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GUNDAM EXSEED_B_13

Last-modified: 2015-04-17 (金) 22:01:52

「そらっ」
セインは、棒での打ち込みには反応ができるようになっていた。ハルドが手加減をしているという条件つきだったが。
しかし、そもそも本気でハルドがやるとなると、セインの脳味噌は一瞬で地面にぶちまけられるはめになるのだが。
棒での訓練は、ある程度の段階に辿り着きつつあった。やはり、ハルドの攻撃を全て防ぐということは出来なかったが、それでも、初日のように全身を打たれて、動けなくなるということは無くなっていた。
そして、セインから攻めるということもできるようになっていた。ハルドがわざと作った隙だが、そこに打ち込めて合格なのだ。
ハルドからすると遊びレベルだったのが、ようやく訓練のレベルに達してきた、もういいだろうと、ハルドは思った。
最後に思いっきり、セインの持つ棒を打ち、弾きとばすと、軽い調子でこういうのだった。
「合格」
そう言うとハルドは弾き飛ばした棒を拾い、去って行く。
「あの、次は?」
セインがハルドの背に尋ねるが。ハルドは答えず、そのまま去って行った。
ハルドは訓練が一段階完成したので、その場を去ったのだが、何も言わないのでは分かるわけがなかった。

 

ハルドは訓練も終わってヒマになったので、他の面々を冷やかしに行く。
朝だったので王家邸のあるコロニーの隅の草地で、虎先生は自身の武術の型の鍛錬をしていたが、周りをみると健康体操と勘違いした老人が大勢いるし、何かを勘違いした田舎者っぽい青年も何人かいる。
困るのは、といってもハルドは全く困らないし問題も無いのだが、虎先生が意外と面倒見の良いタチだということだ。老人や若者の動きに大きな問題があればすぐに向かい、丁寧に教えている。
ハルドとしては銃弾すら軽く躱し、素手で人間を撲殺できる人間のやることには見えなかった。
虎自身はわりと満足しているようなので、ハルドとしてもわざわざ何かを言うのは無粋な気がしたので、この場は去った。

 

適当に歩き、工業コロニーへと向かうハルド。正直、ヒマだった。
工業コロニーのMS製造区画へ向かうと、アッシュ、レビー、マクバレルがいた。3人はコロニー防衛用の防護板の作成についての話し合いをしているようだった。ハルドは真面目な話をしたくなかったので、その場を去った。

 

次に向かったのはというと、王家邸のあるコロニーに戻って、ユイ・カトーのいる政庁舎である。しかし、ユイ・カトーは一気に出世をしたらしく、簡単には会えないということで、ハルドはしかたなく、その場を去った。

 

本当にすることが無いなと思ったハルドは。第2農業コロニーに向かった。森と海と川しかない場所だ。しかし、カルトっぽい自然主義団体が住み着いている。
そういうのとも交流を深めるのもたまにはいいとハルドは思い向かったが、想像以上に観念的な世界であり、辟易とした。
文化的な傾向はネイティブアメリカン風だが、それを現代風に再構性しており、考え出した人間の知性の高さは尊敬するが、深く関わりたくない程度に、独特だった。ハルドは適当に理由を付けて、団体の集落から去った。

 
 

そういえば、ベンジャミンはどうしたろうかとハルドは思った。バーリ大臣の手配で強制収容所の人間は、第1農業コロニーににある、宿舎に泊まっていると聞いたので会いにいってみた。
第1農業コロニーは、徹底的に管理された農業区画で人の手が入る場所が少ないコロニーだった。しかし、それにしても人の数が少ないとハルドは思った。
強制収容所から解放された人々が散歩に出ていてもおかしくはないと思ったが、そういうことはない様子だった。
何か変な物を感じながら、ハルドはベンジャミンの元を訪れた。
「久しぶりだな」
ベンジャミンはそう言った。それだけでハルドは感激した。強制収容所にいたころよりだいぶ良くなっていると思った。
「ああ、久しぶりだ」
ハルドはそう言う。ハルドとベンジャミンでは歳の差は相当あるが、二人の関係はそれを気にしないものだった。
「すまんな、艦を沈めて」
第一声がそれかとハルドは思った。
「艦を沈めるような無能な男に何のようだ」
ああ、とハルドは思う。ベンジャミンは過去に囚われ、自己嫌悪に陥っている。仲間としても嫌いではなかったが、戦力としても優秀な男なのだ、このベンジャミンは。たとえ片腕を失っていても。
「なんか不便はないか?」
ハルドは取り敢えず聞く。
「気にするな。俺をより周りを気遣え。俺より価値のある人間たちだ。艦を沈めた艦長よりはな」
やはりだめだ、自己嫌悪に囚われている。頼りになる男だったのにこれでは。ハルドは失望を感じ、「また来る」とだけ言って、ベンジャミンの元から去った。
帰り際、なんとも、いたたまれない気持ちになった。あれだけの男がたった一度の失敗でああなってしまうとはと、切なくなったのだった。

 

第1農業コロニーから帰る途中である。ハルドはやたらデカい男に絡まれた。
「アニキー、俺を忘れるなんてひどいじゃないですかー」
媚びるような気持ちの悪い声音で話しかけてきた大男。ハルドは、とりあえず殴ろうとした。いろいろムカついていたからだ。
すると大男は、すぐに土下座の姿勢を取る。
「アニキ、ゴドウです。ゴドウ。収容所で一緒だった」
言われてハルドは、ああ、と思い出したが、ゴドウの顔面に蹴りを入れた。特に理由は無い。
「アニキについていきますよ。ここでも!」
ゴドウはハルドに何故か懐いている。気持ちが悪いとハルドは思った。
「ついてこなくていい、消えろ」
ハルドはそれだけ言うと、ゴドウにもう一発蹴りを入れた。するとゴドウは素直に逃げていった。
なんだろうか、時間を無駄にした一日のような気がして、ハルドは王家邸のあるコロニー行きのリニアに乗り込むのだった。時刻はすでに夕方になっていた。
そして不意に思った、そういえば、今日は姫とヴィクトリオを見ていないと。そして、それはクランマイヤー王国では滅多に起こらない重大事件に関連する事柄だとハルドはその時、気づくはずもなかった。

 

ハルドは結局一日を無駄にしたと思い王家邸の前に戻ってきたのだが、王家邸の前が何やら騒がしかった。アッシュやら、多くの面々が集まって何やら相談をしていた。
「何してんの?」
ハルドは状況が分からないので集まっている面々の傍に行き、適当に聞いてみた。するとアッシュが何も言わず、王家邸を指さす。
ハルドはアッシュの指した先を見る、それは王家邸の3階の窓である。窓自体に何かあるわけではないが、窓枠の中には見慣れない男がいた。
「清掃業者かなんかか?」
ハルドはとぼけたように言うが、そんなわけは無かった。なぜなら、その見なれない男は銃を持っていたからだ。
「立てこもり事件だよ」
アッシュがウンザリしたように言う。なんでそんなことにとハルドは思ったが、そう言えば、今日は、ほとんどの大人が王家邸から出払っていて、中にいるのは女と子どもだけだった。まぁ楽に制圧できたろう。
「専門家は?」
ハルドは尋ねる。こういうのは普通、警察が対処するものだが、アッシュは首を横に振る。そして、視線を動かす。視線の先にいるのは20代半ばのひ弱そうな男と、60を超えた老人だった。

 
 

「あれで、この国の警察官は全員だ」
「本当に平和な国なんだな」
二人しか警察官がいない国というのはどうなんだと思うが、トラブルが起きてもたいしたことはないし、警察の介入が必要な事件はないのだろう。なにかあったとしてても住民だけで解決できる程度のトラブルしか起きないのだろう。
「平和というか、この国の風景通りの中世と言った感じだろう」
国家権力の介入はほとんどないということかとアッシュの言葉を聞いてハルドは思った。
そしてハルドがそんなことを思っていると、立てこもり犯は、集まった面々に対し、何かを喋っているが、聴こえない。
声が小さいのか、距離が遠いのか、その両方か、何を言っているのか分からないのではハルドらもどうしようもない。
「きこえねーよ!マイク使えマイク!」
ハルドが大声で言うが、こちらの声も届いているか不安だった。するとひ弱そうな警察官が拡声器をアッシュに渡した。荒事は無理そうだが、細かいことには気が利きそうだった。
「すまないが声が聞こえない。もう少し近寄ってもいいだろうか?」
アッシュが立てこもり犯に拡声器で呼びかける。どうやら、声は届いたようで、立てこもり犯の1人が手でオーケーのサインを出した。
なので、面々はクランマイヤー王家邸のそばに近づく。大勢の人間がぞろぞろと歩いているのは、はた目からではシュールであったが、当人たちはいたって真面目だった。
「そこまでだ!止まれ!」
立てこもり犯の1人が言う。言われてハルドらは立ち止まった。ハルドは、ここで改めて、現在いるメンバーを確認してみた。自分、アッシュ、セイン、レビーにマクバレル、そしてセーレとユイ・カトーだ。ということは、どうなんだとハルドは思う。
そんな合間にも何やらアッシュは立てこもり犯と交渉をしていた。
「キミたちの要求はなんだ」
よく見る展開だなぁとハルドは思った。そして、そもそもなぜこんなことになっているのか訳が分からなかった。ハルドは雰囲気で読み取ってなんとなくついてきていたが、細かい事情は分からない。なので、セインに聞いてみた。
「なにが、どうなってんの?」
「なんだか、強制収容所にいた人たちの中に厄介な人たちがいたみたいで、急に人質を取って王家邸に立てこもったみたいです」
はぁ、なるほどとハルドは思った。よくよく考えれば強制収容所には、過激な政治犯もいたし、軍人崩れのごろつきもいた。こちらは善意だったが、結局はそう言う輩を迎え入れてしまったということかとハルドは思った。
「こちらはそちらの要求を飲むという選択肢もある。だから人質の安全だけは保証してくれ」
アッシュがそれらしいことを、拡声器を使って言っている。
そういえばとハルドは思いだす。第1農業コロニーの中に人が少なかったのはこういうことをするために動いていたいたからかと思い返す。
そういえば人質は誰だとハルドは思う。ここにいるメンバーを覗くと王家邸にいたのは……姫、ヴィクトリオ、ミシィ、メイ・リー、バーリ大臣。
「おい、多分ミシィ人質だぞ」
ハルドはセインに言ってみた。すると、セインは少し考え、あ!という顔をしたと思ったら急に動き出して、王家邸に突っ込もうとした。なのでハルドは首根っこを掴み、地面に引き倒す。
「勝算があるかを考え、行動する。これも訓練の1つな」
ハルドは地面に引きずり倒したセインに言うのだった。だが、まぁ5人も人質を取られているのは問題である。
そして問題は別にもある。ここで言うことではないが、セーレに関してである。ハルドはセーレを近くに呼ぶ。確か姫の護衛役だったはずだ。
「あんたはどうして無事?」
「危険を察知したので、窓を突き破って飛び降り、退路を確保しました」
話しを聞いただけでもういいやと思ったので、ハルドはセーレを気にしないことにした。
すると、立てこもり犯側から声明があった。

 
 

「我々は公国の解放のために戦うものである!我々はこのコロニーを公国に対する防衛拠点とするために活動している」
ふーん、と思いながらハルドは聞いていた。するとアッシュが言う。
「あなたたちのが考えている活動は既にこちらでも行っている。このコロニーを公国の脅威から守るための準備だ」
まぁ、そうだよなぁとハルドは思う。こちらは最大限に頑張って色々やっているわけだが、どうにも立てこもり犯はわかっていないようだった。
「それでは手ぬるいというのだ。我々はこの国を挙げての防衛体制。そして公国への攻勢を考えている!」
声明を出している男は自分に酔っているようだった。ハルドはもう良いと思った。相手は馬鹿だ。頭は良いかもしれないが馬鹿だ。挙国一致で公国に立ち向かうといったことをするのが、あの思想統制をする公国と何が違うのか分かっていないのだ。
「理想は怖いよな、セイン」
なんとなく、ハルドは近くにいたセインに言う。
「世の中を良くしようとする理想を持っている人間はなぜか、理想を押し付けてくる。俺らみたいな大多数の人間には考えるなとかいう感じでな」
ハルドはぼんやりと声明を述べ続ける男を見ながら言うのだった。
「別に放っておいてくれって感じだよ。良いとか悪いとかはこっちが決めるんだからな。良いか悪いかはこっちに考えさせてくれ、そして、思ったことを自由に言わせてくれるだけで良いのにな。たまにはクソみたいな考え、悪い考えを言わせてくれって思うよ」
そう言うと、ハルドはアッシュに近づき肩を叩き耳打ちをする。すると、アッシュの方は仕方ないという表情を浮かべた。そして言うのだ。
「あなたたちの考えは分かった。しかし、現状では姫を人質に取るというテロ行為に及んでいる。我々はテロを行う集団には屈しない。現状、こちらに言えるのはそれだけだ」
声明に対してのアッシュの答えは、それだった。空気が張り詰めると同時に、ハルドはセインの肩を叩いた。
「俺と虎先生は乗り込むけど、お前はどうする?」
どうする?といわれてもセインは分からなかった。すると、ハルドがアッシュの拡声器を横から奪い取った。
「これから乗り込むぞ。テロリストに容赦なしだ」
そう言ったあと、ハルドは優しい声色で呼びかける。
「姫もヴィクトリオもしばらく目を閉じていてください。俺が良いって言うまでですよ」
それだけ言うと、ハルドは拡声器をアッシュに返し、虎先生に言う。
「虎先生は正面から、俺とセインは裏から回る。行動開始の合図は、アッシュの考え直してくれだ。もう考え直す必要が無いようにしてやるぞ」
セインは気づくと、突入する人間の内に入っていた。
「あの、僕は……」
セインは怯えた表情でハルドに言うがハルドは平然とした顔で言う。
「こういう時のために鍛えたんだから働け」
そう言うと、ハルドはセインを引っ張って王家邸の裏口に回った。虎先生は正面で待ったままだ。
「大丈夫なんですか?」
裏口に回ったセインは言う。
「お前は俺を神様だと思ってんのか?大丈夫かなんてわかるわけないだろう。俺ら人間は命が動く限り動くだけだ」
セインとしてはもっと安心できる答えが欲しかったのだが、それは得られなかった。そして、ハルドは何も言わず待つ。ハルドの腰にはこの前に渡された剣があった。
「そちらの言うことは分かる。だが、考え直してくれないか。お互いに話し合う機会が必要だと思う」
アッシュの声が聞こえた。その瞬間ハルドが走り出す。裏口の扉を突き破って、王家邸の中へと突入したのだ。
突入した扉のそばには男がいたが、ハルドは躊躇いなく腰の剣を抜いて、男の腹に突き刺す。
するともう一人男がいて、それに気づき、ハルドに銃を向けたが、ハルドは剣を投げた。投げた剣は一直線に飛び、もう一人の頭に突き刺さった。
武器は無くなったと思ったが、ハルドは殺した男から銃を奪い、セインに渡す。

 
 

「くそ、俺の銃じゃねぇか。部屋に置きっぱなしだったのは失敗だったな」
ハルドは毒づき、男の頭か剣を引き抜くと鞘に納めた。セインとしては間近で殺し合いを見るのは初めてなので硬直していた。
「別に、悪いことじゃねぇよ」
ハルドはそれだけ言うと、セインの頭を軽くたたく。そして、王家邸の奥へと進むのだった。
セインとハルドの武器は心もとない。しかし、もっと武器に関しては心もとない男が圧倒的な活躍をしていた。
「ヒメ、チュウギ、アタイスルカタ」
この国の姫は忠義を尽くすに値する人物だということを言いたかったのだとアッシュが思った瞬間、虎先生は王家邸内に飛び込んでいた。
立てこもり犯側からすれば化け物が来たとしか思えないだろう。銃弾を至近距離で避け、打撃は一撃で人間を殺す。
そんなものを人間と考えるのは難しい。虎先生は縦横無尽に活躍した。虎先生が派手に動く度、に虎先生の元に増援が送られ、ハルドらは楽に動けるのだった。
そしてハルドらだが、ハルドはハルドで怪物じみた働きをしていた。とにかく剣が異常に働いていた。
刺し殺す、切り殺す、突き殺すなど相手が銃を持っているのにも関わらず、ハルドは、相当数を剣で殺傷していた。
「銃は楽かと思いきや、そうでもないんだよ」
ハルドは言う。
「素人の場合、安全装置に気を使うし、そもそも相手を殺すことに躊躇いを覚えるから意外に引き金ってのは重くなる。引き金を軽くするには訓練だが、こいつらにはそれも無しだ」
ハルドは適当に死体を蹴って見せる。死体の中には銃を持っていないものも多い。
「武器は多分、俺の銃ぐらいだろ。あとは鈍器か手に入りやすい刃物だよ」
ハルドは知っていたかのような口調で言う。
「知っていたんですか?」
銃を飾りのように持つセインは言う。ハルドはそれに対して、
「そりゃ、常識で考えりゃ、この国で武器なんか入手できないからな」
なるほど、そう考えるのかとセインは思った。確かにこの国では武器の入手は難しい。と言われて思いいたる。
「あんまり役に立たないが、国の状況をみたいなのも考えるのは重要だぜ」
ハルドはそう言いながら、王家邸をどんどんと進んでいくのだった。奥へと進んでいくのにも関わらず、周囲の騒ぎは収まりつつあるようにセインは感じた。
「虎先生が暴れてるからな。そっちに人数を割いてるんだろ。もしくはビビッて投降する奴がでてきたか」
ハルドはセインの考えを読み取ったかのように言い、続ける。
「面倒なのは過激派の主要メンバーで他はなんとなく、くっついてきた奴もいるだろ。俺が殺した奴らの中にもそういう奴はいたかもな」
それだと少し可哀想だともセインは思った。するとハルドが剣の峰でセインの頭を軽くたたく。ちょっとした痛さだったが急に叩かれたのでセインは頭を押さえた。
「殺した奴のことは気にしない。これからは考え方を変えろ。戦ってる時は自分の命の方が相手より絶対に価値があるってな。命の価値は平等じゃないって考えろ。自分の命がこの世で最も価値があると考えるんだ」
そう言うと、ハルドはさっさと進んでいってしまう。ハルドの言うことはセインの人生では聞いたことのない考えである。人間は、命は皆平等だと教わって来た。学校でも社会でもだ。ハルドに言われて考える、道徳心を捨てなければいけないのかと。

 
 

セインが悶々としながら、歩くうち、ハルドとセインは王家邸の3階に辿り着いた。
3階の警備はそれまでの階の警備より厳重だった。だが、ハルドは何のためらいもなく突っ込む。
一番近い敵を剣で串刺しにし、それに気づいた敵が二人いたが、それに対して、消音機を付けた拳銃の弾を脳天に撃ち込む。一瞬で2人を撃ち殺し、1人は剣で刺し殺している。
結果としては一瞬で3人を始末したのだ。人間業じゃないとセインは思った。ハルドはセインが思うよりも、はるかに高いレベルで殺人を極めていると思った。
「あんまり、頭は狙うなよ。的が小さいからな。胴に一発撃つだけで大抵の人間は止まるから、その隙にもう一発、そして動きを止めて頭に一発だ。銃の殺しは、それが基本だ」
ハルドは言いながら、自分が殺した男たちから銃を拾い上げ、自分のものにする。
「そのうち、銃の撃ち方も教えてやるよ」
ハルドはセインにそう言うと先に進むのだった。王家邸は3階が最上階である。この上は小さな屋上庭園しかない。
なので、姫たち人質がいるとしたら、この階しかない。ハルドらは慎重に部屋の扉を開けていった。すると、バーリ大臣とメイ・リーが囚われている部屋に行き着いた。
「人質を二人一組で置いとくとか、ホントに素人だな。ってマジかよ、今時結束バンドじゃなく縄で縛る奴がいんのか」
ハルドは二人の解放作業をしながらも、立てこもり犯の手際の悪さにウンザリしているようだった。
「どうも、ありがとうございます。姫様はご無事でしょうか?」
バーリ大臣解放されるやいなや、姫の心配をする。臣下の鑑だと思った。メイ・リーはというと何だかぼーっとしているだけである。
まえまえから、このメイ・リーという姫の世話役という女性は不思議である。基本的に存在感が無いとセインは思っていた。
「下はあらかた片付けたんで、出るならご自由にって言っても死体が多すぎるかもしれないんで、あんまり良い光景じゃないですが」
ハルドはバーリ大臣にそれだけ言うと、姫の救出に戻ることにした。
「死体は私共で片付けておきますよ。姫様の目に触れぬように」
そいつはありがたいとハルドは、手で感謝の意を示すだけだった。
「バーリ大臣は元軍人だな」
ハルドは歩きながら言う。セインには驚きの話しである。
「死体なんか見慣れてるって感じだ。色々嫌になってここに逃げてきた類だと俺は思うね」
軍人でも人の死が嫌になることがあるのかとセインは思ったが、ハルドが言うのだからそうなのだろう。それよりもセインは気になることがあった。
「犯人が興奮して姫様たちに危害を加えたりすることは無いんですか?」
「多分、ないと思うぞ。騒ぎは大きいが基本は殴り合いすらしたことない頭でっかちの連中だからな。本格的に暴力に訴え出るということはできねぇよ」
ハルドは確信を持って言う。すると、巡回の人間と偶然鉢合わせした。ハルドは迷いなく剣を抜き、一太刀で首を落とす。
「何が専門外だ。充分以上の切れ味だ」
ハルドは剣を見ながら呟く。そういえば、自分が預かっている剣はどうなんだろうとセインは思った。

 
 

ハルド達は進んでいく、すると、最後の部屋に辿り着く、3階にある談話室である。立てこもり犯のリーダーが喋っているのが見える。
「貴様らは卑怯だ。公国と同じだ!」
この後に及んで窓の外に向かって叫んでいる。何が卑怯なのか、人質を取って立てこもる奴の方が卑怯ではないかとセインは思った。
「もういいよ、終わりにしようぜ」
言うと、ハルドはゆっくりと叫んでいる男の後ろに忍び寄り、後ろからその腹を剣で貫いた。最後は静かに倒れるのみだった。
ハルドが窓からオーケーのサインを出すと王家邸の外のアッシュが言う。
「キミ達のリーダーは死んだぞ。これ以上は無意味だ投降しろ」
そうアッシュが言うと、数人が王家邸か出てきた。幕切れは呆気ないなと思いながら、セインは、囚われている人々を探す、やはりいたのは姫、ヴィクトリオ、ミシィである。
「もう大丈夫ですか?」
姫とヴィクトリオはハルドが言った通り、目をつぶっている。セインは答えながら、姫たちの拘束を解く。
「もう大丈夫ですよ」
そう言うと、姫は目を開けセインに笑顔を向ける。そしてセインがミシィの拘束を解いた時だった。拘束が解かれると同時にミシィはセインに抱き付いた。
「怖かったよ〜」
抱き付かれている状況は、なんとも恥ずかしいセインはミシィを振りほどこうとするがミシィは思いのほか強い力でセインに抱き付いているため振りほどけない。
「そういうのも人生の大事な経験だぜ。セイン君」
ハルドはそれを見ながら茶化すように言うだけ、姫もヴィクトリオも笑っているだけだった。だがまぁ、これで立てこもり事件が解決したかと思えば、まぁ良いと思うことにしようとした、
その時だった。外から、アッシュの声が聞こえてきた。それも急を要するものだった。
「すまんが、もう一働きしてくれ、MS製造工場のMSが奪われた!」
アッシュの発言に関しては、皆が驚愕するしかなかった。ハルドですら頭を抱え、天を仰ぎみていた。一体何が起こったんだとしかセインは思えなかった。

 

「正直、こちらのミスです」
レビーは工業コロニーへと向かうリニアトレインの中で言うのだった。
「王家邸の事件に気を取られ過ぎていました。事件の最中に、工場にあるMSハンガーが制圧されてネックスとアンヴァル2機が奪われました」
「そいつらの要求は?」
アッシュがレビーに尋ねると、レビーは何とも言えない表情で答える。
「金と女とメシにコロニーの支配権です」
その場いた全員が何を言っているんだという感じの表情を浮かべていた。
「軍人崩れのゴロツキか」
ハルドが予想して言うと、レビーやら他のメンツも頷く。
「たしかに、周りとトラブルの絶えない方たちです。素行の悪さは折り紙付きといったところでしょう」
バーリ大臣が言う。言われて皆、考え込む姿勢を取った時だった、リニアトレインが工業コロニーに到着したのは。
到着するやいなや、このコロニーの責任者であるガーンズがやって来た。
「おいおい、厄介なことになったなぁ。うちの連中はMS相手でもぶちのめすって躍起になってやがる。そっちからなんとかならんか?」
なんとかと言われてもというのが、ハルドらの本音であるが、レビーが単純な解決策を述べた。

 
 

「セイン君がブレイズガンダムに乗ればいいんですよ」
レビー曰く、ブレイズガンダムはセインにしか動かせない機体だから、テロリストも諦めたようだ。
「じゃ、いくか。」
「ソウダナ、イクカ」
レビーから解決策が出たので、ハルドと虎先生は出発の準備にかかっている。戸惑っているのはセインだけだ。
「いや、急に乗る流れにされても」
セインは困った表情を浮かべるが、大多数は無視だ。
「訓練を積んだんだ。最初に乗った時よりはまともに動かせるだろうよ」
ハルドがまったく確証の無いことを言う。セインとしては実戦は避けたい。まだ経験が無いのだから。
「ダレモ、サイショ、ケイケンナシ」
「経験が無いからって逃げてちゃ強くなれねぇぞ」
ハルドと虎は言う。もうセインの言葉で状況を変えるのは無理だとわかった。
そして、ハルドと虎が走り出した。空気的にセインはそれについていかなければいけないが、行きたくない。だが、行くしかないのだ。セインも同じく走った。
道のりは想像以上に楽だった。セインが知る限り、最強クラスの二人が護衛についているのだから、奇襲やらなにやらも、全く問題はなく、ハルドと虎先生は邪魔する人間を問答無用で倒していく。
セインはふと思う。ああなりたいかと、セインはその思いに迷わず答える、ああなりたいと。
己の力だけで、困難を全て叩き潰すような人々に。セインはなりたいと思った。
MSハンガーへの道のりは意外と楽であった、ハルドらの協力があったにしても、テロリスト連中は動く機体はもうないと判断したからだろう。
「セイン、ガンダムに乗れ」
言われなくてもと思い、セインはブレイズガンダムに乗る。最初は赤かった機体だが、現在は赤白青トリコロールに塗装されている。
「セイン・リベルター、ブレイズガンダム、行きます」
掛け声と同時にMSハンガーから機体を動かす。なんとなく、機体が軽い気がした。これも訓練の成果かとセインは思った。機体の重量はフルアーマー(仮)で重くなっているのにも関わらず。
「ビームライフルは使うな!場所が悪すぎる!」
ハルドの叫びをマイクで拾った。確かに工業区画でビームライフルを使うわけにもいかない。
セインは機体にシールドだけを持たせて、敵機の集団に機体を突っ込ませた。敵機はアンヴァルが2機これは地球連合軍の量産MSだ。そして問題はネックスだ、これはレビーやマクバレルが心血を注いで作った機体である。
しかし、ハルドが乗っていないならと、恐怖はそこまでない。
1機のアンヴァルが動き、ライフルを撃ちながら突進してくる。
「場所を考えろよ!」
セインは叫び、ブレイズガンダムはビームサーベル抜き放つ。そして、相手と同じように突進しビームサーベルで敵機の脚を切り裂いた。
「それでいいぞ、セイン!下手に胴体を狙うな。動力部が誘爆する可能性がある!」
ハルドの声が届いている。邪魔と感じるような、安心を感じるような、セインは複雑な状態だった。
(もっと壊しましょう)
頭の中に急にそんな声が聞こえ、セインは足を失い動けなくなった機体の腕を切り落とす。これで、敵は四肢を失い何も出来ない。そう思った直後、殺気を感じ、機体を動かす。直前にブレイズガンダムがいた場所をビームが襲う。
ハルドと棒で殴り合いの訓練をしている内に僅かながら、殺気というものをセインは理解できるようになっていた。

 
 

「お前も倒す!」
セインのブレイズガンダムが一直線敵機に突撃し、タックルで押し倒す。そして、おしたおしたまま、敵機にビームサーベルを突き立てる。
(さあ、殺すのです)
また声がセインの頭の中に響いた。この声の通りにするべきかと思った。だが、殺していいのか、そういう思いがセインを思いとどまらせ、コックピットではなく、動力部だけをピンポイントで貫いた。これなら誘爆の心配はない。
(私の言うことを聞きましょう。それが幸福への道です)
なんなんだとセインは思う。前に乗った時はこんな声は聞こえて来なかったのに。そんなことを考えていると、ブレイズガンダムに隙が生じていた。
足が止まった、その瞬間に敵のネックスのビームがブレイズガンダムに直撃した。しかしフルアーマー(仮)の装甲板がビームを防ぎ破損する。
「くそ、余計なこと考えてる場合じゃ――」
セインが冷静さを取り戻した瞬間、敵のネックスはブレイズガンダに体当たりをしてきた。しっかりと機体を掴まれているため、引きはがすのも容易ではない。
敵のネックスはブレイズガンダムを掴んだまま、機体を上空へと上昇させる。
「悪いが、1G環境じゃ、この機体は性能を出せないようなんでな」
とういうことは筒形コロニーの中心部で戦おうということか、確かに筒形コロニーは真ん中に行くほど重力が弱い。
「こっちは計画を潰されて、もう終わってんだ。最後くらいは華々しく散らせてもらうぜ」
敵ネックスのパイロットからの通信だった。敵のネックスはブレイズガンダムをコロニーの真ん中まで連れてくると引き離し、ビームを連射する。
「最後にカッコをつけるくらいなら生きてるうちからカッコよく生きろよ!」
ブレイズガンダムがビームサーベルを右手に、ネックスに突進するが、ネックスの方が圧倒的に速度があり、接近すらできない。
「ゴロツキに無茶を言うなよ」
ネックスは遠距離からひたすらビームを連射する。セインにとって、その狙いはそれほど正確には感じなかったが、避けきれないものもあった。その場合はシールドで防ぐ。
「ガキのくせに多少は腕が立つな」
「そっちは大人の癖に責任の取り方も知らないのかよ!」
ブレイズガンダムがシールドを構えたまま敵機に突進する。ビーム連射で敵のネックスは多少、足が止まり、動きが鈍くなっていた。
突撃するブレイズガンダムがネックスに接近する、そしてビームサーベルを大きく振った。
振ったビームサーベルはネックスのライフルを切り裂いた。
「責任なんか取りたくないし、軍もウンザリだ。ここで楽な暮らしがしたかっただけなんだよ俺たちは」
聴こえてくネックスのパイロットの声はセインを怒りへと導いた。
「ふざけるなぁ!」
ネックスもビームサーベルを抜き、ブレイズガンダムのビームサーベルを防ぎ、両機は鍔迫り合いの状態になる。

 
 

「大人だったら、大人だったらなぁ!」
「大人は神様じゃないぜガキ」
そうネックスのパイロットが言った瞬間に、ブレイズガンダムは敵機の腹に蹴りを入れていた。衝撃で吹き飛ばされるネックス、そしてそれを追撃するため突撃するブレイズガンダム。
「待って、待ってくれ、降参だ」
ネックスのパイロットが言った言葉も無視して、ブレイズガンダムのビームサーベルがネックスの右腕を切り落とす。
(罪を償わせるときです。さぁ罰を)
セインの頭の中に再び声が聞こえる。セインはそれに対して反抗する気にはならなかった。
「責任の取り方を教えてやる!」
セインがそう叫ぶと同時に、ブレイズガンダムがネックスのコックピットに向けてビームサーベルの突きを放つ。
敵機は回避もできず、そのまま貫かれたパイロットは一瞬で絶命しただろう。
(あなたは正しいことをしました。道は開かれます)
「これでいい、これが正しいんだ」
セインは自分に言い聞かせるように言った。それだけで、人間の命を奪った重みは急に軽くなった。
セインは後片付けのために、ネックスの本体と破損した部品をコロニーの地表面まで運んだ。すると、マクバレルが大泣きをして破壊されたネックスに縋り付いていた。
セインはそれを見ながら機体を降りると、降りた場所にはハルドがいた。
「少し話でもしようぜ」
言うとハルドは、少し離れた静かな場所までセインを連れて行った。セインはなんとなく、どんな話かは想像がついた。ネックスのパイロットを殺したことについてだと思った。
「初めての殺しはどうだ?」
ハルドは直球で言ってくる。それがこの人の良いところであり悪いところだ。
「本音を言うと。別にって感じです。人殺しがこんなに軽いものだと思いませんでした」
「まぁ、そんなもんだぜ。MS戦なら特にな。顔も見えないし、言葉を交わすこともないからな、今回は言葉を交わしてたみたいだけどな」
セインは少し思ったことがある。
「何も感じないってのは悪いことなんでしょうか?」
「別に悪くはないよ。まぁ俺が人殺しは別に悪くないっていう最低の人間だから、なんとも言えんけどな。ただまぁ、気をつけた方が良いかもしれんな」
そう言うとハルドはセインを見る。
「平気に見えて平気じゃない奴も多いしな。俺は昔、容量オーバーした奴を見たことがある。そいつは平気で人間を殺せる奴だったが、ある日、急にぶっ壊れた。
ホントは平気じゃなかったってことだ。自分でも気づかないうちに、殺人の罪悪感による傷か淀みが溜まって行き、最後には溢れてぶっ壊れる。」
「僕はどうなんでしょうか?」
そう言われて、ハルドは肩を竦める。
「わかんねぇよ、そんなこと。ただ、色々嫌にな気分になった時は俺にでも言え。解決法はねぇけどな」
じゃあ意味がないじゃないか、とセインは思ったが、ハルドと話したことで少し気分が軽くなった。なんだかんだでも、ありがたい師匠なのかもしれないと思った。
ハルドは言うべきことは言ったと、その場を去って行った。セインは自分が人を殺したことをどうとらえるべきか、まだ迷いはあった。

 
 

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