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Fortune×Destiny_第10話

Last-modified: 2007-12-04 (火) 09:48:05

10 イレーヌの遺産

 

5人が向けた視線の先には商人らしき男がいた。
思い切り媚を売るような顔つきだ。
「皆様方は冒険者かとお見受けしますが……。」
「そうですけど、何か御用ですか?」
商人の問いに、シンが応えた。胡散臭いことこの上ないが、威嚇するのも問題がある。
可能な限り敵意は抑えておくことにする。
「皆様方に……その、頼みごとを、と思いまして。」
この手の依頼は8割方商人が儲かるようになっている。
しかも、こちらに危険な仕事を押し付けるだけ押し付けて、だ。断るに限る。しかし。
「頼みごと!? 英雄たるもの、困っている人を助けるものだからね、引き受けようよ!」
などと暴走する人物が仲間内におり、しかもリーダー格なのだから頭が痛い。
「英雄……おお、そうですとも。英雄の皆様方に是非お頼み申し上げたい。
 つきましては、私のあばら屋にお越しくださいませ。この街の北にありますのでわかりますかと。
 詳しい話はそちらで……。」
商人は表面だけの笑顔をたっぷり振り撒いて町へと戻っていく。
「……カイル。本当に依頼を受ける気なのか?」
ジューダスはつとめて冷静に言っているが、苦虫を噛み潰したような口調である。
ジューダスも胡散臭いと感じているらしい。
「当たり前じゃんか。」
「……ならいい。今更何を言っても無駄のようだ。」
ジューダスもついに諦め路線を覚えたらしい。
カイルの発言や行動には説得力こそないが、周囲の人間を諦めさせる力がある。
おそらく、カイル自体がエネルギーの塊のような存在なので、誰もついていけないのだろう。
「さあ、行こうよ!」
元気よく歩き出したカイルについていけたのはリアラだけだった。
残る3人は溜息を吐きつつついていくことになった。

 
 

商人はあばら屋などと言っていたが、どう見ても金持ちの家だった。
どうやらイレーヌの苦労が報われなかった例もあったらしい。
中に入ってみると、金持ちが好みそうなものが大量に展示されており、いかにもと言いたくなるようなメイドが恭しくお辞儀をしてくる。
あの商人がどういう人物なのかはよくわかった。
カイルがやると言ってしまったのだから、これはさっさと終わらせなくてはならない。
シンは精神的に鬱陶しい、と感じた。
「おお、おいでになりましたか、英雄ご一行様。」
何とも内側にある軽蔑したような感情が滲み出ているようだ。
シンは苛々を募らせたが、ここで怒鳴りつけても意味がない。
しかも、何故かシンには何か「売り物」を見るような視線を送ってくる。
理由は何となくわかった。シンの赤い目が珍しいのだ。
この目は元の世界でも珍しいものだった。
そのため、学校やアカデミーでもよくこの目の事を聞かれたし、街を歩いていても自分の目を見る人間は決して少なくなかった。
だが、この売り物を見るような目は普通ではない。
大抵は興味や畏怖、嫌悪などの視線であり、この手の視線はほとんどない。
シンにとっては居心地が悪い視線だ。
フラストレーションを押さえ込み、依頼内容を聞く。
「では、内容をご説明いたします。実は偶然知ったことなのですが、この近くのオベロン社廃坑に財宝が眠っているという話がございまして。」
「それを取って来い、ということですか。冒険者向きの依頼ですね、確かに。」
シンは皮肉な色を押さえ込んだが、多少滲み出てしまったらしい。
しまったと思ったが、商人は何事もなかったように続ける。
「はい、その通りでございます。」
「わかりました、今すぐ行きます!」
カイルが意気込み、拳を握り締め、すぐに駆け出そうとしたが、ジューダスが一歩前に踏み出た。
「その前に……貴様、何故彼女の手紙にしか書いていないことを知っている? どこで手に入れた?」
その口調は静かなものだったが、まるで知人を侮辱されたようなものだった。
静かではあるが怒りがこもっている。
「いや……その……わたくしはイレーヌ・レンブラントの手紙など知りませんが……。」
「僕は彼女の手紙と言った。別にイレーヌのものだとは言っていないぞ。」
ジューダスはあくまでも冷静だ。
はめられたと思った商人は口を戦慄かせながら言い放つ。
「な、何たる言い草だ! こ、この話、無かった事に……!」
空気が悪くなってきたので、カイルが慌てた。
英雄を目指す者として、ここは何が何でも依頼をこなさなければ、と思ったらしい。
「あああああ、待って待って。要するに、その廃坑に行って宝物を取ってくればいいんだよね?」
「それは、そうですが……。」
「それじゃ、今すぐに出発するよ。期待していてね!」

 
 

ノイシュタットを出発した一行だったが、また白雲の尾根に突入しなければならないと知り、意気消沈した。
「はああ……またあの霧の中を歩くのかよ。」
「仕方ないよ、そういう場所にあるんだし。」
「あのなあ、カイル。お前が考えなしに依頼を受けちまったことがそもそもの発端だろうが!」
「文句を言う暇があったら足を動かせ。こんな下らん依頼はさっさと終わらせるに限る。」
「俺はあの商人が嫌いだな。俺のことじろじろ見て……あの野郎……!」
「まあまあ。……あれがそうじゃない?」
リアラが指を指した方向に、山肌に黒々とした口を開けた廃坑が見えた。
「あれかあ。さあ、張り切って探すぞ!」
カイルが嬉々として廃坑に入っていく。
リアラがそれを追い、残る3人が追いかけた。
中は意外と広い。
土に埋もれた階段があったり、機能が停止した筏があったりはするが、かなり頑丈な作りらしい。
「ここが廃坑か。人の手が入らなくなったから、モンスターが棲み付いてるな。」
「モンスターだけならいいけどさ、お化けが出るかも。うーらーめーしーやー、って。」
シンがさらりと言ってのけたその言葉に、ロニは目に見えて怯え始めた。
「な、なななな何を言っているのかね、シン・アスカ君。そそそ、そんなものいるわけが……。」
「ロニ、お化けが怖いの?」
カイルの問いにもロニは震えている。
「ここここ怖いなんてことがあるか。ただ、その、いたら……困るなって思ってよ……。」
「それを怖いというんだ。」
ジューダスはあくまで冷静だ。
ロニはお化けが怖い、というより苦手なのだ。
手にしたハルバードで攻撃できるものならともかく、実体がなく得体の知れないものは駄目らしい。
普段は頼りになる兄貴分のロニだけに、このギャップは情けないを通り越して滑稽ですらある。
「きゃっ、今そこに何か……!」
リアラの小さな悲鳴にも、ロニは目に見えて過剰な反応を示した。
「なななななな、何が見えたんだリアラ! 何が見えたか言ってくれ! あー、でも聞きたくないでも聞いた方が……。」
「リアラ、それはお前自身の影だ。」
ジューダスは相変わらず冷静だ。明らかに年齢も身長も低いジューダスの方が大人に見える。
「な、なーんだ、リアラ、お化けだなんて大げさだなぁ。ぅははははははは……。」
「あー、ずるい! 私、お化けだなんて言ってないわ!」
この騒がしい漫才のような遣り取りが、シンは気に入っていた。
彼にとっては何よりも心を癒してくれるものなのだ。
「……!? ヒギャアアアアアァァァァァ!」
ロニが盛大に悲鳴を上げて駆け出した。
何が起きたかは想像がついた。水の雫がロニの首筋に当たったのだろう。
「やれやれ……シン、ロニを止めろ。」
ジューダスは呆れたような口調でシンに言った。
シンも呆れた表情でフォース形態を取り、鏡影剣でロニの影を射抜いた。
「あああああああ、金縛りが! お化けが! 助けてくれー!」
鏡影剣で影を射抜かれると、声帯と顔、それに横隔膜以外の随意筋が硬直する。
そのため、ロニはその場でつんのめり、叫び続けている。
「ロニ、そろそろ静かにしてくれないか? モンスターを呼び寄せることになるだろ!」
笑顔のシンが、右手のサーベルをロニの目の前で突き立てたので、ロニは顔を青くしながら沈黙した。

 
 

しばらく進んでいくと、広い空間に出た。
用途不明の機械とコンソールと画面のようなものがついた箱型の機器、
おそらくは中央制御コンピュータのようなものだろう。
「これは……。」
シンは箱型の機器に向かい、あれこれ操作してみたが、エネルギーが供給されていないせいか動かない。
「動力炉……みたいなものがあるんじゃないかな?」
自分の背中に張り付くようにしているロニのために素早く動けないが、大型のパイプがいくつかついている機械に目をつけた。
ジューダスはすぐに気付いたらしく、シンより先にその機械を確認している。
「この装置は……おそらくレンズ起動型エンジンだな。ここにレンズを入れて動力を確保するための機械だ。だが、そのレンズが今入っていない。」
「必要な数はどれくらいだろう? 手持ちのレンズでは足りないかな? いろいろ機械を確認するためにはエネルギーが必要だろうし。」
機械に囲まれて暮らしていたシンはすぐに飛びついた。
機械がそれなりに好きでなくてはモビルスーツのパイロットなど務まらない。
「数は……そうだな、最低でも200は必要だ。」
「200だって? 俺たち、そんなに持ってねえぞ。」
「ロニ、多分ここのどこかに保管レンズがあると思う。この動力炉はレンズを使って動いてるんだよな? 
 けど、ここが働いてたとき、この機械に必要なレンズはどうしたんだ? 
 予備くらいは置いてるんじゃないかな。」
シンの考えに同調するように、ジューダスが補足する。
「それにこの鉱山は18年前の騒乱の後に、オベロン社が復興事業に全力を注いだために忘れ去られている。レンズを回収する余裕もなかっただろう。」
「じゃあ、その保管レンズを探そう!」
奥に進むと岩肌が露出し始めた。
あちこちにつるはしやスコップ、一輪車にトロッコが放置されている。
「この木箱は?」
カイルが指差した木箱は厳重に鎖で縛られており、ご丁寧に鍵までついている。
ジューダスが剣を一閃させて鎖を切断すると、中からレンズがこぼれた。
「レンズだ。でも、これが財宝ってことはないよね?」
「鉱山跡にある財宝だ。レンズだとは断言できないが。」
その時はその時だとシンは思った。
あの商人が財宝と言っていたくらいだから、正体まではわからないらしい。
適当に誤魔化すのも手の一つだ。
「それじゃあ、持って行くか。他にもあるかも知れないけど、まずはこれだけ。」
シンはその木箱を担ぎ、レンズ起動型エンジンのところに持っていった。
足りずに他のレンズを探すことになったため、何度か往復することになったが、ロニが騒いでくれたお陰か、モンスターは襲ってこなかった。
「さてと、定数は満たしたはずだ。このレバーをセットすれば……。」
ジューダスがスイッチを入れた。何かが唸るような音がして、エンジンに光が灯る。
「シン、そっちの中央制御システムは扱えるか?」
シンはコンソールを叩きながら応えた。
「今試してる……元の世界のコンピュータの操作方法とそんなに変わりはないな。ちょっと複雑だけど……
 あ、ジューダス! 爆弾製造装置がこの廃坑内にあるみたいだ。
 さっきの土砂に埋もれた階段に爆弾仕掛けてみる?」
「そうか。どこにある? 全体図は出せるか?」
「えーと……このボタンでいいのかな。いや、違うな。このシステムを呼び出せば……よし、出せた! 
 そうだなあ……大型の機械……入り口の近くにあるみたいだ。」
「よし、そこに行くか。だが、機能しているかどうか。」
「こっちのシステムでコンディションチェックしたけど、センサーは正常に働いてるし、原材料も問題ないみたいだ。」
ジューダスとシンが何やら操作しているのを見ていた3人は、置いてけぼりを食った気がした。
「は、話についていけないわ……。」
「俺にはちんぷんかんぷんだよ……ロニは?」
「お、俺がわかるわけないだろ。」
一頻り操作し終えたところで、シンとジューダスが振り返った。
「この廃坑の入り口付近に爆弾製造装置があるらしい。それを使って土砂に埋もれた階段を露出させるぞ。」
ジューダスの発言に、ロニは少し顔を歪めた。
「ば、爆弾? んな物騒なもんがあるってのかよ?」
「鉱山開発には爆薬が不可欠なんだ。人の手だけでは限界があるから。」
じめじめした、暗い道を戻っていく。
入り口の眩しい光を感じながら、一行はそれらしい機械を探した。
「えーと、見取り図だとこっちの方に……。」
「シン、こっちだ。」
ジューダスが示した機械はベルトコンベアが付属し、さらに複雑にパイプと箱が組み合わさったような形をしている。
その機械の画面とコンソールをチェックすると、確かに爆弾製造装置のようだ。
「ニトログリセリン反応用の配管、バルブが閉まってるみたいだ。それを開けて、それから……。」
じれったそうにカイルが口を開いた。
「なあ、適当でいいじゃないか。」
「爆薬扱ってるのに適当な手順なんか踏んだら、即爆死するぞ。普通の工場だって手順を間違えたら火災が起きたりするんだから。」
シンはこれでもその手の勉強はしている。工業において、絶対に守らなくてはならないのがその手順だ。
何のためにその手順を踏まなければならないのかは、大抵理由が存在する。
この順番を間違えると事故が起きる。
特に化学工業においては発熱、爆発が当然のように起きるので、面倒でも従うほかない。
「えーと……これでよし。それじゃ、カイル。右から三番目のバルブを開けて。次に左から4番目の……。」
しっかり手順どおりにカイルを動かし、製造装置のスイッチを入れた。
唸るような音と配管を流れる液体の音がしばらく聞こえた後、ベルトコンベアからダイナマイトが運ばれてきた。
「ちょっと作りすぎたかも……。まあ、いいや。後で使えるかもしれないし。」
シンはダイナマイトをいくらか懐に放り込み、手順を踏みながらシステムを止めた。
「さてと、これで爆弾は手に入ったけど、導火線とか時限発火装置がないんだよな。」
「シン、お前に渡したソーサラーリングはどうした?」
そうだった。ソーサラーリングならば熱線で火をつけることもできる。うっかりしていた。
「そうそう、それがあった。じゃ、行こう、皆!」
土砂に埋もれた階段のところに戻ってきた。
シンが必要な箇所に爆弾を仕掛け、全員を離れさせた。
「それじゃ、耳塞いで。」
彼はしっかりと狙いをつけながらソーサラーリングを撃った。
熱線が爆弾に直撃し、炸裂して土砂を吹き飛ばした。埋もれていた階段が姿を現す。

 
 

「さて、何があるのか楽しみだな、カイル。」
「うん、俺、すっげー楽しみ!」
ロニとカイルがわくわくしている。シンはそこまで楽観的ではない。
オベロン社の遺産であることを考えると、物騒な兵器、例えば毒ガス爆弾のようなものだったとしてもおかしくない。
少々不安ではあるが、二人の後について階段を上っていく。
しかし、そこは行き止まりだった。
「行き止まり? なんだよ、つまんねえな。」
「いや……これを見ろ。おそらくだが、この先に通路がある。」
ジューダスが指を指した壁は、妙に周りとは違う色の壁があった。
何かで塗りこめられているようにも見える。
「シン、爆弾は?」
「まだ結構ある。また仕掛けてみるか?」
「そうだな、その方がいいだろう。」
先程と同じ手順で爆弾を仕掛け、爆破した。
ジューダスの読みどおり、崩れた壁の先に通路が現れた。その先へゆっくりと歩を進めると、それらしき箱があった。
厳重な鍵のついた、それも衝撃を緩める素材を内部に用いているらしい。
誰もまだ開けたことがないようだが、近くに鍵が落ちていた。それを使ってみると、中には何やら石ころが入っていた。
見た目はただの石のように見えるが、触ると静電気のようなものを感じる。
「これが……宝物? こんな石っころがか?」
ジューダス以外の4人は落胆したが、ジューダスだけは鉱石をまじまじと見ている。
そして、意を決したように口を開いた。
「間違いない。確かにこれはオベロン社の遺産だ。この鉱石は……レンズの力を増幅させる力がある。この鉱石はあのベルクラントに用いられたものだ。」
「ベ、ベルクラントだって!? オベロン社の遺産ってのはそんなに物騒なものだったのかよ?」
「この鉱石の精錬法はまだ確立していない。あのオベロン社が躍起になって研究したが、まったく解析できなかった。あの商人如きが使いこなせるようなものじゃない。文字通り石ころほどの価値しかないというわけさ。」
「まあ、物騒なものを作られるよりはマシさ。さてと、これを持って帰らなきゃならない。まずは鍵をかけて……ん?」
シンは大気の揺れを感知した。風がある。それも、もっと奥の方からだ。
奥の方向に視線を向けると、光が漏れている。まだ何か空間があるらしい。
「奥に何かあるみたいだ。行ってみよう。」
とりあえず箱を縄で縛り、ロニに担いでもらうと、5人は奥に向かって歩いた。
徐々に光が強くなっていく。そして、それが5人の目に入った。
そこは美しい場所だった。岩の切れ目から零れる光が辺りを照らし、切れ目から浸入したと思われる水が小さな池を作り上げている。
ロニが驚いた水の雫は、どうやらここから漏れたものらしい。
光の周りには草が生え、花まで咲いている。
この世のものとは思えない、そんな光景だった。
「こんな綺麗なところがこの廃坑にあったのか……。」
「ねえ、これは何? 石碑……かしら。」
リアラが見つけた石碑は、半ば草に埋もれていたが、刻まれた文字は風化していないようだ。
ロニはそれを読み上げる。

 
 

この鉱山で採れる鉱石はレンズの力を増幅させる作用があります。
この鉱石を使えばノイシュタットの生産能力は向上し、さらなる発展と格差是正に繋がるはずです。
この鉱石はそのままでは使えず、長い年月、光に晒されることによって反応し作られるようです。
偶然この鉱石がある場所に偶然岩の切れ目があった。これは神からの贈り物なのでしょう。
ですから、この場所を壊さないでください。
この場所が壊れると光が届かなくなり、鉱石が作られなくなります。
鉱石の力をノイシュタットの発展と住民のために役立ててください。

 

この文章を読む未来の誰かへ

 

イレーヌ・レンブラント


 
 

「なるほど、確かにレンズの力は兵器だけじゃない、工場や船にだって使える。
 物騒だと思ってた俺たちも、この鉱石を軍事利用した連中とおんなじ頭だったってことだな。」
ロニはやや皮肉めいた言葉を放った。
ベルクラントによって家族を亡くしたロニだったが、それを使った人間と同じ考えだったことに反省しているのだろう。
「イレーヌ・レンブラント、か。確かに過去に彼女のしたことは間違ってたと思う。でも、思いそのものは本物だったんだな。」
シンはしみじみと言う。
どの世界に行っても技術を兵器に転用したがる人間はいる。
元は薬だった火薬しかり、坑道爆破のために作られたダイナマイトしかりである。
そもそも、シンが搭乗して戦っていたモビルスーツですら、本来は宇宙空間で作業をするために作られた機械だった。
人間に出来ない力のいる仕事、そして人間並みの細やかな仕事。
そんな夢のある、そして人間を豊かにする道具が、いつの間にか戦場の主力兵器と化してしまった。
人間とは愚かな限りだと思う。
「結局僕たちは無駄足を踏んだということか。」
「そんなことないよ、ジューダス。」
カイルはあくまで明るい。
「この綺麗な場所そのものが宝物だと思わないか?」
「この場所そのものが、か。たまにはいいこと言うじゃねえか、カイル!」
「うん、この綺麗な場所、守っていきたいね。」
「それはノイシュタットの人の仕事だよ、きっと。俺たちが手を出していいようなものじゃないんだし。」
「この場所が宝か……安っぽいな。だが、そういう安っぽいものもたまにはいい。」
5人が5人なりの反応をし、廃坑を出た。
来るときよりも、ほんのりと暖かいものを胸に秘めながら。
「それにしても、イレーヌさんって本当に心の綺麗な人だったんだなあ。あの人の思いは本物に違いないぜ…………って何だよその反応は。」
ロニの発言は他の4人を絶句させた。
ジューダスが全員の思いを代弁するかのように口を開いた。
「いや、お前が女性の外観ではなく、内面を評価したのがお前らしくないと思ってな……。」
「普通なら美人だとかなんだとか言うと思ったんだけどな。」
シンの追撃に、ロニはわなわなと震えながら応える。
「お前ら……あー、そうだよその通りだよ! イレーヌさんってきっと美人なんだろうな、とか思ったよ! 悪かったなチクショウ。」
ほのぼのとしても、最終的にはここに落ちてくる。
だが、それがいいのだろうとシンは思った。

 
 
 
 

TIPS
称号
 ツッコミ担当
  彼は意外と根が真面目。
  ふざけているとツッコミを入れたくなる。
  でも、ちょっとバイオレンスなんじゃ……。
   攻撃+0.5 知性+0.5 SP軽減-2.0

 機械使い
  異世界の機械もなんのその。
  わずかな違いだけで済ませる腕は一級品!
   詠唱+1.0 知性+0.5 攻撃-1.5