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G-Seed_?氏_サイドストーリー

Last-modified: 2007-11-10 (土) 19:50:03

「キィィラァァ!」
 カガリは怒声と共に布団を引っぺがした。
「あ、後・・・5分・・・5分10秒・・・」
「ふざけるな! まったく、国家元首に起こさせやがって」
「・・・グゥ・・・」
「そうかそうか。まあ、マンハートとかいう教官に怒鳴られるのは、お前だ。
私じゃない」
 マンハートの名前を聞いた瞬間、いきなりキラの身体が跳ね上がった。
「申し訳ありません。サー!」
 ビシっと、背筋を伸ばし敬礼するキラを、カガリは呆れたように見つめた。
「おはよう、キラ」
「・・・おはよう、カガリ」
 
(良く食べるようになったな・・・コイツ)
 キラが目の前に並んだ食事を片端から平らげていく。
「――ああいう根性論っていうか精神論的なマッチョイズムは良くないって思うんだ」
「そうかそうか」
 生返事をしながら、カガリは、書類をめくった。まずは知識をつけようと思って
最近は議員達の勉強会に積極的に参加しているのだが、その分、政務に負担が
出ていた。
 サインするだけでよい者も多いが、目を通さないというわけにもいかないのである。
「褒めて伸ばすほうがいい効果をもたらすっていうのは、心理学的にも正しいって
いわれてるのに! ダニだの、蛆虫だの、この宇宙でもっとも劣った生き物だの・・・」
「そうかそうか」
「どうして走るときに、あんな卑猥な歌を歌って走る必要があるのか、僕には分からないよ!」
「そうかそうか」
「テケンレツノパー。ハッパフミフミ」
「そうかそうか」
「聞いてないじゃないか!」
「やかましい!!」
 カガリは怒鳴り返した。
「毎日毎日何回同じ話をしてると思ってるんだ!? お前は、モビルトレース
システムの開発の仕事もあるから、夜の訓練を途中で抜けさせてもらい、
しかも兵舎に戻らずにここで寝ていいという特別待遇なんだぞ? それなのに
ゴチャゴチャ言うとはな! それでドモン大使に勝とうなんてヘソで茶を沸か
すってもんだ!」
「愚痴ぐらい言ったっていいじゃないか! 少しぐらいストレスを発散したい
から言ってるだけだよ。どうしてカガリにはそれが分からない?」
「男ならゴチャゴチャ言わずに・・・」
「朝から元気だねえ、君達」
「あっ・・・ユウナさん。お早うございます」
 カガリの身体がビクリと震えた。
 ちなみに今のカガリの邸宅とは、広大なセイラン家の敷地内の離れの一つである。
もっとも、一般の基準からいうと十分すぎるほどの邸宅であるが・・・。
「ユ、ユウナ。おはよう・・・。というよりお休みか?」
 確かユウナは昨日、仕事が長引いて帰ってこなかったはずである。
 だが、ユウナはそれには答えず。
「あのさあ、オノゴロ開発計画に関する書類に目を通して、サインしといてって
僕、言った気がするんだけど」
「昨日は会議会議で、そんな暇は・・・」
「ふ〜ん」
「そ、それに、勉強会で習ったことも消化しないと。一度にあんなにたくさん
覚えられるわけがないだろう? 色々専門書とかも読まなきゃならないし・・・」
「ふ〜ん」
「・・・分かったよ! 今すぐやるよ! ほら、行くぞキラ。行政府まで
乗せていけ!」
 ついに根負けして、ヤケクソのように言い放つとカガリは立ち上がった。
「分かった。じゃ、ユウナさん。お休みなさい」
「お休み。キラ君」
 慌てたように入り口へと向かう二人を見送り、涼しい表情を浮かべながら
残ったトーストに手を伸ばしかけたユウナだが、カガリ達と入れ違いに
入ってきた人物を見て、慌てていずまいを正した。
「ち、父上。おはようございます」
「ユウナよ。早いな」
「いえ、そんなことは」
「ふうむ」
 オーブ宰相、ウナト・エマ・セイランはどっかりとテーブルに腰掛けた。
体躯と声から、歳月を重ねてきたものだけがもちえる重厚さが圧力となって
ユウナにのしかかる。
「そう言えばユウナよ。ガンダリウム合金研究開発の民間委託案が上がって
きとらんが、どういうことか?」
「それが、氏族調査会が反対しておりまして・・・」
「難航している、か。たしか二週間前に同じことを聞いた記憶がある」
「は、はい・・・」
「ユウナよ。知っておるか? 民間では納期を守らぬ取引先は」
「わ、分かりました!」
 立ち上がり、ユウナは扉に向かおうとする。その背中にウナトの声が飛んだ。
「ユウナ。モルゲンレーテ社の意図を読め」
「・・・はあ?」
 ユウナは間の抜けた声を上げた。モルゲンレーテ社は、カガリが率いる
アスハ家ひいてはセイラン家を一貫して支持しているはずだが・・・。
「思い込みは愚と知れ。寡占の継続を望むのは企業として当然のことぞ」
 しばらく思考して、ウナトの言っている事が正しいと悟るとユウナは
苦い顔をした。
(何でこんなことに気づかなかったかな?)
 だが、こういうことに気づくのが経験則というものなのだろうと思う。
自分も父に比べればまだまだ未熟ということだ。
「分かりました・・・」
 ユウナは深々と頭を垂れた後、食堂から去った。

 ユウナが去った後、ウナトは窓の外を見て、ふと視線を止めた。走り去ろ
うとする車にユウナが走っていって乗り込もうとしている。車の窓から顔を
出してカガリが何やら言っている。
 ウナトは顔をほころばせた。
「ウズミよ・・・。子らはなかなか頑張っておるようだぞ」
 
 南海の楽園、オーブは、今日も晴れであった。