Top > GUNDAM EXSEED_B_33
HTML convert time to 0.045 sec.


GUNDAM EXSEED_B_33

Last-modified: 2015-06-26 (金) 13:52:48

さて、第一陣の損耗は20%とというところかな、ロウマは降下ポッドの被害を予想してみた。
「降下ポッド損耗率は20%作戦継続に問題はありません」
「ならば、よし」
リオネル准将は鷹揚とした態度で報告に返事をする。
ムカつくなぁとロウマは思った。初めて会った時から貴族らしさがあり、鼻持ちならない男だったが、准将になって、態度が更に偉そうになったと思った。家柄だけの無能の癖にとロウマは思う
家柄、そう家柄だ家柄さえあれば、自分も今は准将に。ロウマは苛立ちが抑えきれなくなりそうだった。なので、リオネルが失墜するところを考え、溜飲を下げることにした。
どうせ作戦は失敗する。リオネルは簡単にナイロビを制圧できると考えているが、第一陣の降下ポッド隊の損耗率が20%の時点で長期戦を覚悟しなければならないのだ。
リオネルは補給も降下ポッドで行うと考えているが、奇襲で20%の降下ポッドが撃墜される。相手の態勢が整えば、降下ポッドなど50%が地上に辿り着けるかだ。
50%の補給でどこまで戦えるだろうねぇ、リオネル君。ロウマは内心でほくそ笑んでいた。ロウマは北アフリカと西アフリカを手中に収めているので、陸路での補給線を確保することも容易だったが、リオネルのためにそれを使おうとは思わなかった。
それにロウマは虎の子のガルム機兵隊を温存している。しんがりを役目しているが、きちんと働いてくれるだろう。
ロウマは撤退戦まで、含めて、戦場の流れを予測しきっていた。

 

「くそ、空からか」
セインのブレイズガンダムは上空にライフルを向け、ひたすらに落ちてくるクライン公国のMSを落としていた。相手の命を気遣う余裕などなかった。その時だった。
(幸福への道は近いですよ)
前に聞こえた訳の分からない声が、セインの脳内に響く。
「くそ、気持ち悪いな」
セインは呟きながら、上の敵に向かってひたすらビームライフルを連射する。
「こちらはアッシュだ。姫は無事。そちらは?」
アッシュから通信が届いてクランマイヤー王国の一同はホッとした。
「姫はシェルターに、僕は戦場に出る。悪いがジェイコブ、キミの機体に同乗させてくれ」
「あ、それなら、私が!」
マリアがジェイコブを押しのけて志願した。誰もその理由は分からなかったが、大差は無いのでアッシュは了承した。
「じゃあ、議場前までいきますね」
マリアは不謹慎であったが、小躍りしたかった。憧れのアッシュと同乗である。
「わっけわかんね」
ジェイコブは妹の行動の意図が読めないながらも、降下してくる敵をひたすらにビームライフルで撃ちぬいていた。
地球への降下任務際してフレイドは大幅なスペックアップが図られていた。ビームライフルの装備にシールドと手持ちのビームサーベルの追加、そしてスラスターユニットに1G環境でも安定した飛行を可能とする翼が取り付けられていた。
「僕もわかんないなぁ」
ペテロ機はシールドを装備せず、ビームライフルを二丁持ちで、降りてくる敵を撃ち落としていた。
そんな中、セインのブレイズガンダムは降下が完了した、MSを前にしていた。数は五機だがセインは怖いとも思わなかった。

 
 

「ザイランが五機か……まぁ、いいか」
そうセインが言った瞬間、ブレイズガンダムは動き、一機目のザイランのコックピットをビームライフルで貫く。
すると二機目が自分に注意をひきつけようと動き出してきたので、セインはブレイズガンダムのシールドをマウントしている左腕で、ビームサーベルを抜き放つと、二機目の動きに合わせてコックピットを貫いた。
(幸福の道をあなたは歩んでいます)
セインは頭の中に聞こえる声をうるさいと思わなくなっていた、この声が聞こえると考えがまとまり、判断力が高まるように感じていた。
(幸福の道は神の愛への道)
セインは三機目をビームライフルのバスターモードで撃った。敵のザイランはシールドでそれを防ぐが高出力の一撃は完全に防げず、シールドが溶け出し、相手はシールドを捨てた。その瞬間にブレイズガンダム接近し、ビームサーベルでコックピットを斜めに斬り裂いた。
(神の愛の道をあなたは歩んでいます)
セインは不思議と心が穏やかだった。戦っている最中なのにも関わらず、心は平常時、いやそれ以上に落ち着いていた。
四機目と五機目がブレイズガンダムから逃げるように、ビームライフルを撃ちながら後退していく。
「下手な射撃……」
セインは昔の自分を見ているようだった。当たるわけがないと思いながら、ブレイズガンダムのビームライフルをチャージモードで発射し、四機目と五機目をまとめて消し飛ばす。
(しかし、その道には多くの障害があります。あなたはそれを打ち破り、あなたの価値を見せるのです)
「分かったよ……」
セインは無意識に頭に響く声にこたえていた。そして、ブレイズガンダムはクランマイヤー王国の一団から離れ、独立して動き出すのだった。

 

セインはとにかく思考するようになっていた。学校の勉強とは異なる頭の使い方や思考法だが、それが戦場で一番役立つと知った。
セインは何人かのエースパイロットと本気で模擬戦をしてもらった。アッシュは徹底的に相手の挙動を見切るタイプであり、イオニスは相手の挙動を無理矢理にずらし、自分のペースを無理矢理に獲得するタイプだった。
ストームとも戦ったが、想像を絶する腕前だった。セインの感覚ではハルドよりも強いと一瞬、思ってそう言ったが、ストームは笑って違うと言った。ストームの戦い方は、とにかく遅かった。
挙動の速さなどはなく、ゆっくりと攻撃を避け、確実に相手に当てるというものだが、ゆっくり動いているはずのにセインの感覚では、恐ろしく挙動が迅速にも感じた。
ストーム曰く、基本的に読み合いで勝っているから、軽く無理をせずに動ける。とストームは言った。ストーム曰く、MSを無理に動かすと絶対に遅くなるから、MSの動きたいように動かす。という話しだった。
では、自分の動かしたいようにしたいときはどうすればいいのかとストームに聞いたら、MSと上手く話し合って妥協点を見つけろとのことだった。結婚もこれが大事と付け加えられた。
最後に本気のハルドと戦ったが、セインは訳が分からなかった。とにかく強いということだけは分かったが、その強さの理由が全く分からなかったのでセインが聞くと。
「100回以上戦場に出て、その度に目についたエースは殺して、それで、アッシュ、イオニス、ストーム、ロウマ、そして俺を殺せば。俺と同じくらいには強くなれるよ」
答えも訳が分からなかったのでセインは、ハルドの言うことは気にしないことにした。
ただ、分かったことは頭を使って戦うということだった。
セインのブレイズガンガンダムは静かに移動していた。敵はすぐ近くにいる。降下ポッドで着陸したばかりの部隊だ。まだ散開せず、打ち合わせらしきことをやっている。
(障害を打ち払うのです)
「はい」
セインはその言葉の通り、密集しているザイランの小隊めがけてブレイズガンダムのチャージショットを撃った。セインは視界の端で二機ほど逃れているのを見た。

 
 

「逃げる敵は……そのままか、反撃か」
セインは考えることにした。急に襲われて、隊長らしき機体が消し炭になって黙って逃げる訳はないと思った。
(鉄槌を振るうのです)
「はい」
セインのブレイズガンダムはビームライフルを腰にマウント、ビームサーベルを右手に持ち突撃する。被弾に関してはシールドとバリアでカバーする。敵機の驚愕と恐れが伝わってくるような気がした。
(愚かな者は、正しきものを恐れるのです)
「はい」
セインのブレイズガンダムは一瞬で二機のザイランに接近し、ほぼ一瞬の動きで二機のコックピットをビームサーベルで貫いた。
(神の愛の道は赤く色づいていなければなりません)
「はい」
セインは、少し訳が分からなくなってきた。この声は自分の頭からではなく天から聞こえてくるのではないか、つまりは天の声なのではないかと思えてきた。
しかし、理性的に考えると、そんな訳はないとセインは思う。
(あなたはあなたに与えられた神の愛の道を歩みなさい)
「……はい」
声が聞こえてくると、どうでも良くなってくる。セインはハッキリとしなくなってきた頭で、とにかく敵を探してブレイズガンダムを動かすのだった。

 

「降下ポッドは?」
アッシュは無事にキャリヴァーへと搭乗を終えて、戦線に加わっていた。貴重な飛行戦力としても、アッシュのキャリヴァー極めて頼りにされていたのだった。
「新しく何機かが」
言われて、アッシュのキャリヴァー飛行形態に変形し、上空へ向かう。こういう戦い方はアッシュの好みではなかったが、しかたなかった、降下ポッドはことごとくアッシュのキャリヴァーの手で撃ち落とされる。
中にはカンの良い者もいて、途中で降下ポッドを切り離し、中のMSを降下させるが、アッシュが、空中戦用に調整されていないザイランを見逃すわけが無かった。
「運が無かったと思ってくれ」
アッシュはそれしか言う言葉が無い。訳が分からずに流れ流され気づいたら一国の摂政になったような男に落とされるのだ。運が悪いとしか言えない。
アッシュのキャリヴァーがミサイルを発射し、空中で降下姿勢に入っていたザイランを撃墜する。
「公国も考えが甘いな。降下戦力だけで、なんとかできると思っているのか?」
現状、ナイロビには地球連合の各国から集められた兵士が警備に当たっている、練度も装備も優れた部隊だ。降下ポッドのみならず、陸上からの侵攻という二面作戦を考えても良いのではとアッシュは考えた。

 

ロウマ・アンドーはウキウキとリオネル准将が焦り出すところを眺めていた。陸上との二面作戦を展開する準備など簡単だったが、ロウマはリオネルに進言も何もしなかった。それどころか現状のアフリカ情勢すら教えていない。
さっさと考えをまとめないと夜になっちゃうよ、リオネル君。ロウマはリオネルと戦況を見て、予想する。
夜になるとこちら側が攻勢に出ることは難しい、それに兵士の休息も必要だ。丸一日MSに乗って戦っていられる人間は少ない。降下部隊は、最低でも拠点設営をして兵を休息させなければならないわけだが、拠点設営の工兵部隊の降下は上手く行っていない。
これはリオネルが実戦を知らないためだとロウマは思った。戦闘は思い通りに終わらない。リオネルの考えでは、降下部隊で奇襲をかけて、それで簡単に制圧と考えたため拠点の設営など後で良いという考えがあったのだろう。
もしくは地球連合の拠点を使えばいいという考えだが、これも甘い。敵の拠点を利用するのは拠点を設営するより厳しい、極めて優秀な歩兵が大量に必要であり、それらを投入して、施設制圧をするのは言うよりもはるかに困難なことなのだ。
考えが甘いなぁ、リオネル君。まぁ考えを甘くさせたのは俺だけど、とロウマは思う。参謀などからの進言書やら命令書はロウマが改竄してリオネルに渡していた。
当初の計画ではもう少し、マトモな戦場になるはずだったが、まぁ元々リオネル君も人の話し聞くほうじゃないし、とロウマは思う。
ロウマなら、初手が失敗した段階で撤退に移る。降下作戦は中止で、また今度。
そもそもがリオネルが焦りすぎの作戦だ。地球連合の代表者が揃うからと一網打尽にするなど、考えが甘いとロウマは思う。
代表の護衛などを考えれば一線級の部隊と装備が揃っており、ロウマとてまともにはやりたくない布陣が築かれている。それに気づかないリオネルはつくづく無能だとロウマは思ったのだった。

 
 

「はああっ!」
セインはブレイズガンダムを操り、ひたすらに戦っていた。シールドはいつの間にか紛失しており、ブレイズガンダム今は、両手にビームサーベルを持って戦っていた。
両手のサーベルが閃き、一本はザイランのコックピットを貫き、一本はゼクゥドの右腕を切り落としていた。
(命を奪うことはあなたの幸福につながります)
頭の声はまだ続いているがセインはもう気にならなくなっていたので、無視した。それよりも戦いだ。もっと戦って戦って戦って、自分は――セインのブレイズガンダムがバックパックのミサイルランチャーから後方に向けてミサイルを発射した。
セインは、敵の降下ポッドがこの近くに降りてきたのを見たので、戦闘が行われているここに来るだろうと思って、取り敢えずの牽制用にミサイルをばら撒いたのだった。
目の前の右腕を失ったゼクゥドが投降の通信を届けるがセインは聞かなかった。無視したのだ。
「逃げんなよ、逃げんなよ!」
ブレイズガンダムのビームサーベルがゼクゥドのコックピットを切り裂く。
「そうやって、どいつも、こいつも、ぼくぉ!」
ブレイズガンダムのバックパックのビームキャノンが後方に向けられ、発射される。爆発からセインは、一機は仕留めたと思った。
爆煙の中から反撃のビームが来るが、セインは容易く回避した。ハルドさんもこんな感じなのかな?不意にハルドはそう思いながら、ビームが飛んできた先に向けて、ゼピュロスブースターに内蔵されているミサイルとビームキャノンを発射した。
爆発が二つ起きた、どうやら敵は二機いたようだった。
「うん、意外だな」
何故か分からないが、セインはナイロビが、この戦場が、戦いが好きになり始めていた。
(喜びは道を歩む糧となります、あなたは喜びを大いに感じるのです)
「はい」
セインは、口元が緩んでいくのを感じた。ああ、楽しいや。セインは心からそう思った。

 

「お腹が空いたな……」
セインは戦いながら、なんとなくそんなことを思った。すでに夜になっており、辺りは暗いはずだが、炎やらビームの光などで昼のように明るい。
とりあえずセインは目の前にいたゼクゥドをビームライフル撃ちぬき、パイロットも殺害した。
「……拠点に行けば、ご飯を貰えるのかな」
セインは適当に機体内の地図情報を弄ると、地図情報には青で自軍の拠点が映っていた。セインはとりあえず一番近い、拠点を目指そうと思った。
最短距離で行こう。セインはそう考えた。最短距離には敵の部隊がいくつかある。こっちの道の方がおもしろそうだとセインは思ったのだ。
セインのブレイズガンダムがバックパックのスラスターを全開にし、移動しようとしたがコックピット内にアラートがなる。どうやら、推進剤が切れかかっているらしい、だが拠点に行けば全て解決だと思った。
セインはビームライフルのモードをAに設定し、拠点のそばにいる敵部隊に後ろから静かに、近づくと、とりあえず指揮官機を中心にまんべんなく、高速連射されるビームをばら撒いた。
ダメージ自体は大きくないが敵の怯えが感じたのと同時にセインはバックパックのミサイルとビームキャノンを斉射し、それをひたすらに続けた。その間も、ビームライフルは高速連射している。
セインの視界の中で敵の指揮官機が、崩れ落ちるのが見え、その傍にいた両機も続々と倒れていく。足元の方を見ると、歩兵もいたので、セインはブレイズガンダムの頭部のバルカンで歩兵を薙ぎ払う。
セインのブレイズガンダムはあっという間に、拠点を襲撃して部隊を壊滅させたのだった。
セインのブレイズガンダムはゆっくりと自軍の拠点に入る。すると、誘導係いたので、その軍人の指示に従って、ブレイズガンダムを駐機させた。

 
 

セインが機体から降りると、すぐに整備兵らしき人間がやってきて、セインに尋ねる。
「必要なモンは?」
言われて、セインは一瞬悩んだが、必要なものは簡単に思い出せた。
「推進剤を満タンに、あとシールドの余りがあれば下さい。国際規格のビームライフル用エネルギーパックも三つほどあれば」
「あいよ、メシが食いたきゃ、あっち、少し寝たかったら、テントの中30分で起こすから安眠はできねーよ。あと元の部隊と連絡が取れなくて困ってるなら通信所な」
セインは眠くも無かったし、仲間と通信を取ろうという気分にもなれなかったので、あっちと言われる方に向かった。
そこは、仮設の食堂である。セインは取り敢えずカレーを食べた。美味いような気がした。食事をしたら、また戦闘がしたくなってきて、セインはさっきの整備士の元に向かった。
「終わりましたか?」
「機体自体には、かすり傷しかないし、楽なもんよ。それで、もう出撃かい?」
セインは尋ねられ、ニッコリと答えた。
「敵を殺してる方が、気持ちが良いんです」
セインはそれだけ言うと、整備兵の方を見ずに機体に乗り込んだ。さて、戦闘再開である。

 

「まぁずぅいぃんーじゃない。リオネル君?兵士はキミの玩具じゃないんだよ。こんな作戦で、こんなに被害出したら上もオカンムリだよ」
ロウマはいい加減退屈になってきたので、リオネルに話しかけてみた。するとリオネル、取り乱した様子で両腕を振り回す。
はは、おもしれ、とロウマは思ったが。流石にリオネルがアホに過ぎるにしても、これ以上の損害は、作戦だけではない、クライン公国全体を考えても、良くはない。まぁ悪いという訳でもないとロウマは考えたが。
「もういい、エクシーダスを使う」
リオネルが言った言葉をロウマは聞き逃さなかった。ついに使っちゃうかーと、そう思いながらも、もっと早く使っとけば、こんな面倒な戦況にならなかったのだが、とロウマは思う。
「エクシーダス、降下!」
リオネルは気合が入っているとロウマは思ったが、今更、無名の実戦経験なしのEXSEEDが乗ったエクシーダスを出してもなぁ、とロウマは結局負けで終わるだろうと思った。
ロウマは司令部の窓からサソリに似た形のMSが降りていくの眺めながら、もう終わりだろと思うのだった。

 

「何か来る?」
真っ先に気づいたのはアッシュであった。宇宙から降下ポッドとは違った大質量の物体が降下してくるのを感知した。
アッシュは機体のメインカメラを最大望遠にすると、そこに映ったのは大型のMAだった。
「総員、大型MAが降下してくるぞ、対空戦闘用意!地上に降ろすな!」
気づくとアッシュは地球連合軍MS部隊の総隊長のような役割になっていた。
「なんか、凄く大きくない?」
マリアも機体のカメラで確認をした。マリア自身MAに詳しいわけではないが、見たことのない機体ではあるが、形はイメージしやすかった。サソリである。サソリの形をしたMAが降りてきていた。
地球連合軍の機体がひたすらに対空砲火するが、サソリ型のMAにはビクともしない様子だった。
「ビームシールドを張っている。耐ビームコーティング弾頭を持っている機体は、とにかくそれを使え!」
アッシュが全軍に命令を下す。気づくと、ほぼ全員がアッシュの命令に従っているという状況だった。

 
 

アッシュが命令を下すと同時に耐ビームコーティング弾頭のライフルが絶え間なく、発射されるが、それでも無傷であった。
「フェイズシフト装甲か!厄介な物を、僕が航空戦闘で注意を引く、その間に、地上の全戦闘部隊はMA対策を頼む」
アッシュはそれだけ言うと。通信を切った。そして。キャリヴァーを可変させ、降下してくるサソリ型のMAに向かわせたが、アッシュはその全容を見て声も出なくなる。
「MSなのか……?」
サソリ型のMAには、MSの上半身が付けられていた。大昔の記録で見たMAゲルズゲーにシルエットは似ているが、大きさはけた違いだ。
アッシュが驚く中、サソリ型のMAは航空戦闘をやらかそうというのか、全身のスラスターを吹かし、アッシュのキャリヴァーの方に機体を向ける。
「これで時間稼ぎは出来るが」
アッシュは、なるべく早く倒したい相手だと思った。
MS部の機体はザイランだろうが、それがビームライフルを連射して撃ってくる。連射されたビームはアッシュの嫌な軌道だった。とにかく避けにくいところにビームが飛んでくるのだ。そうしている内に、サソリのMAの上面ハッチが開きミサイルが大量に発射される。
本来は一機のMSに撃つ量ではない。だが、この敵はそういう判断はしない。というかできない敵なのかとアッシュは思いながら、自分の力の全開を解放する。
SEEDの力である。SEEDの力により、緩慢に見える世界の中からミサイルの雨の突破口を見つけ出し、アッシュのキャリヴァーはミサイルの雨から抜け出した。
「こちら、アッシュ。スマンが仕留めきれない。敵MAはSEED持ちの可能性あり、SEED保有者はスマンがMAの対応を頼む」
セインはアッシュの全周波通信をぼんやりと聞いていた。イマイチ頭が働かなくなっている気がし、アッシュの言っていることを理解するのは困難だったが、MSを破壊し、パイロットを殺すことには問題はなかった。
(戦いは素晴らしいものです)
「はい」
セインは頭の中に響く声の言うことを聞いていれば、幸せになることが分かったので、敵を殺すことにした。ブレイズガンダムの性能は圧倒的である。相手が反応できないスピードで突っ込み、コックピットにビームライフルの銃口を当て、引き金を引けば終わり。
セインはこれでいいのかとやることが分かってきた気がする。
こうすれば強くなる。相手の弾に当たらない方法を考えて、動き。相手の嫌がる攻撃をして、動きを止めて仕留める。接近戦では相手の動きを捌きながら、自分の有利な間合いを作って相手を仕留める。難しく考えなくてもいいなと、セインは思った。
(神の愛を得る日はまだ遠いですが、あなたの歩みは確かですよ)
「はい」
セインの頭にその声が聞こえた直後だった。地響きが機体を襲った。
「なに?」
セインは不機嫌な調子で言った。頭の中の声との会話を邪魔されたからだ。しかし、邪魔されてもなおセインは、それを許す気になれた。セインの視界には巨大なロボットがいたからだ。
「はは、アレを倒せば僕が強い、強いぞぉ」
セインは狂気の表情を浮かべながら、巨大なロボットへ向けてブレイズガンダムを進ませたのだった。

 
 

「ぶっちゃけ、アレって失敗作でしょ」
ロウマ・アンドー司令部を抜け出し、バルドレン博士の研究室にいた。2人はプロメテウス機関でも関係が良好な2人だった。
「あたりまえじゃ、エクシーダスなぞ、ベースは三年前の機体じゃぞ。それに良いEXSEEDを乗せるわけがなかろうが」
バルドレンはバルドレンで色々と憤りがあるようだった。
「ハルド・グレンは始末しておらんな!?」
ロウマは両手をあげて見せる。
「してないしてない。博士はハルド君が嫌いだもんね」
「当り前じゃ、タダの人間のくせしてEXSEEDを2人も始末しおった。奴はワシのEXSEED部隊でなぶり殺しにしなければならん!」
執着は怖いなぁとロウマは思った。1人に関しては始末というより、添い遂げたってかんじだったが、まぁこの老人に何を言っても無駄だろうとロウマは思う。
「貴様もプロメテウス機関なんじゃから、多少は協力してもらうぞ!」
今度はこっちに飛び火してきたかとロウマは思う。機関の名前を出されるとどうにも断りづらかったが、今、そんなことよりも重大なのは――
「お、博士、エクシーダス地上に降りたみたい」
「なんじゃと!?」
そう言うと、博士は食い入るように自分の研究室にある小さなモニターにかぶりついた。
「博士、それじゃ、俺が見えないから」
そう言うとロウマはリモコンを操作し、研究室の壁面全体をモニターにした。
「おお!おお!」
博士は感激しながら、ロウマの隣にちょこんと座る。ロウマは取り敢えず冷たい瓶のコーラを栓抜きで開けて、博士に渡し、自分のも開ける。
「ワシは、ポテトチップスは塩味しか食べんぞ」
分かってますって、とロウマが言い、塩味のポテトチップスを開けると、自分と博士の二人の手が届くところに置いた。
とりあえず、これで観戦体勢は整ったわけだが、エクシーダスはどんな働きをするのやらと、ロウマは思いながら、コーラを飲んだのだった。

 

「運がないね、俺たち」
「兄さん、僕、もっと腹いっぱい食べたかったよ」
「すぐに諦めないの!私の兄さんたちでしょ!」
サソリ型のMAが降下したのはクランマイヤー王国の部隊が戦闘をしている地点だった。
ジェイコブ三兄弟はこの世の終わりのような精神状態になっていた。
それを察した、セーレのフレイドが勇気づけるべく、ビームスピアを手に、サソリ型のMAに突進していくが、放った突きはビームシールドで軽く防がれた。
「これは無理だ、撤退」
セーレは撤退の判断は早かった。これがジェイコブ三兄弟の命を救った。その直後である。
サソリ型のMAの尻尾部分が稼働し、クランマイヤー王国の機体に狙いをつけると、拡散ビーム砲を発射した。拡散ビームと言ってもMSとはサイズが違う、一発でも当たれば致命傷だ。
幸運にもクランマイヤー王国の機体はそれを全て避けた。各員死にそうな思いになってだ。
「クランマイヤー王国、無事か!?」
「無事です!」
セーレが答えたがジェイコブは、少し不安があった、セインのブレイズガンダムの姿が見えないのだ。無事に戦っているという情報は入ってきている。それでもジェイコブは不安感を拭えなかった。
ジェイコブはこの戦場というものは人間をおかしくさせる働きがあると感じ取っていた。もしもセインがそれに飲まれていたらと思うと心配でいられなかった。

 
 

「はは、僕は強い、神の愛、得るのは最強だ!」
セインのブレイズガンダムは真っ直ぐにサソリ型MAに突撃していた。脇から邪魔な声が入る。
「キミもSEED持ち?状況は劣勢だけど上手くやろう」
上手く?そんなのいらない、あのサソリは僕が殺すんだ、神への道への燭台に相応しい。セインは正気を無くしていたのかもしれない。いや、完全に正気を失っていた。
「当たれ!」
セインはチャージショットのビームライフルを撃つが、ビームシールドで防がれるだけだった。
面白くない。と、セインは思った。ならば接近戦だろうと思い、ブレイズガンダムをサソリ型のMSに突進させる。
その瞬間、サソリ型のMAからドラグーンが射出されるが、瞬時にそれを落とした味方がいた。SEED持ちのスナイパーだった。
どいつもこいつも邪魔だとセインが思った瞬間だった。何かがずれた、セインとサソリ型のMAのパイロットの間でそのずれは共有され、お互いは心で出会った。
「僕が怖い?」
「怖くない」
「僕を殺す?」
「殺したい」
「そうか」
「そうだ」
感覚の共有は一瞬だった、セインは一秒に満たない間に敵と交信していた。その時だった。サソリ型のMAは全ての砲口を開き、その全てから最大出力のビーム砲を放った。
(これでも怖くない?)
セインの頭に声が聞こえた。怖くない?怖いわけがない。ふざけるなとセインは思った。
「おまえは、オマエはこんな力を持って、それで、こんな、分かるぞ僕を馬鹿にしていたんだろう!力のない奴と!殺す!絶対に殺してやる」
狂乱するセイン、そのセインの怒りの声と共に不可思議な現象が起きていた。それは、ブレイズガンダム関節部から漏れる火の粉だった。
アッシュは上空で戦況を観察していた、その瞬間だけはハッキリと見えた。
「ブレイズガンダムが燃えている?」
アッシュは目の錯覚だと思ったが、そうではなかった、その戦場にいた全てがブレイズガンダムが燃え上がるさまを見ていたのだから。
(コード承認を要求します。コードはブレイズ)
「コード:ブレイズ!」
セインが叫んだ瞬間、ブレイズガンダムの関節部が火を放った。そして、驚異的な速度で動き出したのだ。
「死ね」
セインは確かにそう言った、その瞬間にブレイズガンダムはサソリ型のMAのビームシールドをすり抜け、MAの人型部分を殴り飛ばし粉砕していた。
「もういい、お前のような偽物はいらないんだ。強さは僕が持っている物が全てだ」
セインがそう言うと同時にブレイズガンダムは大きく距離を離しながらも、ビームサーベルを抜く。
「僕の強さを否定する奴は死ね」
そうセインが言った瞬間、ビームサーベルが数百メートルの長さまで伸びた。そしてセインはそれを躊躇いなくサソリ型MAに叩き付けた。ビームシールドなど関係ない威力だった、それによりサソリ型MAは両断され、パイロットの命も失われた。
そしてブレイズガンダムの動きは止まらない。MAを撃破してもブレイズガンダムはゆっくりと浮遊した。
セインの頭の中にぼんやりと光点が点いたり消えたりしている。セインはそれがうっとうしてくて堪らなかった。多分これは、みんな敵で弱い奴らだろうとセインは思い、全部消そうと思った。
「おまえら、みんな、いらないな」
浮遊するブレイズガンダムの表面が段々と剥がれていく、おそらくはバリアだろうと、その光景をみていたアッシュは予測した。
そして剥がれたはずのバリアが、再形成され、レンズのような形になっていった。その瞬間、アッシュはセインがやってはいけないことをしようとしている気がした。
「セイン君!何をする気だ」
アッシュの声は届かなかった、ブレイズガンダムはレンズ上の物体に向けてビームを撃つ。放たれたビームはレンズを通して拡散し、ナイロビの市街に降り注いだ。そのビームに当たったのはクライン公国の機体だけであった

 
 

「ありゃ、まぁ」
ロウマは唖然としていた。まさかここまで壊滅的な被害を受けるとは思わなかったのだ。
「ふーむ、エクシーダスの観察が、思いもよらずコード:ブレイズの成長具合を見ることになるとはな」
バルドレンは上機嫌のようだった。使い捨てのEXSEEDよりもブレイズの方が上手く言っているのが楽しいと言った様子だった。
ロウマはこのままバルドレン博士に付き合っても良かったのだが、そうもいかない事情がある。
「ちょっと、用事があるんで退出しますよ」
「なんだクソか?」
似たようなもんだと思い、ロウマは司令部へと向かった。司令部は大慌てである。虎の子のMAが撃破されたリオネル准将はロウマに縋り付く目をしているが、ロウマは相手にしなかった。
「准将、ここは撤退でしょう。残った将兵を無事に北アフリカに撤退させるのが将の仕事です」
ロウマはそれらしく言った後で付け加えた。
「わざと負ければ、地球連合軍から多額の謝礼を貰えると、この紙に書いてありますしね」
そう言ってロウマは懐に入れておいた紙を出す。それは誰が見ても秘密の指令書だった。
「なるほど、私も理解しましたよ。リオネル准将が無謀な作戦を立てたのが、作戦が失敗すれば大金が手に入るとなれば、そうしますよねぇ」
ロウマはそう言いながら、拳銃をリオネル准将の額に向けて撃った。周りにいた者は、呆然とするしかなかった。ロウマはこの場の主導権を得るべく、毅然とした態度で言い放つ。
「裏切り者は死んだ。ここからは、俺が指揮を執る。全部隊は撤退を最優先、北アフリカに抜けろ!」
ロウマはこうして、見事に撤退戦を指揮して見せ、上層部からの評価を確実なものとしたのだった。

 

「あ、来ましたねー、撤退する我が軍と、敵軍ですー」
アリスは監視を怠っていなかったし、ナイロビ辺りでヤバい光が見えたのも何度も確認していた。
「了解、敵軍を徹底的に排除するぞ」
イザラの声と同時にガルム機兵隊が動き出す。彼らとしては普通のことをやっていたのだが、追撃する地球連合軍からは、悪魔の部隊と恐れられた。
「あたま……いたい」
ゼロが乗る機体、コンクエスターがナイロビの方を指さして言う。
「ちょっと休ませましょうよー」
アリスは何故かゼロに甘いため、イザラはそれを了承した。
別に機体数で困っているわけではない。ゼロが働かなけれな、イザラがゼロの分まではたらけばいいだけだ。
イザラの純白のシャウトペイルは無茶苦茶に地球連合軍の機体を切り刻んでいた。
「ちょっと、撤退!そして迎え撃つ」
イザラの指示はシンプルだが暖かいとゼロは感じていた。イザラは嫌いではない頑張ろうとも思っていた。
ゼロのコンクエスターが動き、ドラグーンで追撃する敵を殲滅する、単純な破壊力ではガルム機兵隊で一番だった。

 

夜も明け昼になり、また夜になってナイロビでの戦闘は終結した。結果的に見れば地球連合軍の圧倒的勝利であり、その勝利を担ったと言えるアッシュ・クラインは叙勲された。これは暗に地球連合とクランマイヤー王国と同盟が成り立ったことも意味していた。
セインは戦闘が終わるとノーマルスーツを脱ぐこともなく、ぼんやりと戦場跡とナイロビの市街を徘徊していた。
「ハルドさんより強く」
セインはそう呟きながら廃墟の屋上にたどり着いた。。
「強くなれば全部変わるんだ」
セインは自分が破壊したサソリ型のMAの残骸を眺めながら言った。
ハルドは強くなれということはあったが、賢くなることも勧めていた。だが、賢さに意味はないとセインはこの戦場を見て思った。強さだけあれば自分は自分でいられる。誰にも脅かされることは無いのだ。
そしてセインの仇敵であるロウマも強さより賢さを重視しているようだったが、セインはそれを敵の言葉と無視をした。
ボンヤリと廃墟に佇むセインに対して声がかけられる。
「おーい、セイン。いくぞー!」
そう言われてセインはキョトンとなった。どこへ行くのかということである。
「南アフリカのマスドライバーがぶっ壊れたから、オーブにマスドライバーを借りるんだってよ」
ジェイコブが叫んでいったことはセインにとって初耳であった。

 
 

GEB第32話 【戻】 GEB第34話

 

URL B I U SIZE Black Maroon Green Olive Navy Purple Teal Gray Silver Red Lime Yellow Blue Fuchsia Aqua White