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GUNDAM EXSEED_B_47

Last-modified: 2015-09-05 (土) 21:35:00

ユイ・カトーらは初っ端でつまづくことになった。工業区画の鼠はメインコロニーの鼠より賢く、バリケードを築き、要塞化するすべを心得ていた上に全員が暗視スコープを装備していた。
対してユイ・カトーらは胸元に頼りないライトを装備していただけだった。暗視スコープ購入の予算を通しておけばよかったとユイ・カトーは今になって自分のケチさによって追い詰められた状況に陥っていた。
「誰か、グレネード」
どこで土嚢を見つけてきたのか、鼠は土嚢を積み上げ、極めて簡易的な陣地を築いている。ああいうのはグレネードで吹き飛ばすのが効率的だ。
しかし、ユイ・カトー率いている歩兵は誰もグレネードなど持っていなかった。そもそもが民兵でみな私服に銃という装備なのだ。
「だー、撤退撤退!」
ユイ・カトーらは管理棟まで一目散に撤退し、管理棟に入るや否や叫ぶ。
「戦える人来てくださーい!あと、爆弾!爆弾を下さい!」
どうしたのかと思ってガーンズがやってくるとユイ・カトーはガーンズに事情を説明した。するとガーンズは工場の作業員の中で戦闘訓練に参加していたものを呼び出し、ユイ・カトーの部隊に加え。工業用の爆発物を10キロほど渡したのだった。
工業用の爆発物は粘土のような物で、雷管をさして雷管のスイッチを入れると三秒ほどで爆発するそうだった。話しを聞きユイ・カトーはとりあえず、爆発物を千切ってこねて球形にして雷管を刺してみた。
これで使えると言うので、スイッチを入れて窓の外に投げてみた。すると見事に爆発したのだった。ユイ・カトーはこれは使えると思い、自分が率いる歩兵全員に爆発物を球形にこねるように命令した。
ユイ・カトーはアクセントも必要だと思い、使わない釘やネジなどはないかとガーンズに尋ねたのだった。ガーンズはすぐに山ほど錆びた釘やらネジなどその他に金属片が詰まった箱を持ってきてくれた。
ユイ・カトーは部下に命令した。爆発物の中に釘やネジなどを埋め込めと。これで楽しいことになる。昔、ハルドが市街戦の最中に生身でやっていたことの真似だ。敵には少し痛い目に合ってもらおうと、ユイ・カトーは決めたのだった。

 

「よし、投擲!」
ユイ・カトーらの部隊は先ほど作ったばかりの手榴弾もどきを敵の簡易陣地めがけて、数個投げた。タイミングが良くなかったため、空中で爆発したものもあったが、結果はおおむね良好だった。
爆発によって、釘やらネジやらが高速で飛び、鼠に突き刺さる。それに当然、爆発物なので爆発して吹き飛ぶ人間もいる。
「よし、撃て撃て!」
ユイ・カトーは率いる歩兵に命令してとにかく銃撃を浴びせまくった。ユイ・カトーの率いる歩兵は頼りない明かりしか発しない胸のライトのせいで、暗闇に包まれた状態のコロニーでは、鼠に先手を取られることが多かった。
だが、そこは歩兵の戦意でカバーし、それと手製の爆弾の威力で補った。
「とりあえず、敵の方に向かって引き金を引け!」
ユイ・カトーはそれしか命令しなかった。というか出来なかった。そもそも多少は戦闘力があるだけの非戦闘員なのでどうしようもない。だが歩兵の戦意は強烈だった。故郷と愛する仕事場を蹂躙された怒りに震えていたのだ。
兵士たちの戦意に押され、鼠たちは徐々に後退していく。だが、それは失敗だった。交代した先には虎が待ち構えていたからだ。
虎(フー)は悠々とした歩みからやがて早歩きになり、そして疾走に変わると誰の目にも捉えられなかった。虎は消えたように駆け、その手足は一撃で人間の命を奪い去る。後退した鼠たちは皆、虎の手によって狩られたのだった。

 
 

「これで、このあたりの鼠はだいたい狩ったはずですが、どこに潜んでいるのか分からないので、部隊を半分に分け、避難所の警備をしてください」
ユイ・カトーはそう言うと、虎を伴って管理棟に戻ると、ガーンズに電力システムと空調システムの修復の件を相談したのだった。
「それに関しては、こっちでも修復を考えていたところだ。だけど奴らのせいで出るに出らんなくてよ」
やはり鼠が邪魔だったかとユイ・カトーはイラつきを覚えた。
「とにかく工員が修復にあたる。もちろん俺もな」
「それは良いんですが、そのシステムはどこなんですかね?」
と、ユイ・カトーは疑問を口にした。するとガーンズは指を下に向けたのだった。
「工業コロニーの地下ブロックだ」

 

「私たちも鼠みたいな感じですね」
ユイ・カトーと彼女が率いる部隊、そしてシステムの修復を担当する作業員は薄暗い地下道を虎(フー)の後ろに隠れながら進んでいた。だが、進んでいると急に虎が口を開いた。
「カクレル、イミナイ」
虎(フー)がそう言った直後だった。ユイ・カトーは左の二の腕に熱と激痛を感じ、地下道の地面を転がった。銃撃を受けたのはすぐに分かったが、なぜ当たったのかが分からない。虎を盾にしていたのに。そんなことを考えながら、ユイ・カトーは這って、物陰に隠れる。
「ダカライッタ、イミナイ」
ユイ・カトーは理解した。この男は自分が後ろにいるのに普通に弾をよけやがった、と。
「ふざけんな虎!避けないで、銃弾掴むとかしろ!」
そう叫ぶと、虎は何を言っているんだ、この女はといった顔になった。
「ジュウダンツカム。ムリ。ジョウシキ、カンガエロ」
銃弾を避ける化け物に常識を説かれた。冗談じゃない。腕は痛いし、もう泣きたいと思って、ユイ・カトーは叫んだ。
「衛生兵!衛生兵!」
しかし返事も何も無い。よくよく考えれば衛生兵なんていないわな、と現実に帰りユイ・カトーは傷を見た。激痛が止まらないうえ、左腕が全く動かない感じからすると骨は逝ってるなぁと思った。
左の二の腕には綺麗な銃創があった。ユイ・カトーは銃創の中に思い切って、指を突っ込んでみると、弾が骨を砕いて止まっているのが分かった。
「貫通しててよー」
ユイ・カトーはゲンナリしたが、そのままでいるわけにもいかず、とりあえず自力で応急処置を施し、止血した上で、鎮痛剤を身体に注射し、何とか動けるようになった。
「おい、嬢ちゃん大丈夫か?」
「大丈夫なわけあるかー!」
ユイ・カトーは叫びながら手製爆弾を敵つまりは鼠の集団に向かって、投げた。地下で爆発はヤバいような気がしたが、構っていられなかった。
手製爆弾の爆発の衝撃は地下道全体に広がり、ユイ・カトーも爆風を肌で感じたのだった。
「ほら、撃って!撃って!」
ユイ・カトーは戦闘する気力はほとんど無くなっていた。だが、そこにアッシュから連絡が入る。
「こちら。ユイ・カトー」
「キミは今、何をしてるんだ!ガスが来てる!毒ガスだ!」
おいおい、勘弁してちょうだいとユイ・カトーは思うのだった。こちらが遅いのではなく相手の我慢が無さ過ぎるのだ。毒ガスを流すのは後で良いだろうと、ユイ・カトーは自分勝手に考えた。
「虎(フー)とは連絡が取れないし、君の方だけでどうなってるかはっきりさせてくれ!」
「現在、システムを奪還するために戦闘中ですよ。虎先生がシステムの場所が分からないとか言って、私が道案内やら何やらしてたせいです。システムの修復までにはしばらく時間がかかる模様」
そう言って、ユイ・カトーはアッシュからの連絡を切った。というか切らざるをえなかった。なぜならユイ・カトーの視界に鼠の一団が、ユイ・カトーらが通った道を辿って追いついてきたのが見えたからだった。
「挟撃っ!挟撃される!虎先生、後ろに敵!」
ユイ・カトーは叫んだ。自分たちは、この狭く一本道の地下道で挟み撃ちの状態になったことを理解したためであった。

 
 

「まさか本当に毒ガスを使うとは……」
アラン中佐は敵の行いに戦慄を覚えた。現在の戦争では毒ガスなどの使用は禁止されている。それを破って平然と行うという神経がアラン中佐には全く理解できなかった。
「とにかくガスを吸わないようにしないと!」
アッシュがMSに乗った状態でアラン中佐に言う。アラン中佐は避難所の全員に口と鼻を布で覆うように言ったが、この程度の対策でどうにかなるものでもないとアラン中佐は思った。
「ガスは空気より重い。なるべく高所に避難させたい!」
アラン中佐がアッシュに言うとアッシュも同意した。幸い避難所は体育館を改築したもので、学校はすぐ近くだ。アラン中佐は毒ガスが膝のあたりまで来ていること確認すると避難所へと駆け込み、叫ぶ。
「学校の校舎内へ入る!私たちの誘導に従ってくれ!」
そうアラン中佐が言った直後、背後で銃声が鳴り響いた。アラン中佐は振り返るとガスマスクをした敵兵、つまりは鼠が銃を片手に攻撃をしかけていたのだった。
だいたい駆逐したはずとアラン中佐は思ったが、甘かったことを思い知らされた。
アッシュの目から見ても敵兵がやって来たのは分かった。アッシュが鼠に対して攻撃を仕掛けようとした瞬間だった。緊急の通信がアッシュに届いた。
「ベンジャミンだ!敵艦からMSが出撃してるぞ!」
シルヴァーナを先行して出撃させ、敵艦隊の動きを注視していたベンジャミンはシルヴァーナのブリッジで敵艦からMSが出撃するのを確かに見たのだった。
「展開しているだけじゃないのか!?」
アッシュは時間を見る。朝にはまだ早すぎる時間だった。
「展開じゃない!行動している!こちらに向かってきているんだ!」
ベンジャミンは叫んで返す。アッシュはロウマが約束を破ったことを理解した。こうなっては、やることは一つしかない。
「MS隊は全機出撃。防衛体制を取る!」
アッシュ達も出撃するしかない。だが、鼠はどうするか、アッシュが悩みかけた時、アラン中佐は通信でアッシュに伝える。
「こちらは何とかする!出撃していい!」
そう言われ、アッシュは心配を抱えながらも、ストームの機体と共にメインコロニーの宇宙港へ向かい、宇宙へと出る。
アッシュは機体のメインカメラを最大望遠にすると、確かに、敵艦隊からMSが出撃し、こちらに向かってきていることを理解した。
「ロウマ・アンドー……」
アッシュは約束を違えたロウマに対する怒りを何とか抑えながら防衛の指揮を執るために動き出すのだった。

 

「俺が起きた時間が朝ってことで、アッシュ君には御理解を頂こうかな」
ロウマは旗艦のブリッジ、その中で司令官が座る椅子にゆったりと腰掛けていた。
「艦隊はアンチビーム爆雷を散布。MS隊は実体弾のライフルを装備し、アンチビーム粒子内を敵コロニーに向かって低速機動で移動しながら、敵コロニーに向けて発砲を順次開始。
艦隊はアンチビーム爆雷を敵コロニーとの間までロケット弾とし発射。ビームによる攻撃を無効化しつつ敵に圧力をかける」
ロウマが命令を発すると艦隊とMSはその指示に従って、ゆっくりと攻撃を開始ながら動き出す。
対して、アッシュはと言うと。
「セイン君はビームライフルの最大出力で敵艦隊に攻撃。ベンジャミンは艦砲射撃を頼む」
セインのオーバーブレイズガンダムは既に宇宙に出ていた。
「やってやる、クライン公国!」
セインのオーバーブレイズガンダムは機体自体の出力が強力になったことで、ライフルもさらに高出力の物がレビーとマクバレルによって作成されていた。
セインはオーバーブレイズガンダムに新たなライフルを構えさせると、ライフルをチャージモードに設定、エネルギーをチャージ最大出力のビームを敵艦に浴びせるつもりだった。シルヴァーナも艦を回頭させ、主砲の照準を敵艦に定めた。
一機と一隻、共に狙いは完璧であり、両者は同時に高出力のビームを放った。
「考え方が甘いなぁ」
ロウマは向かってくる巨大なビームをノンビリと眺め、そして自軍のMS部隊の集団を飲み込もうとした時、パチンッ!両手を叩き、そんな音を鳴らせたのだった。その瞬間である、ロウマの軍を飲み込もうとしていたビームが霧散し消滅したのだ。

 
 

「大出力砲で機先を制する戦術なんて、今時、通用しないよ、アッシュ君」
ロウマはニヤニヤしながらこちらに向かってくるビームが、ひたすらに消えていく様を眺めていた。
「今の流行の戦い方というものを教えてあげるよ」
ロウマがそう言うと、クライン公国軍のMSは巨大な盾と実体弾のライフルを構えた状態で陣形を組む。その陣形は、MSが縦横に展開されるものであった。そして全機がタイミングを合わせてライフルを撃った。
宇宙空間においては実体弾は減衰することはなく、物体に衝突するまで威力はそのままであり、使いようによっては極めて長距離からでも敵に当てることが可能である。しかし、長距離になればなるほど、当てることは困難となるが、この攻撃は別であった。
陣形を組んだことによって、一斉に発射されたライフルから発射される弾は面を制圧するような攻撃となっていた。
アッシュらは弾丸が飛来することが視認できた。敵MSの一団との距離は、まだ相当にあるため、普段のアッシュなら回避は余裕だったが、今回は違った。ライフルの弾が一面の壁のようになって押し寄せてくるのだった。
アッシュはとっさの判断で、マクバレルが作成し、コロニーの周辺に浮かせてある装甲板の後ろに隠れライフル弾をやり過ごす。セインのオーバーブレイズガンダムも同じ動きをしてライフル弾から逃れた。
逃げることが出来なかったのはシルヴァーナであり、艦の装甲に大量のライフル弾が直撃した。
「シルヴァーナはコロニー内に戻れ、敵がこの戦術を続けるなら、的にしかならない」
「了解した」
アッシュが命令するとベンジャミンの声がして、シルヴァーナがコロニーへと戻っていく。その間にアッシュらはどうするかと言うとどうしようもなかった。
現状、クライン公国軍はアンチビーム爆雷の大量散布で、こちらのビーム攻撃を完封している。対して向こうは実体弾の武装を使って、一方的に攻撃をしてきている。こうなるとアッシュが思いつく対抗策は一つしかなかった。
「武装コンテナ。実体弾ライフルをあるだけ詰め込んだものを持ってきてくれ」
そう呼びかけるとすぐに機体がやってくる、それはジェイコブのザバッグだった。ジェイコブのザバッグはコンテナを押しながら移動しており、ジェイコブの弟と妹の機体がシールドを構え兄の機体を守っていた。
「とにかくライフルを配れ、ライフルを配られた機体は装甲板に隠れて、敵軍を射撃しろ」
アッシュはいつの時代の戦争だと思った。これでは、大昔の塹壕戦とほとんど変わらないではないかと思うのだった。
片方は装甲板の陰に隠れ、片方は巨大な盾に隠れ、どちらも致命傷になるような攻撃が無い中でひたすらに銃を撃っていた。
アッシュは、頭部を吹き飛ばされた機体を見て全軍に向かって叫ぶ。
「不用意に機体を装甲板の外に出すな!敵は散開して戦列を組んでいる。狙わなくてもほとんど当たるぞ!」
そう言いながら、アッシュは乗機のザバッグを装甲板の陰に隠れさせながら、実体弾のライフルをだけを僅かに装甲板の外に出してライフルを連射している。
「バズーカ、ミサイルランチャー、何でもいい。実体弾の武器なら何でもいいから配れ!」
アッシュは銃弾が装甲板に直撃しているのを感じながら叫んだ。すぐに新たな武装が配られ、敵軍に向けて発射される。
ロウマは敵の抵抗を中々だと思っていた。

 
 

「厚く重くって感じで攻めてるが、中々こちらの圧力に潰されないか。艦砲射撃用意、当然ビームじゃなく砲弾な」
ロウマが命令を下すとクライン公国軍の艦隊から実体弾の砲弾が連続して、発射される。砲弾は榴弾であり、着弾と同時に爆発を起こした。
「絶対に装甲板から出るな!一瞬で蜂の巣か、粉微塵だぞ!」
アッシュは機動戦ならもっとやりやすいのにと思わざるいられなかった。戦列を組んだ大軍の一斉射撃で、機動性が優位な状況は完全に封殺されている。アッシュは得意な状況を封じられたことに苛立ちを感じていた。
「なんとかなりませんか!アッシュさん!」
セインが通信で呼びかけてくる。基本的な武装が全てビーム兵器のオーバーブレイズガンダムはどうしようもなく、大量生産された実体弾ライフルを連射している。
アッシュとしては答えようがない質問だった。なんともならないからアッシュも装甲板に隠れてライフルを連射しているのだ。しかし敵の動きからわかることもあった。
敵は一斉射撃を続けて接近してくる。射撃だけでこちらを殲滅することが可能という目算があるなら接近をしてくる必要は無いはずだ。おそらくある程度の距離に達したら敵は白兵戦に移行するだろう。その時がチャンスだという確信がアッシュにはあった。
クランマイヤー王国の兵は白兵戦に強い。接近戦ならいくらでもやってやれるという思いがアッシュにはあった。そしてアッシュは。その時を狙いながら、ひたすら隠れながらの射撃をするのだった。
ロウマは状況を見ていた。ある程度MSの戦列隊はクランマイヤー王国の防衛部隊に接近してきているタイミングなら今かとロウマは思い、命令を発する。
「陣形、最後尾のシャウトペイル突撃隊、突撃戦用意。前衛は列を開けろ」
ロウマが命令を下すとすぐさま、陣形を組んでいたMS隊の最後尾にいたシャウトペイルの大部隊がブースターボードの上に乗り、手にはヒートランスと身を隠すほどの大型の盾を持っていた。
「突撃(チャージ)」
ロウマは一言だけ命令を発したすると、空いた戦列からシャウトペイルの部隊が高速で発進していく。シャウトペイルは肩の大型シールドとバックパックを連結させることでブースターボードという名の高機動サブフライトシステムを形成することが可能となる。
突撃していくシャウトペイルの大部隊。とうぜんクランマイヤー王国側も迎撃のためにライフルを連射するが、シャウトペイルの大部隊は大盾で実体弾を防ぎながら高速でクランマイヤー王国の防衛部隊に迫る。
「ボードを狙え!」
アッシュが叫ぶが、それが出来るほどの腕もなければ、余裕もクランマイヤー王国陣営にはなかった。
シャウトペイルの大部隊は横に広がりヒートランスを構え、突撃をする。そしてクランマイヤー王国の防衛部隊に激突した。
アッシュはその威力を甘く見ていた。高速で突撃してきたMSの部隊による突撃。シンプルだがその突破力と蹂躙は圧倒的だった。
アッシュは咄嗟の判断で装甲板を掴み、機体の最大出力で抑えた。その直後に凄まじい衝撃がアッシュの機体を襲う。装甲板を弾き飛ばそうと、速度をのせた一撃を装甲板に叩き付けているのが想像できた。
その直後、装甲板の横を高速で抜けていこうとするシャウトペイルがヒートランスをアッシュのザバッグに突き刺そうとする。
だが、アッシュは瞬時の判断でビームサーベルを抜き放ち、そのままヒートランスを繰り出そうとしているシャウトペイルのコックピットにビームサーベルを投げる。アッシュのザバッグが投げたビームサーベルは敵のコックピットに突き刺さり敵機を撃墜した。
周囲を見れば、何機かは対応できている機体がいる。セインのオーバーブレイズガンダムは敵のランスを掴み、ブースターボードから引きずりおろして敵機のコックピットにビームサーベルを突き刺していた。

 
 

しかし。全く対応できていない味方がいるのも事実だった。装甲板を弾き飛ばされる。ヒートランスで串刺しになるなど、クランマイヤー王国の防衛部隊はこの突撃によって明らかにダメージを受けた。そして最悪なのは突破されたことである。
これによって、極めて簡単な形であるが、アッシュたちクランマイヤー王国の防衛部隊はシャウトペイルの大部隊と戦列を組んだクライン公国軍の部隊から挟撃を受けることになった。
「アッシュさん。後ろですか、前ですか?」
セインが訪ねてくるが、どちらに対応しようにも難しい状況だった。
ロウマはシャウトペイルの突撃隊が突破に成功したのを見ると、新たに命令を下す。
「突撃隊は左右に分かれ、敵軍を迂回しつつ、射撃戦をしながら、戦列に合流しろ」
突撃隊をターンさせても良いが、それは敵側がもう少し弱ってからだろうとロウマは考えていたのだった。突撃隊はもう何回かは使うから大事にしておこうという考えがロウマにはあった。とりあえず現状は、削りに徹する。それがロウマの今考えている戦術だった。
「各機は互いにカバーしあえ!装甲板を無くした機体は装甲板をすぐに回収しろ!」
アッシュはシャウトペイルの大部隊が左右に分かれ両脇から銃撃を仕掛けてくる状況に苦心していた。その上、シャウトペイルの大部隊が突撃する関係で、銃撃を停止していた前から攻めてくるクライン公国軍が一斉射撃を再開していたため、その対応に苦慮していた。
シャウトペイルの突撃で装甲板を失った機体たちが銃撃に晒され、簡単に撃墜されていった。
シャウトペイルの部隊は両脇からの攻撃に徹するわけでもなく、適当に射撃をしクランマイヤー王国の防衛部隊に被害を与えるとそのまま、後退していった。
ロウマはシャウトペイルの部隊が戦列の最後尾につくのを見届けると、ブリッジクルーに確認をとる。
「敵の損害とこちらの被害報告よろしく」
「少々お待ちください。……敵損害、20%弱。こちらの被害は10%未満に抑えられています」
まぁそんなもんかとロウマは思った。現状どちらも100%の状態に近いから被害も出るか。まぁ、やってくうちにこちらの被害は少なく、向こうの被害はどんどん大きくなってくるだろうとロウマは楽観的な考えでいた。
「戦列は崩さないように気をつけて、損傷を受けた機体は後退させて、修理」
ロウマは気だるげに命令を下した。気だるいのは面倒だからだ。手堅く戦いを進めているせいで時間がかかる。予想ではあと一日ぐらいは銃撃戦をやっていれば、充分以上に相手を消耗させられる。それにこちらには隠し玉もいくつかある。
自分の勝ちは見えているとロウマは楽観的な気分だった。
「ま、時間はかかるが楽に終わるかね」
ロウマは戦列を組み、一斉射撃をする自軍のMSを見ながら、勝利を確信していた。

 

「なんて言うんでしょうね。考え方がぐるぐると回って古い時代まで行ってしまった感じですね」
クリスはアッシュから戦況の説明をされて。、そう答えた。
「過去の流れを説明すると、フェイズシフト装甲が流行して、ビーム兵器が隆盛を極めた。ビーム兵器ばかりになるとフェイズシフト装甲の優位性は失われるので、多くの機体がフェイズシフト装甲を採用しなくなって、機体の軽量化やエネルギーの節約に努めた。
そしたら実体弾の兵器が復権した。今がそんな感じです。そして、戦列射撃で敵の機動性を封じる。
また、タイミングを見ての、騎馬突撃と酷似した高機動MSによる突撃での蹂躙。戦術的には恐ろしく古いですが、偶然にも時代と状況が、その復権を許してしまったわけですね」
アッシュはクリスの講義を聞いている暇はなかった。
「対策は?」
そう言われてもクリスにはどうしようもない。
「無いですね。戦列の脇に回って攻撃すれば良いですけど、戦列はそれに合わせて動きますからあまり意味がないです。逆にヘタに前面の防御を弱めると、敵は速度を速めて突破にかかりますから、現状は壁に隠れて、ひたすら迎撃しかないと思います」
打つ手なしかとアッシュは一度ノーマルスーツのヘルメット脱ぎ、空気を大きく吸い込んでリラックスする。
「そちらの状況はどうだ?」
アッシュはクリスに尋ねたが通信は既に切れていた。どうやらコロニー内の状況も良く無いようだとアッシュは察したのだった。

 
 

「ノンビリ話しをしている場合じゃないだろう!」
クリスは名前も知らない兵士に怒鳴られ、そして担がれ、運ばれていた。避難所内は既に毒ガスが充満しており、クリスを含め、避難所にいた人々は皆、脱出し、アラン中佐の指示で、学校の校舎、その屋上へと避難していた。
「怪我人、子供を優先して避難させろ!」
アラン中佐と歩兵部隊が、コロニー内に残っていた敵の残党の追撃を防ぐために最後尾で銃撃戦を繰り広げながら、学校の校舎を登っていく。
ガスはゆっくりと高さを増していくのがクリスにも分かった。最初は膝ぐらいの高さの毒ガスだったが、今では校舎の一階部分を飲み込む高さにまで増えている。
このままでは、屋上まで上ったとしても、そう長く持たないだろう。クリスがそう考えているうちにクリスは屋上まで運ばれたのだった。
アラン中佐と歩兵部隊は、屋上への入り口で防御を固め、階下から屋上へと昇ってくる敵兵へと銃撃を繰り返している。しかし、毒ガスという時間制限がある以上、守りを固めても最終的には無意味となる。
クリスはユイ・カトーと虎が早くシステムを復旧してくれることを祈ったのだった。

 

「死ぬ、死ぬ、死ぬ!」
ユイ・カトーは地下通路の床に伏せながら、サブマシンガンを連射していた。ユイ・カトーは取り敢えずガーンズら技術者達にも伏せるように言って、自分はひたすら銃を連射し、挟撃してきた敵の片方を攻撃していた。
「虎(フー)先生、こっち、こっちに敵!」
虎(フー)は前の敵と戦うことに気を取られていて、後ろの敵には気づいてないようだった。ユイ・カトーは後方から迫ってくる敵に対して手製爆弾を投げながら叫ぶ。
「虎ぁ!、てめぇ、こっちだって言ってんだろうがっ!」
爆発が起こったせいで聞こえていないが、ユイ・カトーは思いつく限りの罵倒を虎に対して叫んでいた。そして気づくと、銃が弾切れである。後方の敵は順調に距離を詰めてきていた。
「おい、嬢ちゃん。やばいんじゃないか?」
ガーンズがいつの間にか、安全のために作業用ヘルメットを被り、ユイ・カトーに言う。
「見て分かることは言わないでくださいよ!」
ユイ・カトーは自分の安全を確保するために、ガーンズのヘルメットを奪い、自分が被るが、それをガーンズが取り返そうとユイ・カトーの頭に手を伸ばし、二人は取っ組み合いになる。
「おい、虎ぁ!このジジイから殺せ!」
「虎のアンちゃん、この嬢ちゃんを殺してくれ!」
戦闘の最中、味方同士で取っ組み合いなどしていれば、当然目立つので、敵はユイ・カトーとガーンズを狙っていた。だが、それだけ騒げば戦闘中だとしても流石に虎も気づく。
「ウシロ、テキカ」
虎は地下通路の床に転がっていた元は通路の壁面だったであろう瓦礫を手に取ると、全力で、背後から攻撃を仕掛けようとしている敵へと投げた。瓦礫は凄まじい速度で投擲され、敵の頭を砕いた。
それにより背後の敵の一団に一瞬、動揺が走る。その隙に虎は背後の敵へ向かって駆けた。
ユイ・カトーはこれでとりあえず、後ろは安全だと思い、前を見ると。前は前で、銃を使うのも難しいような超接近戦の乱闘状態となっていた。ユイ・カトーはこの状況をチャンスだと考え、ガーンズら技術者たちに叫ぶ。
「今の内に抜けましょう!」
どいつもこいつも目の前の相手に夢中になっていて、ユイ・カトーらの相手をする余裕はないと考え、ユイ・カトーは技術者を連れて走り出した。その結果は、案の定ユイ・カトーの思惑通りであり、前の敵を素通りすることに成功したのだった。
「この隙にシステムの場所までダッシュ!」
ユイ・カトーが指示すると技術者たちは必死に走り出した。気づいた敵が撃ってくるが、それに関しては置いてきた歩兵が対処して銃で思い切りぶん殴るなどして、食い止めていた。
「よっし、ナイス!」
ユイ・カトーは走りながら後ろを振り返り部下たちの健闘を讃えた。そうしているうちにユイ・カトーの先を走る技術者たちは電力及び、空調システムのある区画まで辿り着いていた。ユイ・カトーも少し遅れて、滑りこむようにして、その場所に辿り着くと大声で叫ぶ。

 
 

「総員、こっちまで来て!」
その叫びに応えユイ・カトーに率いられた歩兵隊は急いでシステム区画まで走る。敵はもちろん銃撃してくるが、それを無視して歩兵隊は走っていた。最後尾を走るのは虎だった。ユイ・カトーは虎がシステムのある区画まで辿り着くと同時に、区画を分ける扉を閉めた。
「死にそうなのは!?」
ユイ・カトーが大声で尋ねると技術者も含め、全員が手を挙げた。その中には虎も含まれていた。まさかと思ってユイ・カトーが虎を見ると虎の服は所々が裂けており、肌からは血が流れていた。
なるほど、虎でも死にそうになるのだなぁとユイ・カトーが良く分からないところで感心していると、虎が突然に動き出し、ユイ・カトーの腕を掴んで思い切り引っ張った。その直後、ユイ・カトーが閉めた扉は爆破され、その衝撃が虎たちを襲った。
「だぁぁぁぁぁ!もう、ふざけんな!」
ユイ・カトーは身を引くし、敵の死体から奪った銃を構え連射しながら叫ぶ。
「ガーンズさん。システム復旧までどれくらい!?」
「二時間で何とかしてやる!」
ユイ・カトーは、たぶん、その間に自分は死にそうな気がしていた。
「マァ、ガンバレ」
虎が横で励ましてくれるが全然気持ちがこもっていないようにユイ・カトーは感じた。そして気づいたが、虎はユイ・カトーの隣で普通に拳銃を撃っていた。
一瞬、おかしいような気もしたが、普通に銃を使うべき時は使うわなとユイ・カトーは、何となく釈然としない思いを抱きながら、虎と共に銃を撃つのだった。

 

「あいつらは何をしているんだ!」
ユイ・カトーと虎のことを考えながら、アッシュは機体を装甲板の陰に隠れさせつつ、ひたすらに実体弾のライフルを撃っていた。
「損傷が大きい機体は一旦コロニーに戻って修理しろ」
先ほどからこの命令をアッシュは出していた。格納庫に関しては宇宙港と直通している関係で密閉ができるため、毒ガスの心配はない。
そのため、修理や補給に関しては問題が無いはずだが、一度修理や補給に機体をコロニーへ戻すと帰って来るまでに異常に時間がかかる。それがアッシュは不思議でならなかった。そうこうしている内にアッシュの機体も限界が来ていた。
ライフルの弾はなく、推進剤も限界、各部関節の摩耗も相当だ。アッシュは自分も一度戻るしかないかと考え、人格面では問題があるが能力面では優秀なストームに一旦状況を任せることにした。
「すまないがストーム、指揮を頼む。僕は補給に戻る」
アッシュは一斉射撃が行われるタイミングの間隔を読んで、装甲板から装甲板へ移動し、コロニーへ戻るのだった。
「補給だ。急いでくれ」
MS格納庫へ戻ると同時にアッシュは整備兵に向かって呼びかけたが、整備兵からの返事は無かった。アッシュはどういうことかと思い、コックピットから出ると。格納庫内は混沌としており収集がつかない様子に見えた。
「どうなってるんだ、一体!」
アッシュは、とりあえず格納庫周りのリーダーに指名した男を見つけると問い詰めた。すると返ってきた答えは。
「レビーさんがいないと、まとまりませんよ!」
そんな泣き言が返ってきた。なるほどレビーが完璧に統制を取っていたのが格納庫ブロックとMS整備や補給関連なんだなと、いなくなってレビーのありがたみがアッシュは良く分かったが、一人いなくなっただけで、この醜態はなんだという怒りもあった。
「とにかく、補給を最優先にしてくれ。特に僕の機体は一番最初だ。いいな」
アッシュはそう言うと、機体のコックピットに戻り、補給を待った。自分の機体を優先するように言ったのに、格納庫内はごちゃごちゃとまとまりがなく、自分の機体に補給が回ってくるのが何時になるのかアッシュは分からなかった。

 
 

そして待っていると、アッシュは不意にクラリと頭が揺れるのを感じた。寝不足で倒れる寸前かと感じたアッシュはコックピットの後ろに備えてある非常袋から、ある種の興奮剤の注射を首筋に刺して、薬剤を注入した。
よほどの緊急時以外は使用しない物だが今が、よほどの緊急事態だと考えた結果だった。クランマイヤー王国は兵力が少なく、交代要員などほとんどいない。
パイロットはほぼ全員が出ずっぱりだ。対して、クライン公国軍は交代と休憩のローテーションをきちんと取っていると報告があった。
このままいくと、疲労でいつかは自滅する未来というものがアッシュにはありありと想像できた。まぁ、それも仕方ないかとアッシュは思い始めていた。
そもそもこんな田舎国家の田舎軍隊で、世界を二分する大国の精鋭軍と渡り合っているのだそれだけで充分ではないかと、アッシュは考えた。
最悪の場合は姫と若者だけさっさと逃げさせて自分は自爆特攻だとアッシュは興奮剤の影響で極端な考えに至っていた。そして考えてみれば、パイロットは皆若者だし、自分だって21歳の若者だと思い出し、アッシュはなんだか可笑しくなってきた。
アッシュは思わず笑みがこぼれてきた。すると補給が終わったという報告が来た。なんとも無粋だとアッシュは思う。人が楽しくなっている時にと。だが、補給が終わったなら戦場に出なくてはならない。
アッシュはウンザリした気分で言う。
「アッシュ・クライン。出るぞ」
そして、アッシュの乗るザバッグは再び絶望的な戦場へと身を投じたのであった。

 

「おい、ジジイ!もう三時間だぞ、言ってた時間と違うだろ!」
「ジカンマモレ、クソジジイ」
ユイ・カトーと虎は、ひたすらに迫ってくる敵に対して銃撃を繰り返していた。ガーンズら技術者たちもシステムを復旧しようと必死であったが、思うようにいかなかった。
虎はついに拳銃の弾を全て撃ち尽くしたようで、拳銃を敵に対して投げた。すると銃をは凄まじいスピードで飛んでいき、敵の顔面に銃はめり込み敵を戦闘不能に追い込んだ。
「すまんが、あと一時間待ってくれんか?」
ガーンズがそう言うが、ユイ・カトーも虎も応える余裕はなかった。適当な機械を盾にして隠れているが、その機械もそろそろ限界が見えてきているくらいに敵の銃弾によってズタズタだった。
「無理です!いい加減に、ぐえっ」
ユイ・カトーが限界を叫んだ直後、その口からカエルが潰れたような声が聞こえた。なぜ、そのような声がしたかというと理由は簡単で、盾にしていた機械を銃弾が貫通し、ユイ・カトーに直撃したからであった。
虎は即座に、ユイ・カトーを抱え、移動する。その動きに合わせ、虎の弟子たちも銃を構え、別のポジションについた。
「くっそー、ふざけんなー」
恨みごとを言うユイ・カトーは腹に銃弾を受けていた。虎は取り敢えず念仏を唱えてから応急処置をした。その時だった。ガーンズが叫び声をあげたのは。
「よっしゃー、システム回復!どんなもんだ!」
そう叫んだ直後にガーンズが撃たれ、倒れ伏す。
虎は面倒を増やすなと思いながら、銃弾をかいくぐり、ガーンズの身体を引っ張ってユイ・カトーの隣に並べて、応急処置を施した。ユイ・カトーとガーンズはともにニヤリと笑みを浮かべていた。
「やりましたね、工場ジジイ」
「おう、やったぞ、銭ゲバ嬢ちゃん」
二人は体力の限界を振り絞って、拳を打ちあわせたのだった。

 
 

「もう無理だ」
アラン中佐は、校舎の屋上で防衛線を繰り広げながら、そう叫んでいた。その理由は毒ガスが自分の腰のあたりにまで来ていたためだった。
長身のアラン中佐の腰の位置のであるから子どもによっては、既に毒ガスに呑まれる。そのため、身長の低い子どもは兵士が肩車をして何とか高さを稼いでいる状況だった。
こんなところで終わりかとアラン中佐は色々と思い残すことがあった。レストランが軌道に乗れば軍人などやめて料理人一本で生きていこうと思っていた。そんな夢もここまでか。
そう思いながらも、アラン中佐は階下からひたすらに屋上へと迫ってくる敵に向けて銃を撃っていた。どうにもならないそう思っても銃を手放すことは出来なかった。だが、不意に聞こえてきた声で、アラン中佐は、ハッとする。
「モクモク少なくなってきた」
それは子どもの声だった。だが、真実であり。毒ガスはアラン中佐の腰から膝へと低くなっていた。
「やってくれたみたいです」
クリスが兵士におんぶされた状態でアラン中佐に言う。助かったのか?アラン中佐は懐疑的な感覚だったが、急にコロニー内が明るくなっていく。
「電力が復活したということは、空調も……」
クリスが言いかけた瞬間、コロニー内に警報が鳴り響く。
「コロニー内に有害物質の発生を確認。排除します」
警報の次に聞こえてきた電子音声はそのような物であり、それを聞いた瞬間にアラン中佐は助かったことを確信したのだった。

 

「んで、このタイミングでドーンッ」
ロウマは金で買ったクズ以下の傭兵にカメラを渡し、コロニー内の様子を中継させていた。金で動くしかない程度に落ちぶれたクズどもだったために最初から期待はしていなかったが、それでも充分だった。自分の子飼いの部隊を突撃させるタイミングを作るには。
「私とガウンはメインコロニーから、コロニー内に侵入し制圧。ドロテス、ギルベール、ゼロは工業コロニー側からだ。ジョットとアリスは旗艦で待機」
イザラ達、ガルム機兵隊はロウマから行動開始の命令を受けて、動き出していた。相当に待たされていた鬱憤が彼らには溜まっていた。
辺境の田舎コロニーを制圧する任務にはガルム機兵隊の全員に抵抗があったが、ロウマが命令する以上は全力で取り組み、そしてなるべくなら任務を楽しもうという考えが彼らにはあった。

 
 

ガルム機兵隊の動きに関してはクランマイヤー王国側で気づいている者はいなかった。だが、ただ一人だけ、常に負けることを想定して準備をしている者がクランマイヤー王国にはいる。それはクリスティアン・フラガ。クリスと呼ばれる少年であった。
「ヤバい、アラン中佐!僕を司令部まで!」
クリスは自分でもおかしなことを言っているとは思ったが、とにかく急がなければいけなかったので、アラン中佐を呼んだ。アラン中佐は、以外にもこのクリスと言う少年を信用していた。だから、言う通りに動いたのだった。
「司令部でいいんだな?」
そう言うと、アラン中佐は兵士からクリスを受け渡され、しっかりと自分の身体に固定する。
「ワイヤーを使って、下まで降りるぞ」
アラン中佐はクリスの返事も聞かず。屋上の手すりにワイヤーをくくりつけると、ワイヤーに掴まり一気に降下したのだった。
「司令部だったな?」
「電力が復活してるならいけるはずです。こういう時のための設備を起動させます」
クリスはそう答え、アラン中佐に急いでくれるように願ったが、事はそう上手く行かなかった。アラン中佐を追って二名ほどの敵が追ってくる。アラン中佐は背中にクリスを抱えながらも、振り返り、一人を撃った。だが、残りの一人の銃弾がクリスの左耳を貫いた。
「いたぁぁぁぁ!」
クリスがそう叫んでいる間にアラン中佐は、残りの一人も撃ち殺していた。
「くっそ、左側が聞こえない」
「一時的なものだ。耳自体の形は戻らなくても機能は残る」
アラン中佐はクリスにとっては。あまりうれしくない慰めをしたのだった。そうしているうちにクリスとアラン中佐は司令部跡に辿り着く。すると、ちょうどクライン公国軍のMSが宇宙港から侵入してきたのが見えた。
クリスはアラン中佐に言って、背中から降ろしてもらうと、司令部跡の中に這って入りこんでいった。
クリスはもう少し体を鍛えておけばよかったと思いながら、必死の思いで這いずり進む。司令部は爆破された影響で残骸に潰されていたが、この機能だけは潰されないようにしていた。
クリスは這いずり進み、そして辿り着く、自身の作り上げた防衛システムの起動スイッチの場所へと。
「脳筋どもに思い知らせてやる。鉄壁ってやつをな!」
そう叫んでクリスがスイッチを押した瞬間だった。クランマイヤー王国を形作る四つのコロニー内で大きな変化が起きた。それは巨大な壁の出現である。クランマイヤー王国の四つのコロニー全ての地面から巨大な壁が無数にそそり立った。

 

イザラ・ジュールは驚愕した。なぜなら、目の前に巨大な壁が突然、地面からそそり立ったからである。
「なんだこれは!?」
そう言うのも無理はなかった、その壁はあまりに巨大であり、円筒形のコロニーの中心部にまで達していたからである。イザラはこの壁を見た瞬間に、こちら側からの侵入は無理だと確信した。
「ドロテス!そちら側から侵入と制圧だ。私たちも遅れて行く」
イザラはそう言った直後、何故か機体を後退させていた。機体は宇宙港の方を向いていたため、後退したところで、壁しかないというのに。イザラは理屈ではない何かを感じ取ったのだった。
後退したイザラは見る。目の前に立つ存在を。それは大型のMS。その右手に対艦刀、そして左手にビームハルバードを持った機体だった。イザラは思わず、相手の名を問うた。
「貴様は何者だ!?」
大型のMSに乗るパイロットは答えた。
「我が名はイオニス・レーレ・ヴィリアス。クランマイヤー王国の騎士なり!」
騎士を自称する男と、騎士団の精鋭部隊が激突する瞬間だった。

 
 

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