉をかけて鞘に戻すティトゥス。魔術師だった頃のティトゥスは刀など代えの利く道具として折れては捨てるを繰り返していたが、今の二振りはこの世界に飛ばされてからの二年余り、使い続けてきた物だ。長く共にあり、何度も助けられてきた……流石に愛着も湧くというものだ。

「其処に誰か居るのか!?」

 そこに突然飛んできた叫びに少々驚きながら、ティトゥスは声の聞こえた方向に目を向ける。そちらには数人のザフト兵達が此方へと走ってくる姿があった。

「うわっ、なんだこれは……それに貴様、何者だ!?」

 ザフト兵達はまずその場の惨状に驚き、直後どう見てもザフト関係者には見えないティトゥスに銃を構える。ややこしくなりそうだな、と苦々しく思いながらティトゥスは説明の言葉を考える。このままでは最悪、強奪事件の容疑者にすらされかねないと最悪の状況すら考えたが、

「あっ!お前、いや貴方は確か、アスハ代表と一緒にいた……」

 ザフト兵の一人が言った言葉に、少々安堵して胸を撫で下ろしたティトゥスだった。







「これはこれは……なるほどなるほど。これでは無理もない、ああレギオンでは無理だろうさ」

 ガーティー・ルーの一室──ウェスパシアヌスの為に空けられ、彼の手で数多の機器が設置されレギオンの整備、調整用の部屋となっているそこで、ウェスパシアヌスは大型の端末機器に備え付けられたモニターに映る映像を見ながら顎鬚を撫でた。

「やはり、やはり君も此方に来ていたか。長い間見つからないからすっかり来てないものと思っておったよ。いや懐かしい、懐かしいなあ、ティトゥス」

 モニターには様々なアングルから撮られたティトゥスの刀を振るう姿が映り、端末から伸びた何本ものコードは端末の前に立つ三体のレギオンに繋がれている。

「まさかオーブに居たとは、いや傭兵という可能性もあるかな? どちらにせよ軍、戦場関係に身を置いていたか。まああ奴らしいといえばらしい。盲点だったな、迂闊だったな。考えればすぐ分かることだった。民間の怪事件ばかり調べてそちらの類はさっぱり調べておらなんだからな、見つからぬわけだ」

 ウェスパシアヌスはかつての同胞の姿を眺めながら、楽しそうに独り言を繰り返す。今自分の居る船が新造艦『ミネルバ』による追撃、攻撃を受けている最中などという事は、とうに頭から消えていた。自身の目的が失敗した時点でこの船の行く末などどうでもよく、そんなことより『久方ぶりの』同郷者との出会いの方が彼の心を刺激していた。

 だが映像を見ているうち、ウェスパシアヌスはその顔に疑惑の表情を浮かべた。

「……妙だな。確かに勝利してはいるが、レギオン相手にこのザマとは。ティトゥスならこの程度一瞬で始末出来る筈。しかしこの動きの甘さ、こちらに来た時点で力を喪失している点を差し引いても……まさか、魔術を使っていない? いやまさか、何故、何故そんなことをする必要がある? 有り得ん。と、なると魔術の鍛錬を怠っているのか? いやしかしあのティトゥスだぞ? あれが自己鍛錬を怠るとも思えんしなぁ、ふぅむ……」

 ウェスパシアヌスは頭を捻るが、一向に納得のいく答えはでない。結局堂々巡りに陥る前に彼は思考を中断したが、そこでふと思う。

 ティトゥスも此方に居た。これまで見つけた自分を含める『同郷の者達』、その余りにあからさまな共通点は、余りにも露骨な何かの意思の介入を感じざるを得ない。

 まあその介入している者の正体はまず捨て置く。どうせ考えても分かるものでもない。それはともかく、もし此方に来ている同郷者達の共通点が、自分の想像通りであるならば……残る『逆十字』は、二人。

 彼等もまた人知れず自分達と同じように、この世界でもその外道の業を極めんとしているのだろうか。もしくはやはり、自分達とは違いこの世界には来ていないのだろうか?

「さて、君等はどうしているのだろうなあ、兄弟……そして、『暴君』よ」







「ねぇロウ〜、まだ地球圏には着かないの〜?」

 地球へ向かう一隻の船──2年程前に火星へと旅立っていた、ジャンク屋組合所属の船、『リ・ホーム』だ。

「しつこいな樹里、もう何度目だ? まだまだプラント領域のド真ん中くらいだよ」

「だって〜早くリーアムやプロフェッサーに会いたいんだも〜ん」

 そのブリッジでジャンク屋の二人、ロウ・ギュールと山吹樹里はのんびりとした会話を交わしていた。火星に居た彼等は『ある人物』の導きにより、地球への帰路へついている最中であった。

「まあそりゃオレもそうだけど……なんだ?」

 ロウがなんともなしにブリッジの外、虚空の宇宙に目を向けた時、彼の目に『何か』が見えた。同時にブリッジにけたたましいアラームの音が響く。

「どうした、ジョージ!」

「キャプテンだ!おっとそれどころじゃない!本艦前方に大型の熱源反応!」

 ブリッジの艦長席に突然男性の姿が現れる。脳髄のみをメインコンピュータと繋ぎ、この船の艦長となっているホログラム、キャプテンGGだ。

「熱源?何だ?」

「分からん、該当データは一切無い。しかし大きさからして、これは船か、いや──」

「ね、ねえロウ……何、あれ……?」

 問うロウにキャプテンが神妙な顔で返す中、樹里がロウの服をつまみながら、震えた声で正面を指差す。

 その先に見えるのは、くすんだ鉄の色をした何か。まだブリッジからは小さくしか見えず、正確な形も視認できない。しかしその場の全員が、樹里の驚愕の理由が理解できた。

 レーダーを見る限り船と物体の距離は相当ある──が、『この距離で』あの大きさなのだ。そして『それ』にリ・ホームが近付いていくにつれ──彼等の驚愕は言葉すら出せないものとなった。



 『それ』は超巨大だった。

 『それ』は異形だった。

 『それ』は重厚だった。

 『それ』は歪であり、かつ簡素であった。

 『それ』は凶器であり、狂気であった。



 『それ』の形をあえて、あえて完結に表現するとするならば──







 ──巨大なドリルが幾つかくっ付いた、巨大なドラム缶であった。







「…………」

 全員、ホログラムのキャプテンですら無言で目をゴシゴシと擦る。そりゃ自分の目を疑いたくもなるだろう。全高は40mを超え、50mほどはありそうなドラム缶が宇宙空間に浮いてたら。

「……あ〜、あの物体から全周波で通信が送られているが、繋ぐか? ……繋ぐぞ」

 通信が来てまず我に返ったキャプテンが確認するが、残り二人が放心したままなのを確認して、独断で通信を繋いだ直後──最初に飛び込んできたのはけたたましいギターの音と、男の叫び声であった。

『さあ!この回路を今すぐ、今すぐ我等が『スーパーウェスト無敵ロボ28號ν−FC〜一部専用コントローラーが使えないのは仕様です〜』に取り付けるのである! そうすればすぐさま性能数段アップ、移動力はなななぁんと+4! とっととこんな終焉の銀河からはオサラバであ〜る!』

『わ〜すごいですウェスト様〜♪ ……えっと、回路なんですかこの四角いの? 何か書いてありますけと……えっと、星をみるひと?』

『それはタダのクソゲーのROMロボ。ちょっと酸素欠乏症にかかったからってラリってんじゃねえロボ、博士』

 ドガバキゴスゴキグシャ!

『逃げるの選択肢がないィィィィィ!』



 ブツッ!ツー、ツー、ツー──



 リ・ホームに届いた、やけにハイな男の叫びとおっとりした少女の声、そして妙な語尾のついたとにかく無感情で淡々とした少女の声──その通信は何かエグイ音と一際大きな男の絶叫を最後に、本来流れる筈のないレトロな発信音の後、途切れた。

「……すっげェ! 物凄くデケェぞあれ! それに見ろあれドリルだぜドリル!」

「……ああ〜また始まった〜、まったくロウってば〜」

「……まあロウはこういう奴だ、仕方ない」

 はしゃぐ者、呆れる者、達観する者──表した感情は三者三様、しかし共通していたものが一つ。彼等は全員、『あの中の人達』について考えることをやめていた。





 ──再び通信が繋がったのは五分後だったという。





 第四話『NEWCOMERS AND GODS』









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