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GUNDAM EXSEED_07

Last-modified: 2015-02-26 (木) 13:27:40

オーブ首長国連邦
大洋の真珠と呼ばれる美しい国。貿易や兵器の開発を主産業にする海洋国家そして、独立と自治を訴え、完全中立を唱えている地球では数少ない国だ。
しかし、それは建前で、アスハ家が首長となってからはプラントとズブズブの関係でありまた地球連合が何度か攻めた経験があり、地球連合とは関係が悪い。
と言っても、クライン公国成立以後の関係は常識的な範囲での友好度であり、地球連合とも金銭的なやり取りをすることで上手くやっている国だ。
「つまりはどういうこと?」
リーザが説明に対して問う。
「要は金でなびく蝙蝠国家になり下がっているというわけ」
端的にハルドが答えを出す。
「でもまぁ、観光名所も色々ですし、悪くないですよ」とりなすのはライナスである。
「アタシも来たことあるけど街は綺麗だし良い場所だよ」続いてサマーも言う。
「暑いから薄着が多いのもいい感じですね」締めるのはギークだが、最後の発言は皆、無視する。
「中立国だから油断はできないが、カリフォルニアと同じ程度にのんびりできるはずだ。まぁ期待せずにいるといい。」
最後にハルドが言い、解散となった。オーブの島の西側は地球連合の港、東側はクライン公国の港となっている。
ベルゲミールも余計なことはせずに、そのルールに従い、西側に停泊させることとした。軍の基地と違って誘導がない。
「甘いと思うのは俺が過敏すぎるだけか?」
「いや、私も思う」
武装をした軍艦が停泊するというのに全く警戒の様子が無い。それをハルドとベンは気持ち悪く思っていた。
MSで誘導して何かしら変な動きをしたら撃つぐらいの準備があってしかるべきだというのが二人の感覚である。

 

[東側]
「いやぁ、ほんとに良い国だな、オーブは。バカがトップに立ち続けるとこういうことになるってことだよ、ディレックス君」
ロウマはクライン公国の海上巡洋艦の甲板上で、港に入ることの簡単さに感激していた。
「オーブは中立国ですから入港も自由ですが」
「そうだね」
ロウマは取り敢えず、待つことにした。航海中、別に問題は無かった。
アッシュ・クライン小隊を借りたのに間違いはなかったと確信しているが、煩いのが1人いて黙らせようという気持ちを抑えるのに余計な手間がかかった。
彼らの実力を見るのはこれからだ。と言っても、実力が見たいのは1人だけで残りの3人はおまけもおまけだ。どうでも良い。
「いやぁ、パーティーが楽しみだ」
「パーティーが開かれるという予定は聞いておりませんが」
「そうだね」
ロウマは待つことにした。そろそろ主役も準備をすることだろうと考えながら。
[西側]
西側の港ではひと悶着起きていた。名前も明かさない研究所の職員がやってきて、リーザの身柄を一時的に預かると言っているのだ。
「だから、身分証を出せと言っているんだ。こっちは!」
ハルドは一向に返事を変えない職員に対して既に苛立ちを隠していない。
「規則ですので、部外者の方に対して情報を漏らすことは出来ません」
職員はその一点張りである。
「常識的に考えて身元がはっきりしない奴らに人を預けるわけがねーだろうが!」
ハルドはいっその事殴り倒してやろうかと思った。しかし、そうもいかなくなった。
「我々の身元に関してはエルザ・リーバス准将閣下が保証しますのでご安心を」
ここに来て、またエルザか。ふざけやがってと思いハルドの怒りは最高潮に達しようとしていた。しかし、リーザがそれをたしなめた。
「大丈夫だから行ってくるよ。ハルドくん」
微笑みながらハルドの方を叩き、リーザは職員の方に向かう。最後にハルドの方を振り返ると
「帰ってきたら観光でもしよう」
とリーザは言って、去って行った。

 
 

「隊長、ちょっと入れ込みすぎですよ」
ライナスが少し呆れたように言う。言われてハルドはライナスの頭を拳骨で殴る。図星だったからだ。多少、自分でも入れ込みすぎとは思う。所詮、女一人のことなのに。
「それが恋ってやつですよ。隊長」
そう言ったのはサマーである。
「入れ込み過ぎても良いじゃないですか。恋してるんだから」
サマーの言葉にはからかいが混じっている気がした。ここでサマーに対して何かすると、図星を突かれたようで恥ずかしいのでハルドは、
何も言わずにその場を去ることにした。現状、この場で自分が何を言っても勝ち目が無さそうだったからだ。

 

待ち時間はどれくらいになるのだろうかと思いハルドは艦内をぶらついていた。
正直、することはない。甲板上での警戒番の仕事も、流石に中立国の軍港で大っぴらにMSを出すわけにも行かないので止めさせている。
行くあてがないハルドは格納庫に行くことにした。じぃ様とでも世間話をするつもりだった。
訪れた格納庫もカリフォルニア基地以降、戦闘もなく、整備兵たちはヒマそうであり、緩んだ空気が流れている。
「おう、ハルド、どうした?」
じぃ様はすぐに見つかった。ストライクΔの前にいたからだ。
「機体はどうだ?」
何となくは知っているがハルドは聞いてみた。
「万全じゃよ」
じぃ様は自信満々である。実際、万全だろう。カリフォルニア基地で良いことがあったからだ。
なんと、無傷で一度も稼働させていない新品同様のストライクΔを2機も見つけたからである。
じぃ様たちは、それらを解体しハルドの機体のパーツにしてしまった。
新品同様の機体に乗ったほうが楽ではないかとハルドは思って聞いてみたのだが、
ハルドのストライクΔはチューンアップやらカスタマイズをし過ぎで素のストライクΔとは殆ど別物であり、
新品同様のストライクΔを同じ状態にするには尋常ではない手間がかかる。というか不可能だそうだ。
なので、思い切ってハルドの機体の予備部品にしたほうが楽だという。
その予備部品のおかげでパッチだらけだったハルドのストライクΔの見た目は新品同様になっている。
「機体が綺麗なのは俺も気分が良いぜ」
実際、やる気が違ってくるとハルドは思う。それでも、種持ちが乗った赤いガンダムに勝てるかは微妙な気持ちだが。
「そうじゃろう、機体も女も綺麗な方が良い。リーザの嬢ちゃんみたいにな」
ここでもまたリーザの話しか、ハルドはウンザリした気分になった。見るとじぃ様はニヤついている。
「恥ずかしがることでもなかろう。若い男女なんじゃから恋の一つでもせんとなぁ」
そう言われて、ハルドがじぃ様にあのなぁ――そう言おうとした瞬間だった。

 

「オーブ国内にアンノウン多数、出現しました。うそ……40機以上ってまだあるのこれ!?」
艦内にオペレーターのユイ・カトーの驚愕した声が響く。
ハルドは急ぎ、艦内に命令を送る。
「総員、戦闘準備!MS隊は全機、搭乗後に甲板で待機だ。俺が良いっていうまで誰も撃つな!」
そう言ってハルド自身も戦闘の準備をするのだった。

 

[東側]
巡洋艦の甲板上でロウマ・アンドーは狂喜していた。
「よっしゃ、きたーっ!!」
実験は成功だ。悪くない、今のところは悪くないぞ。とロウマは思っていた。巡洋艦から見えるのは機動兵器である。しかし、その姿は従来の物から全くかけ離れていた。
「大佐、ここは危険です。艦内に退避を」
ロウマの隣に立つディレックスが言うが、ロウマは敢えて甲板上に胡坐をかいて座り込み、頬杖をつきながら、観戦の姿勢を取っていた。
「あれは、こっちには飛んでこないよ。そういうもんなんだよ、ディレックス君」
上官の言っている意味が分からないディレックスは危険を感じながらも、上官が退避しないなら自分もできない。と立ち尽くすしかなかった。
「キミも見ると良い、あれが少女の輝きってやつだ」
ロウマはそう言うと、とある少女の顔を思い出しながら、機動兵器が暴れまわる様子を眺めるのだった。

 
 

[西側]
「なんですか、ありゃあ?」
ライナスはコックピットから見えるソレの存在に驚愕していた。
機動兵器であるのは間違いない。それは自分の乗っているMSに近いが、決定的に違う。
兎にも角にも細いのだ。棒を繋ぎ合わせて人間の形にしたような、かろうじて膝らしき部分と背中らしき部分にスラスターが付いているが見た目はどう見ても――
「出来の悪い棒人間すね」
ギークがライナスの思った通りの答えを言ってくれた。
「隊長、どうするんですか?やつら市街地を攻撃してます」
サマーが言う。出来の悪い棒人間は手らしき部分の先端からビームを出し、街を攻撃している。ベルゲミールの方には見向きもしない。
「取り敢えず、オーブ軍の動きを見る。援軍の要請があればこっちも動く」
ハルドは現状、そう答えるしかなかった。
こちらに攻撃があれば正当防衛で殲滅もできるが、他国の領内で好き勝手に軍事行動はできないので、ハルド達は動けない。
オーブ軍の動きを待つ中、じぃ様から通信が入る。
「おい、ハルド。あの構造じゃ人間は乗れんぞ――」
じぃ様の説明ではこうだ。まずパイロットになる部分が無い。
棒人間の頭部分にはかろうじて丸い部分があるが生命維持装置などを積み込むなどするのは無理だそうだ。
パイロットの装備に生命維持を大量に組み込んだとしても今度は全身が細すぎて、
コックピット部分に来る衝撃を緩和できずに、少しも動けば中の人間はミンチになるそうだ。
「じゃあ、無人機ってことか?」
ハルドは疑問に思う。棒人間の動きが人間らしい――というか、人間そのものだ。
棒人間が頭をビルにぶつけると、手らしき部分で当たった部分を抑えてから、怒ったようにビルを破壊するのだ。
「はは……人間に見えるんですけど、自分には……」
ライナスの口調にには歯切れがない、化け物を見たような感じだ。
「人が乗ってないんだから、無人機なんだろ……」
ハルドも棒人間の様子を見ると、そうやって答えるのが精一杯だった。

 

[東側]
「スケアクロウって言うんだ、あの兵器は。見たまんまだろ?案山子さ」
ロウマ・アンドーは甲板上で変わらずに棒人間曰くスケアクロウが暴れるさまを見ていた。
「はぁ……?」
となりに立つディレックスの表情は曖昧だった。何が何だかわかっていない様子だ。
「単価が安いから。良い兵器だとは思うんだけどね。ほら、部品も少なくて済むし」
ディレックスが困惑する様子などお構いなしだった。
「それに、中々強い」
ロウマがそう言った直後だった。オーブ軍のMS部隊が到着した。M3アストレイというガンダムと同じ顔をしたMSである。
過去にオーブに存在したM1アストレイという機体の流れを組む機体である。
スペックは低くなく、クライン公国の量産機であるゼクゥドを上回る基本性能を持っている。
しかし、そのM3アストレイを上回る動きをしたのが、棒人間スケアクロウである。
M3アストレイが現れた瞬間、街を破壊する動きをとは打って変わって俊敏になる。獣じみた動きで、M3アストレイに襲い掛かる。
軽量ゆえの異常ともいえる機動性で市街地を疾駆しながら、手らしき部分からビームサーベルを出し、M3にとびかかり、コックピットにサーベルを突き刺す。
「怯むな!」
そう言った直後、M3アストレイ部隊の隊長機に十数機のスケアクロウが群がり、ビームサーベルでズタズタに引き裂いた。
「まぁ、オーブ軍の練度が低いってのもあるんだけど」
ロウマは市街地の戦闘眺めながら、そう言った。
「まぁ、ディレックス君も真剣にならずに見ているといい。所詮はパーティー、12時の鐘が鳴れば終わる」
「12時は先ほど過ぎて、今は1時ですが?」
「そうだね」
まぁ、鐘は自然に鳴る物でもないし、12時に決まって鳴る物でもない。では誰が鳴らすのか。ロウマの興味は、そこにもあった。

 
 

[西側]
協力要請が出たのは、M3アストレイ部隊の隊長が棒人間型の機体に取り囲まれてズタズタにされた直後だった。
「ハルド、協力要請が来た。出撃しろ!」
ベンジャミン艦長からの報告が来て、ハルド達、マスクド・ハウンド隊が動き出す。
「遅いんだよ」
そう言うハルドのストライクΔにはシールドが装備されておらず、両腕に銃だった。右腕にビームライフルで左手に実体弾を撃ちだすソリッドライフル。そして、全体の装備はいつもの高機動仕様。
「隊長さん、ゾンビ映画みたいなやられ方でしたね」
そう言うのはギークである。今日のギークの機体は珍しく、重火力装備。バックパックはガトリングパックを装備で両肩両脚にはミサイルポッドパックだった。
「いやだなぁ、昨日見たんですよ、そういう映画」
そう言うのはライナスであり、ライナスもギークと同じ装備だった。サマーは取り敢えず、移動しながら狙撃ポイントを探っている。
「しかし、高層ビルが多いですね。視界の確保がいまいち」
ライナスがぼやく。オーブは高層ビルが多いのは産業的に発展してるからであり、今更それを言ってもどうしようもない。とハルドが思った瞬間だった。
早速1機発見である。各機、散開させてしまっているから、自分一人での対応である。
棒人間はこちらを発見すると、雄たけびをあげるような様子を見せた後で、スラスターを全開にして突っ込んできた。
何の工夫もない動きである。ただの獣と同じだ。ハルドは、左手のライフルを連射して当てる。だが止まらない。
「おい」
若干焦り、腰部分に当てると、棒人間は腰から真っ二つになる。だが、それでも止まらなかった。棒人間は腰から下を失っても、手らしき部分を足のように使い高速で這ってくる。
「おい!」
ハルドは仕留め方が分からず、頭を狙って撃った。直撃し、粉砕される頭部。直後に棒人間の動きは止まった。
「ハルド機から全機へ棒人間の弱点は頭部だ。以上」
「ライナス機、確認終了。その通りみたいです」
「ギーク機、全部繋がっている胸部分をやっても動きは止まります。残った頭がビチビチ動いて気持ち悪いすが」
「サマー機、狙撃ポイントを確保。情報を確認、射撃を開始します」
ゾンビ退治をしているみたいだと思いながらハルドは機体を動かす。だが、直後に最悪の知らせが来る。それはユイ・カトーからであった。
「アンノウン追加で30機を確認しました」
冗談ではない。ハルドの死闘が始まった瞬間だった。

 

[東側]
「ロウマさん。僕たちにも協力の要請がでました!出撃します」
声はアッシュのものである。ロウマは平静を保った様子で言う。
「了解した。クライン小隊。出撃せよ」
そう言った直後にイージス・パラディン1機とゼクゥド・パラディン3機の部隊が出撃する。
「バカが!発注しすぎなんだよ!」
今までの飄々とした態度を崩し、ロウマは毒づく。
「遊びと本気の違いが分からない奴がいると、全てが台無しになると思わないか」
ロウマはディレックスに問う。
「自分にはよく分かりません」
「そうだね」
別に答えを期待したわけではない。ロウマは飄々とした雰囲気に戻っていた。
「まぁ、向こうさんも頑張ってるし、大丈夫かね」
そう言うロウマの視線はストライクΔに向いていた。ロウマの視線の先で瞬く間に2機のスケアクロウを墜としている。
「いいねぇ、マスクド・ハウンドだっけ。うちにも欲しいね。ああいうの」
「我が軍にも特殊部隊はありますが」
「そうだね」
ロウマの視線は今のところ、ストライクΔに釘づけである。良い調教をしてあると、心からそう思う。本当に良い兵士だ。道具、それ以下の――ロウマは本人の意識とは別に、知らずに舌なめずりをした。
「ディレックスくん。俺は喉が渇いたよ」
ロウマが言うと、ディレックスは何も言わずに動き出す。それに対して、ロウマは、あれはあれで良いと思うが、視線の先のそれらと比べると物足りないと思うのだった。

 
 

[オーブ市街地]
「ギーク機、弾薬足りません。一旦戻ります」
「ハルド機、了解。戻れ!ついでに……撃ちすぎだ、バカ!戻ってから死ね」
「ライナス機、弾薬ヤバいです。退路の確保を」
「サマー、頼む」
「了解。しかし、こっちもヤバいので、戻ります」
「ハルド機了解、戻れ」
全くどいつもこいつもとハルドは思う。ハルドのストライクΔは既にライフルを撃つことを止めていた。
「誰もがみんな、隊長みたいにナイフkillできるわけじゃないんですよ!」
最後にギークがそう叫ぶ。
ハルドは既にだいたい、棒人間型の機動兵器の動きを見切っていたので、わざわざライフルを撃つ気はなかった。
右手のライフルを腰にマウントし放っておくと代わりにストライクΔに内蔵装備されているナイフを抜いて、棒人間型機動兵器の頭に突き刺し回っていた。
「慣れると楽しいな、これ!」
ハルドが大声を出しながら、棒人間型機動兵器の頭部にナイフを刺し、切り裂く。
楽勝といった感じでハルドは機動兵器を相手にしていたが、流石に数が多すぎる。
最初に40で次は30で合計70.どうにも出来る数ではないぞ。そう思った時だった。
「協力するぞ。ストライクΔ乗り!」
全周波通信で、聞いたことのある声がした。そして、赤いガンダム型のMSがハルドのストライクΔの隣に降り立つ。
「悪いな、感謝する」
ハルドが言ったが、すぐには返答がなかった。
「すまない、素直に感謝を述べる相手だとは思ってなかったもので」
アッシュは申し訳なくいった。
「ところで、聞きたいこの敵は?」
実務に戻り、アッシュはハルドに訪ねる。ストライクΔとイージス・パラディンは背中に棒人間型機動兵器を迎撃していた。
「正体は知らん。弱点は頭と胸だ。胸っつっても全部の接続部。機体のど真ん中だ」
わかったと赤いガンダムのパイロットの言った先では「アッシュ!こいつら止まんない!」と叫ぶ声が聞こえた。
「仲間にも教えてやれ」
言って、ハルドは迎撃に戻る。敵ではあるが赤いガンダムが後ろにいるのは安心感があった。
「終わったか、ならこのナイフを使え」
ハルドは通信が終わった頃合いを見計らって、ストライクΔの腰からナイフを引き抜くとそれをイージス・パラディンに渡した。
「ライフル撃ちまくりじゃ、エネルギー効率が悪い。ナイフで頭を刺した方が俺らにとっては楽」
だろ?と同意を求めたナイフ。躊躇いなくイージス・パラディンはそれを受け取り、ナイフだけで戦い出した。
アッシュにも不思議な安心感が背中にはある。戦ったことのある相手だからこそ、というのは奇妙なことだが、背中を預けるに足る信頼感がアッシュにあった。

 

[東側]
「どこの馬鹿だよ。ほんとに……発注しすぎだ」
甲板上でロウマ・アンドーは頭を抱えていた。おそらく、自分だけが知っている数字である100という数字に。
「大丈夫ですか、大佐?調子が悪いのなら艦内へ……」
「そうだね」
ロウマは考えていた。劇場的な展開は嫌いではないが、任せるばかりで大丈夫かと。自分の動く必要はないことは確信していたが、馬鹿だけは始末しなければいけないこと。
自分は何もする必要がないはずなのに、この状況を収める人間が必要になってしまっていること。
「ディレックス君。喉が渇いたよ」
ついさっきも言ったが、ディレックスはすぐに動き出し、飲み物を取りに行く。
「まぁ、いいか」
何事もスマートにクレバーにがロウマの信条である。布石は打ってあるのだ。
余計なことをせずとも全ては、綺麗な方向に収束していく。それが節理というものだ。全ては放っておけばいい、ロウマ・アンドーはそう思うことにした。

 
 

第6話 【戻】 第8話

 

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