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GUNDAM EXSEED_B_39

Last-modified: 2015-08-28 (金) 20:45:33

セインはずっと夢を見ていた。
夢の中で、セインはハルドと戦っており、完膚なきまで叩き潰された。夢の中なのにとセインは思う。夢の中でくらい自分が勝ってもいいじゃないかと。だが、何となくスッキリはした。負けたのにだ。
不思議だと思いながらも、セインは、目を覚ました。目を開けた先にあったのは見たことのない天井だった。どこだろうかと考えようにもイマイチ頭が働かなかった。
「おや、お目覚めかい?」
起きた瞬間、忘れることの出来ない声がして、セインは声の方を見た。そこには両親の仇であるロウマ・アンドーがいた。
「お前はっ!?」
セインは体を動かそうとしたが、体がついていかず、ベッドから落ちた。
「脳のバージョンアップに体がついていってないみたいだね。まぁ自然に治るよ」
そう言うと、ロウマはベッドから落ちたセインを、やけに手慣れた動きでベッドに戻し、セインの上に布団をかける。
「起きたなら、良いね。健康そうだし。実験的には問題なし。まぁしばらくはマトモに動けないだろうけど、我慢しておとなしくしてなさいな」
そう言うとロウマは立ち去って行った。セインは待てと言いたかったが、急激な疲労と眠気が体を襲い、耐えきれず意識を失った。

 

次にセインが目を覚ました時、部屋には煙草の匂いが充満していた。何事かと思い、体を起こそうとするが、体が言うことを聞かず。起き上がれなかった。
仕方なく、セインはベッドに横たわりながら、首だけ動かし部屋の中を見回すと。煙草を吸っている褐色の男と赤毛の男が携帯のゲーム機で遊んでいた。すると煙草を吸っている方の男が気づいたのか、セインの方を見て言う。
「すまんな、禁煙と書いてなかったもんでな」
それでも煙草を吸うのはやめて欲しいと思いながら、セインは急に襲ってきた眠気に抗えず、眠りについた。

 

その次にセインが目を覚ました時には、女性が二人いた。体はやはりマトモに動いてくれなかった。しかし、手を挙げることは出来た。
「あ、起きたみたいですよー」
妙に間延びした甘ったるい声が聞こえた。
「ふむ、体力が感じられなさそうな面構えだ。動けるようになったら鍛えてやるか」
なんとなく何を言っているかは分かるが、セインはイマイチ思考が追い付いていないような感覚を味わっていた。
「あ、クッキー焼いたんでー、お腹すいたら食べてくださいー」
その声が聞こえた瞬間に、セインは意識を失い眠りについた。

 

良く分からないが、知らない人間が多いぞ。と思いながらセインが目を覚ました時、部屋には男が三人いた。長髪の男が二人いるが汚らしい長髪の男が芸術がどうとかしゃべっていてうるさかったが、どうにも疲労感は抜けずにセインは眠りにつくことにした。

 

そして、その次にセインが目覚めた時、体の調子はいつも通りのような気がして、ベッドから起き上がった。うん、自分の身体だ。という感覚がしっかりとあった。
そうやって体が元に戻ってみると、自分は監禁されていることに気づいた。外へ出るドアは開かないように施錠されているのだ。
「あれ、どうなっているんだろうか?」
気づかない内に自分は拉致されているということかとセインは思った。すると、施錠されていたドアが開き、人間が現れた。
一人はロウマ・アンドー、もう一人は知らない老人だった。
「ふむ、コード:ブレイズを四回まで成功させ、なおかつ元気。それにブレイズのプロジェクトを第二段階にまでしたわりには普通の少年じゃな?」
「まぁ、そんなもんですよ。普通に見える奴がヤバいって良くある話じゃないですか」
ロウマと老人が話をしている。セインは二人の言っている意味がわからなかったが、チャンスだと思った。脱出のチャンス。老人を突き飛ばすのは心が痛むが老人を突き飛ばして、そのまま脱出しようと、セインは短絡的に考え、動いた。その瞬間だった。
ロウマの拳がセインの腹にめり込み、セインを一撃で床に倒れさせる。

 
 

「俺の隙はつけないよ。生身だと、きみの知っているハルド君より俺の方が強いからね」
セインは床に転がりながら、ロウマの言葉を聞く。では生身で勝つのは絶望的だと思った。
「とりあえず、騒ぎはどうでもいいんじゃが、この小僧の脳味噌の構造を調べたい」
老人は言う。どうやらマトモな類の人間ではない。そうセインは理解した。
「じゃ、おとなしくさせてから連れてきますか」
そう言うとロウマは肩を回しながら、セインの前に立った。
「ほら、親の仇だぞ。頑張れ、頑張れ」
そう言われ、セインは頭が沸騰しそうになりながら、立ち上がり、構えを取る。
「構えは一人前だね」
ロウマがそう言った瞬間、セインは見えない打撃を顎と腹にくらい、悶絶して倒れ伏した。
「殴り合いは向いてないね、セイン君は」
そう言うと、ロウマはぐったりとしたセインを抱え部屋から運び出した。
「うはははは、そうかこうなるのか、こういう形でもEXSEEDになるのか!」
ぐったりしたセインがかろうじて聞いたのは老人の歓喜の声だった。
「ワシ、間違えとった!けど、嬉しい!そうか、こういう攻撃的なタイプへのEXSEED化もあるのか!」
セインは自分が実験動物の扱いをされているのがわかった。なので機会を伺い逃げ出そうとするが、その度にロウマがセインに打撃を加え、おとなしくさせる。
「うひひ、セイン君、君みたいなEXSEEDを攻性型EXSEEDと名付けよう。戦闘に特化したタイプのEXSEED。ワシの予想ではこれから100年の間に大量に現れるぞぉ!戦闘のストレスが引き金となってEXSEED化する人間じゃあ!」
セインは老人が何をそんなに喜んでいるのかわからなかった。セインはとにかく、この訳の分からない場所を出たかった。しかし、監視の目がある以上、そうもいかないと現実を思い知らされていた。
セインは結局、何もできずただ実験動物のような扱いを受けただけで、部屋に戻された。セインは疲れたと思い。すぐに眠りについた。

 

目を覚ました時、セインは煙草の匂いが鼻につくのを感じた。
「悪いな。禁煙と書いてなかったもんでな」
ハルドはそう言った、男を見る。以前に見た褐色の肌の男だった。
「メシを持ってきた食え」
そう言われると、セインは空腹を感じた。褐色の肌の男は食事のトレーをセインの前に置く。
「しばらく点滴生活だったからな。口を通すメシはしばらくぶりだろう。気をつけて食え」
褐色の肌の男はそう言うと、部屋の椅子に座り。煙草を吸う。セインはそれはやめて欲しかったのでハッキリ言った。
「煙草はやめてくれませんか?」
そう言うと褐色の肌の男は、何も言わずに煙草を携帯灰皿に突っ込んだ。
「戦い方と同じ、真っ直ぐな物言いだな。セイン・リベルター」
なぜ、自分の名前をとセインは思った。すると褐色の肌の男は穏やかに微笑む。
「俺はドロテス・エコーだ。わかるだろ?」
セインは、ハッとなった。褐色のザイランのパイロット。自分が何回か戦った相手だと気づいたのだった。
「あなたが、ドロテス……」
セインは敵の機体のパイロットを初めて見た。敵も人間であるから、同じ姿をしているわけだが、セインはそれを今初めて、自分の目で理解したのだった。
「さっさと食え。冷めるぞ」
ドロテスは食事のことを言った。確かにセインは空腹であったが、これに手を付けて良いものかとも思った。なぜなら敵の物だからだ。
「毒は入ってない。もしくは敵の施しを受けるのが嫌か?」
ドロテスは、そう言うとセインの頭に手を置く。セインは不思議と手を振り払う気にはならなかった。
「敵を倒したかったら。まずは生きることを優先しろ。恥は捨てでもな。生きなきゃ反撃など出来んぞ。それに空腹の奴は弱いから楽に倒せるぞ」
ドロテスはそれだけ言って、セインの頭から手を離すと、再び椅子に戻った。セインはドロテスの言葉にも一理あると思い。食事に手を付けたのだった。
セインは聞いてみたかった。どうしてあなたのような人がロウマ・アンドーのようなおとこの下にいるのかと。

 
 

ドロテスはセインの表情から大体聞きたいことを察して答えたのだった。
「行くところが無いからさ。俺は中東で民間人の大量虐殺の疑いをかけられていた。そんな奴を引き取ってくれるのはロウマのような奴ぐらいだ。それにな、奴の下なら安全なんだよ。
奴は少なくとも誰よりも優れている。奴の下にいて言うことを聞いてる限り、俺の戦闘能力なら絶対に捨てられず、良い思いが出来る」
そんなくだらない理由なのかとセインは思った。しかし、ドロテスは微笑しながら言う。
「お前が敵のメシを食ったように、俺も器用に生きたくなったんだ。使い捨てにされず勝ち馬に乗れる生き方。それがしたかったというのが本音だよ」
そう言うと、ドロテスは空になった食事のトレーを手に取り、去って行く。セインはその背が何か寂しさを抱えているようで声をかけられなかった。

 

次の食事の時間にやって来たのは赤毛の男だった。
「俺、ギルベール。分かるよなセイン?」
食事のトレーを渡す時にそう言った。赤いザイランのパイロットだったはずとセインは思い出す。
セインは食事をしながらギルベールを見る。態度はおかしいが制服は異常にきちんと着ていた。
「俺みたいな奴が服をちゃんと来てるのがおかしいって?顔に書いてあるぜ、セイン。表情に出し過ぎだって」
ギルベールは笑いながら言う。
「俺は憲兵上がりだからな。分かる憲兵?」
そう尋ねられて、セインは首を横に振った。
「ありゃ、わかんね?単純に言うと、軍人相手の警察みたいなものかな」
ギルベールはニコニコと笑いながら話していた。
「まぁ、俺はあんまり綺麗な憲兵じゃなくてな。怪しいけど立件できないような奴を戦場で事故に見せかけて殺すような仕事だったわけだ」
セインはその話を聞かされて何とも言えない表情になる。
「俺が勝手に話してるわけだから、戦場で会ったら問答無用でぶっ殺してくれてかまわねえぜ。俺もドロテスも身の上を語ったけどよ。
それはつまり、誰にも知られずに死んでいくのが寂しいからなんだぜ。お前だけにでも俺らを覚えてて欲しいって、しょぼい願いだ。だから頼むぜ。死ぬなよ」
それだけ言って、ギルベールは空になった食事のトレーを持って帰って行った。
一人部屋に残されたセインは、そんな話を聞かされて自分にどうしろと言うのだと思った。どこだか分からない施設の中に捕まり、監禁されているような自分にだ。

 

セインはボンヤリとしていた。部屋のベッドに横たわって天井を見上げながら。すると、突然、部屋の扉が開いた。
「おや、ヒマそうだね。セイン君?」
扉を開けて現れたのはロウマ・アンドーだった。ロウマは勝手に部屋に入ると、勝手に部屋に備え付けてあった。椅子に座った。
「何しに来た?」
セインは敵意を剥きだしにして問う。すると、ロウマはヘラヘラとした笑みを浮かべながら言うのだった。
「何をしに来たってわけでもないけど、ちょっとお話し。ドロテス君やギルベール君とは仲良く話しをしていたみたいだから、俺とも仲良くお話ししようよ」
ふざけたことをと思い、セインはロウマを睨みつけた。すると、ロウマは肩を竦めて言う。
「そんなに怖い顔をしないでくれよ。俺にも悲しい過去があるんだ」
そう言うと、ロウマは真面目な表情になり、過去を語り始めるのだった。
「俺は、以前は軍の実験体でね。少し脳を弄られているんだ。そのせいかは分からないが、自分のやっていることが分からなくなることがあるんだ。そういう時は、大抵とんでもないことをしている。セイン君の両親を殺したのも、その時だったのかもしれない」
ロウマは話しているうちに悲痛な表情になり、その表情からはセインに対して申し訳ないという気持ちが溢れているように見えた。
セインはロウマのその話しを聞くと、この男にも少しは同情する余地があるのかもしれないと思った。しかし、セインはハッキリと言う。

 
 

「アンタの境遇には同情するが、やっぱり僕はアンタを許すことが出来ない」
そうセインが言った直後だった、ロウマは平然とした顔に戻っていた。
「あ、そう。別にいいよ。今の話しは嘘だから」
ロウマは、そう言うとケロッとした顔で、ふざけたように舌を出して見せる。
「ふざけるな、僕を騙したのか!」
セインが怒鳴るとロウマは最高に楽しそうに笑い。そして言うのだった。
「いつだって悪いのは騙す奴。騙される奴は悪いんじゃなくて、馬鹿なだけ。馬鹿であるのが悪いことなら仕方ないけどね」
ロウマはセインの怒りがあまりに露骨で滑稽に見えた。だから可笑しくて笑ったのだ。
笑われたセインはというと、ベッドの上に座った姿勢のまま、怒りに震えていた。しかし殴りかかることは控えた。セインはロウマと自分に相当の実力差があることをハッキリ理解していたからだ。
「アンタはそうやって、いつも誰かを馬鹿にして楽しいのかよ……?」
セインは怒りに震えながら、ロウマに尋ねる。ロウマは尋ねられると当然といった感じを露わにしながら、答える。
「楽しいよ。馬鹿を馬鹿にする。当然のことをしているわけだから、すごいスッキリするね」
「あんたが言う馬鹿って何なんだよ?」
「そりゃ、俺の基準で決めることだから、ハッキリはしてないねぇ。でも馬鹿はすぐに馬鹿だと分かるよ」
ロウマはヘラヘラと笑いながらセインの質問に答えた。セインはやはりこの男は理解できないと思った。セインが困惑した表情を浮かべているとロウマは少し考えながら、話し始めた。
「ふむ。少し真面目に話してやってもいいかな?少しは賢くなってきた、ご褒美ということでね」
セインはどうせ何か嘘をついて自分を騙すつもりだろうと、真剣に聞く気はなかったが、ロウマは淡々と話しはじめるのだった。
「俺は意外かもしれないけど、地球生まれでね。生まれた家は貧乏だった。まぁ貧乏と言っても食うに困るほど極貧ではなかったけど、周囲からは貧乏だってハッキリと分かる家の生まれだった。
家族は父と母、そして祖母。ろくでもない家族だったよ。
酒浸りで仕事の出来ない能無しの癖に、家族にだけは威張って暴力を振るう父親。
親父には何も言い返せない癖に、子供の俺に対してぐちゃぐちゃと常識と一般道徳レベルの説教を垂れるしかしない、無教養な母親。祖母は寝たきりで介護が必要。頭もボケてて鬱陶しいことこの上なかった。
そんな家族の中でも俺は優秀だった。自慢じゃないけど学校じゃ何をやらせても俺は一番だったんだぜ?」
ロウマの今の能力などを考えれば子どもの頃は、さぞ優秀だったろうとセインは思った。
「だけどな、誰も俺を認めてくれなかった。家が貧乏、育ちが悪い、親が無教養、家柄が悪いとかでな。そんなくだらない理由で、みんな俺を馬鹿にしやがった。
ふざけてると思わないか?俺は誰よりも優秀だったのに、みんな俺を見下していた。学校で何か事件があれば、全部俺のせいにされた。理由は分かるか?俺の家族やら何やらがクソだってだけでだ。
俺はいつだって下を向いて誰かに頭を下げてなきゃいけなかった、学校ではな。俺自身が悪いわけじゃない。俺の生まれた家が悪かったって理由でだ。俺はな自分が誰よりも優秀だってことだけを心の拠り所に生きてきたよ。
……そういえば、よくイジメの標的にもされたね。子どもの頃はひょろくてガリガリだったし、家が貧乏で格好も汚らしかったから。だけど、俺が黙ってやられるわけないから、当然、反撃をする。すると、いじめっ子は泣いて親に泣きつくわけだ。
その度に俺は母親に叱られ、いじめっ子の家へ頭を下げに行かされた。相手が悪いにも関わらず、お袋は俺の話しなんか一言も聞いてくれなかった。俺には味方なんて一人もいなかったよ。家族ですら味方じゃなかった。
俺に言わせれば、家族なんて遺伝子が同じだけで、自由を縛る鎖だ。そんなものを大切にする人間も俺はクソだと思うね」

 
 

セインはロウマの話しを聞きながら、ふと思った。ロウマは真実を語っているのではないかと。
「……まぁ、ぐちゃぐちゃ言ってもしょうがないか。少し面白い話にしよう。そうだな、俺とセイン君が似ているってことを話そうか。実はね、俺も両親が殺されているんだよ」
セインはロウマの話しを何一つ信じる気にはならなかったが、その言葉には関心を惹かれた。
「そして、なんという偶然か。殺した相手も同じ。つまり、これはどういうことか」
ロウマが両手でセインを指さして尋ねる。セインはおそるおそる口にした。
「アンタが殺した……?」
そうセインが答えるとロウマは大きな拍手をした。
「大正解。その通り、俺の両親は俺が殺した。人生最初の殺しだったよ」
そう言うと、ロウマは朗らかに話し始めた。
「それは、ある日。と言っても俺が13歳になって少しの日の夜だったか。親父は相変わらず酔ってた。俺は無視して、勉強をしようとしたけど、酔った親父が俺の教科書を破って、こう言った。お前なんぞ高校に行かせる金はねぇぞってな。
それで俺はキレた。そして思わず親父を殴った。殴ったら当然反撃がくるけど、問題なかった。思いっきり、ぶん殴って思い知らせてやった。クソみたいな親父だったから、手加減をしようなんて気持ちはなく、ひたすら殴ったね。
俺は当時から筋肉量が増え過ぎないよう考えながらも鍛えてたし、酔っ払いで能無しの親父なんか相手にならなかった。俺は親父が、許してくれ、やめてくれ、が言えなくなるまで殴った。
そしたら、今度に現れたのはお袋だ。俺はお袋に親父を殴った理由を説明したけど、お袋はヒステリックにわめくだけで話にもならなかった。だから俺はお袋の顔面を何発も思い切り殴った。
そして気づいた。ここにいたんじゃ未来が無いとね。だから、意識の無い親父とお袋、そして寝たきりのボケ婆さんを家に置き去りにしたまま、家に火を付けた。簡単だった。すっごくな。
火は家を燃やして俺の家族を焼き殺してくれた。俺はこれですべてがリセットだと思った。不思議なことに死んだ家族に対して何かを思うということはなかったな。これがセイン君と俺の違いか」
セインは、もっと根本的に違うところがあると思ったが、上手く言葉にできず。ロウマの話しを聞き続けるしかなかった。
「親と家を消した俺は、行くあてもないから都会に出たよ。そこで窃盗や殺しをして何年間か生きた。ウリもしたけど、これはセイン君には分からないかな。まぁ言えるのは、女はクソだってことを学んだわけさ、俺は都会でね。
で、まぁ悪事をしながら何年かを生きた後、16歳になった俺は、宇宙へ上がるシャトルに密航して、頑張ってアレクサンダリアまで辿り着いたわけだ。そして身分を詐称して聖クライン騎士団の入団試験に合格して今に至るわけ。どうかな、俺の過去は」
尋ねられ、セインは答えた。
「アンタがろくでもない奴だってことは分かったよ」
そう言うとロウマは笑った。
「いいよ、率直な感想で」
ロウマはそれだけを言うと椅子から立ち上がった。どうやら部屋から去るつもりだとセインは思った。
「まぁ、俺のマジな話を聞けただけ良かったと思いなよ。まだ数人にしか話してないんだ」
そう言うと、ロウマは部屋から去ろうとしていた。しかし、セインは言いたいことがあったので、思わず声をかける。
「アンタはもしかして、昔、馬鹿にされていたから、それを見返すためだけに色んな人を苦しめているのか?」
セインは我ながら、馬鹿な質問だと思った。今までのロウマがやって来たことを考えれば、そんなちっぽけな目的のために動いていたとは思えないが、セインは、この疑問だけはどうしても頭から消えなかったのだ。だから聞いた。
すると、ロウマは振り返り、セインの目を見据えるとニッコリと笑いながら言った。
「そうだよ」
その一言だけを言って、ロウマは部屋から去って行った。
セインは唖然とするしかなかった。
セインの中ではロウマは悪の大ボス的な立ち位置だった。しかし、ロウマが行動する理由を聞かされた知った瞬間に、大ボスという認識は崩れ去った。そして、セインの中で、よりロウマという男は許せないという気持ちが強まったのだった。

 
 

ロウマに対する怒りが強まっても、結局セインは変わらず、部屋でボンヤリとしていることしかできなかった。脱出しようと思ったが、そう簡単に脱出する手段などなく、すぐに手詰まりとなった。
仕方ないので、トレーニングでもしようとしたら、銀髪の前髪パッツンの女性に注意された。
「それじゃ負荷が足りないだろう!負荷が」
トレーニングの仕方に問題があったようで、セインは叱られ、みっちりとトレーニングの基礎というもの叩き込まれ筋肉への負荷が限界に達した時点で解放された。
その後も銀髪前髪パッツンの女性が来るたび、厳しいトレーニングがセインに課せられた。善意で鍛えてくれているのだろうが、こうなってくると、ある意味ロウマよりタチが悪い存在だった。
そして段々と女性が来る回数が増えてきているような気がして、セインは部屋の中だというのに、体が動かなくなるまでのトレーニングを毎日のように強いられ、そして食事のメニューも筋肉に良いものに変えられ、プロテインを飲まされるようにもなった。
セインは死にはしないと思ったが、このままでは望んでもいないのにマッチョになってしまうと思い、早く脱出しなければという気持ちが強くなっていくのだった。

 

そうやってトレーニングの日々が続いたある日だった、ロウマが上機嫌で部屋を訪れてきた。セインは僅かながら、ほっとした。今日はトレーニングは無しかと思ったからだ。
「今日は面白いものを見せに来たんだよ」
ロウマはそう言って、セインを部屋から連れ出す。意外なことに拘束は無しだった。
「手錠も無いなんて、僕が逃げ出すとは思わないのか?」
セインが挑発するような口調で言うが、ロウマはどうでも良いといった表情で返す。
「どうでも良いよ。逃げたら殴ればいいだけだし、そもそも、この施設自体が檻のような物だから、逃げらんないわけだし、別にね」
ロウマはそう言うと口笛を吹きながら、飄々と歩いていく。セインはその後を結局、どうしようもないと悟り、その後ろをついていくしか出来なかった。
ロウマが案内する道は思ったよりも長かった。そして、その長い道のりの先に有ったのは、大量の作りかけのMSが並ぶ場所だった。
「プロメテウス機関のMS製造工場って奴。ここの機体は性能なら、どこの国のものよりも上。俺の新しい機体もここ製だよ」
ロウマは説明をしながら、工場の中を悠々と歩いていく。すると、MSの開発を行っている人間たちはロウマを見て、敬礼なり、会釈などをするのだった。それに対してロウマは手で、いいよいいよ、と僅かに照れる仕草を見せた。
セインは、ロウマはもっと横柄な人間かと思ったが、そうでもなさそうなように見えた。
「プロメテウス機関の人間だけが、俺の本当の仲間だからね。態度もどうしても甘くなっちゃうのよ」
ロウマはセインの考えてそうなことを察すると、そう言って、セインの案内を続ける。すると、セインは工場の中でも特徴ある区画へと通された。そこは大きな円筒状のフロアだった。
そこで、セインは一機の完成したMSの姿を見つけた。全く見たことのないシルエットの機体。そのはずなのに、何故か愛着を覚える、この気持ちは何だろうとセインは思った。
「見学はご自由にどうぞ」
ロウマがそう言うと、セインはMSのそばに駆け出し、その姿をじっくりと眺める。
頭部はV字のアンテナが重なる形で4本取りつけられ、頭部のセンサーは大型だった。腕部分に関しては肩アーマーは横に広がり、その中にスラスターが内蔵されていた。そして手を見ると掌にはビームの砲口のような物がついていた。
背中は大きな放出口を持つ大型のスラスターユニットが装着されており、セインは高い機動性を連想した。
セインは機体を見ながらあることに気づく、それは機体の胴体を見た瞬間だった。

 
 

「ブレイズガンダム……?」
セインの呟きを聞いたロウマは答えた。
「その通り、この機体はブレイズガンダムがベース。と言っても胴体だけね」
セインはその言葉を聞いた瞬間、ロウマに詰め寄った。
「よくも、僕のブレイズガンダムを勝手に!」
「おいおい、きみのもんじゃないだろうに。元はプロメテウス機関の物なんだから、好きに改造してもいいだろ?」
それはそうだが、とセインは思うが納得はできない。
「どうして改造を?」
「プロジェクト:ブレイズが第二段階に移行したせいで、素のブレイズガンダムじゃ“ギフト”の機能に耐えられなくなったのね。運よく、ハルド君にブレイズガンダムがぶっ壊されたし、ちょうどいいから改修って感じでこうなったわけ」
セインはなんだか納得のいかないものを感じた自分が愛機にしていた物を勝手に弄られるのは気持ちが悪かった。
「機体名はオーバーブレイズガンダム。まぁ何でもいいか」
ロウマのセインを見る目は明らかにどうでもいい物を見る目だった。
オーバーブレイズガンダム。名前は別に構わないと思ったが、セインは分からないことがあった。
「どうして敵の機体を直したりした?」
すると、ロウマはセインをわざとらしく憐れむように見た。
「だって、味方になるし」
何を言っているのかセインは分からなかったがロウマは続ける。
「これから、きみの頭をパッカリと開けて、脳味噌の状態を直に見て、その後で脳味噌を直に弄って、こっちの味方に洗脳するから」
セインは一瞬、訳が分からなかったが、すぐに状況を理解した。自分が危険な状況に置かれていることに。セインは慌てて逃げようとするが、セインの後ろ襟をロウマが素早くつかむ。
「ほら、逃げんなよ。最後の自由時間は堪能したろ。覚悟を決めて頭をパッカリされるんだね」
冗談じゃない、セインは必死でもがく。その時だった。施設が凄まじい振動に襲われたのは。

 
 

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