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GUNDAM EXSEED_B_48

Last-modified: 2015-09-05 (土) 21:36:36

「セイン君、ジェイコブ三兄弟、セーレさんは工業コロニー側の宇宙港の防衛へ、僕が敵なら、このタイミングで精鋭を仕掛けてきます」
クリスは手持ちの通信機で、セインらに呼びかけた。その音声はアッシュにも届いている。セインのオーバーブレイズガンダムが動きを躊躇っているとアッシュはセインに向かって呼びかける。
「行け!クリスが言うなら間違いはないはずだ!」
その声を聞いた瞬間にオーバーブレイズガンダムは動き出した。問題はないはずだとアッシュは思う。現状では、オーバーブレイズガンダムがどれほど高性能でも、戦いようがない状況なのだ。
それならば、少しでも有効に戦える場所の方が好ましいとアッシュは考えたのだった。

 

弾幕の戦場を突き抜け、セインのオーバーブレイズガンダムが工業コロニーの宇宙港へと向かうと確かに敵機の姿が遠くにあった。
「やることが、いちいちセコいんだよ!」
セインはオーバーブレイズガンダムの腰のビームライフル抜き放ち、敵機に向けて撃った。ビームは通常通りに発射された、どうやら、セインのいる側までアンチビーム粒子は巻かれていないとセインは理解した。
敵機は、遠距離から放たれたビームを容易く回避する。セインは相手の腕がいいことを即座に判断した。
「その機体は、セインか」
セインの耳に聞いたことのある声がした。そして敵機に接近するにつれて敵機の姿が明らかになると、敵の正体をセインは把握した。
「ドロテスにギルベールっ!」
褐色のザイランと赤いザイランという機体を見て、セインは敵があの二人であることを理解した。そして今回は、その後ろにもう一機見たことのない機体があった。
「いいじゃねぇか、セイン!新型で俺らと戦おうぜ!」
ギルベールの赤いザイランが、手に持ったマシンガンをオーバーブレイズガンダムに連射する。セインはその雑な射撃を見切って全て回避した。だがこの敵はここで終わらない。
「ドロテスっ!」
セインは回避した先にドロテスの乗る褐色のザイランが襲ってくることを予測していた。オーバーブレイズガンダムは実体弾のライフルを捨てると、ビームサーベルを抜き放ち、背後へ振り向きざまに刃を振るう。
その結果、褐色のザイランのヒートアックスとオーバーブレイズガンダムのビームサーベルがぶつかり合う。
「腕を上げたな、セイン。一流と半分と言ったところだ」
「だったら、ここであなたたちを倒して一流になるさ」
斧と剣の衝突は、オーバーブレイズガンダムのパワーによって褐色のザイランを弾き飛ばして、剣の勝利となった。だが――
「そう簡単にはいかんぞ」
ドロテスが、そう言った瞬間、無数のビームがオーバーブレイズガンダムを襲う。
「なに!?」
セインはとっさの判断で機体を動かし、ビームを回避するが、その回避をした隙を、ギルベールのザイランの棘つき鉄球が襲う。セインは、その鉄球の威力を身を持って知っていた。下手にシールドで受ければ、シールドが破壊される。
セインは鉄球が迫ってくるが、焦らずに判断をした、それはシールドで受け止めるのではなく、シールドで受け流すという選択である。
鉄球がオーバーブレイズガンダムのシールドを直撃したように見えたが、セインは直撃するその瞬間に僅かにシールドの角度をずらして鉄球が正面から直撃するのを避けたのだった。

 
 

「良い避け方だ!」
ギルベールが歓喜の声をあげると同時に、再び、無数のビームがオーバーブレイズガンダムを襲いセインは回避を余儀なくされる。
「この攻撃はどこから!?」
セインが機体を、一箇所に留まらせずに動かしながら、そのビームの発射元を探すと。それはドラグーンと呼ばれる機動砲塔システムのユニットだった。
ドロテスとギルベールの機体にドラグーンは装備されていない。ならば、ドラグーンを操る本体は残りの一機とセインは判断した。
「三機相手が卑怯と言うなよ」
ドロテスの声が聞こえた瞬間に、セインはオーバーブレイズガンダムのビームサーベル抜き放ち、ドロテスの突撃に備える。だが、その瞬間に別の考えが頭をよぎる。支援役がもう一機いるならギルベールも来るのではという考えである。
セインはギルベールの機体が来そうな方向に適当にシールドを構えた。その予感は的中し、ありとあらゆる方向から迫ってくるビームを回避した瞬間に。ドロテスの褐色のザイランが突撃し、同時にギルベールの赤いザイランが突撃してくる。その時、セインは叫んだ。
「まだ!」
オーバーブレイズガンダムは褐色のザイランのヒートアックスをビームサーベルで受け止め、そして赤いザイランの右肩の大型シールドによる打撃を、シールドで受け止めた。
「デッドエンド!」
ギルベール叫びが聞こえると共に赤いザイランの大型シールドから高速で杭が撃ちだされ、オーバーブレイズガンダムのシールドを貫く。だが、シールドを貫いただけで、機体そのものは無傷だった。
まだ、対応できる。そう思った瞬間にドラグーンのビームがオーバーブレイズガンダムを襲うが。これは無視するしかないとセインは決めていた。ビームが直撃するがオーバーブレイズガンダムにはバリアがあるため、何もしなくても数発は耐えられる。
オーバーブレイズガンダムは杭に貫かれたシールドを手放し、ギルベールの赤いザイランに蹴りを入れ、間合いを離し、ヒートアックスを受け止めているビームサーベルも手放すと
褐色のザイランに拳を叩き込み、その衝撃によって距離を取ると、間合いが開いた瞬間に褐色のザイランにビームライフルを撃つが、褐色のザイランの肩をかすめることしかできなかった。
「くそ!」
機体性能では勝っているのに、ここまで上手く行かないのかとセインが思った時である。遠距離から実体弾が連射され、褐色と赤いザイランの二機を後退させる。
「セイン、遅くなって悪い」
ジェイコブの声がして、セインは周囲を見ると、ジェイコブの乗るザバッグがライフルを連射し、それに合わせて、ペテロの乗るフレイドが内蔵武装の全弾を発射し、マリアとセーレの乗るマルトスがビームサーベルを構え、ドロテスの機体に突進していた。
「ここは戦場だ。勝負の決着は、また後に取っておいてやる」
ドロテスはそう言うと、ジェイコブらの機体との対応に動き、ギルベールの機体も同様に動く。セインはそれを止めるべきか考えた。だがその瞬間に、無数のビームがオーバーブレイズガンダムを再び襲った。
「またか」
セインは機体を操り、その攻撃を回避すると、攻撃を仕掛けてきた大元に目をやった。改めて見ると、特殊な機体である。ドラグーン以外の装備がついていないような灰色の機体であった。
「ふぅ……」
セインは大きく息を吐き精神を整える。ドロテスらとも渡り合えたのはこの精神集中によるものだった。ハルド曰く、EXSEEDの能力があるならSEEDの能力もあるとのことで、アッシュからSEEDの能力解放の仕方を教わった結果が、この精神集中だった。
精神集中下ならば、SEEDとしての能力を発揮できる。セインはこれによって、ドロテスら三機と渡り合っていたのだった。

 
 

セインはジェイコブ三兄弟とセーレの戦いに少しだけ目をやると、何とか拮抗している状態だった。そこに、このドラグーン搭載機を割り込ませるわけにはいかない。セインはそう判断し、オーバーブレイズガンダムは灰色の敵機に突進する。
「敵、排除……」
灰色の機体コンクエスターに乗るゼロは迫ってくるオーバーブレイズガンダムを確認すると、全てのドラグーンを展開した。コンクエスターのドラグーンは全部で20基ある。そのドラグーンの射撃を一機のMSに集中させた。
セインは灰色の機体が、ドラグーンを全て射出させたのを見て、以前にハルドから言われた言葉を思い出す。
「ドラグーン?気にすんな。周囲を大量にMSに囲まれてて、全員が死角を狙ってくるだけだ。狙いが決まってる分、余裕だろ」
余裕なわけないだろ、とセインは記憶の中のハルドに文句を言いながらもドラグーンの射撃を回避しながら、オーバーブレイズガンダムのビームライフルを灰色の機体に向けて撃つ。灰色の機体が、その射撃を回避すると同時にドラグーンの動きに乱れが生じた。
「まぁ、怖いなら、そのドラグーンを操ってる機体を狙え。どんなに訓練してる奴でも、ドラグーン操作はそれなりに集中が必要だからな。機体の方を狙えば、少しはドラグーンの動きも鈍るだろうよ」
なるほど、言った通りではあるとセインはハルドの言葉を思い出し、現状と照らし合わせてみれば正論であったと納得したのだった。
「嫌だな……」
ドラグーンの操作に集中できないのはどうにも気持ちが悪いとゼロは思った。敵の攻撃を回避するのは余裕だが、それによって、ドラグーンが乱れるのは気持ちが悪かった。幸い敵は、突進してくる。このタイミングに合わせようとゼロは思った。
「この距離なら!」
「潰す……」
オーバーブレイズガンダムは残り一本となったビームサーベル抜き放ち、灰色の機体に接近する。ドラグーンはバリアが防ぐので問題ないとセインは判断した。
ゼロはコンクエスターのビームサーベルを起動させる。それは掌から出力されるものだった。掌から生じた刃は真っ直ぐな軌道でオーバーブレイズガンダムを横薙ぎにしようとするが、その瞬間にセインは、一つの言葉を発する。
「コード:ブレイズ!」
その瞬間、ビームサーベルが極限まで強化され、同時に、背中の大型スラスターから、炎を思わせるようなビームの翼が発生する。
強化されたビームサーベルは、その発生だけ灰色の機体のビームサーベルを防ぎ、そして、防御できたことを確認したセインはオーバーブレイズガンダムにビームサーベル捨てさせた。
直後にオーバーブレイズガンダムの手が灰色の機体の頭部を掴む。その瞬間、オーバーブレイズガンダムの手に光が生じ灰色の機体の頭部を消滅させ、オーバーブレイズガンダムはそのまま、灰色の機体に両肩を掴むと、背中から生じる炎の翼を最大限に展開しながら、
灰色の機体を掴んだまま回転し、周囲のドラグーンを炎の翼で飲み込む。
「やめろよ……」
ゼロは目の前の機体の出力が急に上昇した瞬間に、強烈な頭痛を感じており、MSの操縦など出来る状態ではなかった。対してセインは機体と自分が一心同体になるような感覚を抱きながら操縦していた。
「終わりだ!」
オーバーブレイズガンダムは灰色の機体の両肩を掴んだまま、頭部を破壊した光を放つ。その瞬間、灰色の機体の両肩は破壊され、灰色の機体は両腕を失った。それでも灰色の機体はオーバーブレイズガンダムに蹴りをあて、間合いを遠ざける。
「やられた……」
ゼロは通信でガルム機兵隊の全員に伝えた。
両腕を破壊されただけならば、まだドラグーンもあるので、戦えなくもないが、そのドラグーンもゼロにとっては訳の分からない攻撃で全て破壊されてしまっている。ゼロの乗る機体コンクエスターは戦闘手段を全て失ってしまったのだった。
対して、オーバーブレイズガンダムに乗るセインも限界を迎えていた。セインの気力が限界を迎えたことで強制的にコード:ブレイズは解除され、炎の翼も消失してしまっていた。

 
 

「くそっ、頭がクラクラする」
コード:ブレイズの発動で敵の戦闘力を潰したのは良いが、セイン自身もコード:ブレイズによる反動によって、精神的な負荷が生じ、セインは朦朧とした感覚に襲われていた。今、追撃すれば確実に倒せると、セインは目の前の灰色の機体を前に確信があった。
だが、それを行うだけの余裕がセインには無かった。現状では意識を保つだけでセインは精一杯だった。セインは、機体をかろうじて操り、放り捨てたビームサーベル回収する。
「もう少し……」
セインはゆっくりと機体を操り、ビームライフルを灰色の機体に向けようとしたが、その間に灰色の機体は撤退をする。セインは大きな損傷を与えたにも関わらず、最後は灰色の機体を見送るしかできなかった。
「ゼロがやられた。数では不利だぞ」
ドロテスとギルベールは四機のMSを相手に持ちこたえるような戦いを続けていた。相手はそれなりの腕だが、連携が良い。全機が互いをカバーするように動いており、ドロテスとギルベールは相手を仕留める機会を見いだせずにいた。
「セインも加わると2対5だぜ。ムリじゃね?」
ギルベールは状況を考え、率直な意見を述べた。それに関してはドロテスも同意だった。四機相手でも攻めあぐねているというのに、セインのガンダムが来れば。明らかに相手側が優勢になる。ドロテスは状況を考え、イザラに通信した。
「機体が足りん、お前たちも早くこちらに来い」
通信の返事は少し間が空いてから返って来た。
「それはこちらのセリフだ。お前たちが来い!」
イザラが焦ったような声で言う。先ほどは、イザラたちが合流しに来ると言っていたのにどういうことだとドロテスは訝しむ。
「こちらは相手が悪い!支援をしに来いということだ!」
イザラの必死の声が聞こえた。冗談ではないとドロテスは思う。こちらも相手が悪いのだ。支援が必要なのはこちらの方だと言いたかった。言い合いをしても仕方ないという理性が働いた。そして、ドロテスは敵機の攻撃を捌きながら僅かに思考し、決断する。
「ギルベール、下がるぞ」
「撤退か?」
「撤退ではなく、一旦後方に下がってから、イザラたちの支援に向かうぞ」
現状、二機では、ここを守っている五機と戦うのは無理だとドロテスは判断した。数で負けていても、やられるとは欠片も思っていなかったが、戦いが長引けば機体のパワーダウンや弾薬の消耗などで戦闘力が落ちてジリ貧になるのは目に見えていたからだった。
「じゃあ、逃げっか」
「逃げるんじゃない、下がるだけだ」
ドロテスとギルベールの機体は後方をへ下がることを決めた瞬間に迅速に動く。相手は守り主体の敵であり、ドロテスとギルベールの機体が逃げ出そうとしても、攻撃に出ることはなく、見過ごすだけだった。
「追った方がいいのかな?」
ジェイコブが通信でその場の全員に尋ねる。すると、セーレが答えた。
「深追いはしない方がいい。私たちも防衛線に戻るぞ」
そう言うと、セーレの乗るマルトスが先行し、その後をジェイコブ三兄弟の機体がついて行き、最後尾をセインのオーバーブレイズガンダムがよろよろとした機動で追うのだった。

 

セイン達とドロテス達が戦闘を繰り広げていた時、コロニー内でも激戦が生じていた。その始まりはイザラの一撃からであった。
イザラの純白のシャウトペイルが左肩にマウントされた機体の全高ほどもある対艦刀を抜刀し、イオニスの乗るフレイドに突進し斬りかかる。
「イオニス・レーレ・ヴィリアス!聞いた名だ!」
純白のシャウトペイルが放つ激烈な斬撃をイオニスの乗るフレイドは、右手に持った対艦刀で軽く受け流し、即座に左手のビームハルバードによって、イザラのシャウトペイルに反撃を加えようとする。
だが、その一撃をガウンの乗るシャウトペイルがヒートランスで防ぎ、イザラへと反撃を届かせなかった。しかし、ハルバードとヒートランスがぶつかりあった瞬間にイオニスは機体の指を僅かに動かし、そして、ハルバードを天高く掲げるように勢いよく持ち上げた。

 
 

その瞬間、ガウンのシャウトペイルのヒートランスが機体の手をすり抜け、高く打ち上げられた。ガウンは即座に左肩にマウントしているシールドの中からビームサーベルを抜き放ち、イオニスのフレイドに叩き込もうとする。
だが、フレイドの右手の対艦刀が力任せに振るわれ、ビームサーベルが弾き飛ばされた。そしてイオニスのフレイドは対艦刀をガウンのシャウトペイルに振り下ろすが、それをイザラのシャウトペイルが対艦刀で受け止める。
だが、受けとめた瞬間に、ビームハルバードが振るわれイザラの機体を襲う。ガウンは武器で受け止めるのは無理だと判断し、右肩のシールドを構え、ハルバードとイザラの機体の間に割って入る。それによってハルバードの一撃がイザラに届くことは防いだ。
イオニスは両方の手の武器が防がれたため、一旦間合いを離すことにし、乗機のフレイドを後退させたのだった。
「武器を拾うと良い。騎士は正々堂々とした戦いを望む」
イオニスは敵の二機通信でそう言うと、乗機のフレイドの対艦刀が、弾き飛ばされたヒートランスを示す。ガウンはその申し出に応じて、ヒートランスを拾う。
「イオニス・レーレ・ヴィリアス。かつて聖クライン騎士団で近接戦闘において最強と呼ばれた男だな」
イザラが通信でイオニスに話しかける。イオニスは通信相手からの言葉に満更でもない気分になった。イザラも悪くない気分である。かつての最強と戦えると思うと血が湧き立った。だが、イザラは一応でも部隊の隊長格である。個人的な気分の高揚は避けるべきと思った。
「最強と呼ばれるのは悪い気はしないが、私を倒した勇者は何人もいるぞ。貴公らも私を倒し、勇者の誉れを得ようと努力したまえ」
言われなくても倒す。そう思い、イザラは対艦刀を構え突進する。その位置はイオニスのフレイドから見て右側である。対艦刀を両手に持ち、スラスターの速度も加えた最高の重さの一撃を加えようとする。
だが、イオニスのフレイドはその一撃を右手の対艦刀で軽く受け流した。イザラは訳が分からなかった。明らかにこちらの攻撃の方が重く威力もあるのに、それを片手でいなすとはどういう技法なのか、イザラは全く見当もつかず、再び隙を晒す。
「貴公の動きは見事であるが、単純に過ぎるな。MSの関節を理解せず接近戦を挑もうとは笑止」
イオニスのフレイドが右腕の動きだけで対艦刀を軽く横薙ぎに振るうが、その速度は明らかに、イザラのシャウトペイルの斬撃の速度を上回っていた。
イザラは咄嗟に機体の対艦刀で防御するが、直後にありえない感覚を受けた。それはMSが吹き飛ばされるという感覚だった。片手で軽く振るった一撃がこちらの全力を軽く凌駕するのか、とイザラは弾き飛ばされた機体の中で呆気にとられていた。
イザラのシャウトペイルが弾き飛ばされた瞬間にガウンのシャウトペイルはヒートランスを構え、イオニスのフレイドの背後へ突撃する。
だが、そのヒートランスも背中を向けたままのフレイドがビームハルバードだけを背中側突き出したことによって、叩き落とされ、コロニーの地面に埋まる。ガウンのシャウトペイルは即座にヒートランスを手放し、後退する。
だが、その瞬間、高速で振り向いたイオニスのフレイドが対艦刀を振るい、ガウンのシャウトペイルの頭部を斬り飛ばした。

 
 

イザラはありえないという感覚に支配されていた。理屈で考えれば、明らかにこちらの方が重い一撃にも関わらず、イオニスの機体は軽く受け流し、それに加えて、どう考えても、威力の出ないはずの攻撃があり得ない重さと速さで襲ってくる。
これをイザラは機体性能の差などではないパイロットとしての能力の差だと考えた。それは、今どうこうしても埋まるものではないということも理解したのだった。
そう考えていたイザラのもとにドロテスから通信が入る。冗談じゃない少し待て、とイザラは思ったが通信は聞こえてくる。
「機体が足りん、お前たちも早くこちらに来い」
イザラは無理だと思った。なぜならイオニスの機体が眼前まで迫ってきていたからであった。イオニスのフレイドはビームハルバードを大きく薙ぎ払うような軌道で、イザラのシャウトペイルを狙った。
その速度は異常であり、イザラは右肩にマウントされたシールドで防御するしかなかったが、シールドで防御してもイザラの機体は大きく弾き飛ばされたのだった。イザラは機体がコロニーの地面に叩き付けられると同時に通信に応じる。
「それはこちらのセリフだ。お前たちが来い!」
こちらはバケモノの域に踏み込んだ男が相手なんだぞと、イザラは憤りを覚えた。そして、右肩の明らかに、おかしい形状に変形したシールドを放り捨てると。対艦刀を構え再び、イオニスの機体に突進しながら、ドロテスに言う。
「こちらは相手が悪い!支援をしに来いということだ!」
イザラのシャウトペイルが突進している間に、ガウンのシャウトペイルの右腕が、ヒートランスを持ったまま斬り飛ばされる。
そしてイオニスのフレイドは背後に踏み込みながら、ビームハルバードの柄の端を持ち振り返り、それに合わせて勢いよくビームハルバードが振るわれる。
その軌道は、イザラのシャウトペイルの右腕を捉えており、ビームハルバードの刃がイザラの機体の右腕を斬り飛ばした。その手には対艦刀が握られている。イザラは即座に判断した。無理だ勝てないと、そう判断したイザラは速かった。即座に機体に撤退の機動をさせる。
「無理だ、ガウン!一旦下がり、ドロテスと合流する」
数が揃えば何とかなるかもしれないとイザラは思い。後退を選んだのだった。ガウンは何も言わず、イザラの機体の後を追う。イオニスの機体は追う様子を全く見せなかった。
「背中を見せている敵を斬るのは騎士道に反する」
イオニスはその考えのもと、コロニーから撤退していく二機を見送ったのだった。

 

ロウマは後退してくる、子飼いの部隊の信号を見て大きくため息をついた。
「クソの役にも立たねえ奴らだなぁ」
まぁ、相手が悪かったということにしてもいいが、それにしてもだらしのない奴らだとロウマは思った。
「ゼロ君がクソボロ負けした以外はそれなりの被害か……」
まぁ、修理は効くし、別のタイミングで突撃させればいいかとロウマは前向きに考えることにした。
ガルム機兵隊の奇襲が上手く行かなかったとしても、正面から攻撃の圧力は継続しており、確実に前進している。そろそろ向こうのMSパイロットも体力的に限界に達しているだろうとロウマは考えた。そこで、何かダメ押しの一手を打ちたいとも。
「ジョット君、指揮官っぽい機体は見えるかな?」
ロウマはガルム機兵隊所属の狙撃手であるジョットに通信で呼びかけた。
「えーと、まぁ、なんか、せわしなく動いてるのが、何機かいるっす」
曖昧な答えだが、まぁいいかとロウマは思った。
「とりあえず、一番指揮官っぽい奴、そいつ狙撃しておいて」
ロウマは適当に言って、通信を切った。まぁ、指揮官が死んだからといって、そう上手くいくものでもないが、どうなることかとそれだけは見たかったロウマだった。そんな事を考えていると不意にイザラから通信が入った。

 
 

「スマンが突入は失敗。ガルム機兵隊は全機一時帰艦する」
「はい、どーぞ。ご自由に。ところで、誰が誰にやられたか教えてくんない?」
特に意味があったわけではないが、ロウマは聞いてみた。
「ゼロは捕虜にしていた小僧に、私とガウンはイオニス・レーレ・ヴィリアスだ」
ロウマは、ふーん、と頷くと、一方的に通信を切った。なるほどセイン君がいるか、だったらちょうど良い機会だ。少し痛めつけに行くのも悪くないだろうと思った。
そしてイオニスの名を聞き、まだ生きていたかという若干の驚きと共に、イオニスのことも思い出す。確か同期だったか一つか二つ上だったなと。
そしてMSでも生身でも近接戦闘が極端に強かった奴であり、そして極限の馬鹿であったこと、生身で何度か武器術の訓練をした結果、一つしか勝てるものが無かったことなど。
欲しい人材のリストに入れることが無理なほど思考が偏っておいたので放っておいたが、まさか、ここで敵として出てくるとはロウマも予想外だった。
「わりと面白いもんだね」
意外なところで縁というものは働くものだとロウマは思ったが、イオニスは別にどうでもいいかという結論に達していた。どうせ接近戦しかできない男なので放っておいても良いという結論に達した。
それよりも、この戦場をどうするかだ、MSの戦列部隊は距離を敵の防衛線に対してかなり距離を詰めている。突撃したら多少の反撃はあるが近接戦闘に持っていける距離だ。しかし、何の下準備もなく、突撃し接近戦も芸が無いとロウマは思い、命令する。
「シャウトペイル突撃隊、用意。十機ほど残して突撃準備、戦列部隊は道を開けろ」
ロウマの命令でMS隊が一糸乱れぬ動きで、陣形を再構築する。シャウトペイルの高機動を生かした高速突撃部隊が戦列部隊の開けた道を通り、前衛に立つ。それを見届けたロウマは一言、命令を発する。
「突撃」
発せられた命令に合わせ、シャウトペイルの突撃隊が、ブースターボードに乗り、凄まじい加速でクランマイヤー王国側の防衛線に突撃する。
「戦列部隊、全機突撃。近接戦闘で蹂躙しろ」
ロウマは突撃隊の後を戦列部隊のMSに追わせた。そして、ロウマは事前に命令を伝える。
「突撃隊は敵防衛線を突破後、180度旋回し、背後から戦列部隊と協力し、敵防衛線を背後から踏み潰せ」
そう命令を出すと、ロウマは旗艦のブリッジの椅子から立ち上がる。
「俺も出る。残しておいた十機のシャウトペイルは俺と一緒に別行動だ」
さて、セイン君を片づけるとするか。ロウマは誰にも本心を悟られぬように、命令を下してからブリッジを出るのだった。

 

「敵、突撃してくるぞ!装甲板を固定して耐えろ!」
アッシュはクランマイヤー王国の防衛部隊に指示を出し、アッシュ自身も機体に装甲板を固定させた。敵の突撃部隊の威力は身を持って知っている。下手な反撃はするべきではなく、守りに徹するべきだというのがアッシュの判断だった。
そして、その判断によって、最初の突撃は防ぐことができたのだった。シャウトペイルの部隊はヒートランスと大盾を構え突撃するが、その一撃をクランマイヤー王国側は装甲板を頼って、防ぎ切った。
だが、第二陣の突撃部隊は、そうはいかなかった。
「アッシュ、戦列部隊が突撃してくる!」
ストームが叫んだ瞬間、アッシュは全軍に指示を出す。
「全機、近接戦闘用意、MSの大部隊が来るぞ!」
アッシュは指示を出すと乗機のザバッグを装甲板の陰から飛び出させ、迫ってくるMSの大部隊に対して先陣を切った。細かい理屈は分からないが、アンチビームの粒子の中であっても、ビームサーベルは使える。切れ味は通常時と比べると大幅に落ちるが。
アッシュの乗機のザバッグはビームサーベルを抜き放ち、敵の戦闘の機体を、すれ違いざまに斬り捨てると、すぐにそばの敵めがけて、ビームサーベルで斬りかかりつつ、もう片方の腕に持った実体弾のライフルで別の機体を撃つ。
「アッシュ、前に出るな!後ろから突撃隊が戻って来る!」
ストームは前から来る部隊ではなく、背後から迫ってくるシャウトペイルに向けてスナイパーライフルを撃ちながら、叫ぶ。
「挟撃か!?全機、互いの背後をカバーしながら戦え!」
乱戦になる。だが、クランマイヤー王国のパイロットは近接戦闘に強い。海賊活動をやっていた結果、近接戦闘の技量が目に見えて向上したのだ。乱戦になろうと、この距離ならばそうそうに力負けはしないはず。
だが、アッシュにも懸念はあった。それは、どうしようもない数の差とパイロットの疲労だった。しかし、今はそれを深く考えている暇はない。アッシュはとにかく目の前の敵を撃墜させることを優先したのだった。

 
 

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