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GUNDAM EXSEED_B_42

Last-modified: 2015-09-05 (土) 21:20:53

祭りから数日後、ハルドはイマイチ身の入らない訓練を一人で続けていた。そんな時だった。クリスが大声でハルドを呼んだのは。
呼ばれて、ハルドはイマイチ気乗りがしない状態で、クランマイヤー王家艇の、広間にやって来た。ハルドの以外のクランマイヤー王国の主要なメンツは揃っていた。
「大変、というか凄い事態です!地球連合とクライン公国が競い合って、アメノミハシラを制圧しようとしています」
ハルドはそれの何が凄いのかという感じだった。そもそもアメノミハシラが今更なんだというのかというのがハルドの感覚であった。
「アメノミハシラはMS製造のプラントとしても一級品です。オーブが落ちた現状、アメノミハシラは、どこの所属にもなってない状態なんです。ユウキ・クラインが提唱したコロニーの自治・独立の原則に従うと、アメノミハシラは独立国となり侵攻が可能となります」
クリスの説明は熱が入っていたが、他のものはイマイチ、ピンと来ていない様子だった。
「こう言ってはなんだが、今更一コロニーが侵略を受けているというのがそんなに大変な事態なのか?」
アッシュが疑問を口にする。するとクリスは即座に答えるのだった。
「問題ありです。地球連合、クライン公国どちらに取られても、アメノミハシラは生産に加えて交通の要所でもありますから、ここの自治が奪われると、各コロニーの自治権の存在意義に疑問符が加えられ、侵略または自治権の侵害が容易になる可能性があります」
「アメノミハシラが落ちると自分たちのコロニーも別にいいかなって、なびく連中が出てくるってことだな」
ハルドが端的に説明するとクリスは頷き、更に話しを続ける。
「それにアメノミハシラは腐ってもオーブの所属だったコロニーです。影響力は計り知れませんし、できることなら独立と自治を続けてもらって、クランマイヤー王国との軍事的な協力関係を結んでもらいたいんですよ」
「そのためには、地球連合かクライン公国の占領下になってもらっては困ると」
アッシュが最後にまとめるが、アッシュとしては様々な懸念があった。
「クライン公国が相手だけならば、問題はないが、地球連合も攻めているのだろう?一応、この国は地球連合に後ろ盾に立ってもらっているわけだが、それはどうする?」
クリスは大した問題ではないという表情だった。
「地球連合に関してはアメノミハシラの制圧が根本の目的ではなく、アメノミハシラを制圧することで得られる利益が目的なわけですから、独立と自治を条件に地球連合に対する優遇措置を取れば、地球連合の戦意を奪うことは出来ると思います」
「そう上手くいくかね」
ハルドが懐疑的な視線を送ると、クリスは肩を竦めながら言う。
「上手く行かない可能性は高いですね。その場合は、アメノミハシラはクランマイヤー王国との同盟関係にあるということを主張して地球連合には引いてもらいます。
味方の味方は味方といった感じで、クランマイヤー王国を間に挟んだ形でアメノミハシラと地球連合は協力関係にあるということにします」
「アメノミハシラとクランマイヤー王国は現状、全く交流はないが、戦闘中に同盟締結をやるつもりか?」
クリスは当然といった様子で頷く、その態度にアッシュはゲンナリとするしかなかった。
「その仕事は当然、僕だろうな」
そう言うと、クリスを含め誰もが当然と頷いた。アッシュは大きくため息をついて、それきり黙った。

 
 

「とりあえず、アメノミハシラ周辺は三つ巴の状態で戦線は膠着状態です。今からシルヴァーナを最大速度で向かわせれば間に合うでしょう」
クリスがそう言うと、全員が大慌てになった。急な戦闘準備である。急と言っても急すぎる。
「ふざけんな、死ね」
とハルドが言うと、同じようにクリスに死ねという言葉が続けざまにかけられた。しかし、クリスも、もう慣れた、この程度では何とも思わないようになっていたのだった。

 

シルヴァーナには急ピッチで物資の積み込みが行われていた。
「レビー、俺の機体は?」
ハルドが尋ねると、レビーはあの改造が施されたネックスを指さすのだった。
「お前、俺に死ねって言ってんの?」
「いや、クリス君から、隊長はこの機体で、アメノミハシラまで先行してくださいって」
冗談じゃないとハルドは思う。この機体に乗ったせい、実際にはこの機体のせいではないが、怪しい薬を大量投与され、肺が腐りかけた。絶対に乗りたくないそう思ったが、周囲の視線が乗らないことを許さない雰囲気だった。
「ノーマルスーツ用のアーマーは改良したので。今回は前回のようにはならないはずです。あと排泄物用パックも最高のものにしているので乗り心地は前とは格別ですよ」
ウソくせぇと思いながら、とりあえず、ハルドはネックスに乗る準備を始めた。とにかくアメノミハシラまでどれくらい日数がかかるか分からない以上、念には念を入れておく必要があった。
取り敢えずは下剤で腹の中の物を全て空にし、栄養剤の注射を自分で打つ。これで二日程度は何も食わなくても大丈夫のはずだ。
ハルドがそんな涙ぐましい準備をしている中、セインはオーバーブレイズガンダムのんびりとシルヴァーナに積み込んでいた。
なにか自分ばかり貧乏くじを引かされていないかと思いながら、ハルドはノーマルスーツを着て、その上にアーマーを装着した。装着した瞬間、前より重量が増している気がした。
「色々と性能アップをしたり、機能を足していたら少し重くなりました。すみません」
まぁ、それで体が持つようになるなら、良いだろうとハルドは我慢することにしてネックスに乗り込んだ。そう言えばとハルドは今になり気づいた。この機体はなんという名前なのか知らないことに。
「レビー、この機体なんて名前だ?」
「ネックスAB(アサルトブースター)です」
なんだか普通だなぁ、と思いながら、ハルドは機体を移動させる。1G環境に全く対応していない機体なので、どうにもならず宇宙港に係留してある機体なので、移動も楽だった。
「そいじゃ、ハルド・グレン。ネックス先行して発進するぞ」
宇宙港の皆に聞こえるように言って、ハルドのネックスは加速を開始した。その瞬間に、ハルドのネックスは見えなくなっていた。
「いやーあんな風に加速するんですね」
「思った以上に速いな。実験は成功だったな」
レビーとマクバレルはネックスの去った後を見て、ハイタッチしたのだった。
「ハルドさん、凄いの乗ってるんだねー」
ミシィはノンビリと言うが、セインはあの機体によって刻まれた恐怖は消えていなかった。
「いや、あの機体は凄いっていうか、うん凄いけど、良くないよ」
セインは去っていたハルドの無事を思うのだった。

 

ああ、死ぬなこれ……、ハルドは意識を保つのに必死だった。今自分にかかっているGはどれくらいなのかと考える余裕はあったが、その程度しか考える余裕が無かったとも言える。
「活性剤を投与します」
アーマーから声がし、ハルドは首筋に何かの注射を打たれたのを感じた。活性剤ってなによとハルドはそれほど学識が無いわけではないので、活性剤という言葉に何か危険なものを感じていた。
しかし、活性剤というもののおかげなのか、ハルドは意識がハッキリとしてきた。身体がGに押しつぶされているのは変わらないが、何となく動けるような気がしていた。
「ヤバい薬だ。間違いなくヤバい薬だ」
ハルドは思わず口にした。おそらくストーム辺りが調合した麻薬などの類だろう。冗談じゃないとハルドは思いながら、ネックスを操る。早くアメノミハシラに着かなければ自分は薬漬けにされるという危機感がハルドにはあった。

 
 

アルバ・ジン・サハクは地球連合軍そしてクライン公国軍のからの散発的な攻撃に苦しめられていた。
オーブでの防衛戦の敗北後、実家のサハク家に戻ってきたアルバであったが、すぐに戦闘へと身を投じることになった。オーブという国の最後の砦であるアメノミハシラを守るために。
「く、世界はそんなにも、オーブを敵視するのか」
アルバは地球連合軍の量産型MSを乗機のM4アストレイゴールドフレームの右腕のシールドに内蔵されたブレードで一刀両断にすると、即座に別の機体に対して、シールドに内蔵されたビームライフルを連射し、撃墜する。
M4アストレイゴールドフレームの右腕のシールド内部には様々な武器が内蔵されている。これにより、ほぼ全ての距離で戦闘が可能だった。
「アルバ様、クライン公国軍が迫っております。一時撤退を」
アルバはサハク家の生まれであり、次期当主。アメノミハシラの責任者の一人であった。そのような身分であれば、危険な戦場であれば引くことも重要である。だが、アルバはそれを選択できない男だった。
「オーブの将兵が命を賭して戦っているこの戦場にて、アルバ・ジン・サハクのみが引いてなるものか!我こそはオーブの守護神ぞ!」
そう叫び、アルバは視界に入って来た大量のクライン公国軍へと突撃していった。
その直後だった。どこからか分からない、大量のミサイルがクライン公国軍の部隊を消し飛ばし、高出力のプラズマ砲がクライン公国軍の戦艦を貫き、轟沈させた。アルバは何事かと思った。地球連合軍の仕業とは思えない鮮やかな手並みだったからだ。
そうアルバ疑問を抱いた瞬間、アルバのゴールドフレームの横を大量にブースターを取り付けた機体が通り過ぎた。
何者、今のオーブに対して援軍を差し向けてくれるような組織や集団などあるはずが無いとアルバが思った瞬間だった。文章メッセージがアルバに届いた非常に短いメッセージだった。
「我、援軍なり」
ハルドはネックスのコックピットで死にそうになりながら、メッセージを打った。声で伝えなかったのは、機体のGが凄まじく肺が圧迫されて声が出せないのと、
新しいアーマーが何を思ったか、喉に直接、針を刺しており、さらにその刺し方が適当で声帯に傷を負ったためだった。
「援軍、感謝する!敵の襲撃もしばらくは無いはずだ。一度休まれよ!」
アルバの声が聞こえたが、ハルドとしてはそう簡単に休めない。ありがとう、休ませてもらうよ、と言って急制動をかけた瞬間にハルドの身体はGに潰されて死ぬ。制動をかけるにはネックスを減速させなければならなかった。
「我、機体関係故、減速必要、周回減速」
ハルドは、そう文章メッセージを送ると、ネックスの速度をゆっくり落としながら、アメノミハシラの周りを回る。
確か元は機動エレベーターのステーションの一つとして建設されていたのだと思い出した。ベースは綺麗な円形を描いているが、その周囲にゴテゴテと色々な区画がついたのは時代の流れかとハルドは思った。
減速は粗方完了したかとハルドは思った。すると、金色の悪趣味と言うかなんというか分からないM4アストレイがハルドのネックスを誘導していた。ハルドはその誘導に従い機体を移動させる。
アメノミハシラのMS発進エリアは思ったより巨大で、普通の機体よりもはるかに巨大なネックスABを楽に収容できた。ハルドはアメノミハシラにようやく到着したことで、大きく息を吐いた。
全身薬漬けで身体中注射針だらけだが、とりあえず任務を果たせたことを良しとすることにした。ハルドはとりあえず機体を降りることにした。
すると、機体のコックピットハッチの前には人だかりが出来ており、ハルドはコックピットのハッチを開けた瞬間に多くの人々に囲まれることとなった。
「援軍感謝する!筆舌にも尽くしがたい思いだ!」
短髪で赤毛の男がハルドの手を握ってきた。こちらはアーマーのバイザーも上げてない、見た目は怪人かMS状態だというのに、まぁ色々と思うところがあったのだろうと思い、ハルドはアーマーのバイザーを上げた。その瞬間だった。
「がはっ」
ハルドは血を吐いて意識を失った。

 
 

ハルドが目覚めたのは野戦病院のベッドのようだった。周囲にはけが人ばかりだった。
「あーあいいううええ?」
ハルドは何となく声を出そうと思ったが、上手く声が出なかった。おそらく、あのアーマーのせいだと思った。声帯が傷つけられて声が出ないのだ。
「だめですよ、喉に穴が空いて声帯も傷ついている上に肺に穴が空いているし、栄養剤などの多量投与です。動くのはお勧めできません」
ハルドが目を覚ましたのに気づいた医者がそう言っても、ハルドには仕事があった。とりあえず紙とペンらしき物を調達し、偉い人間に会わせろと道行くに人に尋ねた結果、作戦司令部に辿り着いた。
作戦司令部は重苦しい雰囲気だった。真ん中には赤毛で短髪の男が悔しそうな表情でいた。
「やはり、どちらかの軍門に下るしか生き延びる道は……」
参謀らしき男が言うが、赤毛の男はその男を睨みつけた。
「オーブは独立と自治を何よりとしてきた国だぞ!そんなことをして祖先の御霊に恥ずかしいとは思わないか!」
そんな風に赤毛の男が叫んでいた時にハルドは、周りを気にせず、どっしりと作戦司令部の空いていた椅子に座る。
「別にどちらかの軍門に加わる必要はない」
ハルドは声が出せないのでペンで紙に字を書き、赤毛の男に渡した。
「貴公は援軍に来てくれた……、しかしどうして喋らないのだ?それに何と書いてあるか分からないのだが」
ハルドは自分が達筆すぎることを忘れていた。達筆すぎて読めないのである。幼少期に散々仕込まれたせいで、今でも異常な達筆なのであった。そして喋れないことに関しては、喉を指さしてから、指でバツ印を示すと赤毛の男は察してくれた。
ハルドは書き直して、赤毛の男に渡すと、赤毛の男はハルドに対してすがるような目を向けた。ハルドはクリスから事前に渡されていた同盟締結の書類と自分のメモ書きを赤毛の男に渡した。
「クランマイヤー王国は地球連合の後ろ盾を持つ国だ。クランマイヤー王国と同盟を結べば間接的には地球連合の味方になるが、それによって地球連合に直接支配されずに済む。独立と自治を守るにはこれしかないと思うが?」
ハルドは同盟締結の書類を持ったままの赤毛の男が考えるのを見守った。見守っている中、ハルドはとにかくティッシュが欲しくなった、タンのようなものが喉に絡んでしかたない。
「ティッシュない?」
ハルドはメモをにそう書いて、適当な人たちに見せるとすぐにティッシュを貰えた。これで良かったと思い、ハルドは咳をしてタンを出した。その直後ハルドはサーッと顔面の血が引くのを感じた。
ティッシュにはタンではなく大量の血が付着していた。血を見るのは慣れているが、血を吐くのには慣れていないハルドは若干の焦りを感じた。
そんなハルドの焦りを知る由もなく、アルバはひたすらに悩んだあげく、答えを出した。
「やはり駄目だ!地球連合は仮にもオーブ本国を侵略し征服した相手だ。間接的とはいえそんな奴らと肩を並べることなど、私には……っ!」
そう言いながらもアルバが決断をまだ悩んでいるのは、表情から明らかだった。ハルドは何でもいいから早くしてくれねぇかな、と思っていた。先ほどから咳をするたびに血を吐いており、ハルドの横には血まみれのティッシュが山のようになっていた。
「もういいじゃねぇか、昔のことは置いとこうぜ。それより今を生き延びることを優先しようぜ」
ハルドはメモ書きをアルバに投げ渡した。アルバはそのメモ書きを見た瞬間に顔を怒りに染める。

 
 

「貴公はよそ者だから分からないだろうが、我々にも誇りがというものがある。そう簡単に割り切れるものではないのだ!」
そうアルバが叫んだ瞬間、ハルドはとりあえずアルバの顔面を殴り飛ばした。
「うるせぇ、さっさと同盟締結の書類にサインしろ」
ハルドは殴られ、床に座り込んだ状態のアルバにメモ書きを投げ渡した。ハルドからすればアルバらの誇りなどどうでもよく、口から大量に溢れてくる血の方が問題だったので、さっさと解決してもらいたかったのだった。
「貴様ぁーっ!」
アルバが怒りに任せてハルドに向かってくるが、甘いとハルドは思った。
ハルドは体重を乗せたローキックをアルバの太ももに叩き込み、その痛みと衝撃で足が止まった瞬間、顔面にジャブを二発、そしてストレートのコンビネーションを叩き込み、アルバをノックアウトした。
その瞬間に参謀らしき男が飛びかかって来たが、ひじ打ちを顎に決めて、一撃で倒し、別の男は股間を全力で蹴り飛ばした。
よっしゃ、どんどんかかって来い。ハルドは絶好調だった。口からは血が止めようもなく溢れているがテンションは最高潮だった。とりあえず司令部の全員をブッ飛ばす。そしてむりやり同盟締結の書類を書かせればいいとハルドはそういう結論に達した。
そして実際に全員を殴り倒したあとだった。
「やめんか!」
うるせぇ!ハルドは声のした方に向かって飛び蹴りを放ち、声の主を一撃でノックアウトさせた。余裕じゃねぇか。そう思った瞬間がハルドの限界だった。血を吐きすぎたせいかもしれないとハルドは思い、クラクラとして床にしゃがみこんだ。
「父上!」
アルバが起き上がり、鼻から血を垂らしながら、ハルドが飛び蹴りで沈めた相手に対して叫ぶ。あ、親父さんなのね、ハルドは飛び蹴りを直撃させた相手を見る。しかし似ていない親子だなと思った。まぁコーディネーターなら別におかしくもないかとも思った。
「貴様、よくも父上を!」
お、やるか?とハルドは自分を見下ろしてくるアルバを見て思う。こちらは体力が限界なだけで、気力は充分だ。ぶっ殺してやるよ、とハルドの闘争本能は最高潮に達していた。その時だった。
「やめんか、バカ者ども!」
ハルドが飛び蹴りを当てた相手が、何とかといった感じで起き上がっていた。すかさずアルバが駆け寄り体を支える。
「使者どのには、どういうつもりでこのような狼藉を働いたのか尋ねたいものですな」
ハルドが飛び蹴りを当てた男は老年に入ったばかりの男性だった。ハルドはメモに書く。
「お前らがグチャグチャとうるさいから、黙らせた」
ハルドはメモにそう書いて見せる。
「グチャグチャとはなんだ貴様!」
アルバが怒鳴るが壮年の男性はまぁ落ち着けとアルバをなだめる。
「私はエルド・レム・サハク。サハク家の当主にして、このアメノミハシラの統治者である」
そりゃ、大層な身分だこって、とハルドが思った瞬間、ハルドは血を吐いた。ハルドはメモに書いて見せる。
「病気の類ではないので、ご安心を。喉と肺にちょっと穴が空いているだけです」
ハルドとしてはそれよりも、早く同盟締結の書類を何とかしたかった。
「アルバや、同盟締結の書類をここに」
「父上!?」
賢明な判断だとハルドは思った。ペンはこれを使ってくれと、ハルドはエルドに持っていたペンを渡した。
「これが同盟締結の書類か。しかし随分と古い上に、そちらの国の名前は既にかかれてあるようだが?それに日付も少し前のようだ」
それも苦肉の策だった。アッシュや姫を連れてアメノミハシラまで連れて行って書類にサインをさせたのでは間に合わない可能性が高いと悩んでいた時に、ミシィから思わぬ案が出たのだ。
「先に書いておけばいいんじゃないんですか?ドラマとかでも離婚の書類に先に名前を書いておいて机の上に置いておくとかいうパターンあるじゃないですか」
クリスはその案に乗った。そして書類が古いように見えるのは、真新しい紙に最新の日付だと地球連合に難癖をつけられる可能性もあるので色々と偽装工作をしたのだ。
アッシュは最後まで反対したが、クリスとハルドで押し切った。こちらにはユイ・カトーとストームという公文書偽造のエキスパートがいるので大した問題ではなかった。

 
 

「それに名前を書けば、アメノミハシラとクランマイヤー王国は同盟関係になる。とにかくやるなら早くやってくれ」
ハルドは意識を失いそうな状態だったが、必死でこらえた。
「しかし、父上」
アルバはまだ何か言いたそうだったが、父のエルドがそれを押しとどめる。
「誇りは大事だ。だがそれよりも大事にしなければいけないのは、今の国だ」
エルドはそういうと、書類にサインをした。これで仕事は終わりだな、とハルドは一瞬思ったがそう簡単にも行かないとすぐに思い至った。
「地球連合は引くぜ。間違いなくな。直接同盟関係のないコロニーを守る義理はないからな」
そうメモに書きアルバに渡すと続けてメモを書き。アルバに渡す。
「心配すんな。クランマイヤー王国の軍がこっちに最速で向かってる。安心しながら、少し耐えるぞ」
そのメモ書きをアルバに渡すとエルドから書類を同盟締結の書類を奪うと、ハルドは司令部付きのオペレーターに渡し、画像付きで地球連合軍の艦隊に通信を送れと命令をした。
「あの、私、アメノミハシラのオペレーターなので外部の方の命令はちょっと……」
そう言うと、ハルドは新しくメモを書いてオペレーターに見せた。
「グチャグチャ言うとお前のアソコにナイフをぶち込むぞ」
そのメモ書きと先ほどまでの暴力の現場を見ていた以上、オペレーターは従うしかない状態になった。
「ええと、文面は?」
「クランマイヤー王国と同盟関係にあるんで引いてくれって送れ、地球連合に対する優遇措置も検討しているって付けてな」
優遇措置という言葉を聞いてアルバいきり立って、ハルドに向かっていくがハルドは後ろ回し蹴りでアルバを迎撃した。
「美味しいエサでもつけなきゃ引かねぇだろ?少し我慢しろ」
ハルドはそう書いたメモ書きをアルバに放り投げる。アルバは歯を食いしばり屈辱を必死にこらえていた。するとアルバの父のエルドが穏やかな表情で息子の肩に手を置く。
「息子よ。辛いだろうが、綺麗事だけで済むほど我々の住む世界は洗練されてはいないのだ。時には淀みを飲み込むことも学ぶのだ」
つまりは清濁併せて飲み込んで、合理的に生きろよクソ坊ちゃん。ハルドは声が出ないので、せめて好き放題に考えて喋ったつもりになることにした。
「あ、あのー本当に文章を送っていいんでしょうか」
オペレーターはハルドの命令に従っていいのか、まだ考えあぐねていたようで、アルバとエルドに伺いを立てた。
「さっさと送れよクソ女。マジでナイフとf○ckさせるぞ」
ハルドはメモを渡しその上で、オペレーターの椅子の背もたれを蹴飛ばしたが、それがハルドの活動限界だった。ハルドは虚脱感を感じ、その場に倒れた。
あ、まずいなとハルドは思った。多分これは良くない倒れ方だ。身体を動かすのに必要な成分が根本的に足りなくなっているせいだとハルドは思った。
「文章の件は構わない。そのまま送ってくれ」
エルドはオペレーターにそう言うと、オペレーターは安心した顔で文章を打ち始めた。
その間、アルバとエルドはというと、床に倒れ、意識が朦朧としているハルドを見下ろしていた。

 
 

「使者とはいえ、常識的に考えてこれだけの乱行を起こしたのです。憲兵に独房まで連行させましょう」
「うむ、それがいいな。ただし、独房の中できちんと治療は行わせるように」
当然ですとアルバが言うと、憲兵が司令部に入って来た。アルバの指示によるものだろうとハルドは思った。
まぁこのまま連行されても良いとも思ったが、ハルドは憲兵というものが大嫌いだった。軍にいた時代に相当な回数厄介になっていたことが原因だった。なので最後の気力を振り絞ることにした。
ハルドはゆらりと立ち上がると、一番近くにいたアルバの鳩尾にボディブローを叩き込んだ。そして最後のメモを書いて放り投げる。
「これがクランマイヤー王国流の交渉術だ」
崩れ落ちるアルバの次はエルドだった。全く落ち度が無いのにもかかわらず、ハルドの裏拳を顎に受けて意識を失った。
ハルドは次に憲兵に目を付けると、一番先頭の憲兵に口の中の血を吹きかけた。それによって生じた明らかな隙を狙って顔面に右フックを叩き込み、一撃で昏倒させる。
次の憲兵は前蹴りを鳩尾に叩き込み、それとコンビネーションでハイキックを叩き込み床に沈め、三人目の憲兵は肘打ちで意識を刈り取り、四人目はボディブローで体がくの字になった瞬間頭を押さえ、顔面に膝蹴りを叩き込んだ。
「銃が無いと無理ですよ、こんな化け物!」
憲兵の一人が泣き言を言った瞬間に右フックを食らい、床に倒れ伏す。その直後だった。ハルドも限界に達し、床に倒れ伏した。ハルドは上出来だと思うことにした、死にかけの身体で相当な数を殴り倒した。そのことにハルドは満足して意識を失った。

 
 

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