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Fortune×Destiny_第03話

Last-modified: 2007-12-04 (火) 09:33:08

3 追跡

 

お互いの経過を話し合いながら3人はダリルシェイドに戻ってきた。
ダリルシェイドはこの世界に存在する国家の内、セインガルドの首都だった都市だ。
カイルたちによれば、18年前に起きた動乱のためにダリルシェイドは壊滅的な打撃を受け、現在は都市機能をほとんど失っており、古都でしかないらしい。
シンはダリルシェイドの中を見回し、その被害の大きさと人々の無気力感に呆然とした。
18年前も経っているのに瓦礫の撤去も行われず、土砂に押しつぶされた家屋が目立つ。
かつてそこに存在した栄華を惜しんでいる。そんな雰囲気だ。
各所にテントが張られ、そこで生活したり、物を売り買いしているようだ。
復興計画をまともに練る者もなく、住民は誰かが救済してくれることを願い続ける。
ロニが所属していたというアタモニ神団の炊き出しで、何とか食いつなぐ毎日を送る人々も少なくないという。
「これはまた、酷いな。脱出するときに外から見たけど、近くだともっと酷いんだな……。」
豊かで便利だったダリルシェイド。それが崩壊したとき、人々は昔の姿ばかりを追い求める。
尤も、この未練にも理由はある。
古来よりセインガルドは他の国家、ファンダリア、アクアヴェイル、フィッツガルド、カルバレイスよりも繁栄しており、現在でもそうだ。
そして、ダリルシェイドはその中心であり、まさに世界の中心だった。
それが今では壊滅している。その事実を認めたくないのだ。
人間とはそういうものである。
起こってほしくない事態が起きたとき、それを現実であることを否定したがる。
集団でそれが起きると増幅され、生活は取り戻せずに負の連鎖が続く。
そんな荒れ果てた古都に冷たい雨が降る。シンは雨に打たれながら物悲しい街を歩いた。
「ダリルシェイド……か。」
そんな冷たい空気を一瞬で加熱するのがカイルだ。
「よーっし、グミの用意もできたことだし、あの子を追ってアイグレッテに行こう!」
元気なことだ、とシンは思った。
雨に打たれているはずなのに、カイルの周囲だけ雨が降っていないような感じがする。
何ともお気楽な限りだが、それが彼の強みなのだろう。
「なあ、そのグミって治療薬なんだよな?」
シンの問いに、ロニが応じる。
「ああ、アップルグミは怪我を治すし、オレンジグミは心を落ち着ける作用がある。
 どっちも食えば効果がある。これからモンスター相手に戦わなきゃならないから、間違いなく必要だな。」

 
 

ロニの提案で、一行はアイグレッテに向かうことになっている。
アイグレッテはセインガルド北部にある宗教都市で、世界の中心なのだそうだ。
その規模から事実上セインガルドの首都となっている。
正確には首都ではなく、聖都と呼ぶらしい。
アタモニ神団の本部、ストレイライズ大神殿の門前町のようなものだ。
動乱によって破壊された都市、ダリルシェイドやハーメンツ、それに近郊のアルメイダの住民を吸収し、世界最大の人口を誇る。
ロニがアイグレッテに向かおうと提案した理由はこうだ。
カイルがストーキングしている(とシンは思っている)少女は英雄を探しているらしい。
現状で英雄といわれているのは、スタン・エルロン、ルーティ・カトレット、フィリア・フィリス、ウッドロウ・ケルヴィンの4名だという。
そのうちのスタン・エルロンは十数年前に旅に出たままなので所在が掴めておらず、彼を探すことはないだろうとロニは言った。
また、ルーティを訪ねた形跡もない。
残るはフィリアとウッドロウの二人だが、フィリアはストレイライズ大神殿で大司祭となっており、ウッドロウはファンダリア王国国王であるため、首都のハイデルベルグにいる。
セインガルドの南部に位置するファンダリアへは18年前の動乱の際に道が崩れたため、アイグレッテの港からファンダリアのスノーフリア港に向かうほかない。
つまり、この二人を訪ねるためにはどちらにしろアイグレッテに向かう必要があるというわけだ。
「さすがに冴えてるよな、ロニは。」
とカイルが褒めたがロニはアイグレッテでしばらく生活していたというのだから、その辺りの地理は頭に入っていることだろう。
「で、質問なんだが。18年前の動乱って何だ?」
それについてもロニが説明してくれた。
カイルだと猛烈にはしゃぐため、説明にならないのだ。

 
 

それによると、18年前に「神の眼を巡る騒乱」というものが起きたらしい。
当時、エネルギー資源であるレンズの取引を一手に行うオベロン社という企業が存在し、その総帥のヒューゴ・ジルクリストが世界を乗っ取ろうとしたという。
その野望を打ち砕いたのが前述の4人の英雄なのだそうだ。
ヒューゴは神の眼と呼ばれる巨大レンズをエネルギー源とし、大量破壊兵器ベルクラントによって空爆を繰り返した。
しかも厄介なことに1000年前に存在した空中都市群を復活させ、そこから攻撃を仕掛けてくるのだ。
手の出しようがなかった。
それだけならまだしも、ベルクラントによって巻き上げた土砂を空中で固定し、外殻と呼ばれる地面を上空に作り上げていった。
結果、地表に太陽の光は当たらなくなり、人々は絶望に陥った。
だが、英雄達の手によってヒューゴは死に、神の眼も破壊された。
ここまでが一般に知られるスタン・エルロンの英雄譚だ。
「でも、アタモニのお偉いさんの暴走が神の眼を巡る騒乱のきっかけだったって話だし、他にもいろいろ黒い噂は絶えないな。」
最後のロニの言葉に引っ掛かりを覚えたシンだったが、これで納得できた。
まさしく英雄によって救われた世界なのだ。
だからこそ英雄を目指す者、英雄を探す者が現れるわけだ。
「それで、それでさ。俺の父さんはスタン・エルロンで、母さんはルーティ・カトレットなんだ!」
なるほど、とシンは思った。
幼い頃からそれを意識していたのだろう。
そして、自分も両親のように英雄になりたい。
どれだけ自分の両親を尊敬し、慕っているかがよくわかる。
「でもさ、親がしたことを子供がしても、あまり評価は得られないって話だし、どうやって英雄として名を上げるつもりなんだ?」
「そんなのいろいろ試してみないとわかんないよ。でも、同じことをしたって駄目なのはわかってる。
 俺が英雄だと認められたら、それが父さんを超えた証拠になる。俺は父さんみたいになりたいんだ。」
目を輝かせ、拳を握り締めて語るカイルの目は輝いていた。
無謀と無茶の塊で、その上考えなしに突っ走る。周囲は苦労するだろう。
だが、その真っ直ぐさは眩しいほどだ。
「まあ、俺の無謀ぶりもカイルと変わらないけどな……。」

 
 

アイグレッテとダリルシェイドの中間地点にあるハーメンツバレーに向かう途中、シンは不自然な海岸線を見た。
円弧状の海岸線。しかも、断崖絶壁の上に柱状摂理を形成しているわけでもないのにほぼ垂直にそそり立っている。
表面は恐ろしいほど凹凸が少ない。
「この海岸線ってまさか……。」
シンの呟きにロニが応える。
「ああ、これがベルクラント直撃の痕さ。あっちにはほら、クレーターができてるだろ? この辺りにはこういう痕がいくつもある。」
確か、クレスタの近くにもあった。
ただそれがベルクラントが直撃した痕だとは気付かなかった。
痛々しい痕跡がそこここに残されている。
「大勢死んだんだろうな……人も生き物も。」
人間のエゴで人間が滅ぶ。
それはある意味自業自得だが、それに巻き込まれるのは別に人間だけではない。それだけは忘れてはならない。
それに、シンには苦い経験がある。
民間人として戦地となった故郷を逃げ惑い、家族を亡くした。
故に、民間人が殺されるという事態が許せなくなっていた。
彼はかつて地球軍が赤道付近の拠点の設置に現地民間人を使い、逃亡しようとしたところを射殺されたその現場を目撃した。
「許せない。」
その時、激しい怒りが彼の心を満たした。
夢中だった。
気付いたときには拠点をほとんど廃墟にしており、拠点の外と中を区切るフェンスを引き抜いていた。
そのことについて後悔がなかったと言えば嘘になる。
ただ、やはり戦争に民間人を巻き込みたくないという姿勢だけは変えたくないし、変えることはなかった。
「まあ、化け物みたいなベルクラントだが、途中で放り出したらしいぜ。んで、エネルギー源の神の眼はスタンさんが壊してくれたから、今は平穏な限りだけどな。」
「平和か……いいもんだな。争いを起こすのは簡単だけど、平穏にするのは難しいって話だし。争いが続いてないだけ幸せなのかもな。」
彼は闘いの爪痕が残る世界の空を見上げ、そう呟いた。

 
 

一行はハーメンツバレーに到着した。
この谷にかかる吊橋を越えればアイグレッテは間近なのだが、その吊り橋が最近壊れたらしく、復旧の目処も立っていないという。
「そんな! これじゃアイグレッテに行けないじゃないか!」
シンは飛行能力があることを二人に伝えてある。
だが、気流が複雑であちこちの風穴から暴風並みの風が時折吹き付けてくるので、とてもではないが二人を抱えたまま飛べるとは思えない。
飛んだら最後、あの世に飛ぶことになるだろう。二人にそう言った。
「参ったな。一端谷底まで降りてから登るしかないか。面倒だが。」
シンは言いながら谷底を見た。かなり落差がある。
ところどころに歩けそうな場所があるから、無理さえしなければ降りられないこともない。
「そういえば、さっきピンクの服を着た女の子が、そこから谷底に向かったよ。」
という行商人の言葉を聞き、カイルとロニはぴんと来た。
「その子だ! 今なら追いつけるかも!」
カイルはほとんど自由落下と変わらない勢いで崖を駆け下りていく。
慌ててロニが慎重に足場を探し、シンはフォース形態をとって緩やかに谷底へと向かう。
「シン……便利だな、それ。……こらバカカイル! あんまり急ぐとこけて怪我するぞ、おーい!」
突発的な風にでも吹かれればまずいのだが、シンは風穴が近くにないこと、そして比較的気流が安定したコースを選んでいる。
どうやらこのフォース形態は彼の4つの属性の一つ、風属性を強調した形態らしい。
明らかに風を読む力が増しているのだ。
「一応、風の具合考えて飛んでるけど……。これでも調整は難しいんだ。……う……。」
3分の2ほど降りたところで、ふわりとシンはロニの目の前に柔らかく着地した。
怪訝そうにロニが問いかける。
「どうした?」
「……疲れた……頭の方が。」
「何ぃ?」
そうなのだ。
このフォース形態での飛行はレンズを消費しないとはいえ、常時晶術を使用しているのと同じくらいの負担がかかる。
当たり前だが精神力も消費する。
下手をすると晶術や折角覚えた剣技が使えなくなるほど消耗するのだ。
シンの精神力はそれなりに強い方だが、調子に乗って飛び続けるとこうなる。
「オレンジグミでも食うか? すっきりするぜ?」
「いや、俺の馬鹿な飛行で消費するわけには行かないからな。別に飛べなくてもモンスターと戦えるし。」
むしろ着地状態の方が剣技のダメージは大きくなる。
通常、格闘する場合や武器を振るう場合、腕の振りだけでダメージを与えられるわけではない。
地面を踏みしめ、しっかり足の裏なりつま先なりを固定し、腰、胸の筋肉を連動させて初めてダメージを与えられるのだ。
ところが宙に浮いていると踏みしめる地面がない。
踏みしめる地面がないと、腰や胸の筋肉を捻ろうが何をしようがダメージは与えられない。
それどころか固定するものが何もないのだから、斬りつけると自分がその場で回転してしまうのだ。
シンが宙に浮いたままで斬りつけても回転しないのは、浮遊力を回転の方向と反対側にかかるように調整しているからだ。
この辺りは彼がモビルスーツのパイロットだったからこその知識だろう。
実際、モビルスーツの主戦場である宇宙空間には足場はおろか重力も空気抵抗ないのだから、格闘をするにあたって反作用の相殺を考えないといけないのだ。
最低でも、この程度の物理現象くらいは知っていないとモビルスーツパイロットなど務まらない。
その物理現象の詳細をロニに話すと、こう返ってきた。
「俺にはさっぱりわかんねえけど……空中にいたらダメージが与えられないってのはわかったつもりだ。
 便利だと思ってたけど、案外そうでもないんだな。」
「そもそも武器同士の戦いだと上から攻撃するのって、不利になるだけだって聞いたけど。
 上にいると足元狙われるし。長柄武器使ってる相手なら余計にそうらしいな。」
シンは自分の技の特性や飛行能力から、ある結論を出していた。
それは、「自分の能力は真正面から最前線で戦うものではない」ということだ。
例えば穿風牙はカイルの同系統の技である蒼破刃よりもやや射程が長い。
鏡影剣ともなると敵の動きを縛り付ける技だ。
火炎斬のようにダメージを押し込む技もあるが、どちらかといえばサポート寄りだ。
飛行能力による高機動性を使って撹乱し、味方の攻撃を支援する。
それはある意味でかつての乗機、フォースインパルスの特徴である。
特別強固な装甲を有しているわけでもなく、強大な火力もない。
俊敏な動きで翻弄し、決定打を僚機が与えて仕留める。
それが本来の姿なのだ。
彼がウィンダム30機を叩き落していたのは、単に特攻癖のせいだろう。
特攻すれば狙いは自分に向く。それを全て反撃で倒していく。
それが可能だったのはインパルスの「息継ぎ」ができる機体性能と自分の反応力があってこそだ。
「まあ、相応な戦い方をさせてもらうよ。」
やっとカイルに追いついた。カイルはその場でうずくまっている。
地面に落ちた何かを見ているようにも見える。
「どうしたカイル。怪我でもしたのか? 考えなしに降りたりするから……。」
ロニの言葉に、カイルは首を横に振った。
「違うよ。これ……あの子がつけてたものじゃない?」
カイルが差し出したそれは、ペンダントだった。
ロニと一緒になって覗き込んだシンは驚いた。自分が身につけているブレスレットに酷似しているのだ。
銀白色の結晶が赤い縁取りの中に嵌っている。
その神秘的な輝きまでがそっくりで、首に巻きつけるか腕に巻きつけるかの違いしかなさそうだ。
「ああ、確かにあの子がつけてたペンダントだな。それにしてもシンのブレスレットとそっくり……。」
ロニが言い終わらないうちに、カイルが拳を握り締めて叫ぶ。
「よおおおし、これって運命だ! 絶対あの子と出会うのは運命だったんだ! な、そう思うだろ、ロニ!」
「このバカカイル。どうしてこう、お前は偶然を運命だと思うんだ? もう少し考えることをしろよ。な?」
カイルは聞いていなかった。
「このペンダントをあの子に渡そう! そうしたらまたあの子に会えるし、俺が英雄だってこともわかってもらえる! 行こう、ロニ、シン!」
ロニとシンは思わず同じタイミングで溜息をついたものだ。
「……いくか、シン。」
「……そうだな。」
二人とも諦めの表情を浮かべながら駆け出したカイルの後を追った。

 
 

「ない……どこにも……あれがないと私……。」
不安そうな表情を浮かべた少女が周囲を見回している。
淡く薄手のピンク色のワンピースを身に付け、赤く細い帯を背中でリボン結びにしている。
ほっそりした腰には、黒い帯のようなものが巻きつけてられていた。
紫色で玉状の髪飾りをつけた髪の毛と大きな瞳は濃い茶色で、その髪と眼の色合いが彼女の持つ驚くほどの色白さを強調している。
その雰囲気は神秘的で不思議な空間を醸し出しているかのようだ。
「あー、見つけた!」
彼女は驚いたような表情で後ろを振り返る。
そこには、つい昨日出会った黄金色の髪と青い眼を持つ少年が息を切らせている姿があった。
「やっと……追いついた。」
カイルの後ろから、さらに2人がやってくる。
彼女の力の源である「あるもの」は手元にない。
害意を持っている相手だとするなら、今はあまりにも無防備すぎる。
彼女は不安そうな視線を彼らに向けながら、後退りした。
「あ、待って。これ……。」
カイルは彼女を不安がらせないように笑顔を見せながらペンダントを取り出した。
「…………!」
「これ、君のだよね、はい。」
彼女の眼の色が変わった。
おずおずと彼女は手を伸ばし、それを首に巻きつけた。
これこそが彼女が探していたものだった。どうやら谷底に降りる過程で落としたらしい。
「…………。」
彼女はほっとしたようにペンダントを撫でている。
その態度に腹を立てたのはロニだ。
「おい、こっちは親切にあんたの落し物を届けてやったってのに、礼の一つもないのか?」
「ロニ、やめとけよ。多分、大事なものが戻ってきたから、そのことで頭が一杯なんだ、きっと。」
シンはロニを留めた。
自分でも命に代えられないもの、シンに喩えれば妹の形見の携帯電話を落としたとしたら、うっかり礼を失念するだろう。
彼女からはそんな感じがした。
尤も、シンは自分の手元に携帯電話がないことに最初から気付いている。
銃をなくしたのと同時に携帯電話もなくしている。
探すだけの気力は彼にはなかった。
彼はこっちの世界に来るときに、元の世界においてきたのか、もしくは自分を呼び寄せた存在が携帯電話まで転移することが
できなかったのか、そのどちらかだと思うことにした。
簡単に割り切ることはできないが、そう思わなければならない。彼はそう思っていた。
ロニとシンのやりとりを聞いていたのか、彼女は消え入るような声で返事をする。
「あ……ありがとう。」
「いいんだ、英雄たる者、これくらいの人助けはしないと!」
カイルの言葉に、彼女はペンダントを見つめ、何かの反応を待ったようだったが、すぐに首を横に振った。
「……やっぱり違う……。」
「何が違うんだろう? 確かにカイルは英雄とは言いがたいけど、そうまで断言するほどのものじゃないと思うんだけどな。」
シンはそう言ったが、彼女にはそんな言葉は聞こえないようだった。
「拾ってくれたことは感謝してます。でも、これ以上私に関わらないで。」
彼女はそう言うと、その細身からは考えられないほどのスピードで崖の凹凸を利用して跳躍し、さらに風穴の暴風を利用してあっという間に昇ってしまった。
「……なあ、カイル。何か嫌な女だぜ、あいつ。女なんてほかにもいいのがいるだろうが。いい加減追うのをやめろよ。」
「いいや、絶対あの子には何かある。あの子が探している英雄は俺なんだ。」
そこまで断言する理由は一体何なんだ、とシンは思ったが、口には出さなかった。
ただの思い込みだけでここまで突っ走るとは思えない。思いたくないが。
カイルの性格を考えるとただの思い込みかもしれない。
そんな暗い考えがシンの脳裏に浮かんだ。
「とにかく、カイルはこのままあの子を追うんだよな? ここまで来たら仕方ない、追うことにしよう。」
シンが諦め口調でそう口にし、彼女が通った道を辿ろうとした。だが。
「モンスターか!」
鳥と人間が融合したようなモンスター、ハーピィと岩でできた生きた人形、ゴーレムの混成部隊の襲撃だ。
都合8体ほどいる。
「やるしかなさそうだな!」
ロニがハルバードを構え、ゴーレムに斧の部分を叩き付け、さらに双打鐘を叩き込んだ。
だが、さすがに岩石でできた相手だ。ダメージは浅い。
「ここは俺がやる! 穿風牙!」
素早くフォース形態を取り、シンが真上から風の槍を放った。
ゴーレムの体が揺らぎ、頭頂部の一部が欠けた。
だが、そのシンにハーピィが襲い掛かる。
「っ、危ない……!」
鋭い爪の蹴りをかわしたが、第二撃までは避けられなかった。
かわすために高度を下げたところを別のゴーレムが殴りかかってきたのだ。
「ぐぅっ……!」
背中を強打され、一瞬呼吸が詰まる。
が、何とか空中で体勢を立て直し、鏡影剣でゴーレムに反撃する。
影を射抜かれたゴーレムの動きが一瞬止まり、影を纏った斬撃を浴びた。
「まだだ! 蒼破刃!」
カイルの巻き起こした斬撃が風の塊となってゴーレムを叩きのめし、その体が崩壊する。
「まず1体!」
シンは次のターゲットをハーピィに定め、斬りかかる。
「でええい! 鏡影剣!」
ほとんど剣を投げ落とすようにハーピィの影を貫く。
ハーピィは空中で身動きを封じられ、羽ばたけなくなったがために落下する。
「今だ! 雷神招!」
それを狙ったロニのハルバードが轟音を放ち、ハーピィを叩きのめしつつ雷をぶつけ、黒焦げにして見せた。
「残り6体!」
シンは着地し、ゴーレムに六連衝を叩き込む。
わずかに揺らいだその隙を狙って、さらにソーサラーリングの熱線をぶつけた。
立て続けに衝撃を受け、ゴーレムが横転する。
だが、その間にカイルがハーピィ3体に囲まれていた。
「カイル、今行く! くらえ、火炎斬!」
シンのサーベルが炎を纏い、強烈な振りと共に火炎が撒き散らされる。
ハーピィはその攻撃を避けたが、連係を乱すには十分だった。
「助かる! 空翔斬!」
素早く飛び上がったカイルは、上からハーピィを押し斬るように剣をぶつけた。
地面に叩き落されたハーピィはそのままロニの振り下ろされたハルバードで真っ二つになる。
「今度はこっちの番だ! 蒼破刃!」
シンがダメージを与えたゴーレムが起き上がり、シンに殴りかかろうとしたところを狙った。
既に脆くなった胴体に衝撃波が命中して砕ける。
「よし、これで半分! 地竜閃!」
剣を地面に突き立て、離れたハーピィの真下から岩の槍が突き出す。
虚を衝いた攻撃にハーピィは避け損ねた。
「もう一発!」
シンは別のハーピィに狙いを定め、地竜閃を放った。
今度は避けられ、左から接近したゴーレムに再び殴られた。
「ぐっ……回避が甘いか!」
さすがに地面に叩き付けられた。
とどめを刺しに来たゴーレムにソーサラーリングを打ち込み、地面を転がって何とか脱する。
「シン、大丈夫か? 俺が回復する!」
「ロニ、すまない。こうなったら…………ストーンザッパー!」
地竜閃でダメージを与えられなかったハーピィに石飛礫をぶつけ、ロニへの攻撃を牽制し、さらに上空へと舞い上がって飛礫をぶつけたハーピィに斬りかかる。
「このっ!」
一太刀浴びせてのけぞったところで、カイルの蒼破刃がハーピィに命中する。
猛攻を受け続けたハーピィは地面に叩きつけられ、そのまま絶命した。
「ヒール!」
シンの怪我の大部分が癒えた。痛みのなくなったシンは残るハーピィに斬撃3連撃を加え、さらにゼロ距離での穿風牙を叩き込んだ。
ハーピィもやられてばかりではない。シンの左腕に爪を食い込ませ、ぎりぎりと締め付ける。
だが、この攻撃はハーピィの逃げ場を失わせただけだった。
「デルタレイ!」
カイルが放った光弾3発が背中に命中し、ハーピィは力尽きて地面へと落下した。
シンはその間に戒めを解いて着地する。
「あとはゴーレムだけだ! 気を抜くなよカイル、シン!」
ロニはカイルにヒールを唱え、怪我を回復させる。
そのカイルはゴーレムの攻撃を掻い潜って抉り込むように斬り上げた。
「まだまだ! 六連衝!」
シンは上空から六連衝を繰り出す。ダメージが減るとはいえ、注意を自分に向けるには丁度いい方法だ。
ゴーレムが自分に拳を振るおうとするのを確認し、素早くその場から離脱する。
「……アクアスパイク!」
ロニはカイルとシンが斬り込んだところから詠唱し、隙を狙えるようにためておいたアクアスパイクを放った。
衝撃が激しいのか、攻撃を受けたゴーレムが崩れた。残るは1体だ。
「一気に決めるぜ! 放墜鐘!」
「了解! 穿風牙!」
「よし行くぞ、散葉塵!」
強烈な突きと放り投げで浮いたところを風の槍で押し込まれ、とどめに素早い三連撃を受ければさすがのゴーレムも歯が立たない。
見事な連係攻撃の末、モンスターを倒すことができた。
「やっと倒せたか。随分と時間をロスしちまったな。」
その場に座り込んだロニは、やれやれという表情で自分やカイルにヒールをかけ、ふうと溜息を一つ吐いた。
「連係がきちんと組めるってことが確認できただけでもよかったと思ってる。それに、今から急げば多分追いつけるさ。」
シンにはこの二人と連係して攻撃できる自信はなかった。
だが、何とかなりそうなのでほっとしていた。
出かける前にクレスタ周辺で練習しておいてよかったと思っている。
「さあ、行こう、アイグレッテへ!」
どこまでも元気なカイルの声に励まされ、ロニとシンは重い腰を上げた。
「……ロニ。あの過剰なポジティブさはどうにかならない?」
「……無理だな。」
少々頭痛がしたような気がしたが、気のせいだと思いなおし、彼はカイルの後について崖を登り始めた。

 
 
 
 

TIPS
称号
 鳥人間
  フォース形態によって風を読む力が増して飛べるようになった。
  翼はなくても空は飛べるのさ。
   回避+0.5 SP回復-0.5

 

 モビルスーツパイロット
  必要なのは操縦技術だけじゃない。
  物理や工学は知ってて当たり前。まさにエリート。
   知性+1.0 HP-6.0