Top > DEMONBANE-SEED_種死逆十字_07_2
HTML convert time to 0.008 sec.


DEMONBANE-SEED_種死逆十字_07_2

Last-modified: 2013-12-22 (日) 05:33:36

 ティベリウスの襲撃から丸一日、アメノミハシラはその傷痕こそ残しつつも、普段通りの平穏を取り戻しつつあった。

 元々様々な勢力からちょっかいを掛けられてきた宇宙ステーションである。住人達にもそれ相応の覚悟や耐性が既に備わっているのだ。

 ……とはいえ、流石に全く平気か?と問われればそうではない。

 これまで鉄壁の守りを誇っていた防衛機構は手も足も出ず、更に初めての侵入者を許し物的、人的共に被害は甚大。

 殺害された人員の大半がゾンビにされ哀れな末路を遂げたのだ。遺族は勿論、全ての住人が悲しみと憤りに身を震わせ……同時に、難攻不落を保ってきたアメノミハシラを容易く半壊せしめた


『魔術』という外法の力に恐怖した。

 いつかまた同じことが起こるのではないか?その対策は?口にこそ出さないが、一度間近に迫った不条理極まる現実に、民の不安は徐々に膨らんでいくばかり──

 ロンド・ミナ・サハクは選択を迫られていた。近々アメノミハシラの今後の方針を変えねばならぬとは考えていたが、その指し示すべき道をどの方向に定めるべきか……


 彼女自身の人生に、そして人類全ての未来に大きく関わる事になる決断を、彼女は目前に突きつけられ──その決断の為に、ある行動を決意した。





「護衛を依頼したい、と?」

「うむ。我はある事情でちと地球に降りねばならぬ。その間、護衛も兼ねて我と同行してもらいたい」

 突然執務室に呼び出されて告げられた依頼に、ティトゥスはデスクを挟んで椅子に座るミナを怪訝そうに表情を向けた。

「……随分と突然な話だ。襲撃からそう日を置かずして、主が城を離れると?」

「ここの者達はそうヤワではない、我が居らずとも仕事を疎かにすることは有り得ぬ。それに今回の件は色々あってな。今後のアメノミハシラの行く末に大きく関わるかもしれんのだ……とはいえ、正直、我個人の考えとしては、あまり期待できるわけではないのだが……」


 彼女らしからぬ、どうにも遠回しで要領を得られない言葉にティトゥスは首を傾げる。何か、ややこしい事情でも在るのだろうか……しかし。

「確かに拙者は傭兵だ……だが今の拙者には」

「やる事がある、と言うのだろう?アンチクロスを追うという」

 言葉を遮って飛んでくる、ミナのいつも通りな鋭い指摘。言葉を遮られたティトゥスが返答を思いつく暇すら与えず、ミナは次々と言葉を投げかける。

「この世界に巣食い、悪行を働いているであろうアンチクロスの足取りを追い、討つ──貴公やドクターの今後の行動指針を否定する気も邪魔する気もない。むしろ此方が頼みたい所だ……だがな、何かアテはあるのか?」


 ぐっ、と言葉を詰まらせる。それがティトゥス達の唯一にして、最大の問題だった。

 この世界に飛ばされた自分とティベリウス、こちらでウェスパシアヌスに造られたと思わしき人造魔導兵器『レギオン』、鬼械神とMSを融合させた『モビル・マキナ』、そして『ユニウスの魔神』の異名を与えられた真紅のリベル・レギス──現在までに確認された魔術、またはアンチクロスが関っていると思わしき事象はたったこれだけ、非常に断片的かつ僅かだ。


 そしてそれらから得られる手がかりは非常に乏しい。

 ティベリウスがレギオンを従えていたという点を考えると、ウェスパシアヌスとティベリウスが接触していると言う事。

 そしてレギオンやMM程の魔導技術の塊が造られているという点から、ウェスパシアヌスがかなり高度の魔導技術を使用、製造出来るだけの環境を持っているという事までは何とか読み取れる。


 だが、ここから先は疑問だけが続く。レギオンがアーモリーワンとアメノミハシラを襲ったのは何故か?

 それに協力していたMSが連合製であったという点から連合に協力しているのでは? 仮にそうだとした場合、アンチクロスが連合に協力している理由は? どうやって連合と折り合いを取っている?


 そして何故、レギオンはアーモリーワンでカガリとアレックスを狙った?──浮かぶのは疑問ばかり。

 何故アンチクロスがこの世界に飛ばされて来たのかという点、そしてユニウスの魔神に関してはそもそも何一つ分かっていない。

 正に手詰まり。逆十字の足取りを追おうにも、何を道標として追うというのだろう。

「と、とりあえず連合に目星を付け、傭兵として戦場を渡り歩きながら探りを入れようと……」

「凄まじく非効率的だな、それは」

 返す言葉も無い。ティトゥスは渋い顔で視線を落とした。

「まあそう落ち込むな。その点については此方も協力を惜しむ気はないのだ……入れ」

 ミナの一声に背後の出入り口が開き、男が一人入ってくる。その姿を捉え、ティトゥスが目を僅かに細める。

 ケナフ・ルキーニ。文字通り裏から情報を操る裏世界きっての情報屋。ティトゥスも傭兵として各地を転々としていた際、時折その名を耳にした事がある。

 ミハシラに滞在しているとは聞いていたが、直接顔を合わせるのは初めてだった。

「アンタがティトゥスか、異界から来た魔術師……ユニウスの魔神の片割れ。 顔を合わせるのは初めてだったな、ケナフ・ルキーニだ」

「……今は魔術師ではない。正確な情報を把握しておくべきだな情報屋」

「そうだったな」

 不敵な笑みを浮かべ歩いてくるルキーニに、ティトゥスは半ば睨みつけるような視線を向ける。

 それを意にも介さずルキーニは歩みを進め、ティトゥスの横を通り過ぎる際そっと声をかけた。

「……嫌いじゃない目だ。全く油断も隙もない、警戒心と満ち満ちた眼……ちょっとでも妙な真似をすればすぐさまその腰の刀に斬られちまいそうな緊張感だぜ」

「良くも悪くも、情報屋というのは腹の内が知れたものではないのでな……苦い経験も少なくない。

 警戒するのが当然になってしまっている。気を悪くするかもしれんが、御容赦頂きたい」

「結構。それぐらいは当然だからな」

 言葉を交わし再び足を進めるルキーニへ、ティトゥスは振り返る。ルキーニは笑みに僅かな満足感を滲ませ、ティトゥスの目からも心なしか僅かに警戒が薄まった。

「ルキーニ、情報は纏まったか?」

「ああ。まだ多少煮詰まってない部分もあるが、大方はな」

 ミナの前に立ったルキーニが、その手に抱えていた用紙の束をデスクに投げた。どうやら何かを纏めた資料らしい。

 それを手に取ったミナがその内容に目を滑らす。デスクから少し距離を置いて立つティトゥスの位置からでは資料最後部の裏しか見えず、その内容を確認する事が出来ない。


「……成る程な、この短期間でよくここまで纏めたものだ。ティトゥス、近くへ」

 数分ほど資料に目をやった後神妙な表情を浮かべたミナに促され、ティトゥスがデスクに近付く。

「これを見てみろ」

 ティトゥスに資料を差し出すミナ。受け取り覗き込んだティトゥスの目に入ったのは、幾重にも並んだ文の羅列だ。

「C.E.71年7月……連続殺人……72年……怪死……?これは一体?」

「よく読んでみな。アンタなら何かピンと来るものがあるんじゃないか?」

 ざっと見で目に入ってきた単語に首を傾げつつも、ルキーニの言葉に従い最初から文に目を通し──その『ピンと来るもの』が何なのか、ティトゥスは気付かされる事になる。






【C.E.71年10月、オーストラリアの港町パースにて婦女子怪死事件発生。

 遺体は外部、内部共に激しく損傷しており、更に強姦の形跡があった。しかも腐敗まで発生していた部分もあったと言われており、警察が検死解剖をしたところその体内からは大量の蛆虫と──】




【71年9月、アメリカマサチューセッツ州のスラム街でストリートチルドレンの遺体が発見される。

 遺体は五体をバラバラにされた上で更に細かく切り刻まれており、しかもその切断面は非常に鋭利な刃物で切りつけられたかのように滑らかな平面だったという──】



【71年11月、イギリスはブリチェスターの裏道にて若い男性3名の遺体が発見される。遺体はどれも損傷が激しく、まるで非常に重たい何かをぶつけられたかのように各部が千切れかけていたという。

 発見された裏道の周囲には巨大なクレーターが幾つも付けられており、近隣の住民はその日何か大きな音を聞いたそうだ。

 前後して現場近くで大きな人影を見たという証言があり、警察は殺人事件として──】



「これは……」

 時折画像が横に添付された資料をを読み進めるたび、ティトゥスの表情は険しくなっていく。

 文に纏められた内容、それは一言で言ってしまえば『怪事件の記録』だ。まるでB級映画のようないかにもな内容の、奇怪かつ意図の知れない迷宮入りとなった事件が綴られている。


 完全に腐り切り、大量の蛆や蝿の沸いた死体。鏡のように滑らかな切断面を持つ輪切りにされた子供の腕。

血痕と肉片と瓦礫がそこら中に飛び散ったクレーター──一添付された画像も、どれもモザイク一つかかっていない非常にグロテスクなものだ。

 ──そして半分ほど読み進めてから、ティトゥスは内容の類似点に気付く。纏められた怪事件の全ては最初の三つの事件と同様、もしくはそれに類似した内容である事に。


 強姦され腐蝕した死体、鋭利な何かで切り裂かれたバラバラ死体、何かをぶつけられたボロボロの死体──ティトゥスには其処から連想できる人物たちの記憶がある。それらの事件がオーブ解放戦の後──自分が此方の世界に飛ばされてきて以降から起きているという点も、その考えを後押しする。


「我は貴公やドクターの話でしか知らんが、この手口、貴公はよく知っているのではないか?」

「……うむ。おそらくこれは、アンチクロスの所業」

 ミナの問いに、ティトゥスは苦々しげに呟く。

 怪死事件はほぼ間違いなくティベリウスだろう、実にあの腐乱死体らしいやり口だ。そして他二つについてはおそらく──風を操り残虐の限りを尽くす小僧と、拳一つで全てを破壊し尽くす筋肉達磨──自分も知る、よくつるんでいたあの二人だろう。


 こんな事件を起こした理由はおそらく──『試し切り』だ。ティベリウスと闘って感じた力や言動から察するに、連中もまたこちらに来てすぐの頃は力の多くを失っていたと思われる。力を高め、それを試す為の標的……連中には唯の人間などその程度の認識なのだ。


「ここからが本題なんだが……この三種類に分類される事件、72年の半ばまで場所を変えながら不定期に続いていたが、その頃を境にぱったりと三つ全てが起こらなくなった。そして……」


 それまで沈黙を保っていたルキーニが、神妙な顔で口を開いた。

「この事件を大なり小なり扱ったありとあらゆる場所のデータから、これらの事件の情報は全て消されちまってた。そこに纏めたデータはネットのアングラ部分奥深くの断片やその手に詳しい情報屋筋、その他色々と面倒な経路を使ってようやく集めたシロモノだ。ああ、一応言っておくが、どれも非合法で手に入れたものとはいえ、正確さは保障させてもらうぞ」


 新聞社、テレビ局、警察等々──それらのデータベースには事件のデータは全くと言っていいほど残されていなかったらしい。そんな状況でここまで情報を集めたルキーニの手腕に感心すると共に、ティトゥスの頭には新たな疑問が浮かぶ。


「一体何者ががこの様なことを……?」

 少なくとも事件を起こしたであろう三人は力こそあれど、そんな裏でコソコソと動けるような性格や忍耐はないだろう。そもそも『自分のした事を隠蔽する』という行為を思いつくかどうかすら怪しいところである。


「そこは目下調査中ってな。最近出来た助手にも手伝わせてるが、完全なものが仕上がるには後数日……しかし上手くすれば連中のその後の足取りも掴めるかもしれん」

「……!左様かっ!?」

「ああ」

「……さて、これでこちらの情報網の有益さは分かってもらえただろう?」

 手がかりを掴めるかも知れないというその言葉に、ティトゥスの目の色が僅かに変わる。それを見る目に真剣さを湛え、ミナはティトゥスに問うた。

「必ずとは言えんが、後少しあれば多少の手がかりが掴めるかもしれん……出来る事ならその間に我を手伝ってもらえないだろうか?無論報酬は情報とは別途に支払おう」


 ティトゥスは思案する。確かに闇雲に走り回るよりはある程度の情報を得てから動く方がいいだろう。

 こと情報収集に関してはティトゥスは勿論、ウェストも決して優秀とはいえないのだ……ならば。

「……承知したサハク殿、貴殿にお付き合いいたそう。で、一体何処に降りるのだ?」

 承諾したティトゥスに満足げな笑みを向けながら、ミナは答えた。

「向かうのはオーブ本国だ。ある人物に会い、その上で今後のアメノミハシラの方針を決定する……

 その際、貴公の意見も聞かせて欲しい」





『ホント腹立つわあんのセップク男!正義ヅラしくさって邪魔してくれて!』

「まあまあ、まあそう怒るな怒るな。アメノミハシラに被害を出せただけで十分だ、お主はしっかりと、確実に、ちゃんと仕事をしてくれた。感謝している、感謝しているとも……しかし、ティトゥスが生きていたか。流石は、流石は元アンチクロス、そう簡単にはくたばらんか」


 根城である『コロッセオ』の地下深くの一室、そこにある大型モニターの中で憤慨する道化師に、老紳士はワイングラス片手に薄っぺらな賛辞を送る。

 だがそんなウェスパシアヌスの態度は気にする事無く、怒りを抑えつつもティベリウスは不機嫌な声で愚痴った。

『デウスマキナがあればあんなヤツに……ホンット歯がゆいわね!そもそも向こうで掻き集めた亡者の魂がリセットなんてされなきゃ、こんな不自由しなかったでしょうに。こっちでも散々ぶっ殺したけど全然足りないわぁ』


「仕方があるまい、お主だけではなく私も、皆そうだったのだ。当時の魔力、それこそ鬼械神を召喚出来るほどの力を取り戻すにはまだ、まだまだ時間が掛かる。それまではMMで我慢してもらわんとな」


『せめてもうちょっと燃費が良ければねぇ。暴れすぎると魔力が枯渇して、機体どころかアタシの身体まで維持出来なくなるなんて冗談じゃないわ』

「呪法兵装や記述を組み込み過ぎたのではないか?じき調整が完了する二機はお主のF・ベルゼビュートほど魔力を喰いはせんのだがなあ」

 ウェスパシアヌスはモニターの掛けられた壁から、強化ガラスで構成された左側の壁に視線を動かす。

 数歩進み、ガラスに手をやりながら向こう側を見る。

 そこに広がっているのは周囲を鋼鉄で覆われた、楕円形のドームのような広大な空間だ。その上部、全体が見渡せる位置に今ウェスパシアヌスが居る部屋がある形になっている──そう、この部屋は『見物席』なのだ。


 そして僅かな照明が照らすその眼下では、数人の人間が原始的な武器を手に殺しあっていた。

 老若男女バラバラな人間達──ある者はガムシャラに周囲の人間に襲い掛かり、ある者は余り動かず周囲を常に警戒しながら、自分以外の全員を殺そうと狙っている……生き残る為に。


『しょうがないじゃな〜い♪アレくらいやらなきゃ満足できなかったんだからぁ〜☆ って、そういえば、あの二人はどうしたの?』

「ああ少し、ちょっとしたお使いを頼んでね。あの国は丁度今結婚式で慌しい、忙しくなるだろう前に客人を此方に招こうと考えたのだ」

『あらあら〜?それじゃとうとう例の二人を狙うってワケ?』

 殺し合いを眺めながら、ウェスパシアヌスはティベリウスとの会話に花を咲かせる。視線の先では逞しい身体をしたコーディネーターの壮年男性が絶叫と共に少女の頭を棍棒で叩き潰していた。だがその男も背後から近寄ったナチュラルの女性のナイフを背に突き立てられ、呻き声を上げながら絶命した。


「そう、そうだとも。ようやく、ようやくだ。ようやく基本が完成したレギオンとMM、そして戦乱という絶好の機会──今こそ計画を実行すべき時だろう」

『オーホッホッホッホ!ようやく刈り取りの季節ってワケね☆けど、ティトゥスの件はどうするの? それにあの二人がイケニエのお二方を上手にエスコート出来るとは思えないんだけど?』


「ティトゥスはとりあえず今しばらくは置いておく、当分は本来の目的を優先しよう。あの二人は……

 まあどちらか一方でも連れて帰れれば僥倖だろう。仮に失敗しても三日後の結婚式がある。それまでにはMMの調整も間に合わせる。お主にも手伝ってもらえばオーブの戦力全てを敵に回すのは無理でも、人を二、三人攫っていくのは容易かろうて?」


『オーケーオーケー、アンタにはこっちで色々やってもらったし、それぐらいはやってあげるわよぉん。

 じゃ、すぐそっちに戻るわ。楽しくなってきたじゃな〜い♪』

 ティベリウスの姿がモニターから消える。映像の消えたモニターを一瞬、嘲笑を浮かべて一瞥した後再びドームへと視線を戻す。

 最初は7人前後居た若者達の殆どは、既に死体に変わっていた。無残な亡骸となった彼等を文字通り踏みにじり立っているのはたった一人。

 何の変哲もないナチュラルの少女だ。ナイフを手に持ち、己が流した血と屠った相手の血を全身に滲ませ、荒い呼吸を繰り返している。その目は血走り、ギラついている。


「ほうほうこれは、これは中々……」

 少々驚いたように笑ったウェスパシアヌスは、手袋越しにガラスに当てた掌を少女の方向に向ける。

 グチャリという気色の悪い音と何か呻くような低い声が響いたかと思うと、勝利者である少女は絶叫を上げ、その場に倒れ伏した。

 直後、ドームの周囲が開き、そこから現れた数人の人間達が少女を抱え、周囲の死体をゴミのように片付けていく。

 運ばれていく少女の顔を眺めながらウェスパシアヌスがガラスから手を離すと、そこから粘着質の醜悪な液体が滴っていた。

「ブラボー、ブラァボーだお嬢さん。屈強な男やコーディネーターに君は知恵と策と判断力を用いて勝った。

 ナチュラルが決してコーディネーターに劣るわけではないという私の考えを、君は証明してくれた訳だ」

 彼女や死体となった者達は皆、帰る場所のない捕らわれの奴隷だ。犯罪者、戦争で身寄りを失った者、捕まりリンチされ尚生き残った捕虜──そんな連中がここには掻き集められ、実験体として様々な実験に供されている。


 今行われたのもその一つである『選定』だ。数人を殺し合わせ、能力を高めると共に低いものを切り捨てる。

 何度かそれを繰り返し、勝ち残った者は改造を施され、実戦に投入される──エクステンデットのラボでも似たような事は行われている。

 違う点は二つ。このコロッセオではナチュラルとコーディネーターの区別はなく、能力さえあればどんな人間だろうと価値を見出されること。そして──

「さて、見事勝ち残った君にはご褒美を上げないといけないね……安心なさい、もう怖い事はない。

 痛い事も悲しい事も辛い事も、もうそんなことは何一つ感じることはない」

 ──例え最後まで生き残っても、彼等には『兵士』としてのわずかな自由すら与えられないことだ。



「そうとも、感情は必要ない──思考能力さえ失わなければ、私のレギオン〔作品〕はちゃんと動いてくれるのだからね」



 ──ここはコロッセオ〔闘技場〕。一度剣奴として捕らわれた者に安息は、ない。







】【戻る】【