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GUNDAM EXSEED_B_28

Last-modified: 2015-04-28 (火) 20:30:48

ハルドはロウマの処遇について頭を悩ますこととなった。すぐに殺すという選択もあったが、それではロウマがクランマイヤー王国の情報を既にながしているのか把握できなくなる。
ハルドは仕方なくロウマを拘束し、監禁することにした。しかし、クランマイヤー王国には刑務所に相当する施設がないらしく、牢屋らしき物の存在もなかった。ハルドは仕方がないので、クランマイヤー王家邸の地下室の一画に閉じ込めておくことにした。
虎(フー)に関しては戦艦内で怪我をしている所を発見された。それなり以上の怪我だが、命に問題はないらしいとハルドは知った。
ここで問題になってくるのがロウマであり、虎を倒したとなると、余計に生かしては置きたくなかった。だがそういう訳にいかないのがはがゆかった。

 

地下室の一画ジメジメとした薄暗い部屋でハルドとロウマは対面で椅子に座っていた。机は無い。
「とりあえずロウマさん。ここがどこだか分かる?」
「地下室!」
ロウマはふざけて子供っぽく答えた。対してハルドも同じように相手をする。ニコニコと笑いながらハルドは拍手をしながら言う。
「わーすごい!大正解!ロウマ君すごーい!」
とまぁ、こんな風にやり取りをするのは二人とも面倒だったので、ロウマから口を開く。
「場所がどこだかは知らないっていうか、調べようとしたところでハルド君に襲われたわけよ。ここの情報はどこにも漏らしていません。以上でーす」
信用はできないが、まぁそんな暇もなかったろうとハルドは考え、とりあえず、ロウマの言うことに関しては信じてみることにした。
ロウマは拘束して椅子にくくりつけてある。体の自由は全くない。ハルドはとりあえず得られた情報を他のメンバーに伝えるために椅子から立ち上がる。
「ありゃ、いっちゃうの?寂しいなぁ、もう少しお話ししようぜ」
そうは言われてもハルドも完全にヒマという訳ではない。不思議とハルドは性格的にロウマを嫌いになれなかった。
「アンタは嫌いじゃないけど、俺も忙しいの。また後で」
そう言うとハルドはドアに向かう。その時思い出したようにロウマの方を振り返り言う。
「アンタと話したいって人間はそれなりにいるし、退屈はしないと思うぜ」
そりゃ良かったとロウマは思う、捕虜になった以上、会話以外の退屈しのぎなどないから、ありがたかった。
「じゃ、期待して待つよ。それじゃ、また」
ロウマはドアから出ていくハルドを見送りそう言った。そしてハルドと入れ違いに入ってくる人物にわくわくしながら待ってみるが、期待外れだった。
ハルドと入れ違いに入ってきた人物、それはセイン・リベルターだった。セインはロウマのことを睨みつけながら、椅子に座る。
「きみは退屈なんだよなぁ」
ロウマは欠伸をしてみせる。もちろんわざとであり、セインを馬鹿にしたものだった。
「僕が退屈かどうかは関係ないだろ!」
ロウマは拘束された状態で肩を竦めて見せる。
「おーこわ、怖いな。ボクちゃん。すぐ怒鳴る人ってきらーい」
ロウマはセインをからかって遊ぶことにした。これぐらいしか捕虜の楽しみはないのだから、たまにはいいだろう。まぁ、たまにはではなく、しょっちゅうやっているがとロウマは思う。
「僕が聞きたいのは何故、母さんを殺したかだ。ミシィの家は両親ともに連行された。だけど僕の家は母さんが殺された。何故だ」
ロウマは、ああ、そのことかと思い出し、急に冷めてくるのを感じた。
「別に、殺したいから殺した」
その言葉にかっとなってセインはロウマに殴りかかる。だがセインのパンチをロウマは首の動きだけで躱し、反撃に頭突きをセインに叩き付ける。

 
 

「殺したいから、殺すってそんなに悪いことか?きみだってゴキブリを見たら、殺したいから殺すって衝動で殺すだろ?あの時の俺はそんな感じだった」
セインはロウマの頭突きを食らって、床に倒れこんでいたが何とか体を起こし、椅子に座る。
「僕の母さんがゴキブリだってのかっ!?」
だれもそんなこといってないだろうに頭の悪い子どもだなぁと、ロウマは内心ウンザリしていた。
「ものの例えなんだから過敏に反応しないでくれよ。キミと話す時、俺はキミみたいに頭の出来の悪い奴と話す時、相手に分かるように話さないといけないから、気も使うし頭も使うから面倒なんだよ」
ロウマの物言いに関して、セインはまたカッとなりそうだったが、今回はかろうじて抑えることが出来た。ここで動けば、また馬鹿だと言われるのが目に見えているからだ。
「おーステイができました。ステイ、ステイ。待てができるって偉いね。んじゃ、ご褒美をあげようかな?その前に質問がはいるけど」
ロウマは変わらず馬鹿にしたような口調で話すがセインはこらえていた。
「質問は簡単。セイン君は御両親のこと好き?」
なんだ、この質問は?とセインは思ったが、躊躇いなく答える。
「好きだ」
その答えにロウマはウンザリとした表情になり、大げさな溜息をついた。
「みんなそう答える。いいねぇ、親に愛されてるって。俺は親が大嫌いだったよ」
なぜ親の話しになるのかセインは分からなかった。
「まぁ、きみのお母さんを殺しちゃったのも、たいした理由じゃないんだよ。ムカついたんだ。キミのお母さんが俺の母親に似ててね」
似ているからなんだというのだ。セインはロウマの言っていることが分からない。
「俺、母親嫌いでね。母親をぶっ殺したかったのよ。そして俺の母親に似ているキミのお母さんを見ていたら、なんともこう、ぶっ殺したくなって撃っちゃったわけよ、拳銃」
ロウマはニッコリを笑顔を作ってセインの方を向く。セインはやはりこの男の言っている言葉の意味が分からない。その程度の理由で人を殺すのか?この男は正気じゃない、セインは愕然としていた。
「殺したいから殺す、きみのお母さんを殺したくなったから殺した。キミには分かんなくても俺にはスジの通った話なのね、これ」
やっぱりだ、こいつは訳が分からないとセインは思った。絶対に理解できないし、理解したくもない、こんな人間を人間とも思わない奴とは。
「僕はお前を絶対に許さない、いつか必ず思い知らせてやる」
「殺してやるって言えよ、セイン君。だからキミは退屈なんだ。どこまでいっても感性がただの人間。見ててウンザリだよ」
セインはロウマの言葉に何も返さなかった。返す気にもなれなかった。こんな奴とは、なるべく関わりたくない、そう思い、セインは椅子から立ち上がる。
「あら、お帰りかい?もっと話しをしてやってもいいぜ。きみのお母さんの死に顔とかさ」
セインはもうウンザリだと思って、地下室の扉を開けて出ていく。
思ったよりは退屈しのぎになったかなとロウマは思う。まぁ、あの少年はつまらなかったが、それを含めてもまぁまぁな退屈しのぎであった。
さて、この後はどうなるか。ハルドならば、そろそろ見切りをつけてこちらを殺そうとするかもしれない。まぁその時はその時だ。なるべくあがいて駄目そうだったら運が無かったで終わり、それで良いとロウマは思った。

 
 

そう考えていると、地下室のドアが開いた。さて次はどんな客だろうロウマが期待した人影は、期待に見合う存在のハルドとそして小さな女の子であった。
女の子はぺこりとロウマに頭を下げると可愛らしい声で話し出す。
「クランマイヤー王国王女アリッサ・クランマイヤーです」
そう言うと、王女と名乗った小さな女の子はロウマと対面の椅子にちょこんと座った。そして期待に目を輝かせながら言うのであった。
「あなたが凄い悪い人ですねっ!?」
王女と名乗った女の子は興奮したようでロウマに尋ねるのだったが、ロウマは訳がわからず、地下室の入り口付近の壁にもたれかかっているハルドに視線を送る。
「すごく悪い奴が来てるから、会ってみますか?って言ったら食いついた」
ああ、そうとロウマは思った。クランマイヤー王国など聞いたことのない国だが、そんな国もあるのか、とか、この少女の期待に応えるのは面倒だなぁとかロウマは余計なことを考えていた。
その間、姫らしき女の子は、ずっとロウマの顔を見ている。見透かすような瞳といっていいのかロウマは判断がつかなかったが値踏みされているということは分かった。この10歳くらいの少女が人を値踏み?冗談としか思えないが姫の目は真剣であった。
「あんま、楽しくないんですけど、ハルド君?」
「我慢しろって、姫様が一番偉いんだから、お前の処遇は姫様の胸先三寸だぜ」
そりゃ大変だとロウマは思ったが、それほど深刻視もしていなかった。すこし視線が気になったが、とりあえず姫様の機嫌を損ねないように悪い奴をやってやろうかとロウマは思った。ロウマは子どもはそれほど嫌いでもなかった。相手にするのも平気だった。
姫はロウマをしばらく見ると、居ずまいを正して椅子に座る。だが、椅子が大きく体の小さな姫が座ると人形が座っているようにも見えた。
さて、脅かそうか、そうロウマが思い口を開こうとした瞬間だった。
「あなたは強い人ですね」
思いもがけず姫から言葉が来た。
「あなたは凄く強い人だと思いました。強いから色んな物を粗末に扱っても自分一人で進んでいくんだと思います」
ロウマは少しイラッときた。おそらくハルド辺りが嫌がらせで、この子どもに言わせているのだろうが、なんとも堂に入った物言いである。ロウマは目の前の姫に対して僅かだが畏敬を抱きそうになり、それを振り払った。
「あなたの強さは前を見ていること、全てを踏み潰してもそれでもあなたは進んでいく気がします。あなたは前を見て進み、そして成功を掴む。でもその成功を掴むことはそんなに重要じゃなくて、本当はその成功を人に見せたいだけ――」
そこまで言った瞬間ロウマは拘束された状態で椅子を揺らし、大きな音を立て姫の言葉を遮る。
「自己分析はもう済んでるんだよ、お嬢ちゃん。言われなくても分かっていることを言われるのって、すごい不快なんだけど、わかるかな?」
ロウマの目に僅かに殺気が宿る。ハルドや虎と戦った時でさえ見せなかった殺気である。
「お嬢ちゃんの大切なものは何だい?ここを出たらぶち壊してやるから、お嬢ちゃんの目の前で丁寧に壊してやるよ」
ロウマの瞳には狂気が宿っていた。ハルドは止めるべきどうか迷ったが、成り行きを見守ることにした。
「壊しても良いですよ。直せるものなら、直します。直せないものなら、それの思い出を胸に大事にしまっておきます」
ロウマは自分の瞳には相手を怯えさせる力があると信じていた。だが、この小さな姫にはそれが通用しなかった。

 
 

「お父さんとお母さんが言っていました。王族は常に得るより失うものが多い者であると、だから何かを得た時は最大限に喜び、失った時は悲しみを最小限に抑えなさい。辛くてもそうあるのが王族であると言っていました。だから私は何かを壊されても泣いたりしません」
ロウマ相手になかなかどうして堂々とした物言いだとハルドは思った。
「ロウマさん。あなたは悪い人だと聞きました。私の知り合いにも悪い人はいます。学校で同じクラスのジョージくんです。
ジョージ君はいつも悪いことをしていますけど、それは悪いことが好きなのではなくて皆に注目されたいから。ロウマさんもそうじゃないですか?」
ジョージ君がどんな人物かは知らないが、ロウマはそのジョージ君と一緒にされるのは嫌だった。
「いやいや、姫様。俺の悪いことってのはね……」
「言い訳はしない!私はお母さんに、そう教わりました。ロウマさんも皆に注目されたくて悪いことをしているように思います。悪いことをやって自分は他の人と違うってところを見せたいんじゃないかと思いました」
そう言われ、ロウマとしては閉口するしかない。小学生の理屈を大人の世界に持ち込まれてもロウマにはしようがなかった。だが、この小さな姫様のちょっと頭の悪い物言いは嫌いじゃないぞとロウマは思う。
「王器があるね」
ロウマはなんとなく呟いた。
「王器って何ですか?」
子どもは単純なので、すぐこちらの言葉に反応する。ロウマはそれが面白かった。
「王様とかに相応しい人間としての器だよ。俺やハルド君が持ってないもの」
そう言うと姫は顔をパッと明るくした。
「それってすごいんですか?」
「うん、すごいすごい」
多分、この姫が本物ならば、間違いなく天下を取れる器だとロウマは思った。なぜなら、なんとなくロウマはこの姫の下で働いてやってもいいかもしれないと思い始めていたからだ。
おそらくこの姫は、気づけば、周りには頼りになる仲間が増えている。姫がどうこうしたわけではなくとも、自然と気づいたらこの姫の周りには人が集まっているのだろう。
「姫様は人に愛される人ってことだよ」
ロウマは若干、羨ましく思いながら、姫に言った。すると姫は気づいたら椅子から降りており、背伸びしてロウマの両手で挟み込むように触っていた。
「いっぱいの人に愛されるなら、私一人では愛は抱えきれないのであなたにもあげます」
姫は花のように可憐に咲き誇る笑顔をロウマに向けたのだった。
こりゃ、やばいな。とロウマは思う。多分この姫さんは殺せないぞと思い始めていたのだった。すると、そこへハルドがやってきて、時間ですと姫を部屋から追い出していった。
「どうよ?」
ハルドはロウマに尋ねる。
「うちの公王に爪の垢を煎じて飲ませたい」
ロウマは素直に何かを言いたくなかった。実際、あの姫は相当な難物だと感じたからだ。
「あれで10歳だぜ。あのまま成長したらヤバいだろ」
ハルドは椅子に座りながらロウマに話しかける。
「ありゃ、天下を取ってもおかしくないな。頭は悪い癖に物事が見えてるし、とにかく人を引き付ける」
「最高評価だな」
ハルドは苦笑して言うと、ロウマも苦笑する。
「あれに惚れて、ここで長く傭兵かい?ロリコンだねぇ」
後半部分は冗談めかしてロウマは言った。ハルドは肩をすくめるしかなかった。

 
 

「なんとなくであの姫様についていったら、それなりの付き合いになっちまった」
「ま、がんばりなさいな。あの姫様の下は大変だろうけどな」
ハルドとロウマはそれきりで話しを打ち切り、ハルドは部屋を出ていった。
それからしばらく、ロウマのもとを訪れる人はいなかったが、夕食の時間になり、ハルドが夕食を持ってきて食べさせてくれた。両手足が拘束されているからとはいえハルドに食事を食べさせてもらうのは中々に苦痛であった。
そしてハルドが夕食の食器を下げると、今度こそ誰も来なくなった。こういう場合、潜入工作員を配置しているコロニーなら、工作員が自分を助けに来てくれるはずだが、この未知のコロニーではそれは期待できない。はずであった。
「大佐、大佐、起きてますか」
深夜頃になって、ドアの外から自分を呼ぶ声がした。ロウマは運が良いと思った。どうやら潜入工作員のいたコロニーだったらしい。
「起きてる。開けろ、入れ」
ロウマは高圧的に命令した。いい加減に拘束がきつくて嫌になってきたのだ。ロウマはすぐに中に入るように言った。そして、ドアを開けて入ってきた人物、それはゴリラのような巨体の男であった。
「……だれだっけ……?」
ロウマは巨体の男を思い出せずにいた。すると巨体の男の方から名乗り始める。
「ディレックスです、ディレックス!」
声がでかいなぁと思いながら、ロウマは記憶を掘り起こしているとそれらしい人物が思い当った。
「ああ、ディレックス君か」
確か、月の強制収容所に出張させて、ドロテスが何かミスを起こすように働きかけさせたはずだが、なぜこんなところに。そもそもだ。
「なぜ連絡を寄越さなかったんだい?」
ディッレクスは肩を落とし答える。
「大佐が、大佐からの連絡があるまで、連絡をするなって言ったんですよ」
そんなこともあったかと、ロウマは記憶になかった。とにかくディレックスに拘束を解くように命じるとディレックスは素直に動き、ロウマの拘束を解く。
「じゃ、帰ろうか」
とは言ったものの多分無理な気がした。ハルドらは警戒の網を張っているかもしれない。であるならば、人質などがいる。ロウマは人質にあの姫を選んだ。
「ふむ、寝る子は育つから良く寝てるねぇ」
ロウマは姫に対して起こすとか起こさないを関係なく強引に体を掴み、自分の盾になるようなポジションで抱え込んだ。騒がれると面倒なのでロウマは姫の口に猿ぐつわをした。あの達者な口ぶりを聞けなくなるのは残念だが、仕方がなかった。
そうしてロウマが、人質に姫を手に入れ、姫の寝室から出ると同時にディレックスが吹き飛ばされていた。
「おや、ディレックス君。楽しそうだね」
ロウマは完全に他人事の状態だった。自分は人質を抱えて安全だから、ディレックスはどうでも良かった。
「ゴドウ、てめぇ!」
ハルドが怒りの形相でディレックスを睨みつけていた。ゴドウはディレックスの偽名だろうとロウマは思った。
「死ね」
ハルドが銃を向ける。間違いなくディレックスは殺されるだろうが、ディレックスにはまだ使い道があるので、殺されては困る。ロウマは、ハルドとディレックスの射線上に人質を抱えて立つ。
「さて、大事な姫を撃つのかなハルド君?」
ロウマは自信を持って言ったが、撃たないという確信はなかった。昔なら撃つ可能性が高いが、今のぬるいハルドならば撃たないだろうという予感がしていた。

 
 

「少女を抱えて逃走か、いい趣味だなロリコン野郎」
ハルドは強がり、そんなセリフを吐きながらも、ロウマの予感は的中し、ハルドは銃を下げる。
「だろう?昔から趣味はいいって言われるんだ」
ロウマとしては別にロリコンと言われようがどうでも良かった。ロウマの腕に抱えられた姫が暴れるが、ロウマは気にせず、姫の顔に自分の顔を近づけて言う。
「あと8年経ったら、俺はこの姫を嫁にするよ」
……は?という空気が場を包む。すると、暴れている内に猿ぐつわが外れたのか姫が口を挟んだ。
「駄目です。私は6年後にハルドさんと結婚するんです!」
またもや、……は?という空気になる。一番状況に困っているのはハルドだった。
「クランマイヤー王国では16歳になったら結婚出来るんです!」
あ、そうなの。とハルドは納得した。しかし、納得している場合ではない色々。と冷静になって状況を考えると、運の悪いことに騒ぎを聞きつけていた何名かが、姫の大胆なプロポーズを聞いてしまった。
こうなったら、姫に関しては、いっそロウマに持って行ってもらってもいいような気がハルドはしていた。
「ハルドさんは私と結婚するのが嫌なんですか〜!」
姫が叫ぶと同時に、ハルドはぎょっとし体を硬直させた。それと同時にロウマは走り出す。ロウマはこの屋敷に詳しくはないが、外へ出る窓の位置だけは把握していた。ロウマは外へ出ると同時に姫を手放す。
「いいんですか?」
同時に飛び降りたディレックスが人質を手放すことに心配な表情を浮かべていたが、
「そうだね」
それだけ言ってロウマは無視して走り出した。まぁ、あれだけ大胆なプロポーズをしたのに仲を引き裂くのも忍びないとロウマは思ったのだ。
「脱出ルートは?」
ロウマは走りながらディレックスに聞く。
「宇宙港に脱出艇を用意してあります」
ゴリラにしては上出来だとロウマは思い、宇宙港まで走る。ハルド達は追跡を諦めたようだった。
ロウマとディレックスは何の邪魔もなく、宇宙港へ辿り着き、クランマイヤー王国から脱出した。案外と楽であった。
「で、ディレックス君、何か調査はしてあるだろうね」
脱出艇が安全圏までたどり着いた時、ロウマはディレックスに尋ねた。するとディレックスは写真の束をロウマに見せた。
写真に写っているのは、兵士の教練の場面や、MSの開発の場面である特にMSは完全な新型であった。
「なるほどなるほど……」
ロウマは写真を見ながら、ある考えに思い至った。
「それで大佐、クランマイヤー王国をいつ攻めるんですか?」
ロウマの考えが読めないディレックスは、何気なく尋ねたが、ロウマの返答はあっさりしたものだった。
「攻めないよ」
どうしてとディレックスが言いたかったが、ロウマはディレックスの言葉を全て無視することにしていた。
「まぁ俺には俺の絵図面があるってことで」
ロウマはそれしか言わなかった。しかし、ロウマの中にはしっかりとした未来の世界図が描かれていた。そして、その世界図を描くためにはクランマイヤー王国に働いてもらう必要があるのだった。
「まぁ、多少は頑張って俺の思い通りにしてもらわないとな」
ロウマは頭の中で思い浮かべる、戦いの未来とは全く違うノンビリとした調子で言うのだった。

 
 

「くそっ、やられた!」
アッシュは大失態を犯したと思った。よりによってロウマ・アンドーを逃がすとは。これではクランマイヤー王国が公国に反意を持っていることが露見し、公国に攻める口実を与えてしまう。
「まぁ、落ち着けって」
アッシュに対してハルドは冷静だった。ハルドはすぐに攻めてこないだろうという確信があるため余裕があった。
「ハルド、キミの落ち着きは分かるがな。こっちは、まだ準備不足なんだぞ」
ハルドの冷静さに影響されたのか、アッシュも髪をかきむしりながらではあるが冷静さを取り戻し、状況を整理してみる。
ロウマ・アンドーにクランマイヤー王国の場所が割れた。これはクランマイヤー王国が攻撃を受ける可能性が極限まで高まったことに他ならない。では公国はすぐに攻めてくるか、それはないとアッシュはハッキリと言える。
「アレクサンダリアからここまでは遠すぎるか……」
アッシュは1人呟く、クランマイヤー王国は辺境のコロニーであり、ここまで来るのにはかなりの時間を要する。それも大部隊の移動であれば、補給の都合もあるため、時間はかなりかかる。
さらに補給を円滑にするためには補給線を整える必要があるが、そのためにはクランマイヤー王国に辿り着くまでのコロニーを制圧し、補給の中継点として設備を確立させなければならない。
これらの手間を考えると、公国がクランマイヤー王国を攻めるまでには相当な日数がかかる。それに、その日数を浪費してまでクランマイヤー王国を落とす価値があると公国が考えるかも疑問だ。
どうしても希望的観測なってしまうが、アッシュは時間はまだあるし、場合によっては当分攻めてこないという考えを持っていた。

 

そして数日後、ニュースによって報道された中にクランマイヤー王国の情報はなかった。ニュースでは、ロウマ・アンドー大佐が海賊の捕虜になっていた聖クライン騎士団の騎士を1人助けたことが、大ニュースとして取り上げられていた。
助けられた騎士団員はディレックス、クランマイヤー王国ではゴドウという偽名を使っていた男だ。
「色々と筒抜けになったな」
アッシュは朝食を食べながらニュースを見ている。
「しかし、海賊関係は何もなし、肝心のディレックスは何も分からない様子ときたもんだ」
ハルドはリンゴにかぶりつきながらニュースを見ていた。ニュースではディレックスは長い間監禁されていたらしく海賊のアジトの場所は分からない、ロウマに関しても海賊船からディレックスを救出したためアジトが分からなかったと報道されている。
「いい面の皮だ」
ハルドは会見を行っているロウマの映像を見ながら言う。知っていることは全部隠して平気な顔をしていやがる。ムカつく奴だとハルドは腹が立った。
「実際、ロウマが騎士団に報告しているかだが……」
「俺はしてないと見るが、まぁなんともなぁ……」
ロウマ・アンドーのやることに関してはハルドもアッシュも想像がつかない部分がある。
「ま、考えてもしかたないし、適当に今日も防衛の準備。俺は新型MSが完成したらしいから慣らしついでにちょっと偵察」
そう言うとハルドは食べ終えたリンゴのごみをゴミ箱に投げ入れ、立ち上がる。
「ロウマが何かしら騎士団に報告していたら、クランマイヤー王国の周囲に何かあるか」
ま、そういうこと。というとハルドは立ち去って行った。アッシュはニュースを見ながら残りの朝食を平らげるのだった。

 
 

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