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GUNDAM EXSEED_B_30

Last-modified: 2015-04-28 (火) 20:35:23

ハルドとセインはとりあえずだが、偵察任務に出ることとなった。前日は結局、機体のテストだけで、偵察のことなど完全に忘れていたハルドのミスであり、それを帳消しにするための偵察である。
ハルドは久しぶりにネックスに乗り、セインはブレイズガンダムにゼピュロスブースターを装着した状態で宇宙に出ていた。
「偵察って何を偵察するんですか?」
セインからは状況を知らないものからすれば至極まっとうな質問がでた。ハルドはしょうがなく答える。
「ロウマを逃がしちまったから、アイツが余計なことを騎士団の連中に言ってれば、騎士団がクランマイヤー王国の周りで何かやってくる可能性があるから、それを見てくるってだけの話し」
そう説明すると、セインは納得した。ハルドはついでにセインに巡回ルートのマップを送り、その通りに巡回して偵察しとけと言って、二機のMSは分かれて行動した。
「しかし、偵察って言っても、特にすることがないような気が……」
セインは指定された巡回ルートの宙域を回りながら独り言をつぶやいていた。実際、指定されたルートには何もなくクライン公国の軍の気配など全く感じなかった。
「うーん、一緒に来なければ良かったかな」
セインは若干後悔していた。ハルドからは偵察任務と聞いていたので期待して来てみたが、拍子抜けである。こんなことなら、ジェイコブ達と遊んでいる方がよかったと後悔していた。
しかし、セインが後悔をしていた時、セインのすぐそばでは、あるトラブルが起きていた。だがセインはそれに気づかず。通り過ぎてしまいそうになったが、かろうじて気づいた。何故ならミサイルがブレイズガンダムに直撃したからである。
「わりぃ、ごめんな!」
そんな声が通信から聞こえると同時にブレイズガンダムに宇宙船が激突する。
「はぁっ!?」
セインのブレイズガンダムは宇宙船に轢かれて引っかかり、そのまま連れていかれる。
バリアのゲージが大きく減っていることからダメージは相当だったようだが、ブレイズガンダムは一応無傷であった。
「え、なにこれ!?」
セインは状況が全く分からなかったが、ブレイズガンダムの引っかかっている地点からはこの宇宙船が、どこかのMSに追われていることが分かった。
「あ、生きてた?わりぃね。ちょっと助けて」
セインは何が何やらという感じであったが、とりあえず追ってくるMSを観察してみた、識別は所属不明機と出ている。
ならば、やってもいいかもしれないが、いきなり衝突事故を起こすような相手を信用してもいいのかセインは疑問だった。
こういう時はハルドに聞くのが一番面倒が無いので、ハルドに連絡を取ってみた。するとハルドの機体からはパイロットは睡眠中ですので、また後でという電子音声が返って来た。
まぁ、そう言う人なのでしょうがない。取り敢えず。追ってくる方は攻撃をしているようだったので、それは良くないとセインは素朴な判断で引っかかった状態から機体を立て直すと追ってくる機体の相手をするために機体を動かす。

 
 

「お、サンキュー、良い人だね」
軽いなぁと思いながら、セインは敵となったMSを見る。どうやらゼクゥドのカスタム機のようだが、エースという気はしなかった。セインのブレイズガンダムは軽く狙いを付けてビームライフルを撃つと一機のゼクゥドの肩に直撃した。
すると意外なことに敵となった機体は、それだけで立ち去って行った。
「あれ、呆気ないな?」
セインは相手の動きが不思議だったが深く考えられるほど、セインの思考は戦闘用に出来ていないので、何となく逃げていったで済ませてしまった。
それよりも気になったのは自分を轢いた宇宙船であり、セインは事と次第を問いただしたかった。
「あ、ごめんね。俺、急いでっから」
いや、それは通らないとセインは思い、ブレイズガンダムのビームライフルを宇宙船に向けた。
「あ、やっぱり、急いでないや、ゆっくり行くよ」
急に言っていることが変わったぞ、この宇宙船の船長らしき男。声だけ聴くと若く感じるが実際は分からない。セインは怪しいような気がしてきた。
しかし、怪しい対象を見つけたとして、どうすれば良いのかセインは分からなかった。ハルドの流儀なら、とりあえず暴力であり、アッシュなら上手く話し合いをするだろう。だがセインは、そのどちらの方法を取れるほど性格や能力があるわけではなかった。
なので、とりあえず聞いてみることにしたのだった。
「えーと、急いでる理由と、追われてた?理由を教えてくれませんか」
我ながらノンビリとしているとセインは思ったが、こう聞く以外の方法が思いつかなかった。
「急いでるのは逃げてたから。追われてた理由は相手が怒ることをしたから。これでいい?」
これでいいのかと聞かれても尋ねたセインの方が分からなかった。これでいいのか?という疑問がセイン自身にもあった。
「あのさぁ、俺、追われてるから、逃げ込むところが欲しいんだけど、どっか良いところ知らない?」
宇宙船の男から尋ねられ、セインはそれなら分かるぞと思い、迷わず決断した。
「近くにクランマイヤー王国というコロニーがあるので、案内しますよ」
こうしてセインは見ず知らずの相手をクランマイヤー王国まで連れていくことになったのだった。

 

「……セイン君、きみは……うん、まぁいいけどね」
宇宙船が宇宙港に着くと同時にアッシュが大急ぎでやって来た。その顔色は極めて悪かった。アッシュはMSを降りてノンビリしているセインを見ると何か言いたそうだったが、途中でやめた。
アッシュに遅れ、姫とヴィクトリオが見知らぬ宇宙船が見物に来た。アッシュはそれをちょうど良いと思って、姫とヴィクトリオを自分の元に呼び、こう質問した。
「姫様とヴィクトリオは、知らない人を自分の家に連れてくるかい?」
すると姫とヴィクトリオは迷わず、すぐさま答える。
「連れてきません」
「連れてこなーい」
子ども2人の言うことは同じだった。そしてその答えを聞いたアッシュはセインを見るがセインは何のことだか、分からなかった。

 
 

「セイン君が、ハルドに殴られる理由が分かったよ」
アッシュは呆れてそう言うと宇宙船の方へと向かっていった。セインは結局、何が何だかわからなかった。

 

「いやー、どうもどうも、お騒がせして申し訳ありませんね、皆さん」
宇宙船からは陽気に1人の男が降りてきていた。男は30前後といったところか、派手な模様のシャツにサングラスを額にひっかけ、明らかに染めたであろう色合いの茶髪を後ろになでつけた髪型をしていた。
アッシュは宇宙船の乗降口につけられたタラップの下で腕を組みながら、男が降りてくるのを待つ。その後ろには姫とヴィクトリオがいる。
「いやー、どうもどうも、この国のお偉いさん?若いのにすごいですねぇ、いやはや自分はもう尊敬しちゃいます」
陽気な男はアッシュを見つけると急いでタラップを降り、アッシュに揉み手ですり寄る。アッシュはこういう手合いが苦手というわけではないが、めんどくささを感じていた。
「お名前と、ご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか?現状、あなたは身分不詳の不法入国者で不審者なんですがね」
そう言うと、陽気な男はアッとわざとらしく驚いて見せると。アッシュに名乗りを始める。
「自分はそうですねぇ、まぁ名前なんか無いも同然ですが、こう呼んでください。“ストーム”嵐を呼ぶ男と」
この男はふざけているなとアッシュは思った。とりあえず、あとでハルドに会わせておこうと思った。ハルドならキレて何発かなぐってくれるかもしれないとアッシュは考えたからだ。
「職業は、アレですジャンク屋ってやつ。あと何でも屋?何でもやる何でも屋じゃなくて、何でも売る何でも屋です。たとえばお菓子とかもありますよ」
そう言うと、ストームと名乗る男はポケットを探るとお菓子を取り出した、するとアッシュの後ろにいる姫とヴィクトリオが目を輝かせる。
「お近づきのしるしに、そこのお嬢さんとお坊ちゃんに」
ストームはしゃがみ、子どもの目線になると、お菓子を差し出してみせる」
すると、姫とヴィクトリオは喜んで、そのお菓子を貰って去って行った。知らない人から物を貰ってはいけないというのに、アッシュはあとであの子ども2人には何か言わなければと思った。
「イケてる男は子どもにもモテるってね」
ストームという男は相も変わらず陽気な態度を見せている。アッシュは別にこの男が嫌いというわけではないが、少しはっきりさせないといけないことがあると思った。
「この国にはどういった御用でいらっしゃったのかを伺ってないのですが」
アッシュも意地が悪く言っているわけではない。余計な揉め事を持ち込まれたくないから、こうやって聞いているのだ。
「来た理由って、そりゃ、あれですよ。まぁなんつーか、商売?色々、売りたいものもありますし。……まぁ誤魔化せないと思うんで言いますけど、仕事のトラブルで追われてたんで、逃げてきましたってのが正しいんですがね」
正直に言ってくれるのはありがたいとアッシュは思った。最初、誤魔化そうとしたのはいただけないが、それは仕方ないだろう。だが、これだけでは信用できない部分もある。まだ、この男がクライン公国の回し者であるという可能性も否定できないのだ。
そうアッシュが考えていた時だった。セインに遅れてハルドがようやく帰って来た。ハルドも騒ぎを駆けつけたらしく、アッシュとストームの元にやって来た時だった。
「あれ、ストームか?」
ハルドは男の姿を見たと同時にその名前を言ったのだった。

 
 

「ハルドの知り合いだったか、すまなかった。色々と取り調べみたいなことをして」
アッシュはハルドとストームが知り合いだと分かると、クライン公国の関係である危険は少ないと考えた。そしてハルドはストームとアッシュを誘い、人魚と海の男亭に飲みに出かけていた。
ハルドが言うには仲直りという理由だが、単純にハルドが昼間から酒を飲みたいだけだった。
アッシュも真面目だが、酒に関してはだらしない部分があり、飲みに行くとなると断れない男だった。
こうして、男3人、飲みに出かけたわけだが、なぜかセインも連れていくこととなり結局4人となって出かけることになったのだった。
「いやいや、こっちもアレな感じだったし、そっちが謝ることじゃないよ」
ストームという男はつくづく朗らかな男だった。成人組はビールをジョッキで頼み、クランマイヤー王国では夏の盛り、真昼間からビールをあおっていた。セインはというと机の隅で肩身が狭そうにコーラを飲んでいる。
「しかし、驚いたな。ハルドがこんなところにいるなんて、軍は辞めたのか?」
ストームがビールを飲みながら尋ねると、ハルドはつまみの唐揚げを食べながら答える。
「3年前に辞めた。つっても辞表とか出してないから、脱走兵扱い。アンタと同じだよ」
セインは横で聞きながら、ハルドが軍隊にいたと初めて知ったのだった。
「マジかぁ、大胆だなぁ、エルザはどうした。お前がいなくなるのなんて許さんだろ、あの女」
「俺がぶっ殺した。あの女、クライン公国に裏切りやがった」
Fuck!ストームが急に叫び、机を叩いた。
「あの女、よりによってクライン公国かよ。マジ許せねぇ」
どうやら身内話らしかったのでアッシュもセインも口を挟むことはせずに、自分の目の前の料理に手を付けていた。
「ストームはさぁ、前にクライン公国に捕まって、拷問受けてから、公国嫌いで頭もおかしくなっちまったの」
ハルドは平然とした顔でとんでもないことを言った。アッシュはそこまでの会話で理解し、気になったことを聞いてみた。
「ストームは地球連合軍だったということは分かったが、ハルドとのつながりが分からないな。ハルドは特殊部隊だったはずだろう?」
特殊部隊出身だったのか、その情報もセインは初めて聞いた。
「俺はアレ、特殊工作員時代に、ハルドと顔見知りだったってだけよ」
特殊工作員?アッシュはそれは初耳だった。ハルドもその特殊工作員だった時代があったということか?アッシュはハルドの方を見る。ハルドは空気を読んで答えた。
「俺は15歳から特殊部隊員をやりながら、特殊工作員もやってたっていう、兼業特殊工作員だったから」
特殊工作員だったのか、それもセインは初耳だったが、セインはそもそも特殊工作員が何をするか分からなかったので、聞いてみることにした。
「特殊工作員って何をするんですか」
「盗み、破壊、殺し、上からの命令があれば何でもやるのが、俺とハルドだったな。もっと綺麗な仕事をしてたやつもいるけど」
ストームが平然と答えた。そういうことを自分より年下のころからやっていたのか、とセインはハルドに対して畏敬の念を抱いた。
「まぁ、クソみたいな仕事だったよな、ストーム?」
「ああ、クソだった。実際に肥溜めの中を走ったこともあるしな」
壮絶な人生だなとアッシュは思ったが、一応食事もある場で肥溜めの話しは止めてほしかった。
ハルドとストームは昔話に花を咲かせていた。それはそれでいいものだとアッシュは思う。よくよく考えると自分には昔話をする相手さえいないのだから。

 
 

「ハルドは才能無い方だったから、大変だったよなぁ」
「言うなよストーム。今じゃ、俺の方が上だぞ」
そうだったそうだったとストームは豪快に笑って見せるが、ストームの話しの中でセインは聞き捨てならない部分があった。
「ハルドさんの才能がなかったって本当ですか!?」
セインは前のめりになってストームに尋ねる。すると答えを返したのはハルドだった。
「本当だよ。俺は才能には恵まれてはいないっていうか普通か。まぁそんなもんだった」
セインはそれが信じられなかった、今では天才としか思えないほどの強さをもっているというのに。
「才無き者には努力しか無し。死は恐れ、傷つくことは恐れず、自らの流した血と汗、そして敵の返り血によって極限まで磨きあげた。それが今の俺って感じ?」
「おお、かっこいいねぇ、ハルド!」
ストームが茶化すが、結局は努力だけで、そこまで登りつめたということかとセインは理解した。ならば自分も、セインは自分を磨き上げれば、このハルドという男と同等になれるのではという予感を得ていた。
そのセインをストームは一瞬だが冷めた目で見た。だがそれは、本当に一瞬であり、誰も気づかなかった。
「酒もいいんだけどさぁ、俺の所の商品も見てくんないかな、最近、きびしくてさぁ」
ストームは酒が進んできたころにハルドらにそう言う。そういえばジャンク屋であったことをアッシュは思い出していた。
「いいんじゃね、行こうぜ、アッシュ」
ハルドは少し酔っているのか顔が赤くなっていた。それを分析しているアッシュの顔も赤い。
「僕は、遠慮します。トレーニングがあるんで」
セインはそう言うと、さっさと消えてしまった。ハルドは付き合いの悪い奴だなぁと思ったが、気にしないことにした。
「……俺らなんか目指しても良いことないのにねぇ……」
ストームは去って行くセインの背を見て、ぼそりと言ったが、その声は誰の耳にも入ってなかった。
ハルドとアッシュはビールを瓶で買い、それを飲みながら、ストームのジャンク屋があるという宇宙船を目指した。途中、レビーとマクバレルに声をかけてみた。2人はハルドらの酒臭さに辟易としながらもジャンク屋には興味があるようだった。
そんなこんなでクランマイヤー王国の4人がお客として、ストームの宇宙船まで来た。ストームは宇宙船の貨物室部分を開ける。するとそこに有ったのは明らかにマズい品物の数々であった。
「小型核弾頭ミサイルに陽電子砲、Nジャマーキャンセラー、その他いろいろ禁制品……」
アッシュは一瞬で酔いが醒めた、そりゃこんなものを積んでいたら誰からでも狙われるだろうと、アッシュは冷静になった頭で結論を出した。
「はは、相変わらず、やべぇな、ストーム」
「陽電子砲、欲しいな」
「私は、アルミューレ・リュミエールのコア部品が欲しいですね」
レビーとマクバレルは楽しそうに危険な品々の数々を見ているし、ハルドはハルドで、ストームと何故かハイタッチをしている。
「ジャンク屋が廃れるわけだ……」
アッシュは昔習ったことを思い出す、C.E.152現在、ジャンク屋はほとんど犯罪者として扱われている。元々、戦場跡で兵器を拾って、リサイクルする民間業者というだけで倫理的にどうかという問題があったが、近年ではそれがより問題視されているのだ。

 
 

ジャンク屋の組合も力を失い、統制が取れなくなったジャンク屋がそれぞれ好き勝手やっているのが現状であり、その結果、過激なことをするものも増え、ジャンク屋は強盗や窃盗としかおもえないような行為にも及び、犯罪者まがいの真似までするようになっている。
その結果が犯罪者扱いだが、このストームという男を考えるとそれも仕方ないかとアッシュは思った。
「とりあえず、僕は正気に戻ったわけだが、これはヤバくないか?」
アッシュがそう言うとハルドが言葉を返す。
「ストームがヤバくなかったことなんてないぞ。こいつは平和な国に戦いを持ち込むのが仕事の男だったからな」
ああ、それで嵐を呼ぶ男か……アッシュは納得したが、納得している場合ではないということを思い出す。
「ほとんどテロリストじゃないか!」
「ほとんどじゃねぇよ、完全にテロリストだ」
ハルドが冷静に返した瞬間だった。コロニー内に警報が鳴り響く、そして宇宙港のゲートが外側から破壊された。
ハルド達も宇宙港にいるわけだから、影響がないわけがない。宇宙港のゲートが破壊された跡にはしっかりと、漆黒の宇宙が見えている。つまりは空気が一気に外へ流れ出すわけだった。
「ああ、俺のお宝……!」
ストームのジャンク品は全て宇宙へと放り出されていった。そして、ハルド達もそうなりそうだった。ハルドは適当な場所に捕まりながら宇宙に放り出されないように努力していた。そして叫ぶ。
「ストーム!お前が来るといつもこうだ!」
ハルドは先ほどまでの親密さはどこへ行ったのか、ストームへの怒りを爆発させている。
「皆さん大変ですね」
レビーは車椅子に座っているわけだが、一番余裕があった。レビーの車椅子はこういう状況も想定した造りになっているようで、車いすからアンカーが撃ちだされ、椅子を固定したうえでレビーの身体はベルトで車椅子に固定されていた。
マクバレルはレビーの車椅子に命綱をつけて余裕の体勢である。アッシュもかろうじて捕まる場所があったので宇宙に放り出されずにすんでいる。
「少しの辛抱だ。このコロニーは穴が開いたらその部分を塞ぐ、瞬間硬化剤が撒かれる」
アッシュは一応、全員に伝えた。そして、その言葉を言った直後、宇宙港に空いた穴から、何かがコロニー内に侵入してきて、ハルド達の横を通り過ぎていく。
「ハルド!何が入った!?」
「MS!数はわかんね!」
アッシュもMSだとは分かった。つまりはこのコロニーが攻められたわけだ。アッシュは飛ばされそうになりながらも懐から情報端末を取り出し、コロニーに警報を出す。
「侵入者だ!戦闘経験のある者はMSに搭乗し、侵入者の迎撃。民間人はシェルターに急げ!」
アッシュは情報端末から各所に指令を出す。だが、その指示に熱中するあまり、ウッカリと掴まっていた物から手を離してしまった。
「あ」
とりあえず、クランマイヤー王国所属の3人はアッシュが死んだと思った。
ハルドは借りていた金を返さなくて済むからラッキーだと思い、レビーは量産機の開発の許可をもらうのが面倒だったから、いなくなると楽になるかなぁと考え、マクバレルは特に何も思わなかった。
アッシュは自分が宇宙の方へと向かって吸い込まれるのを感じるのと同時に、不思議なことにゲス3人の考えを感じることができた。その瞬間、アッシュの脳が覚醒する。

 
 

「ふっっざけるなぁっ!」
アッシュは直感でつかめる部分を把握し、そこに超人的な反射神経で手を伸ばし、掴まり、宇宙に放り出されることを避ける。
アッシュが久しぶりにSEEDの力を使った瞬間だった。その直後、瞬間硬化剤が宇宙港に空いた穴に撒かれ、穴は完全に塞がれ、酸素漏れもなくなる。これでハルド達は宇宙へと放り出されることが無くなったわけで、状況も元に戻る。
そして身の安全が確保されたら、ハルド達がすることは侵入者の撃退だった。

 

「くそ、侵入だって!?」
セインは慌ててノーマルスーツに着替えていた。ジェイコブたちは既に着替え終わって出撃している。
クランマイヤー王国が攻められることはあると聞いていた、実際にこんな場面に遭遇することをセインは想定していなかった。急いで機体に乗り込むが焦りが判断を遅らせる。
「ええと、コロニー内でビームライフルは厳禁だから、マシンガンか?」
セインは曖昧な判断でMS用のマシンガンを手にMSがいるという地点へと出発する。
セインはブレイズガンダムを飛行させながら、機体を向かわせるが、その最中にもメインカメラのモニターで敵の位置を確認する。
「……戦場には……なってないな!」
セインはほっと胸を撫で下ろす、この平和で美しいクランマイヤー王国が戦場になるなど耐えられないからだ。
セインのブレイズガンダムはゼピュロスブースターを最大加速にし、戦闘が行われている地点へと向かった。
「戦闘地点は、くそ、牛飼いさんの家か」
たまに牛乳を分けてくれる親切な農家だ。ここで戦闘を行いたくなかったがジェイコブたちは戦闘を始めている。
「どうなってるんだ、ジェイコブ!?」
「しらねぇよ!こいつらストームの積み荷と、俺らのMSを寄越せって!」
なんだそれは、セインも敵の姿を確認するがクライン公国の量産型MSであるゼクゥドが6機ほどであった。
「ストームを知らないって言ったら、暴れ出したんだ。それでMSを寄越せって大騒ぎで」
ペテロが答えマリアが続く。
「でも、こいつらたいした腕じゃないよ。私たちでも被害を出さずに二機をはやれる」
そうかそれならと、セインは少しだが安心した。その時だった。
「……貴公は勇者か……」
暗い声がセインの通信を通じてセインの耳元に届いた。
「……私は……勇者との……死闘を望む」
なんだ!?セインは異様な気配を感じて機体を気配の方に向けると、そこにはカスタマイズが施されたゼクゥドがいた。そのゼクゥドは華麗な装飾が施されているが、機体から発せられている気配は重く、苦しかった。
「勇者ではないけれど、戦えるぞ!」
セインは重い声の主に、そう言い返した。すると声の主は少し考える間をおいて、こう言った。
「では……私を……殺して……勇者に……なれ!」
その声が聞こえた瞬間、目の前のゼクゥドがセインの視界から消えた。
え?と、セインがなった瞬間には、そのゼクゥドはセインのブレイズガンダムの前にいて、見たこともない槍のような長柄の武器を振り上げていた。
「速すぎるっ!?」
セインは咄嗟にシールドでガードしたがブレイズガンダムは大きく後ずさりする。ゼクゥドのカスタム機である以上、パワーはそこまで怖いものでは無かった。しかし、動きが速すぎるとセインは思った。

 
 

セインは近接戦闘は危険と思い、マシンガンを構えるが、その瞬間、敵のカスタマイズされたゼクゥドが投げた槍に、マシンガンが貫かれた。
「……遠距離戦は……無粋……」
重苦しい声がセインに届く、遠距離戦はしたくないってことかとセインは考えたが、それは声の主の考えとは違ったものであった。
「……グリューネルト……槍」
重苦しい声は通信で誰かを呼んだ。すると、どこからか二機のゼクゥドが現れ、そのうちの槍を大量に背負ったゼクゥドが背負ったうちの一本をカスタマイズされたゼクゥドに渡した。
「……さぁ……続きだ……」
再び、カスタマイズされたゼクゥドが動く、先ほどの一回で何とか目は慣れたのでセインは対応してシールドで防御しながら、ビームサーベルを抜き放った。
だが、その動きに対応し、ゼクゥドのカスタマイズ機は接近し、距離を詰め、左手に持った大型の盾で、ブレイズガンダムに体当たりする。
だがパワー負けはしない。ブレイズガンダムはゼピュロスブースターを使い、倒されないように踏ん張った。以前の二機のザイランとの戦いで倒されたら、終わりだと理解していたからである。だが、敵は違う動きを取った。
押し切れないなら引くだけ、カスタマイズされたゼクゥドは急にバックステップで後退した。そのため、ふんばっていたブレイズガンダムは一機だけで勢いを出している状態になり、前につんのめった。
そして、その瞬間、カスタマイズされたゼクゥドが槍のような武器を高く上げ、ブレイズガンダムの頭部に振り下ろす。
セインはそれを回避することは出来ず、バリアに頼るしかなかった。振り下ろされた武器はブレイズガンダムの頭部に直撃し、バリアのゲージを大きく減らした。

 

「ハルド、おいアレ、あの機体だ!」
アッシュは急いで現場へ向かう途中、ハルドに指さしでカスタマイズされたゼクゥドを示す。
「ゼクゥド・クルセイダー?」
ハルドは機体の名前を呟く。それは聖クライン騎士団の隊長クラスのパイロットにのみ渡される機体。
だが、今時、そんな機体に乗っている奴など聖クライン騎士団にいないはずとハルドは考えた。聖クライン騎士団は最新鋭機を常に貰っているのだから、今更ゼクゥドに乗っている人間などいないはずだと考えた。
「ハルド、あの機体の周りの二機を見ろ。きみも戦ったと聞いたぞ」
アッシュに言われ、ハルドはゼクゥド・クルセイダーの周りを動く二機のゼクゥドに目をやった。その内片方は右肩に大型のシールド、そして背中に大量の槍を背負っている。そしてもう片方は左肩に大型のシールドで背中に大量の対艦刀だ。
ハルドはこの組み合わせの三機を知っていた。
「あの、騎士野郎か!」

 

頭部に槍の直撃を受けた直後、それ以上の追い討ちを、このゼクゥドはしてこなかった。舐めているのかとセインは思うが、それにしては攻撃には本気さを感じる。
「セイン、こっちは終わった。そっちに――うわっ」
ジェイコブのフレイドが背中に槍を背負ったゼクゥドに動きを阻まれる。
「何やってんの、兄さん!私がセインのフォロー――ああっ!」
マリアのフレイドが背中に対艦刀を背負ったゼクゥドに動きを阻まれる。
「たぶんだけど、そのパイロットさんは一対一がしたいんじゃないかな。それで部下に邪魔させてると思うよ」
ペテロのフレイドはノンビリと観戦といった体だった。この中で一番腕が立つ癖にとセインは思ったが、そんなことを考えても仕方ない。
セインはブレイズガンダムをちゃんと立たせ、ビームサーベルを構える。すると、カスタマイズされたゼクゥドは動き出す。
こっち待ちなのか?セインは敵の意図が良く分からなかったが、何とか槍をシールドで防ぐ。するとシールドでブレイズガンダムが思い切り殴られた。
殴りもありなのか!?セインは敵のパターンをこれで読んだつもりになったが、それは甘かった、シールドによる打撃でブレイズガンダムが後ずさりをすると稲妻のような速さで突きが放たれた。

 
 

「速っ!」
思わずセインがそう言ってしまうほどの速さの一撃である。当然パイロットがその速度に驚愕しているのだから、ブレイズガンダムには避けようがなく、その槍の一撃を食らう。
「ちくしょう!」
セインは威勢よく叫ぶとシールドを捨てると、ブレイズガンダムにビームサーベルの二刀流をさせる。とくに考えはなかったが、シールドがあっても相手の攻撃の起点になるだけなので、セインはシールドを捨てたのだった。
「来い!」
セインが叫ばなくても、敵は動いていた。槍による頭部を狙った薙ぎ払い、ブレイズガンダムはそれを避けずに片手のビームサーベルで受け止め、反撃にもう一方の手に持ったビームサーベルで突きを放つ。
しかし、それはシールドで受け流された。そして、その直後に槍が振り下ろされる。セインのブレイズガンダムはかろうじて反応し、槍の振り下ろしをバックステップで回避した。だがそれは悪手であった。振り下ろされた槍の軌道は途中で止まり、突きへと変化した。
衝撃がブレイズガンダムを襲う、槍の突きが直撃したことによるものである。
セインは敵が想像を絶するほどに強いことを理解した。機体性能の差を考えれば、あのザイラン二機のコンビの1人より上のような気がしていた。
どうやって相手をする?セインがそう考え、機体を立て直した瞬間に敵が襲い掛かってくる、相も変わらず速い挙動である。
初手はシールドによる打撃、セインのブレイズガンダムはそれを防御する手段が無いので、バックステップで回避する。すると直後に槍による突きが飛んでくる。
セインはビームサーベルでそれを何とか反らし、突きの直撃を免れるが、相手はその直後にはシールドを前にしての体当たりに及んでいた。
これも避けようがなく、セインのブレイズガンダムは体当たりの直撃を受け、地面に倒される。セインは急ぎ機体を立て直そうとしたが、その前に敵の槍が突きつけられていた。
「……機体のシステムか……命を何度か拾っていることを……忘れるな」
そう言うと、カスタマイズされたゼクゥドは槍を引いて、背を向ける。
セインのブレイズガンダムは立ち上がり、背を向けた相手に向かって、ビームサーベルを両手に持ち、突っ込んでいく。
だが、相手は一顧だにせず、無造作に槍を振るって、セインのブレイズガンダムを弾き飛ばすのだった。
「……相手にならん……」
そう言って、カスタマイズされたゼクゥドが立ち去ろうとした時であった。一機のフレイドがカスタマイズされたゼクゥドの前に立ちふさがった。
「じゃあ、俺の相手をしてもらおうか――?」
通信から聞こえてきた声はハルドの物であった。
「イオニス・レーレ・ヴィリアス!」

 
 

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