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GUNDAM EXSEED_B_16

Last-modified: 2015-04-26 (日) 13:30:11

そして出発の朝である。ハルドはなんとなくキナ臭さを感じていたので、武装を整えていくことにした。腰にはレビーに作ってもらった剣を帯び、ベルトにナイフを収めた鞘を隠すように付ける。そして拳銃2丁とアサルトライフル1丁を身に着け、出発することにした。
出発の手順としては、ハルドとセインはMSを宇宙港まで運び、輸送船に搬入する。姫とミシィとコナーズは先に輸送船で待つという流れだ。
出発までは概ね上手くいった。概ねというのはフレイドが通常のMSより大型であるため、輸送船に搬入するのに手間取った程度の問題があっただけである。
「では、出発しましょう」
そう言ったのは姫である。思ったよりも上機嫌だった。理由としては仲間外れにされなかったからであると、同じ思いのミシィには分かった。しかし男性陣にはイマイチ理解ができていない様子でもあった。
「んじゃ、出しますよー」
ハルドは久しぶりにコナーズの声を聞いたような気がしたし、姿を見た気がした。コナーズは普段からクランマイヤー王国のコロニー内に入りたがらないようで、宇宙港の自分の船でノンビリしているようだった。
理由は知らないし、ハルドには興味もなかった。コナーズとは、ただ仕事だけの付き合いだ。仕事だけうまくやってくれれば文句は無い。
コナーズの操舵は確かで、輸送船は何の問題も無く、宇宙港を出て、漆黒の宇宙へと漕ぎ出した。
「じゃあ、グレンの大将。セーブルまでは3日程度なんで、適当に過ごしてください」
コナーズは飄々とした調子で言うと、自分は操舵手席を離れようとはしなかった。ハルドは特にすることもなかったので、輸送船内の船室でダラダラと時間を潰すことにした。
セインやミシィ、姫はカード遊びに興じているがハルドは興味もなかったので、やはりダラダラと時間を潰すことを選んだのだった。

 

そして3日後、輸送船内では特に何事もなかったが、船内の通信で急にコナーズからハルドへの呼び出しがかかった。
「すいません、グレンの大将。ブリッジまで来てくれますか?」
呼ばれたからには行くしかない。ハルドがブリッジへ向かうと、騒ぎを聞きつけ、セイン、ミシィ、姫がいた。
「呼ばれたのは俺だけのはずだが?」
「呼んだのはグレンの大将だけなんですけどねぇ」
まぁいい、といった感じでハルドはコナーズに要件を促す。察したコナーズはすぐに答える。
「セーブルコロニーに入港の申請をしたんですけど、許可が降りないんですよ。というか、音沙汰なしです」
「人がいる気配がないってことか?」
ハルドが聞くと、コナーズは頷いた。
「完全に港の機能が死んでる感じです。宇宙港はコロニーにとっちゃ、外界との繋がりを持つための生命線ですからね、これが死んでるってのは只事じゃないですよ」
暗に手を引くべきだという感情がコナーズの言葉には含まれていた。しかし、ハルドはあえてコナーズの感情を無視した。
「手は引かんし、調査は続けるよ。金も前払いだしな。多少は情報を持って帰らにゃ依頼主に悪い」
そう言うと、ハルドはセインを見る。
「MSでコロニー潜入するぞ」
ハルドがそう言うと、セインは緊張した面持ちになる。
「悪いが姫とミシィ、コナーズは船で待機で」
ハルドが全員の行動を決定すると、女性陣は明らかに不満げな顔をした。
「しかたないでしょう。二人乗りできるMSじゃないんですから」
ハルドはそう言うと、最後まで不満げな女性陣を置いて、セインを伴いMSの格納庫に向かった。

 
 

「港の機能が死んでるって、コロニーの中の人は何をしているんでしょう?」
「そもそも中に人間がいるって保証もないけどな」
セインの疑問にハルドはなんとなく思ったことを言ってみた。
「コロニーの中の人間全員死んでるかもな。空調設備の不調なんかでもあれば、それだけで即、死につながるのがスペースコロニーってやつだから、何が起きてるか分かったもんじゃねぇ」
ハルドは適当に言ったが、セインは色々想像したようで、顔が青ざめていた。
「神隠しとかで全員行方不明とかあったりしませんか?」
セインは急にオカルトじみたことを言いだした。今がどんな時代だと思っているのかとハルドは、ビビりな弟子を情けなく思い、無視して先に格納庫に向かう。
そのハルドの無視はセインの不安を余計に煽ったらしく、セインはハルドから離れないように急いでハルドの後を追うのだった。

 

「まぁオカルトも無しじゃないかなぁ」
ブリッジでは残された女性陣とコナーズがハルドとセインがしていたのと同じような話しをしていた。
「住人が誰もいなくなったコロニーだって本当にあるよ。2日3日コロニーから離れてて戻ったら、コロニーの住人、誰もいなかったって、これ実話ね」
コナーズは宇宙船乗りに伝わる、怪談話を適当に話していた。それはコナーズが真実味のあるような口調で話すため、冗談に聞こえず、姫とミシィは背筋が寒くなる思いをしていた。
「コロニー以外にも神隠しってのは結構あるもんで、誰も乗っていない豪華客船の話しとかあるけど、聞くかい?」
「いえ、いいです!」
「私も」
姫もミシィも首を激しく横に振った。軽いオカルト話なら興味があるが、あまり怖い話をされても、姫もミシィも困るのだ。
そうこうしている内に、ハルド達の準備が終わったようだった。通信がハルドからコナーズに向けて送られてきた。
「こっちはオーケーだ。ハッチを開けてくれ」
「了解です。大将、お気をつけて」
コナーズがそう言うと、ハルドは何をと言った感じで返すのだった。
「戦争行くわけじゃねぇんだ、気ぃつけるもねぇよ。そっちこそお姫様方の機嫌を損ねないよう気をつけろよ」
「そこらへんは大将らとは年期が違うんで、まぁ大丈夫ですが。マジで気をつけてくださいよ、なんか嫌な予感がするんで」
コナーズは念を押して言うが、ハルドは適当に流す。
「了解、了解。気を付けますよ。じゃ、発進で」
ハルドの機体、フレイドが輸送機のハッチから宇宙へと飛び立つ。
「えーと、セイン機も発進します」
続いて、セインのブレイズガンダムが輸送船から発進した。
2機とも何ともしまらない発進の仕方だと、コナーズは思った。そしてどうにも嫌な予感が消えないのは何故なのかと考えた。だが、予感よりも先に直面している問題があった。
「コナーズさんは他にも何か面白いお話しを知ってるんですか?」
二人の少女が目を輝かせながら、自分に詰め寄っているという現状である。それからコナーズは知る限りの宇宙船乗りに語り継がれている話しを延々とする羽目になったのだった。

 

「んじゃ、まぁ。潜入工作といくか」
ハルドの乗るフレイドがブレイズガンダムを先導し、コロニーへと近づいていく。
「クランマイヤー王国と比べると随分大きなコロニーですね」
セインは近づくとセーブルコロニーの大きさに圧倒されていた。円筒形という形こそ同じだが、大きさはクランマイヤー王国のコロニー1つより二回り以上は大きい印象をセインは感じた。

 
 

「割と新しいコロニーだからな。でかいのが流行だった時期に建造されたらしい」
ハルドは説明する。
「産業は金属関係が盛んだな。それ以外はパッとしない感じだ。金属関係が盛んなのは、レアメタル等が豊富な資源衛星をいくつも持ってるからだそうだ」
へー、とセインはハルドの知識に感心したが、すぐに感心して損したと思うことになる。
「ネットで調べたら書いてあった」
ああ、元から知っていたわけではないんですね。とセインは何とも言えない気持ちになる。
「とまぁ、概要を説明したのでおしゃべりは終わりで、本格的に行くぞ」
ハルドが言うと、フレイドは速度を上げてコロニーに近づく、ブレイズガンダムもそれを追う。コロニーの外壁の上を滑るように飛ぶフレイドに対し、セインのブレイズガンダムは何度か外壁につまずく。
「へたくそ。無理ならギリギリじゃなくて、壁面から離れて飛べ」
ハルドに言われて、セインは恥ずかしくなった。流石に、ハルドの機体の動きがカッコよかったから真似をしたとは言えなかった。
「気をつけます」
セインはとりあえずそう言った。その時だった。目の前でフレイドが止まったのは。止まると同時にフレイドは前腕のビームガンの銃口からビームサーベルを発生させ、コロニーの外壁に、その刃を突き立てていた。
「ちょっと、何やってんですか!?」
「見りゃ分かんだろ、侵入口を作ってんだよ」
ハルドはセインの声をうるさそうに作業をしていた。
「いやでも、そんな目立つ方法というか、どこに侵入口を!?」
本当にうるさいといった感じでハルドはセインの疑問に答える。
「緊急時用の脱出艇が射出されるところを逆側からこじ開けてんだよ。外壁面ギリギリを飛んでたのは、ここを探すため。ついでに言うと見つかる心配はねぇ」
断言する根拠がセインは欲しかった。
「外壁面ギリギリを飛んでた理由は、コロニーの警備隊が出張ってくるかどうかを確認するためだったが、出てこないところを見ると警備隊も機能停止のようだから、どんな目立つ方法を使っても、気づかれる心配は無しだ」
「はぁ、そこまで考えて把握するために動いてたんですね」
セインは感心していた。
「お前は俺がただカッコつけて、外壁ギリギリを飛んでたと思ってたのか?」
ハルドがそう言ったところで、フレイドはビームサーベルを停止させ、ビームの刃を消した。
「というわけで、入り口だ」
ハルドのフレイドが指を指した先にはMSが通れるサイズの四角い穴が開いていた。
「んじゃ、俺が先行するぞ」
そう言うとハルドのフレイドが四角い穴の中に侵入する。セインのブレイズガンダムもそれに続く。
「真っ直ぐな道ですね」
セインはそのまんまの感想を言った。今、機体は上昇しているような感覚だ。周りは無機質な壁である。
「そりゃ、脱出艇を出すのに曲がりくねった道だったら不味いだろ」
ハルドも当たり前のことを言い、セインはそれもそうだなと、あまり意味のない会話をしていた。
そうしているうちに、道の終わりが見えてきた。脱出艇の射出口を逆走しているなら、当然出口は脱出艇の乗り場であり、そこには当然のように脱出艇があるべきだが、そういう常識的な考えは、ハルド達が直後に見た光景で打ち砕かれた。
「あらまぁ」
ハルドの視界には破壊された脱出艇があった。よく確認すると、破壊された脱出艇の周りには死体が転がっている。死体は一見しただけ身なりが良くそれなりの立場の人間だとわかった。
「ひどいな」
セインも死体を確認して気分が悪くなっていた。そしてこのコロニーはどうなっているのかという思いが強くなる。

 
 

「外へ出ましょう」
セインが言って、ブレイズガンダムを動かす。脱出艇の乗り場なら人を一気に入れるための搬入口があるはずなので、そこからなら、MSを出せる。そう思い機体を動かす。
ハルドは何も言わなかった。ただ、セインのブレイズガンダムの動きを見ているだけである。ブレイズガンダムは搬入口を見つけ、ハルドの乗るフレイドがやったようにビームサーベルで入り口を作る。
「こうするんですよね?」
セインがそう言って、出口を作った直後だった。セインのブレイズガンダムがいきなり吹き飛ばされた。ハルドはバズーカの直撃だと思った。
「なるほどなぁ、バリアで実体弾の衝撃までは消せないのか」
1つブレイズガンダムに詳しくなったとハルドは思った。直後、セインからの驚きの声が届く。
「何があったんです!?」
「お前が吹っ飛ばされただけだよ」
そう言うと、ハルドのフレイドが動く。フレイドの腰のグレネードを発射し、同時にフレイドのふくらはぎが展開されると、そこからミサイルが発射され、搬入口を一気に吹き飛ばす。
その衝撃で煙が舞い上がり、一時的に視界が悪くなる。その間に脱出艇乗り場から出る。
脱出艇乗り場などの狭い建物で大型のフレイドは自由が効かないため一刻も早く、外に出る必要があった。しかし、セインの作った出口から出たのでは狙い撃ちされるのが分かり切っていたので、ハルドは一気に道を作ったのだった。
外へ出ると、脱出艇乗り場は3機のMSに囲まれていた。敵の機体は、地球連合軍の量産型のアンヴァルが2機とクライン公国の量産機であるゼクゥドが1機だった。
妙な編成だが、ハルドは全員が敵だと判断し、行動に移る。
フレイドの前腕部に内蔵されたビームガンを即座に2連射し、アンヴァルのコックピットをビームで貫く。そして、残った、ゼクゥドには高速で接近し、先ほど使ったビームガンの銃口からビームサーベルを発生させると、コックピットを切り裂いた。
ハルドの乗るフレイドは一瞬で3機のMSを撃破した。
「敵はどうしましたか!?」
セインがそう言って、ブレイズガンダムで堂々と脱出艇乗り場から出てくるのは、その数十秒後だった。
ハルドは遅れてきたセインに対してため息をつかざるを得なかった。

 

「まぁ、いいんだけどよ。状況とか考えるの難しいし」
ハルドとセインは移動していた、なるべくコロニーの端に向かっていたのだ。移動中の話題は先ほどのセインの失態についてである。
ハルド曰く、そもそも搬入口は普通に内側から手動で開けられるのになぜビームサーベルで出口を作ろうとしたのかという点から始まり、脱出艇の破壊についてまで言及されていた。
「たぶんだが、目的は脱出艇の破壊より、脱出艇目当てに乗り場に来る人間を殺すことにあったと思うな。まぁ結果を見てから言うのもあれだが、あのMSは乗り場に来た人間を殺すために待機していた。
乗り場に来るのは多分、要人だろう。脱出艇の周りで死んでいた人間の身なりからして、結構な身分みたいだから、要人殺しでもしてたんだろう」
ハルドはとりあえず推測を交えながら、さっきの状況をセインに説明していた。
「このコロニーに何が起きてるんでしょう」
セインは不安を隠さない声で言う。
「そりゃあ、これから調べなきゃいけないが、まぁ予測はつく」
ハルドがそう言うとセインは食いついてきたが、ハルドは少し落ち着いた場所に行ってからな。とだけ、言って、その場で述べることを避けたのだった。
移動しているセインは、セーブルの風景をなんとなく眺めていた。高いビルばかりの都市だと感じた。故郷のアレクサンダリアの方が都会だが、こういう場所には久しぶりにくると感じていた。

 
 

そうしているうちに、ハルドたちの機体は都市部を抜け、コロニー内に申し訳程度の面積しかない自然地帯の森の中に機体を隠すようにして停めた。
ハルド達は一旦コックピットから、降りて、顔を合わせて話しをすることにした。
「ハルドさんの予測ってなんですか?」
セインはとにかく聞いてみたかった。
「多分、クーデターだと思うな。あの要人っぽい人間の殺されっぷりからして、このコロニーを統治している自治政府に対してクーデターが起きてるんだと思うが」
ハルドは、言いながら少し考える様子でもあった。
「しかし、それにしては街の様子がおかしかったな」
「おかしかったですか」
セインは特に街に対して疑問を抱いていない。普通の都市だと思った。
「いや、人が歩いてなかったろ。クーデターで戒厳令が出て外出禁止ってのもあるだろうが、現状を見ると政府側は壊滅してる気がするから戒厳令もクソも無い気がすんだが」
「あまり、よくわからないです」
セインが素直に言うと、ハルドは説明する。
「いや、クーデターが上手くいってる時ってのは、もっとワーっと民衆が騒ぎそうなもんだけど、今のこのコロニーは静かすぎるんだよな」
説明するとハルドは、考え込む様子になった。その直後だった、爆発音がコロニー中に響いたのは。
何だと思い、二人は爆発音の元を見る、それは二人のいる位置から見て、天井の方の区画であった。円筒形コロニーである以上、内部は上を向いても都市がある。
二人が見上げた都市では頻繁に爆発が起きてる様子が見え、ハルドの目には、かすかだがビームの閃光も見えた。
「行ってみるぞ」
ハルドはそう言うと、すぐにフレイドに乗り込む。対してセインは僅かに遅れブレイズガンダムに乗り込む、2機はスラスターを噴射させ、上空へと飛び立ち、上に見える都市へと向かうのだった。

 

「おいおい」
「なんだこれ」
ハルドとセインは目の前で起きている出来事に巻き込まれないように、コロニーの中心部の無重力空間に待機し、距離をとって状況を観察していた。
ハルド達、二人の目の前で行われていたのはMS戦であった。アンヴァルとアンヴァルが戦闘していると思えば、ゼクゥドとアンヴァルが共闘している。規模こそ小さいが戦場のような雰囲気があった。
「コロニーの中で内戦かよ」
ハルドは信じられないものを見たように言った。セインは無言で戦闘に見入っていた。戦場というものを始めて見たからだ。
「無理だセイン。この件には関わるな、調査は終了、帰るぞ」
ハルドは状況が手におえるものではないと分かったため、さっさと退散することにした。ユイ・カトーへの報告も、見たことを伝えれば充分だろう。
「あ、はい」
戦場に目を奪われていたセインは、返事が一瞬遅れる。しかし、遅れたのは返事だけでなく、反応もだった。セインの機体は運悪く、流れ弾に直撃してしまったのだった。それもまたバズーカ弾である。
衝撃で姿勢を崩したセインの機体は戦場のようになっている都市部に落下する。さすがに地面に落下する前に体勢を整え、無事に着地した。だが、問題だったのは着地した場所である。
セインのブレイズガンダムが着地したのは戦場のような都市のど真ん中、激しいMS戦が繰り広げられている真っ只中であった。
「え、あの、これは」
ハルドは何もせず、戻ってこい、そう言おうとしたが間に合わなかった。
セインの目の前は当然ながらコックピットのモニターである。そして、そのモニターの中には敵機の識別コードも映る。セインの目が捉えたのはクライン公国という文字、そしてその識別コードを持ったゼクゥドであった。

 
 

「うおぉぉぉぉぉ!」
セインはクライン公国という文字が見えた瞬間、強い殺意に襲われ、ブレイズガンダムのビームライフルのモードをアサルトライフルモードに変更し、クライン公国の識別コードを持つゼクゥドにビームを連射しながら突撃する。
ほぼ不意打ちだったため、ゼクゥドは避けることもなく、ビームの雨に機体を切り裂かれていった。敵機をズタズタに破壊しても、セインのブレイズガンダムは止まらず、左手でビームサーベルを抜くと、ビームを受けズタズタの機体をビームサーベルで更に切り裂いた。
「はぁはぁ……」
クライン公国を、敵を、間違いなく倒したことにセインは満足を覚えたが、次の敵はすぐに視界に入って来た。クライン公国の識別コードを持つアンヴァルである。
「お前もぉっ!」
セインはビームライフルをバスターモードに変更する。その瞬間、ブレイズガンダムのビームライフルのバレルが縦に展開され、銃口が広がる。
セインの機体は足を止めて敵を狙っていた。敵のアンヴァルは、走りながらビームライフルを撃ってくるが狙いは正確ではなかった。何発かは外れ、何発かはブレイズガンダムに当たるがフルアーマー(仮)の装甲板がビームを防ぐ。
「あのバカが、不細工な戦い方を」
ハルドは戦闘中は足を止めるなと口を酸っぱくしてセインに教えてきたつもりだが、今のセインはそれが、全く出来ていなかった。
「くらえ!」
ブレイズガンダムがライフルからビームを発射する。それは通常のビームライフルが発射するビームの何倍もの太さを持って、敵のアンヴァルに襲い掛かり、直撃する。
ビームの直撃を受けたアンヴァルの胴体は消し飛んでいた。異常とも言える破壊力であった。
「敵はっ!?」
セインは辺りを見回すと、やはりいた、クライン公国識別コードを持つ機体が。それも何機か固まっている。
「まとめて消し飛ばしてやる!」
セインはブレイズガンダムのビームライフルをチャージモードにする。すると、ライフルのバレルが展開されたまま、バレルが延長された形に変形した。
敵機とて、なにもしていないわけではない。突然の乱入者を完全に敵と認識し、集団でブレイズガンダムに攻撃を加えているが、ブレイズガンダムは全く怯まない。レビーとマクバレルの作成したフルアーマー(仮)が敵の攻撃を防いでいるのだ。
「終わりだっ!」
チャージが終了したブレイズガンダムのビームライフルから、巨大なビームが発射される、巨大なビームの線は、固まった敵を飲み込み消し飛ばした。敵機は跡形もない。
そして、セインは辺りを見回す。もうクライン公国の識別コードを持つ機体はなかった。
(また善い行いをしましたね。あなたは幸福への道を歩んでいますよ)
急に頭の中に声がした。この前の戦いの時も聞こえた声だ。セインは不思議に感じた。この声を聞くと癒される気がするのだ。そして命を奪ったことに対する重みが消える。
セインはこの戦いで数人の命を奪っていたが、それに対して全く気にならなくなっていたのだった。
ハルドは距離を取って、セインの戦いを見ていたが、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
「あの装甲板は余計だったな」
ハルドは呟く。あのフルアーマー(仮)とかいう装備のせいで、戦い方が馬鹿になっているとハルドは思った。ダメージを受けないために、無茶な戦い方ができてしまうのだ。
足を止めて敵の弾を食らっても、まるで無視で反撃できるのは確実にセインの技量向上には良くないとハルドは思った。
ハルドの考えをよそにセインは、満足感を覚えていた。憎き敵を倒したことに対してだ。

 
 

「僕はやれる。やれるんだ」
不意にセインが辺りを見回すと、セインのブレイズガンダムの活躍を讃えるように、ブレイズガンダムの周りにMSが集まってくる。
「どこの奴だが知らんが感謝する」
誰か分からない人物からの通信がセインの元に届く。
「アンタのおかげで公国のイヌどもをぶっ潰してやれた。感謝してもしきれない」
声の主は分からない。だが、1機のMSがコックピットのハッチを開き、その中から出てきた人物が手を振っていた。
セインも相手に合わせて、コックピットのハッチを開け、外へと出る。
「俺はアルマンドだ」
コックピットから出てきた男は、そう名乗った。40代くらいの髭面の男である。お世辞にも人相が良いとはセインは思えなかった。
「セイン・リベルターです」
セインも挨拶をすると、アルマンドは急な提案をしてくるのだった。
「礼がしたい。俺らのアジトに来てくれるか?」
アルマンドという男は物言いがなんとなく高圧的であると少しだがセインは感じた。
セインが返答をどうしようか迷っていると、ハルドの乗るフレイドが降りてきた。見たこともない機体の登場に、場が殺気立つが、セインがとりなす。
「僕の仲間です」
そう言うと、場に満ちた殺気は霧散していった。すぐに殺気立つようなところから、セインは、あまりガラの良い集団ではないような気がした。
「じゃあ、そっちの仲間も一緒に俺らのアジトに来てくれ」
やはり何となく高圧的だとセインは思った。ハルドの方は何も言わない。ただセインの好きにしろといった感じだった。
「じゃあ、お邪魔します」
セインは断ることもできず、アルマンドという男についていくことになった。
アルマンドという男についていくと、そのアジトとはセーブルコロニーの政庁舎だった。
「機体は適当なところに停めといてくれ」
アルマンドはそう言った。政庁舎の周りには、MSが何機も停められていた。セインとハルドもそれらの機体の中に自機を停めて、機体から降りる。
機体から降りて辺りを見回すと、物々しい雰囲気であり、銃を持った男たちがうろついている。
「あんまり良い空気じゃねぇな」
ハルドがボソッと呟く。セインも同じ感想だった。銃を持っている男たちのせいだろうかとセインは思った。銃を持つ男たちは正規の軍人という感じではなく、セインのみた感じで荒くれ者といった様子だった。
「ほら、ついてこいよ」
アルマンドという男はセインらを呼び、先導して前を歩く。アルマンドは何の躊躇いもなく政庁舎に入って行った。セインらもそれについていく。
入ってみてセインは唖然とする、政庁舎の中は酷い有様だった。壁やら何やらは銃痕だらけであり、床には乾いた血の跡もある。また、それ以前に強盗が入った後のように政庁舎の中は荒らされていた。
「助けない方が良い奴らだったかもな」
ハルドがボソッと呟く。セインとしてはハルドに状況を何とかしてほしかったが、ハルドは知らん顔をしていた。
「自分でまいた種だ」
また、ハルドがボソッと呟く。その呟きの意味は、つまりは自分で責任を取れということかと、セインは理解した。しかし、それはツラいとセインは思いながら、とにかくアルマンドについていった。

 
 

アルマンドに案内された部屋は、このコロニーの代表が使っていた部屋だった。
「入ってくれ、今は俺の部屋だ」
そう言うと、アルマンドは中に入り、セインらも続く、部屋の中はやはり荒らされていたが、豪華な椅子と大きな机だけはそのままだった。
そして、セインはふと気づく、部屋に先客がいることに、先客は2人、1人は坊主頭で色白の大男、そしてもう片方は少年であった。歳はセインと同じくらい、鮮やかなブロンドをした整った顔立ちの少年である。
少年はセインに気づくと微笑みを向けた。セインとしては、その微笑みにどう返していいかわからず、どうも、といった感じで軽く頭を下げるのだった。ハルドは基本的に無視を貫いており、部屋に入ると同時に入り口のそばの壁に体を寄りかからせていた。
アルマンドは豪華な椅子に座ると、脚を机の上に乗せ言う。
「改めて名乗らせてもらうが、俺はセーブル解放戦線のリーダーのアルマンドだ」
セーブル解放戦線?リーダー?セインの頭の中は疑問符だらけだった。しかし、アルマンドは疑問だらけのセインの様子に気づくこともなく、話しを進める。
「で、こっちにいる奴らが」
と、アルマンドは少年たちの紹介に移った。ブロンドの少年が一歩前に出て笑みを浮かべながら自己紹介を始めた。
「クリスティアン・フラガです。そしてこっちはボスコフ。喉に傷を負っていて喋れないので僕が代わりに」
クリスティアン・フラガ。セインは混乱はしていたが、少年の名前だけは覚えることができた。
「フラガっていうと地球連合とかの名家だったか?」
ハルドが急に口を挟んできた。完全に静観というわけではないことがわかったので、セインは少し安心した。
「そうですね。でも僕は半ば勘当された身なので、なんとも」
クリスティアンはにこやかに答える。
ハルドは頭の中の知識を思い起こす。フラガ家、確か一度は没落したが、再興した地球連合の中の名家だ。多くの企業を経営し、地球連合の中でも有数の資産家一族だったはず。
オカルトチックだが、フラガ家の人間は特殊な勘を持っているという話しで、投資で失敗をしないなどという話しをハルドは聞いたことがある。そんな家のお坊ちゃんが、こんなところで何をしているのかハルドは不審感しか抱かなかった。
「少し、誤解されてしまっているかもしれませんが、僕はそれほど大した人間じゃありませんよ。家名で誤解されることも多いですが」
クリスティアンはハルドの方を見てにこやかな笑みを浮かべたまま言う。そして、その言葉にアルマンドも同意するのだった。
「ああ、そうだ。クリスは俺らの理想に共感して手を貸してくれてるだけだ。軍師としてな」
「軍師」
妙に古臭い言葉を耳にし、セインも怪訝な表情でクリスティアンを見る。するとクリスティアンは苦笑しながら言うのだった。
「軍師だなんてとんでもない。僕はただのアドバイザーですよ。客観的な視点から見たことを述べるだけの」
やはり何とも変な感じがセインはしていた。それに理想とは何だ?そう思い、セインは率直に色々と聞いてみることにした。
「えっと、アルマンドさん、聞いても良いですか?」
「なんだ?」
「セーブル解放戦線ってなんなんですか?」
セインはそれが一番気になっていたことを聞いてみた。するとアルマンドは、むしろ聞いて欲しかったように饒舌に語り始めるのだった。
「セーブル解放戦線ていうのはあれよ、腐敗した権力構造をぶっ壊して新たなセーブルをつくるための組織だ。このコロニーの自治政府を打倒したのも俺たちだ」
アルマンドが言うことだけを聞くと悪い組織には思えなかったがセインは何とも言えない違和感を覚えた。

 
 

「理想っていうのは、どういうものなんですか?」
「俺たちセーブル解放戦線の理想は、腐敗した権力者、金持ちを懲らしめて、そいつらが儲けた金を貧しい奴らに分配するのさ。俺たちみたいな貧しい奴らにな」
懲らしめる。という言葉でセインは嫌な予感がした。おそらく、この組織の人々が脱出艇の周りの死体をつくり、この政庁舎の中の惨状を作り上げたのだろう。
言ってることはそれらしくしているが、この人たちは只のゴロツキだとセインは思った。とりあえず違和感の内の1つは解決したが疑問はまだある。
「えーと、自治政府を打倒したはずなのに、なぜこのコロニーは内戦状態みたくなっているんですか?」
セインが聞くと、途端にアルマンドは不機嫌な顔になって話すのを嫌がりだした、そしてこういうのだ。
「そういうのはクリスが説明しろ」
そう言われ、クリスティアンが前に出て説明する。
「先ほどリーダーが言ったように我々は自治政府を打倒しました。しかし、自治政府の中にはクライン公国への恭順派というものが存在しており、彼らは極秘にクライン公国の部隊を招き入れ、その上でクライン公国から武器などの供与されているのです。
我々セーブル解放戦線としてはコロニーの統治権をクライン公国に渡すわけにはいかないため、公国恭順派との争いとなっているわけです」
はぁ、と何となくはセインは理解したが、このままセーブル解放戦線がこのコロニーを統治するのも何だか問題がありそうな気がしていた。
セインはとりあえず最後に疑問に思っていたことを聞いてみた。
「あの、このコロニーの人の姿が見えないのは何故なんですか?」
セインが聞くと、アルマンドは舌打ちをして、小さい声で質問の多いガキだ、と言ったのがセインには聞こえた。これに関してもクリスティアンが答えた。
「コロニー市民は皆、シェルターに避難していますよ。ほとんどの市民は様子見といった感じですね、セーブル解放戦線につくべきか公国恭順派につくべきかを様子見してるんです」
まぁ、そうだろうなぁ、とセインは思う。このセーブル解放戦線はゴロツキの集団にしか思えないから嫌だろうし、公国に恭順するのだって多くの人々は嫌がるだろうとセインは思った。
「セーブルの人間だったら俺の味方をするのが筋だろうが、全く情けない奴らだぜ」
「おっしゃる通りで」
セインが見た感じ、クリスティアンはアルマンドのイエスマンなのかと思ったが、それもなにか違和感を覚える。
セインはどうにもスッキリしないことが多いと思った。こういう時、ハルドさんならパッと決めるんだろうと思い、セインは後ろを見る。するとハルドは全く興味なさそうな顔をしてボーっとしていた。
「まぁ情けない奴らの代わりにこっちには、その百倍の戦力が加わったわけだからな」
え?とハルドはアルマンドを見た。
「このセインは中々に腕の立つ奴だクリス。役に立つぞ」
いつの間にか、セインは仲間に加えられてしまっていた。セインとしては公国恭順派の存在は許せないが、セーブル解放戦線に加わるという選択肢もない。どう考えてもゴロツキにしか思えない集団に加わる義理など無いからだ。
「あの、僕は」
そうセインが言おうとした時だった、後ろのハルドが発言する。
「俺はパスだ。アホの仲間になるほど脳味噌腐っちゃいないんでね」
セインも同意したかったが、すぐに、そういう訳にもいかなくなった。
「おい、お前ら!」
アルマンドが怒鳴ると、銃を持った男たちが一斉に部屋に入ってくる。
「そっちの色男は仲間になりたくないそうだ。それなりのおもてなしをしてやんな!」
そしてハルドは銃を持った男たちに連れていかれてしまった。こうなると、セインとしてはどうしようもない。
「ええと、少しだけなら手を貸すことは出来ると思います」
情けないが、セインとしてはどうしようもなかった。だが考えようとしては1つのコロニーをクライン公国の支配から救うことに繋がるかもしれないのだ。ならば別に良いじゃないか、セインはそう思うことにしたのだった。

 
 

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