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Fortune×Destiny_第12話

Last-modified: 2007-12-04 (火) 09:53:55

12 ハイデルベルグの鐘が落つ

 

「うーん、俺って趣味悪いかな。他人がデートみたいなことしてるのを覗き見なんて……。」
民家の屋根の上でシンはぼやいたが、別に付き合っている二人ではないのだと自分に言い聞かせ、彼はカイルたちの様子を見ることにした。
「カイルー!」
ややいじけた調子のカイルに、リアラが声をかけた。息を切らせている。
シンが適任だと思う人物。それはリアラだった。
「いきなり走ってっちゃうんだから、びっくりしちゃった。」
「あ……リアラ、ごめん。」
「え?」
何か、いつもの調子ではない。シンは自分の趣味の悪さを自覚しつつ、カイルを眺める。
「その、俺舞い上がっちゃって。そうだよな、俺、父さんと母さんのお陰でウッドロウさんに会えたんだ。それなのに浮かれて、リアラが大変なのに……。」
どうやらリアラの英雄とは、ウッドロウではなかったらしい。そして、大体の遣り取りは掴めた。
「ははあ、ロニはカイルがスタンとルーティの息子だと言ったんだな。」
手っ取り早い方法だが、それはカイルをカイルとしてではなく、「スタンとルーティの息子」としか見せなくなるものだ。
早い話が、カイルを見ているのではなく、スタンとルーティを見ているということだ。
これは、カイル本人の価値を失わせることになる。
それについて説教したのは、シンの想像が正しければジューダスだ。
冷たいように見えるが、実は優しさも備えている。
ロニが甘い父親の役をするのなら、ジューダスは厳しい父親の役をしているのだろう。
「保護者もいいところだな……。ああ見えてジューダスはカイルの目的のために全力を注いでる。本当に血縁関係者じゃないのか?」
仲間が悩んでいるところで浮かれてはいけない。
ジューダスならそう言うだろう。遠慮も何もない。
はっきり言うべきことははっきり言う。それがジューダスである。
「あ、いいの。私、気にしてないから。」
「でも、英雄探しは一からやり直しだね。これからどうする?」
「うん……でも、気晴らしに公園にいこ?」
これは事実上デートのお誘いだ。これはまずい、とシンは退散する。
これ以上の覗き見は本当に変態の域に達する。
「俺は空中散歩でも楽しむか……って目立つよな。普通に散歩でもしようか。」
カイルとリアラが記念公園の方に向かうのを確認すると、シンはひらりと着地し、雪の降り頻るハイデルベルグの街を歩いた。
雪が多い土地柄だというのに、ほとんど雪が道に積もっていない。
よく見るとせっせと住民が雪を道路から離れた位置に持っていき、さらに街の外に出しているらしい。
しかも、外に出すのも入り口が塞がらないように気をつけているらしい。彼らの顔には活気がある。
雪なぞ来るなら来てみろ。弾き返してくれる。そう語っているように見えた。
「本当に……いい街だ。住み着いたら……まあ、不便だとかなんだとかで俺は駄目なんだろうけど。」
環境と言うものは大事だ。普段と生活環境が違うと、人間と言うものは体調を崩したり精神不安定になったりする。コーディネイターであるシンにはあまり起きないものだが、違和感はある。
コーディネイターの中でも地球に住むのはごめんだという者もいる。偏に生活環境のためだ。
「寒さに負けない人間は強いな。それに平和だ。きっと寒さと雪という戦う相手がいるから、人間同士で戦う必要がないんだろうな。」
オーブに暮らしていた頃、社会の授業で教師が言っていた。
「今ばらばらの国が本当に一致団結することがあるとすれば、それは地球人類以外の敵が地球を狙って襲ってきたときだ。」と。
理屈は同じだろう。
人間ではないものが居住区機能を侵すという意味では。厳しい気候だからこその強さ。
それは何よりも勝るものだろう。
「頬が冷たいな。ロニたちと合流しないと。」
シンはコートの襟を閉め、ハイデルベルグ城に足を向けた。

 
 

そのとき、大気が大きく揺らいだ。空が翳った。
どこからともなく飛来したそれは、ハイデルベルグ城のシンボルとも言える鐘が吊るしてある塔を破壊した。
澄んだ音を街中に放つといわれるそれは、鈍い音を立てて石畳に激突する。
音から察するに、無残に変形したことだろう。
「あれは……飛行竜?」
飛行竜はレンズ技術を用いた飛行マシンだ。全長100メートル、翼長100メートル、体高60メートルという巨体にも関わらず、最高速度はマッハ0.8を誇る。
半機械、半生物の輸送設備であり、並大抵の予算では購入、及び維持できない。
シンはレンズに関する本を読んでいたお陰で、簡単には動揺しなかったが、それでも慌てることは慌てる。
ハイデルベルグ城を衆人環視の中で襲撃するなどまともな人間の思考ではできまい。
「明らかに敵意を持って起こした行動だ。カイルたちも向かうはず!」
彼は人の目など気にしなかった。
フォース形態をとり、一気にハイデルベルグ城まで向かった。
空を飛ぶ人間などそういないだろう。何人かの叫び声を聞いた気がしたが、無視して飛び続ける。
「これは……。」
ハイデルベルグ城の兵士達が戦っている。
だが、あの飛行竜には大量のモンスターが搭載されていたらしい。さしもの兵士達も苦戦している。
「助太刀する!」
シンは一気に飛翔力を爆発させて斬りかかった。技を使うまでもなかった。
骸骨状のモンスターは一瞬で崩れ、レンズと共に床に散らばった。
「何者だ!?」
「俺はカイルと共に旅をしている。乗りつけた連中が気に入らないから助けに来た!」
何とも不良というか、ごろつきの言う台詞だ。
「気に食わない。」というその姿勢を偽善で塗り固めるくらいなら、はっきり表に出してやる。
シンはそう開き直った。
「でやああああああああああ!」
モンスターたちのターゲットが自分に向いた。
彼はソード形態をとり、二本のクレイモアを振りかざして突撃する。
「邪魔だあああああああああああああ!」
明らかにモンスターたちの目的を邪魔しているのはシンなのだが、そんなことを考える思考すら失われていた。
彼の目の前に敵がいる。敵を叩き潰すと戦意が昂揚する。その繰り返しだ。
新しい技を使えたら嬉しい。新しい形態を手に入れられたら嬉しい。
そして、敵よりも強くなれたら嬉しい。
それに気付いた瞬間、シンは手を止めた。
「これじゃあまるで……バルバトスと同じじゃないのか!?」
その隙を逃すモンスターたちではなかった。一斉に骸骨の大軍がシンを斬りつける。
我に返ったシンはその攻撃を叩き潰しにかかったが、タイミングが遅れた。
「しまっ……!」
コートごと赤い軍服ごと、胸を袈裟懸けに斬られた。
黒いコートから血が滲み、赤黒く変色する。傷は思ったより深いらしい。
それだけではすまない。仰け反ったところを狙われ、左肩、右前腕、左大腿部にも軽度の怪我を負った。どれも戦闘能力に関わる部位だ。
「だが、ここで死ねない。終わってたまるか!」
激痛を振り払うように、大剣を振るう。
傷口から血が流れるのを感じたが、気にしてどうにかなるものではない。
気にしていたら、突撃してくるモンスターの迎撃などできない。
シンはまた、あの危険な昂揚に身を任せた。
「斬衝刃! 追衝双斬!」
扇状に広がる衝撃波で吹き飛ばし、さらに追撃にと2つのクレイモアによって鋏み切った。
この形態での攻撃力は高い。武器の重量と相まって骸骨が砕け散る。
「まだまだあ! 地裂斬! 地裂鉄槌!」
床を抉りながら破片と共に斬り上げた。
さらに、巻き上げた破片と共に振り下ろされる大剣の面の部分で叩きのめす。
「砕け散れ! 飛礫戈矛撃!」
シンの周りの重力が大幅に変化した。床が砕けた。
さらに、二つの大剣の柄頭同士をぶつけて結合させ、アンビデクストラスフォームへと姿を変える。
それを頭上で旋回させると砕けた石が浮いた。浮いたところで剣の向きを90°変え、剣の面で石を叩き、敵に向けて弾き出した。
「はああああああああああああああ!」
その名に恥じぬ破壊力だ。弾き出された石は戈矛となって切り裂いていく。
接近したモンスターは勿論のこと、離れた位置にいたモンスターですらも切り裂いて薙ぎ倒す。
「ふうっ、ふうっ……。」
シンの目が血走っている。ダメージが深いのだ。
今の攻撃で傷が開いたらしい。目が霞む。
「ぐう……。」
危険な昂揚もさすがに限界を迎えたらしい。
がっくりと剣を杖代わりにし、跪いた。
シンの目にはモンスターが殺到する様子が映し出されている。
「……。」
シンの横を駆け抜ける影がある。
それは素早く剣でモンスターを切り払い、ハルバードで叩きのめし、しなやかな動きで翻弄する。
そして、傷口から血が滴る感覚がなくなった。傷口が塞がっている。
「シン、またお前は無茶な真似を。死にたいのか。」
「俺たちがいるってこと、忘れんなよ。」
「これからはできるだけ合流するようにしようよ。危ないし。」
「あなたの気持ちもわかるわ。でも、皆で行く方が心強いはずよ。」
カイルたちだった。シンはほっとしつつ、口元に笑みを浮かべた。安堵の笑みだった。

 
 

「この状況だとウッドロウさんが危ない! 玉座の間に行こう!」
とりあえず、自分達への襲撃を退けたカイルは決然と叫んだ。
ウッドロウがいかに自分のことを「スタンとルーティの息子」として扱ったとはいえ、彼の厚意は決して偽りではない。
そして、四人の英雄として、穏健なファンダリアの国王として失ってはならない人物だ。
「手遅れにしてはならない。急ぐぞ、カイル!」
ジューダスですら焦っている。その態度はウッドロウのことを本気で心配しているようだ。
甘ったれた性格と酷評しているが、それは嫌っているからではないらしい。
むしろ、それが仇になりはしないかという感覚だ。
「待たれよ!」
その彼らの前に立ち塞がったのは、獣を模した兜を被った、日本刀のようなものを携えた剣士だった。
犬のようなモンスターを連れている。
「我が名はサブノック! 己の信念に生きる騎士なり! 参られよ少年達よ。貴公の信念と我の信念、どちらがより強固か戦いによって証明しようぞ!」
シンはこの剣士が只者ではないことを感じ取った。その勘は正しかった。
いきなり間合いを詰め、シンに斬りかかってきたのだ。
「くっ!」
大剣で受け止め、反撃しようとするが、振るったときには既に離れている。
「何だと……! 速い!」
このサブノックの剣技は居合い斬りと呼ばれるものである。鞘の内の剣と言われ、敵に攻撃する瞬間まで刀は鞘に入ったままだ。
だが、素早く間合いを詰め、抜き様に斬りつけることで太刀筋の見切りを難しくする。
アクアヴェイルに伝わる剣技を、何故サブノックが知っているのかはわからないが、この剣技相手にまともに戦えるのはおそらくジューダスくらいだろう。
「その敵の剣技が相手では無理だ。僕が相手をする!」
シンはフォース形態をとり、サブノックから離れた。
だが、今度は犬型のモンスター、オセが晶術を放つ。アクアスパイクだ。
「くっ……!」
シンは何とか回避して穿風牙を放ったが、オセは避けてしまった。
「回避合戦になりそうだな……。」
その間、ジューダスとサブノックは切り結んでいた。
見切りにくい剣技を相手にジューダスは左手のナイフで攻撃を受け流し、斬りかかる。
しかし、サブノックは動きが速い。ジューダスの剣が振り下ろされる前に後退する。
「ちいっ!」
「貴様、主を裏切って何故ここにいる。何故我らの邪魔をする。」
「お前達のやっていることが自己満足に過ぎないからだ!」
言葉少なに遣り取りをする。この様子から察するに、どうやら知り合いらしい。
そして、元々仲間だったというのか。
「っ! そんなこと気にしている場合じゃない!」
オセが再び晶術を放つ。
シンは鋭いカーブを描きながら逃げ回り、さらにソード形態に入れ替えてオセの前に立つ。
「でええええい! 影殺撃! 影殺狂鎗!」
振るった剣と共に影から伸びる黒い槍がオセを襲う。
さらに、オセの周囲から影の槍が一斉に伸び、さらに追撃をかける。だが、この攻撃は避けられた。
「こんな大雑把な攻撃じゃ駄目か!」
フォース形態に入れ替え、サーベルで斬りかかるが、それも避けられた。的が小さいのだ。
「ガアッ!」
シンの左前腕にオセが食いついた。締め付ける牙が左腕を痛めつける。
「シンから離れろ! 閃光衝!」
カイルがシンの危機に気付いたのか、素早く潜り込んで光芒を放つ突き上げでオセを攻撃する。
オセはシンの腕にぶら下がっていたために避けられない。
やむなくオセはシンの腕から離れ、晶術を詠唱する。
「させない! エアプレッシャー!」
いち早く気づいたリアラがオセをエアプレッシャーで攻撃し、詠唱を妨害した。
三人がかりでオセを攻撃している間、ジューダスはサブノック相手に一歩も引かない。
一進一退の攻防だ。さらに、そこにロニが割り込んだ。
「おりゃ!」
「邪魔立てするな!」
サブノックの居合いがロニを襲うが、そこはジューダスが防ぎ、一太刀浴びせることに成功する。
「お前も無茶なやつだ。相性の悪い敵に向かうなど、死にに行くようなものだぞ。」
「知ったことか。俺は早いとこウッドロウさんを助けたいんだよ。」
「なら何も言わん。足さえ引っ張らなきゃな。」
「誰が引っ張るか。お前こそその貧弱な体を斬られんなよ!」
全く対照的な二人だが、カイルの保護者という意味ではその立場は見事に一致している。
意外と気が合うのかもしれない。
「ぬう!」
ジューダスに刀を受け止められたサブノックが一瞬戸惑う。そこを狙ってロニが仕掛ける。
「霧氷翔!」
ジャンプしたロニが突き出したハルバードの穂先から、氷の槍が放たれた。
サブノックはそれを避けたが、ジューダスがさらにサブノックを斬りつける。
一発一発の威力は低いが、確実にダメージを与えている。さすがのサブノックも焦り始めた。
「くっ、心眼・無の太刀!」
今までの動きが嘘のように、サブノックがジューダスの目の前に迫った。太刀筋が全く見えない。
さすがのジューダスもこの攻撃は避けられなかったらしい。
「ちっ……!」

 
 

「おいおい、ジューダス! 大丈夫か?」
「こんなのかすり傷だ。回復したいなら勝手にしろ。僕は何とも思わないからな。」
「減らず口叩くな。軽い傷じゃねえよ。」
ロニはできるだけ早く回復できるよう、晶術を早口で詠唱し始めた。
「させんぞ!」
サブノックはロニの晶術を妨害するつもりだ。無防備なロニに向かっていく。
「今こっちくんなって!」
ロニは慌てた。ここで詠唱を妨害されてはまずい。
だが、決して軽くない怪我を負ったジューダスが攻撃を受け止めた。
「足を引っ張るなと言っただろう!」
「てめえこそ! ヒール!」
晶術が間に合った。ジューダスの傷が消え、動きが鋭くなった。
ロニはハルバードを振るい、サブノックを襲ったが、そこは素早いサブノックだ。攻撃を避けられた。
「お前の攻撃は馬鹿力で叩きのめすだけか。当てなければ意味がないんだぞ。」
「うるせえ、敵の集中力乱してやってるんだ、文句言うな!」
「今回は僕が主体になってダメージを与えろという意味か?」
「当たり前だ! いろいろ因縁があるんだろうが。お前がやらなくてどうする!」
「今だけは感謝してやる。ありがたく思え。」
「へいへい、御託はいいから止めを刺せよ!」
ジューダスとロニが言い合いをしながら連係プレーを見せている間に、シン、カイル、リアラはオセ相手に苦戦している。
何しろちょこまかと動き回る上に、放っておけば晶術を放ってくる。厄介なことこの上ない。
「こうなったら身を食らわす!」
シンが真っ直ぐに突っ込んでいき、サーベルで斬りかかった。無茶にも程がある。
オセはサーベルを掻い潜り、先刻噛んだところと同じところに食いついた。
「ガゥゥゥゥゥゥ……。」
「かかったな!」
シンは懐からダイナマイトを取り出した。廃坑で作りすぎた分をまだ持っていたのだ。
それをオセの口に押し込み、ソード形態に入れ替えてクレイモアの柄頭でオセの頭を殴り続ける。
「このっ……。」
口の中の異物の感触と、殴打に怯んだオセが腕から離れた。まだ口にダイナマイトが引っかかっている。それに狙いをつけ、シンはソーサラーリングの熱線をダイナマイトにぶつけた。
爆音と共にオセの体が砕けた。バラバラと肉塊が転がり、シンは血飛沫を浴びた。その姿は鬼神とでも言うべきものだった。
元々ソードインパルスの装甲色は返り血と言われるほどだ。ある意味では、血飛沫が似合う。
「オセ!」
サブノックがオセに気をとられたその瞬間、ジューダスの剣が閃光を放った。
ジューダスの目付きが変わり、鋭い光を湛えている。
「千裂虚光閃!」
サブノックを浮かせ、さらに素早く突きの連続だ。サブノックは滅多突きを食らい、動きが鈍る。
ジューダスは追撃の秘奥義を放った。
「切り刻む……遅い! 魔人千裂衝!」
地面を滑るように斬りかかり、ややジャンプしつつ後退しながら撫で斬る。
さらに前進して上下に剣を振るい、長剣短剣を交互に繰り出した。
そして、最後に斬り上げながら衝撃波を放つ。
これを目にも止まらぬスピードで行うのだから、ダメージは大きい。
「し、信じられん……!」
ついにサブノックも斃された。

 
 

「ぐあ……!」
シンが目にしたのは、穏健そうな色黒の王がバルバトスに斧で切り裂かれる姿だった。
致命傷は避けたようだが傷が深い。
「ウッドロウ!」
ジューダスが叫んだらしい。我を忘れているように見える。
「ほう、また会ったな。カイルと言ったか。」
「お前がウッドロウさんを……くそ、許さないぞ、絶対!」
「俺の目的は達した。お前達と一戦交えても面白いが……後はあの女が勝手にすること……さらばだ、カイル。」
バルバトスは闇に包まれながら姿を消した。みすみすバルバトスを取り逃がした。
悔しくないわけがない。だが、それよりも気になることがある。
「あの女……一体、誰のことだ?」
カイルは少し考え込んだが、何より優先すべきことがある。それは、ウッドロウの治療だ。
「大丈夫か、しっかりしろウッドロウ!」
真っ先にジューダスが駆け寄っていた。彼が見る限り、それほどひどくはないらしい。
かつて戦いの中に身を置いていたウッドロウだからこそだ。
「傷は深いがかろうじて急所は外れている。大丈夫だ、これなら助かる。おい、早く医者を呼んで来い!」
ロニが叫びながらヒールをかける。ヒールはあくまで応急処置だ。
医者の手に委ねる方がいいに決まっている。
「フィリアさんに続いてウッドロウさんまで……このままでは時の流れに大きな歪が生じて……まさか、これは全部あの人の仕業なの?」
リアラには思い当たる節があるらしい。そして、その人物が後ろから現れた。
「だとしたら何だというのかしら、リアラ。」
エルレインだった。アタモニ神団のトップに立つ彼女が何故こんなことを仕組んだのか。
シンにはさっぱりわからなかった。
「あの時素直にレンズを渡していれば、こんな目に遭わずに済んだものを……。」
ハイデルベルグ城には国民から集められたレンズが蓄えてある。
エルレインはその提供を打診したらしいが、ウッドロウによって断られていた。
「そのためにわざわざこんな真似をしたのか、あんたは!」
奇跡を起こすために、力を得るためにレンズを欲する。そして、そのために彼を傷つける。許されざる行いだ。
「エルレイン! あなたは間違っているわ! こんなやりかたで人々を救えはしない!」
「では、お前はどうするの? 未だに何も見出せないお前に救いが語れるというのか?」
「そ、それは……。」
この遣り取りを見る限り、リアラとエルレインは知り合いらしい。
それも、ただの知り合いではなく、それぞれに同じ目的のために動いていたように見える。
「どうなってんだ? なんでエルレインがここに……。それに、リアラ、どうして君はエルレインの事を……。」
戸惑うカイルは二人の顔を交互に見遣る。
その横で、ロニが怒りに打ち震えていた。
「わかんねえことだらけだが、一つだけはっきりしてることがあるぜ。それは、あの女が黒幕だってことだ。いくぞ、覚悟しろエルレイン!」
ロニのハルバードが唸りを上げ、エルレインを打ちのめそうとするが、彼女の部下の一人が遮った。
「ぐっ……! こいつ!」
「エルレイン様には指一本触れさせん。」
「ならば!」
今度はジューダスが斬りかかった。だが、謎の障壁に彼は弾かれた。
時を同じくしてロニも攻撃を受けて弾き飛ばされた。
「ぐっ!」
「うっ!」
「ジューダス! ロニ!」

 
 

「人々の救いは神の願い……。それを邪魔する者は誰であれ容赦はしない……。」
エルレインの声は静かだったが、どこか狂気を帯びているように感じる。
自分のしていることに疑問を持たず、自らの思い全てを信じきった狂信者独特の口調だ。
「やめてエルレイン!」
「私を止めることは誰にも出来はしない……。そう、たとえお前でもだリアラ。」
「いや! やめて! 私にはまたここで果たすべき使命が!」
リアラが悲鳴を上げている。彼女の周りの空間が発光している。
ただの光ではない。吸い込まれるような感覚がする。
「未だに何も見出せぬ者に、ここにいる意味はない。還るがよい、弱き者よ。」
どこか見下した、同時に哀れむような口調だった。彼女の姿が光の中に消えていく。
「いやああああああああああああああ!」
「リアラ!」
カイルが慌てて光に包まれた彼女を追って光の中へと飛び込む。
「カイル! リアラ!」
「追うぞ!」
ロニとジューダスも続く。
「エルレイン! あんたは必ず討ってやる! だがな、それは仲間とともにだ!」
シンもまた光の渦の中へと飛び込んでいった。
その光が消えたとき、5人はこの時空から姿を消していた。

 
 
 
 
 

TIPS

追衝双斬:ツイショウソウザン 武器依存
地裂鉄槌:チレツテッツイ 地
影殺狂鎗:エイサツキョウソウ 闇
飛礫戈矛撃:ヒレキカボウゲキ 地

 

称号
 暴走戦士
  自分を制御できないほどの狂気。
  仲間にまで攻撃しないのが救いだろうか。
   攻撃+2.0 SP軽減-1.5 命中-0.5