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GUNDAM EXSEED_B_43

Last-modified: 2015-09-05 (土) 21:22:21

「トラブルになっていないか心配だ」
アッシュは最大速度でアメノミハシラへと向かうシルヴァーナのブリッジで、そんな言葉を漏らしていた。
「トラブルにならないわけがないだろう。アレを一人で行かせておいて」
ベンジャミンが何を言っているのやらといった調子でアッシュに言う。
「ハルドの狂暴性は並ではないからな、今頃交渉相手を殴り殺しているかもしれん」
冗談に聞こえないのがアッシュは本当に嫌だった。
「ハルドは昔から好戦的だったが、まぁ向こうがヘタを踏まなければ大丈夫だろう」
「ヘタと言うのは?」
アッシュは縋るような思いでベンジャミンに尋ねた。
「ハルドがウザいと思わなければ、極めて穏当にことは進むはずだ」
それは無理だとアッシュは思った。交渉事でウザいなぁと思わないで済むことなど、まず無い。とりあえずアッシュはハルドが向こうの代表を殴り殺してたりしなければいいなと思うのだった。

 

ハルドはアメノミハシラ内にある独房で目覚めた。幸い、拘束はされておらず、独房内では完全に自由だった。
「楽勝」
なんとなくそう思って言ってみたら声が出た。どうやら、相手方が治療してくれたのだろう。これなら、独房からの脱出もたいして困難ではない。ハルドは早速脱出しようと思った。
まずは部屋の観察であるハルドはとりあえず独房を観察すると、おあつらえ向きに通気口があったので、そこから脱出しようと思った。ハルドは跳躍して通気口に掴まると、もしもの時ために用意してある脱出ツールを差し歯になっている奥歯の中から取り出す。
歯の中に入るようなミニチュアサイズだが信頼性は高い。軍に所属していたの時代から愛用している道具だ。ハルドはミニチュアサイズの道具を器用に扱い、通気口を外すと、その中に入ろうとした、その瞬間だった。
「貴公は何をしているのかな?」
何度か聞いた声がして、ハルドは通気口の入り口にぶらさがったまま、相手の顔を見る。確かアルバとか言う、ここのお偉いさんの息子だったとハルドは思いだした。アルバの顔には湿布らしき物が大量に貼り付けてあった。
「貴公こそ、人に会う顔じゃないな」
ハルドは適当に返したが、そう言えばアルバの顔を何発も殴っていたことを思い出した。
「私自身は貴公には思うところが非常に多くあるが、脱走は少し待ってくれないかな?」
そう言われ、ハルドは通気口から手を離し床に着地した。そして一本指を立てて言う。
「一分待ってやる。一分以内に説明しろ。それで俺が理解しきれなかったら、ここを脱出して、お前をぶち殺す」
何か当初の目的と違ってきているような気がするが、基本線は間違えてないはずだとハルドは思った。
アルバはあまりに理不尽すぎないか、とも思ったが、使者には常識的な人間を立てるのが普通、それを考えればクランマイヤー王国の人間はこの男を基準に鑑みれば、超好戦的な戦闘民族という可能性がある。
つまりは、この男の言動はクランマイヤー王国的には常識なのだ。他民族への理解を示すのも指導者としては重要と思いアルバは一分以内に説明することにした。

 
 

「地球連合軍は帰った。しかし、クライン公国軍は残っており、行動を起こそうとしているので協力してほしい」
よし、一分以内に言えたぞ。とアルバは内心でガッツポーズをした。これで相手の反応はどうかと見ると、男はまんざらでもない表情で不遜に腕を組んでいる。
「いいじゃねぇか、戦争、望むところだぜ」
どうやら、協力してくれるようだった。やはりクランマイヤー王国という国の人間は戦闘民族のようだとアルバは確信を抱いた。アルバは早速、独房を開けてハルドを出す。そして、肝心なことを忘れていたのでハルドに聞いた。
「貴公の名前を教えてくれないか?」
「ハルド・グレン」
ハルドはそれだけ言うと、さっさと歩き出した。
「ハルド殿、MSハンガーは、そちらではない、こちらだ」
アルバはハルドが階級を言わなかったことに若干の疑問を抱いたが、自ら考え結論を出した。ハルドという人物を見るにクランマイヤー王国は戦闘民族であり、階級などには縛られないのではないかと。
かつて、ザフトという軍隊があったが、その軍隊も階級はなかったはず。そしてザフトはとても精強な軍隊であったことをアルバは思い出し、それを踏襲しているのかと、勝手に納得したのだった。

 

「階級どうしましょうねぇ、そろそろ決めないとまずいでしょう」
シルヴァーナのブリッジではクリスがアッシュにノンビリとした調子で話しかけていた。
「そういえば階級は考えてなかったな。まぁそのうち決めればいいだろう」

「敵軍に動きあり、クライン公国部隊が結集。第一陣がアメノミハシラへ進軍を開始しました」
オペレーターの声を聞きながらハルドは口元に笑みを浮かべながら言う。
「地球連合がいなくなったからって調子に乗り出しやがったな。思い知らせてやるか。俺が先手をかけて敵を攪乱させる。アルバは後続部隊を率いて追い討ちをかけろ」
そう言うと、ハルドは着たくはなかったが、仕方なくアーマーを装着した。
「んじゃ、行ってくんので、あとよろしく」
そう言うと、ハルドはMSハンガーに収めてあるネックスABに乗り込むのだった。
やはりクランマイヤー王国、戦闘民族か、とアルバは思った。真っ先に危険な機体に乗り込んで敵に単騎突撃するとは並の勇気ではないとアルバは感服するのだった。
「ハルド・グレン、ネックス。出るぞ!」
ハルドの発進の声と共に爆発的な加速でネックスが発進していった。アルバはその後ろ姿を見て味方に檄を飛ばす。
「我々も後れを取るな!各自、出撃だ!」

 

慣れてきたか?ハルドはネックスの異常な加速と身体にかかる強烈なGを受けながら、ふとそんな風に思った。
だが、全くの勘違いで、ハルドが大丈夫と思った瞬間だった。やはり意識が飛びそうになり、恒例の怪しい薬剤が、身体に注入される。
完全に薬漬けだなと思いながら、機体のメインカメラを最大望遠にする。とにかく機体の速度が尋常ではないないので、最大望遠で見ている距離まで一瞬で到達してしまうので、とにかく遠距離を確認しながらでないと戦いづらくてしかたなかった。
視界には艦から発進しようとしている、クライン公国の量産MSザイランが見えた。ハルドはいけるか?と考えながら、ネックスの腕に直に接続されているロングライフルを発進直前のザイランに狙いを定めた。
ロックオンのマークも出ない距離だが、当たる可能性は充分にある、ハルドは超高速で動く機体の中で身体にかかるGと格闘しながら、指を僅かに動かしながら精密に狙いをつける。
いけ、ハルドがそう思ってトリガーを引いた瞬間、ロングライフルから高出力のビームが発射され、少しの間を置いて、発進直前のザイランを撃ちぬいた。
ご愁傷さんとハルドは思う。発進直前であったためザイランはMSハンガーの目の前で爆発した、これによって敵艦のMSハンガーに多少のダメージはいっただろうとハルドは思った。
そして、そんなこと思っている内に機体は敵の一団に近づいている。敵はこちらを高速で動くミサイル程度にしか認識できていないだろうとハルドは思いながら、敵の一団の真ん中を高速で突っ切った。

 
 

クライン公国の部隊は、それでようやくネックスの存在を正しく把握したようで慌てて機体を振り向かせるが、ハルドはネックスの広角稼働ビームキャノンで、そんなノロマに背中を向けてままビームを撃ち、敵MSを数機撃破。
問題は次だとハルドは思う、敵の一団のど真ん中を突っ切ってしまったので、旋回しなければならない。どうやって旋回したものかと考えるが旋回は普通に旋回するしかないという結論に至る。とにかく減速、そして機体を右手側に180度旋回。
させた瞬間、ハルドは血を吐いた。身体が耐えられなかったということだろうが、これで敵の後ろはとれたので良しとすることにした。
ネックスは再び猛烈な加速で敵の一団に向かうと、戦艦に向けて背中に装着された対艦プラズマキャノンを発射し、MSなどのその他には16連装ミサイルポッド×4基の64発のミサイルの雨を浴びせかけて、再び敵の一団のど真ん中を突っ切って行った。
プラズマキャノンの直撃を受けた戦艦は轟沈、大量のミサイルを浴びたMSなどは大破している機体こそ少なかったが、どの機体にも確実なダメージがあり、戦闘能力は明らかに低下していた。
もう一往復いくか?身体はさっきの旋回でボロボロだったが、敵の集団に致命的な打撃を与えるには、あと一往復は必要だとハルドは思った。だが、その必要はなかった。
「オーブ軍!我に続け!」
アルバのゴールドフレームが先頭を切って敵の集団に飛び込んでいったのだ。そのせいで、状況はアメノミハシラのオーブ軍とクライン公国軍の乱戦状態となっている。この状態ではネックスの高機動で敵を攪乱し、殲滅するという戦い方はできなかった。
「すこし、休憩。俺の機体じゃ乱戦は無理だ。援護射撃に入る」
ハルドは味方にそう伝えるとネックスをゆっくりと減速させ、ゆっくりと旋回させ。機体の砲を敵集団へと向ける。そして、撃てるだけの射撃兵装を撃ち続けた。
「援護感謝する」
「必要ねぇよ」
とりあえず、第一陣はこれでしのげるはずだとハルドは、思った実際にハルドの前でクライン公国軍は壊滅していった。だが、こちらも、完全に無事という訳にはいっていない損傷した機体もあれば撃墜された機体もある。
戦力の一斉投入をしてこないマヌケな指揮官が率いている部隊だから、何とかなっているが、それでも、このまま続くとマズイとハルドは考えていた。
ハルドはこの戦場のこれからを考えながら、機体をゆっくりとアメノミハシラへ帰投させた。
「感謝する。ハルド殿おかけで敵を退けることが出来た」
ハルドが機体から降りるとアルバがすぐに駆け寄り、ハルドに心からの感謝の言葉を述べた。ハルドとしては楽観視できる状況でもないので何とも言えなかった。
「まぁ、第一陣を偵察がてらに出して、第二陣で総攻撃もあるからなんとも言えねぇな」
ハルドはアーマーを着たまま言う。脱いだら倒れるのは、間違いないだろうと思いハルドはこの戦いが終わるまでは脱がないでいようと思った。
「ハルド殿から見て戦況は悪いか?」
アルバが尋ねてきたが、ハルドは肩を竦めて言う。
「戦況も何も、まだマトモな戦争になってないんだ。戦況も何もねぇよ」
そう言うとハルドは大声を出し、MSハンガー内のパイロットに伝える。
「班分けキッチリしとけ!休憩、待機、出撃の三班だ。休憩の奴は状況がよっぽど悪くならない限り必ず休ませろ!戦場じゃ疲労したパイロットから死んでくぞ!いいな!?」
ハンガー内にいたパイロットは皆ハルドに敬礼し、ハルドに言われた通りに班分けを行っていた。
「悪いが、アンタと俺は基本出撃しっぱなしだ。戦力的に代わりがいねぇからな。その代わり休みたくなったら言え、俺が二倍働いてやるよ」
ハルドはアルバの肩を叩き、そう言うと、機体の整備作業を手伝うのだった。
「なるほど、あれこそが本当の武人というものか」
アルバはハルドに対して感服を禁じ得なかった。

 
 

クライン公国軍の第二陣は第一陣を殲滅してから、数時間後に襲撃をかけてきた。それに対応するために、ハルドはすぐさま出撃するが、ハルドは戦場に出た瞬間、敵の圧力が弱いと感じたのだった。
「逐次投入って感じでもない。気持ちが悪いな」
そう思いながら、ネックスを操り敵の第二陣へと迫るが、明らかに数が少ないと感じた。
「一陣と二陣で、様子見で本隊を投入か?意味がない。こちらの戦力はほとんど把握できてるはずだ」
ハルドはネックスを操り敵を撃墜しながらも、敵の戦術を考えていた。ハルドは嫌な予感がしてアルバの部隊と共に敵を殲滅させると。すぐにアメノミハシラへと戻るのだった。
「意味のない攻撃を二回も繰り返してるってのがどういうことかってことだ」
ハルドは機体を降りるとすぐにアルバに話しかけた。
「俺なら散発的な攻撃で注意を外部に向けた状態で中を崩す」
「中を崩すというのは?」
アルバの質問にハルドは急いで答える。
「潜入工作員、もしくは内通者を使っての施設爆破や要人暗殺だ。動かせる憲兵いやそれ以外でも良い、とにかく人ををすぐに動かしてアメノミハシラ内を捜索させろ」
ハルドはそう言うと、アルバに行けと命令した。そう命令した直後だった。敵の第三陣が迫ってきているという放送が流れたのは。第二陣の後は速攻ですかとハルドは呆れる思いだった。いやらしい戦術を取る相手だとハルドは思った
踊らされてるな。ハルドはそう思った。おそらく、こちらに考える隙を与えないようにするために色々と画策しているのだろう。
「同じ阿保なら踊らにゃ損損ってか」
ハルドはくだらないと思ったが敵の策にしばらくは乗ってやろうと思った。こちらは三交代制で体力を温存させてる、鬱陶しい攻撃もなんとかしてやろうではないかと、ハルドはMSに乗り込んだのだった。

 

……さて、これで、自分は何回出撃したのだろうとハルドは朦朧とした頭で考えてみた。少なくとも5回は出撃したぞと思い、MSのコックピットから降りる。
アルバは限界のようで、何人かが医務室に運びこんでいった。敵の攻撃はあざとさを増している戦力の逐次投入は愚策だと思っていたが、明確な目標と充分な戦力を持って行うなら有効かもしれないとハルドは思うようになっていた。
先ほど出撃した時は、最初の敵は全てダミーで、逆方向から部隊が襲撃してきた。敵は明らかにこちらの体力と気力を折ろうとしているとハルドは考えていた。
体力と気力が折れれば戦意は簡単に喪失するということを知っている相手だ。それに加えて搦め手を使ってくる相手。嫌な相手だとハルドはつくづく思うのだった。とにもかくにも頼りにできる戦力が足りな過ぎるとハルドは思った。
ハルドはシルヴァーナとクランマイヤー王国の面々の到着がすることをがらにもなく祈った。

 

「さて、どうなるかしらね」
リゲルト・アッシナー中将は戦闘の状況を考えながら、策を無数に練っていた。
「私の読みだと、もう少し頑張るか逆転をするわね、つまり私は負け戦にいるわけだけど、どう思う、アンドー准将」
リゲルトの隣にはロウマが座っていた。ロウマは炭酸飲料を飲みながら中将の質問に答える。
「アッシナーのおじさんが、自分でそう言うなら負け戦なんでしょうがね。俺は負け戦にここまで気張る感覚がわかんないなぁ」
ロウマは階級が上だがアッシナー中将には気安く話していた。
「そらわかんないわ。ロウマ君は一対一の遊びが好きだけど。私は、戦場で繰り広げられるドラマが好きなんだから、アクション映画好きと恋愛映画好きくらいの差があるね」
そういうもんかと適当に思いながらロウマは飲み物を口に入れていた。
「ま、しばらくは相手が疲れるのを待つ。人間は疲れると本性が出るしね。そういうので戦場が動くを見るのも面白いもんよ」
まぁ、そういう感じなのはロウマも嫌いではない。個人的にはアッシナー中将も嫌いではないのでノンビリ観戦といった感じだ。ただまぁ、戦場にちらちらと見たことがある機体が映っているのだけは少し気に入らなかったが。

 
 

「すまないハルド殿、気を失っていたようだ」
アルバが医務室から戻ってきてハルドに話しかける。アルバが医務室に行ってから二時間だが、その間にクライン公国軍の襲撃が二回あった。しかし、どれもアメノミハシラからの部隊が接近すると即時撤退で空振り、出撃の疲れだけが残るという感じだ。
「まぁ、気にすんなよ。こういう戦場は初めてだろ」
そう言うハルドはアーマー装着したままだった。誰にも言ってなかったが肺の辺りに液体が漏れているという感があった。おそらく血だろうとハルドは考えていたが、アーマーを脱いだ瞬間に自分は間違いなく気を失う予感がしたのでハルドは我慢していた。
ハルドは言う。
「狙いはこっちを疲弊させることだろう。頑張れませんってなったら攻めてくる。だから俺らは気を張ってなくちゃいけねぇんだ」
ハルドはそう言った瞬間、若干の違和感を覚えた。俺たちとは誰なのか、現場で戦っているパイロットは戦闘があるから気を張っていられるが、そうでない人間は?民間人はどうだ?政治家は?そう考えた瞬間、ハルドは立ち上がり、走り出した。
急に走り出したハルドの後をアルバがついていく。
「お前の親父の部屋は?」
「案内します!」
なにか火急の用だと思ったのだろう、アルバは迷いなくハルドを自分の父の執務室へと連れて行った。
「悪いな」
ハルドは走りながら、そう言うと、アルバの父エルドの執務室の前に辿り着くと、扉を蹴破った。
「こっちは負けてねぇぞ、コラぁ!息子がぶっ倒れたくらいでヘタレんな!」
ハルドが急にそう叫ぶとアルバは何事かと思い、父の机の方を見ると何かの条約書らしき物が見えた。アルバはどうしてもそれが気になり手に取り、驚愕した。それはクライン公国への降伏の書状だった。
「父上!どういうことですか、これは!?」
アルバは激昂して父を問い詰める。アルバの父エルドは、息子に問い詰められた瞬間一回り小さくなったようにハルドには思えた。
「お前のためなのだ、アルバ。血は繋がっていなくともお前は息子。お前が戦場に出るたびに私の心がどれほど傷ついたか、お前が倒れたと聞いた時、私がどんな気持ちだったか分かるか……?」
親と子の間に愛情があるのは結構だが、それを戦争に持ち込まないでくれろハルドはドライな感情で思い、部屋を後にしたのだった。
「クライン公国軍、アメノミハシラに接近、全方位からです」
クソが、タイミングを読みやがったなとハルドは思った。降伏の書状を出せばよし、出さなければ包囲殲滅するつもり。だが、いままで搦め手ばかり使ってきた指揮官が正攻法で来るかという疑問がハルドにはあった。

 

「最近のダミーって高性能でいいね。こうやって騙せるんだから。反応は全方位だけど、本物は二つぐらいって、私は節約家?」
「節約家はケチって言われるのが相場だね」
アッシナー中将とロウマはくだらない会話を交わし、アメノミハシラの動きを様子見するのだった。
「多分、降伏はしないかな」
ロウマが言うとアッシナー中将も頷いた。
「あの父親、息子に弱そうだしね。結局に息子に押し負けちゃうんじゃないかな」
アッシナー中将はそう思って、部隊をアメノミハシラ全方向に展開し、圧力をかけていたのだった。
「こうやって色々して、親子のドラマみたいなのが想像できるのが戦場の醍醐味ってやつよ」
そう言って、アッシナー中将は包囲を狭めるように命令を下した。

 
 

「周囲はほとんどダミーだ。気にすんな。とにかく。本命を探せ!」
ハルドはネックスで出撃すると同時に出撃していたMS全てに命令を下した。
「ダミーに紛れて攻撃をしてくるのがある。それを見極めろ!」
言っても難しいだろうとハルドは思ったがそう言うしかなかった。だが、それもアッシナー中将の思惑通りだった。
「ダミーって邪魔よね。だからダミーを壊そうって話しになるじゃない。だ・か・ら」
ハルドが邪魔だと思い戦艦のダミーを破壊した瞬間だった。破壊したダミーの中から無人の自動砲台が現れ、ビームを方向も定めずに乱射する。
「こういう仕掛けをしてみました」
いいなぁ、俺も今度やろうとロウマは思うのだった。
「くそ、ヘタにダミーに手を出すな砲台が現れて面倒になる!」
ハルドがそう言った時にはもう遅かった。MSのダミーにも小型の砲台は仕込まれており、破壊されると起動し、戦場は滅茶苦茶に乱射されるビームによって大混乱に陥っていた。
「くそが、これだから戦場慣れしていない奴らは」
そうハルドがぼやいた時だった。何者かが通信に割り込んで来た。
「では戦場慣れしている人間を送ってやろう」
聞きなれた声、それはベンジャミンのものだった。その声に遅れ、シルヴァーナ、銀色の鳥が戦場へと飛びかかった。

 

「シルヴァーナは、アメノミハシラを中心に外周に対し円を描き、中心に向かってミサイルを斉射。ダミーを炙り出す」
ベンジャミンはそう指示を出し、シルヴァーナは最高速度のままアメノミハシラ周囲を旋回し、ダミーの集団に対しミサイルを斉射する。問答無用、容赦無し、それがベンジャミンの流儀だった。
そして高速で旋回軌道をする戦艦から続々とMSが発進してくる。最初はセインのオーバーブレイズガンダム。次にアッシュのキャリヴァー、次はジェイコブのザバッグでその次は弟のフレイド、そして妹のマルトスとバリエーション豊富な機体が発進した。
発進した機体は、すべてダミーから現れた砲台を破壊するのに注力していた。その中でシルヴァーナは敵の戦艦のを探し、そして見つけた。
「隠れながら接近するとは卑怯だな、思い知らせてやれ。卑怯者は地獄に落ちると」
そうベンジャミンがいうと、シルヴァーナの対要塞プラズマブラスターが発射され、敵艦は一発で真っ二つになり轟沈していった。
ハルドはアメノミハシラの周囲を旋回し、敵艦を探し、ついに見つけた、護衛のMSが出てくるがミサイルポッドの斉射で殲滅し、そして機体を減速させ。戦艦の前に機体を留めた。「面倒をかけさせてくれたお礼をしなくちゃなぁ、おい!」
そう言って、ハルドはネックスの武装を順番に戦艦に浴びせ、とどめにプラズマキャノンで戦艦を貫通させ、轟沈させたのだった。

 

「まぁ、こうなるかぁ……」
アッシナー中将は当然といった感じで作戦の失敗を受け入れていた。アッシナー中将には独特の考え方があった。それは、ヒーローは必ず来るというものである。一度は来なくても次は来る。次に来なくても、その次、またはいつか来るというものであった。
「ヒーロー来ちゃったみたいだけど、ロウマ君はどうする?」
「もう少し見物させてもらいますよ。どうやら知り合いみたいなんで」
ここから先は負け戦しかないというのに奇特なことだとアッシナー中将は思った。
「私は本気で戦争をやらない主義なんで、そこら辺は理解して見物してね」
アッシナー中将は戦争がどうとか勝敗がなんだということに興味はない。アッシナー中将は戦争がつむぐ人間ドラマに興味があるのだ。だから戦争の勝敗などどうでも良く、本気で戦争を考えたこともなかったが、それでも今は中将の位にいる。
どれだけ遊びでやっても戦争上手、それがアッシナー中将という男だった。

 

「援軍が一隻だけとは……」
アルバは援軍の到来に歓喜したが、それも一瞬だけだった。アルバはシルヴァーナという艦にアメノミハシラを解放したが、その艦だけでなんとかできるとは到底思えなかった。
「色々、思うところはあるだろうが、俺の仲間を信用しとけ後悔はさせねぇ。ついでに俺は限界だ。休むぞ」
ハルドはアルバに、そう言うとハルドのネックスはアメノミハシラに帰投し、すぐにハルドはコックピットから降りて装着しているアーマーのバイザーを上げた。その瞬間に当然というかなんというか、ハルドは血を吐いて意識を失ったのだった。

 
 

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