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GUNDAM EXSEED_15

Last-modified: 2015-03-08 (日) 20:03:50

【奪還編】

 

だんだん目が慣れてきたとハルドは思った。ジークシードの動きは人生で見てきた全てより速いが、もう人生に組み込まれ、過去の物であるように感じる。
もういいや。とハルドは思った、リーザを救うまでは死ねない。だが、多分死なないから大丈夫だろうと思い、受けた。
一度食らったことがあるから尚更平気だろうという感覚もあった。
ジークシードの刃がストライクΔを切り裂いた。
そして、同じタイミングでストライクΔのビームサーベルがジークシードを貫いた。
ジークシードの刃はコックピットを横薙ぎに切り裂き、対してストライクΔの刃はジークシードのコックピットを貫いていた。
「やっぱり死なないもんだな」
ハルドはコックピットの中で呟いた。コックピットからは宇宙の漆黒が目で見える。
ジークシードの刃はコックピットの前面装甲を切り裂くにとどまり、パイロットには届かなかったのだ。
ほぼ相討ち、しかし運の差でハルドが勝った。エルザが最も称賛した才能である運がハルドを救ったのだった。
「うん、スッキリだ」
訳の分からない気分の高揚感がある。エルザを殺したからだろう。あとはリーザを救うだけだ。
それでリーザはどこにいるのだろうか、そうハルドが思った時だった。
「いや、悪いが私は死んでないぞ」
エルザの声だった。別に聞いたところで特に何の感情も湧いてこなかった。生きているなら、また殺すだけだと思った。
むしろ、さっきと同じ気持ちが味わえるならいいかもしれないと思った。

 
 

「遠隔操作というやつでな。少し反応が悪くなるから嫌だったんだが、本気で戦うと。まぁあれだ。観劇に不都合が生じるのでな」
そういうものかと思い。ハルドはエルザを殺そうと思った。
「一応、演出があってだな。ハルドよ。お前にプレゼントがあるんだ」
そうエルザが言った直後だった。コロニーから一機のMSがストライクΔに向かって近付き、ストライクΔのそばまで近づくと停止した。
現れたMSはジークシードに似ているが、オプション装備が付いている。両肩にブロック状の物体、そしてバックパックにコンテナのような物体。
「ジークシード・プリンセスという機体だ。プリンセスという名前の由来については、想像に任せるとしよう」
エルザは楽しげに言った。
「まぁ、頑張ってくれハルド。私はお前が傷つくのと同じくらい頑張るところも好きなんだ」
そう言ってエルザからの通信は切れた。
直後に目の前の機体が動き出す。と言っても、本体は動かない。代わりに両肩のブロック状の物体が切り離され、バックパックのコンテナから小型の三角錐の形状をした物体が大量に射出され、ストライクΔに向かってくる。
「ドラグーンか?」
ハルドは小型の三角錐の物体に、そう当たりを付けた。無線誘導で動く移動砲台のような物だ。
多少、厄介だが今は全く怖くない気分だった。所詮は、大量のMSに囲まれてビームを撃たれていると思えば、とハルドは考え、ストライクΔはドラグーンから発射されるビームを軽く回避していた。
そして切り離されたブロック状の物体はというと、変形し、小型のMSのようになっていた。

 
 

それが2機襲ってくる。動きを見るとハルドはオーブで大量にやり合った、棒人間型機動兵器を思い出す。
これも今のハルドにとっては相手にならない。1機をビームサーベルで軽く切り捨て、もう1機も軽く始末する。
「おお、いいなハルド。その調子だ」
通信でエルザの声が聞こえてくる。ああ、殺したいと思う。
なんのことはない相手だ、エルザが用意したには歯応えが無さ過ぎる。そう思いながらもハルドはジークシードの本体に向かって切りかかる。その瞬間であった。
「隊長、駄目ですリーザが乗ってます!」
サマーの声が聞こえてハルドはサーベルを止めた。
「隊長が、小型の奴を撃墜したらリーザに痛いって声が聞こえました。オーブの時と同じです」
サマーは通信越しにハルドに説明する。
「ちっ、SEED持ちが乗っていたか」
通信からエルザの苛立ち交じりの声が聞こえた。
「そうだよ、その機体にはお前の愛しのリーザ・アインが乗っている。まぁ動かすために大量に薬をぶち込んでいるから意識はないがな」
なんだと……と思い、ハルドは攻撃を止め、ジークシードから距離を取った。
「エルザ、貴様ぁぁぁぁ!」
「別に殺したわけでもないんだから、そう大声を出すな」
ハルドはドラグーンの攻撃を回避しながらリーザの救出の手段を考える。
「言っておくが、お前の艦に連れ込んで、コックピットハッチをこじ開けるのは無しだ。それをしたら、自爆する」
考えていた手段をエルザに言われ、ハルドはさらに思考する。
「もういいんじゃないか、ハルド。殺してやれ。どうせ薬漬けで長くない命だ」
知っている。だが、それでも自分はリーザを助けたいとハルドは思う。
「惚れた女だ。助けたいと思って何が悪い!」
「悪くないさ。じゃあ、頑張るんだな」
エルザはひたすらに楽し気だった。ハルドはと言うと、方法が思いつかないでいた。
ドラグーンの攻撃を回避しながらではどうにもならない。
ハルドひたすらに思考を巡らせる。その時ふとリーザが言っていた言葉を思い出す。
この場ではふさわしくない思い出。だが、この場以上に相応しい場面は無い言葉だ。

 
 

「俺はそいつに、ヒーローになれって言われてんだ!」
ハルドのストライクΔはビームサーベルを捨て、左手にナイフを握り、リーザの乗るジークシードに突進する。
「おお、とうとう覚悟を決めたか」
「覚悟は決めたさ。ヒーローになる覚悟を!」
世界は救えないが、目の前の弱く儚い少女を救うだけの最高のヒーローになる覚悟を。
ドラグーンはジークシードを守るようにビームを撃つが、もうそんなものハルドはどうでもよかった。ストライクΔに何発かのビームが当たるが、ストライクΔは止まらない。
そして、ジークシードの前に辿り着いた。ストライクΔはナイフでジークシードのコックピットを切り裂いた。
「ははははは、とうとうやったな、ハルド!最高だぁ!」
「いいや!やってない!」
ハルドの言葉はその通りであった。
ジークシードは生きている。そのコックピットの前面装甲を切り裂かれて。
コックピットハッチの表面をギリギリかすめた一撃であった。
「リーザ!」
ハルドの目にはリーザの姿が確かにあった。
切り裂かれたコックピットの前面装甲の奥にリーザの姿が確かにあった。
ハルドはストライクΔのコックピットから這い出る。エルザの攻撃によって、コックピットの中身はむき出しであったから出るのは簡単だった。
直後にドラグーンのビームがストライクΔを貫き大破させる。
だが、ハルド無事だった。そして、リーザの乗るジークシードに飛び移っていた。
「もう大丈夫だ、リーザ!」
ハルドは自分がジークシードにつけた傷痕からコックピットに潜り込むと、リーザの体をしっかりと抱きしめた。
「もういい、気持ちが悪い!自爆させるぞっ!」

 
 

エルザの声が聞こえた瞬間、ハルドはリーザを抱えたまま、コックピットから飛び出て、宇宙空間に身を投げだす。
直後、ジークシードは爆散した。巻き込まれ、ストライクΔは弾き飛ばされ、ハルドとリーザも吹き飛ばされる。
「つまらん結末だな」
エルザの捨て台詞が聞こえたがハルドはどうでもよかった。今大事なのは、自分が抱きしめている少女だ。
リーザの目がゆっくりと開く。
「私、ハルドくんになにかした……?」
「ヒーローになる機会をくれたよ」
ハルドはもう何でもよかった。ただこの腕に抱きしめる少女の暖かさが全てだった。

 
 

余命は2ヵ月。まともな医者にみせた結果だった。リーザの寿命である。
ハルドは少し長い休暇を貰うことにした。そしてリーザと二人で少しの旅行に出かけた。
行先は以前に話した湖のそばの小さな小屋。二人はそこで暮らした。
お互いにとって、人生で初とも言える穏やかな時間であった。
その時間の中でハルドの心も少しずつ穏やかに戻っていく気がしていた。
「私は悪くない人生だったと思うよ。それに、まだ死んじゃうって決まったわけじゃないし、奇跡が起こって、ずっと生きたり」
リーザは決して生きること諦めなかった。
「おばぁさんになるくらいまで生きる可能性はゼロじゃないし。そうなったらハルドくんもおじいさんになるくらい生きてほしいな」
結果として、リーザは宣告された余命より長く、3ヵ月生きた。
リーザが死んだ時、ハルドは何も言わなかった。そしてハルドはリーザの遺体を、小屋の傍に埋め。きちんとした墓を建てた。ハルドは一度も泣かなかった。
リーザを弔った後、ハルドは別にどうなってもいいと思っていたが、1つだけやり残したことがあったことを思い出し、一旦、リーザに別れを告げ小屋から去った。

 
 

ハルドが訪れた先は、カリフォルニア基地であった。決着を付けないといけない相手がいる。だから戻ってきたのだ。
エルザ・リーバスを殺す。それだけのために。

 
 

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