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GUNDAM EXSEED_B_49

Last-modified: 2015-11-28 (土) 23:03:47

セインは近接戦闘の最中、いつの時代だよ、という気分になっていた。もはやライフルなどの銃器を使っている機体はほとんどなく、クランマイヤー王国の機体もクライン公国の機体も近接武器で、ひたすらに格闘戦をしている。セインは不意にハルドの言葉を思い出した。
「MSの普及で戦争は再び野蛮な時代にもどってしまったというわけだ。大昔はスイッチを押すだけで戦争の決着がついた。けれども今はどうだ、西暦以前、俺らからすれば古代を通り越して原始時代くらいか、そんな感じで殴り合いをやる羽目になっている。
それも最先端のテクノロジーを使ってだ。頭が悪いと思わないか?技術的には進歩しても、俺たち人間は行動的には退化している確実にな。それとも人間は一向に進歩して無くて野蛮なままだったのか?俺には分からんね」
ハルドは酔うと、そんな風な話しをすることが多かった。あの粗野で狂暴性の塊みたいな人間が、哲学者のような口調で語りはじめるのがセインは不思議でならなかった。セインがそんな風に別なことを考えていると、不意に目に入る物があった。
「あいつら性懲りもなく!」
セインが見た者はMSの部隊である。それが乱戦となっている戦場を迂回して、コロニー内に入り込もうとしているのをセインは発見した。セインはジェイコブらに通信で呼びかけるが、ジェイコブ達も乱戦の中でそれどころではないのか、返事は返ってこない。
セインは仕方ないと思い、一人敵の部隊へと向かってオーバーブレイズガンダムを最大加速で機動させる。距離と場所も悪くない、アンチビーム粒子の滞留圏外だ。ビームライフルが使える。そう思い、セインがオーバーブレイズガンダムにビームライフルを構えさせた。
その時だった。セインにとって因縁ある、あの男の声がしたのは。
「セ〜イ〜ンくん、あ〜そびましょ〜」
突然のビームがオーバーブレイズガンダムに直撃しかけるが、セインはそれをギリギリで回避した。誰がやったのかは声でハッキリと分かる。セインは声の主の名を叫んだ。
「ロウマ・アンドーっ!」
「正解」
ロウマはマリスルージュの両手のビームガンをオーバーブレイズガンダムに向けて撃つ。セインは、補給の際に貰ったザバッグ用のシールドでビームガンを防ぐ。セインは見たことのない機体に警戒を強めた。
徹底して曲線的なシルエットは極めて人間らしかったが、その頭部は、ただ丸くそこに十字の溝が刻み込まれている機体であった。
その機体が両手にビームガンを持ち、ひたすらに早撃ちを仕掛けてくる。これまで見てきたロウマ・アンドーの戦闘スタイルとは、まるで違うとセインは思った。以前までは刀を使った近接戦闘のスタイルが中距離戦闘のスタイルに変わっている。
だが、それならそれでやりようがあると思い、セインはオーバーブレイズガンダムを操りビームライフルを撃つが、ロウマの機体は消えたように動き、ビームライフルは完全に何も無い空間を撃った。
セインはSEEDの力を使い直感力を高め、即座に背後を振り向いてライフルを向けると確かにそこに、ロウマの機体はいたが、ふたたび消えるように動き、ビームライフルの射撃を躱す。
「動きが速すぎる」
セインはロウマの機体が移動した場所は自分の機体の真上だと感じたが、対処できるようなスピードではない。速すぎて移動する位置が何となく分かったところで、ほとんど意味がなかった。
「なぶり殺しにしてあげるよセイン君」
ロウマの機体はオーバーブレイズガンダムの真上に移動しており、ビームガンを連射し、オーバーブレイズガンダムにビームが直撃する。
オーバーブレイズガンダムにはブレイズガンダムと同様にバリア機能があるので、直撃が即撃墜に繋がるわけではないが、バリアにも限界がある。
セインが、ロウマの機体に対処しようとオーバーブレイズガンダムを動かそうとした瞬間、ロウマの機体が放った蹴りがオーバーブレイズガンダムの頭部を捉え、オーバーブレイズガンダムを弾き飛ばす。バリアでも衝撃は完全に殺せないことを知っての攻撃だった。
セインは機体性能がどうとかではなく、やはり強いという感想しか抱けなかった。生身で戦っても強く、そして賢い。MSに乗ってもひたすらに強いという感想しか抱けない。そして戦争では指揮官としてクランマイヤー王国を壊滅近くまで追い込んでいる。
セインはロウマ・アンドーに一種に憧れを感じると同時に失望を感じた。これだけ何でもできるのに、本人は恐ろしく小さい人間だ。夢を語るが、その夢もちっぽけだということを捕虜の時に知った。

 
 

「アンタはどうして!?」
セインはオーバーブレイズガンダムのビームライフルを連射しながら、一所に留まらないように気をつけ、動きながらひたすらロウマの機体を攻撃する。
「どうして、そんな力があって、何かを変えようとしないんだ!」
ロウマに一欠けらでも善意があり、その善意のために動けば世界は間違いなく良くなる。それでなくても、ロウマが何かの変革のために意志を持って動けば世界はすぐに変わる。セインはSEEDの覚醒によって強化された直感で得た物をロウマに語る。
「変えてどうなるんだい?」
セインが気づいた時にはロウマの機体はセインの機体の真横にいて、ビームガンをオーバーブレイズガンダムの頭部に突きつけていた。
セインは慌てて機体を動かそうとするが、それよりもビームガンの射撃の方が速く、オーバーブレイズガンダムの頭部をビームガンが直撃し、そして、即座にロウマの機体の蹴りが叩き込まれ、オーバーブレイズガンダムが弾き飛ばされる。
「俺はね、単純に地位や名声、金が欲しいんだよ。それで俺を見下していた奴らを逆に見下して全員に思い知らせてやる。この俺を見下していたのがどれほど愚かな行為だったのかを、俺はそのためだけに生きているんだよ。セイン君」
セインは怒りという感情を過ぎて、哀れな男だとロウマを思った。それだけの力をそんなもののためにしか使えないのかと。ロウマという男は底が浅い。セインはそういう結論に至ったのだった。
「アンタは哀れだ」
大切な人やものを何も知らない、自分だけしか見えていない寂しい男だ、セインの一言にはそれだけの意味がこもっていた。
「哀れと言われるのは初めてだよ」
マリスルージュは、弾き飛ばされた状態から体勢を整えようとしている、オーバーブレイズガンダムにビームガンを向ける。その時だった。どこからともなく、ビームハルバードがマリスルージュに飛来してきたのは。
「イオニス・レーレ・ヴィリアス。見参!」
イオニスのフレイドが突然に表れ、ロウマのマリスルージュにビームハルバードを構え突進する。だが、マリスルージュは、その突進を容易く躱すのだった。
「チッ、面倒なのが」
ロウマは明らかな苛立ちを見せ、イオニスのフレイドに対して距離を取りながら、ビームガンを撃つ。接近戦を避けているのがセインにも分かった。
「誰だかわからんが、良い腕だ!」
イオニスのフレイドはビームガンの射撃を回避しながら、一気に距離を詰めつつ、右手に対艦刀を抜き放ち、マリスルージュに斬りかかる。マリスルージュはそれを回避することは問題なかったが。油断していた、敵はイオニスだけではないことを。
「そこだ」
セインはロウマの機体の動きを見極め、ビームライフルを撃つ。発射されたビームの一閃はロウマの機体を完全にとらえていた。
「チッ」
舌打ちをしながら、ロウマは自機に直撃コースのビームライフルに対して、ビームガンの銃身で受け止めた。
アンチビームコーティングがされているため、一発は耐えられるだろうと思ったが、ロウマの考えは甘く、オーバーブレイズガンダムの放ったビームはビームガンを破壊したのだった。
「隙ありだな!」
イオニスのフレイドがその瞬間に左手に持ったビームハルバードによる刺突を繰り出す。だが、ロウマの機体は繰り出された突きに対して身を反らすことによって躱し、躱しながらハルバードの柄を掴むと、強烈な蹴りを叩き込み、イオニスのフレイドを弾き飛ばした。
「俺に隙なんてねーよ。ヴィリアス先輩」
ロウマは潮時かとも思った。武器も一つ無くなった。相手に懐かしのヴィリアス先輩が加わっている。こうなっては遊びでは済まないと。そう意味での潮時であり、本気を出す時だった。

 
 

ロウマはマリスルージュのコックピット内で呟く。
「ヘルメスの水銀球、起動。システムスタート……システム立ち上げ完了。コード:メルクリウス……」
さて、遊びではなく殺し合いだ。相手は二機。そこそこなのが一機に、相当なのが一機。問題はない。さて、殺るか。ロウマは蛇のような笑みを浮かべ、機体を動かした。
セインはSEEDの力なのか直感的に嫌な感覚を覚え、思わず機体を下がらせた。対してイオニスは恐れずに突っ込む。
「アンドーか!?」
「そうだよ先輩!」
イオニスの機体が突っ込むのにも関わらず、ロウマの機体は、全くの無防備のように見えた。だが違う。セインの強化された直感がそう言った。
セインの目の前ではイオニスの機体が対艦刀を振り下ろした。どうみても直撃する状況。だが、結果としてそうはならなかった。
対艦刀は簡単に受け止められていた。しかし、それはマリスルージュの腕によってではない。マリスルージュのバックパックから伸びる銀色をした巨大な手によってだった。
セインはそれが何かは詳しくは分からない。だが、その銀色にオーバーブレイズガンダムと同じものを感じた。
「面妖なものを!」
「こういうの、先輩は嫌いか。じゃあ、これはどうですかね」
銀色の巨大な手は対艦刀をへし折る。そして更にロウマの機体のバックパックから、銀色の液体が漏れ出し、形を成していくをセインは見た。宇宙で液体?セインは異常な何かを、ロウマの機体から感じたのだった。
「イオニスさん、下がって!」
銀色の液体が形作ったのは巨大な刃であり、それが、セインの目には極めて滑らかに動き、イオニスのフレイドを襲うが、間一髪でイオニスのフレイドは後退し、その刃の一撃を避ける。だがロウマの攻撃は終わらない。
「こういうのは好きですかね?」
銀色の巨大な手の指が鋭利な槍となって、攻撃を回避したイオニスの機体を襲うが、所詮は一直線な攻撃、セインはイオニスなら回避できると思った矢先、その指先の槍が更に分裂し、先端が槍の触手となって、縦横無尽にイオニスの機体を襲う。
セインはイオニスの機体の援護をするため、ロウマの機体にビームライフルを撃つが、ロウマの機体は変わらずの速度で動き、オーバーブレイズガンダムに蹴りを叩き込み、体勢を崩すと、ビームガンを連射しながら、バックパックから生える銀色の刃を叩き付けた。
威力が高い。セインは機体のバリアのゲージを見ると限界を悟った。これ以上当たるわけにはいかないと機体を動かした瞬間、ロウマの機体から生える銀の刃が二本に増え、オーバーブレイズガンダムを前後から挟み撃ちにしようと動く。
セインは機体を上昇させて回避したが、その動きを読んでいたロウマの機体の蹴りが再び直撃するが、吹き飛ばされることは無かった。先ほどまで刃だった銀色の物体がワイヤーとなって、オーバーブレイズガンダムを捕まえたからだった。
銀のワイヤーが絡みつきオーバーブレイズガンダムの動きを完全に塞ぐ。
「若者!」
イオニスが叫ぶが、イオニスの方も銀の触手の攻撃を回避するのに精一杯であり、セインの手助けをすることは無理であった。
「遊びなら、見逃してやってもよかったんだけど、今は殺し合いだからね」
銀色のワイヤーが圧力を強めたことによって、バリアは限界を迎え、オーバーブレイズガンダムはバリアの使用が不可能になっていた。つまりは防御力は普通のMSと変わらないということだ。
ロウマの機体は、背中から新たに銀色の槍を作り出していた。先端は鋭利かつ硬質だが、根本は液体のような槍、銀色の武器は、これまでの攻撃もそうだった。
「さて、死のうか」
ワイヤーが僅かにズレ、コックピットの部分だけ、銀色のワイヤーがない状態となり、オーバーブレイズガンダムはコックピット部分だけを露出させた格好になる。
銀色の槍は既に撃ちだされる構えとなっていた。セインは普通の回避は無理だと思い。叫んだ。

 
 

「コード:ブレイズ!」
その瞬間、ブレイズガンダムのバックパックのスラスターから炎の翼が吹き出し、銀色のワイヤーを焼き切って拘束から解除される。しかし、銀色の槍が迫っているのは変わらない。
だが、セインはSEEDの力に加えコード:ブレイズの発動によって得たEXSEEDの反応速度によって、オーバーブレイズガンダムにその槍を掴ませ、掌から放つ光で、銀色の槍をドロドロに溶かしたのだった。
「あれま」
ロウマは、まぁ当然かとも思い、機体を下がらせる。イオニスを追わせている方もそろそろ限界かと思い、ロウマはマリスルージュを動かす。
イオニスの方へと向けていた銀色の触手を戻し、セインのオーバーブレイズガンダムの方には新たに生やした巨大な手で、薙ぎ払う。その攻撃によってセインのオーバーブレイズガンダムは後退した。
なるべくコード:ブレイズが発動する前に仕留めたかったとロウマは思う。マリスルージュにとってコード:ブレイズを発動させたオーバーブレイズガンダムは相性が最悪に悪いためだった。
だが、相性が悪い理由を知られていないなら、相性が悪いも何もないとロウマは結論付け、とりあえず、セインとイオニスを殺すための方法を準備するのだった。
セインは目の前で、ロウマの機体がバックパックから漏れ出す銀色で何かを作り出すのが見えた。そのため、ビームライフルを撃つが、やはり回避される。しかし、動きは読めた。
即座に下を向き、ビームライフルをもう一度撃つが、その一撃は巨大な銀色の盾によって防がれる。しかし防がれたといっても、僅かの間であるビームはすぐに銀色の盾を貫いた。しかし、その後ろにロウマの機体の姿はない。
セインは直感で背後を向き、シールドを構えると、そこにはロウマの機体が巨大な銀色の剣を持ち、それを振るうを体勢を取っていた。
セインは回避できないそう思い、シールドで防御するが、ロウマの機体が振るった銀色の大剣はシールドを容易く断ち切る。
セインは後退よりも攻撃を優先し、シールドを斬られてなお、ビームサーベルを抜き放ち、ロウマの機体に斬りかかるが、ロウマの機体は大剣を巧みに操り、ビームサーベルを弾き飛ばす。
「死ぬかい?」
ロウマの声が聞こえセインは、背筋を震わせる。だが、セインの身を守るように、イオニスの機体がビームハルバードを投げつけ、ロウマの機体の注意を反らす。
その瞬間に、セインのオーバーブレイズガンダムがロウマの機体に掴みかかろうとするが、ロウマの機体は、オーバーブレイズガンダムの方を見ることもなく、蹴り飛ばし、ビームハルバードを弾いて防ぐ。
蹴り飛ばされた瞬間にセインは間合いを離そうとするが、突然、背後からビームの射撃をくらう。何事かと思い、セインはすぐに機体を振り向かせると。切り離された銀色の物体が手の形となり、ビームガンを撃っていたのだった。
訳が分からないとセインが思った瞬間、ロウマの機体はセインの機体の背後に迫っていたが、その間に、イオニスのフレイドが立ちふさがる。イオニスのフレイドはビームサーベルを抜いて、ロウマの機体を迎え撃つ。
「大剣術を使った俺に勝ったことがありましたっけ、先輩?」
ロウマの機体が銀色の大剣を振り下ろす。
「勝った記憶はないな」
イオニスの機体が銀色の大剣を受け止める姿勢だった。だが、銀色の大剣は途中で軌道を変え、イオニスのフレイドを蹴り飛ばす。その結果、セインの機体とロウマの機体が一直線上に並ぶ。
ロウマの機体は、一直線に並んだ二機に対して攻撃を仕掛けるそれはバックパックから生える銀色の槍だったが、ロウマは今回は形状を変えてみた。それは先端がドリルのように螺旋を描く銀色の槍である。
ロウマはこれで良いだろうと思い、銀色の槍を高速で伸ばす。その槍は蹴られた衝撃で体勢を崩したイオニスのフレイドの胸部を貫き、僅かに曲がって、セインのオーバーブレイズガンダムの肩にぶつかり、その瞬間に凄まじい回転を見せる。
「ぐぅぅぅぅ!」
セインはバリアが貫通されたことは分かった。そしてバリアを破ったうえで、螺旋状の槍はドリルのように回転し、オーバーブレイズガンダムの肩をえぐっているのだということも。
機体と痛覚が一体化しているセインはオーバーブレイズガンダムの肩がドリルでえぐられている痛みを自分の身体でも感じていた。

 
 

「ははははは、感覚同化してると辛いだろうね」
セインのオーバーブレイズガンダムがコード:ブレイズを発動中はパイロットと機体が同化したような状態になり、機体を自らの手足と同じように扱えるが、その代わり機体が負うダメージもパイロットは身体的苦痛をとして感じてしまうという弱点がある。
まぁ、痛めつけるのは別に良いかと思い、ロウマは槍を戻した。今のでセインの方はだいぶ消耗しただろうからコード:ブレイズの維持も難しいだろう。イオニスの方は殺したと思い、ロウマは機体をゆっくりと移動させる。
だが、その時、イオニスのフレイドが動き出しロウマの機体に迫る。ロウマは何ということはないと思い、銀の大剣を振るい胸の高さの位置を横一線に軽く薙ぎ払った。
動けたのはコックピットの位置が腹だっただけだろうとロウマは思う。胸から上にある部分を全てを失い、戦闘力を完全に消失している。コックピットを狙わなかったのは、ロウマにとって昔の先輩であり、嫌いでもないから生かしておくことにしたためだった。
だが、セインは別なので殺そうという思いがロウマの中に確かにあった。もう少し可愛げがあったら生かしておいて、苦しむ姿を見ていたいが、今の様子では前向きすぎてロウマにとっては面白くない。
「さて、そろそろかな?」
ロウマの機体マリスルージュは銀の大剣を構える。対してセインのオーバーブレイズガンダムは右肩を損傷したため、右腕が使えないため、左手でビームサーベルを抜き放ち、構える。
「まだ、やれるぞ」
セインはそう言うが、正直ギリギリだった。肩をドリルでえぐられた感覚がまだ残っており、気力が、落ちていくのが自分でもわかった。それでも、この男には負けるわけには行かない。セインは意志を強く持ち、何とかコード:ブレイズの状態を維持する。
「はっ、頑張るねぇ」
ロウマの声が聞こえるが、セインは無視し、精神を集中する。まだ限界までは早い。そう思って。
「ほら、ぼやぼやすんな」
ロウマの機体が左手にビームガンを持ち、オーバーブレイズガンダムに撃つ。セインはその攻撃を回避し、機体に即座に背後を向かせる。背後にはロウマの機体。その両手には、大剣ではなく銀色の剣が一本ずつ握られていた。
二本の剣が、同時に真上から襲ってくる。オーバーブレイズガンダムは左手のビームサーベルを上に構え襲ってくる二本の剣を防ぐ。銀色の剣とビームサーベルが衝突するが、ロウマの機体は銀色の剣をすぐに戻し、即座にオーバーブレイズガンダムに蹴りを放つ。
だが、セインは蹴りが来ることは読めていた。なのでオーバーブレイズガンダムを後退させ、蹴りの空振りを誘おうとした。だが、ロウマの機体はその読みを上回っていた。ロウマの機体の足は銀色の金属によって覆われており、それが刃を作り出し、長さを伸ばしていた。
リーチを読み間違えたセインのオーバーブレイズガンダムはマトモにその蹴りをくらってしまう。
「俺のは君のと違って応用が効く道具なんでね」
セインのオーバーブレイズガンダムはバリアによってダメージを無効化したが、今の一撃でバリアは停止していた。バリアが再び使えるようになるまでには、しばらくの時間がかかる。セインはここから先は一発も当たることは出来ない。そう思った直後だった。
ロウマの機体の持つ銀色の剣が液体のように形を崩し、直後にワイヤーとなってオーバーブレイズガンダムに襲い掛かる。セインはビームサーベルを振るい銀色のワイヤーを切り払う。だが、その一瞬によって隙が生まれた。
「遅いなぁ」
聞こえてきたロウマの声。セインは機体を動かそうとするが遅かった。真後ろから銀色の槍が既に迫っていた。セインは咄嗟の判断で、スラスターから噴き出る炎の翼を巨大にさせ、銀色の槍の軌道を反らす。
だが、それによって、セインの意識は背後に集中してしまっていた。ロウマがそれによって生じる隙を見逃すはずが無かった。

 
 

ビームガンが真横からオーバーブレイズガンダムの頭部を貫く。セインは頬を何かで貫かれたような痛みを感じた。だが、この程度ならば、まだ耐えられた。
「メインカメラが死んでも!」
セインは即座にビームが飛来して来た方向へと機体を向ける。だが、そこにあったのは、ビームガンとそれを持つ銀色の手だけ。
セインはまた罠にはまったことを理解した。その瞬間、ある覚悟をした。
「馬鹿だねぇ」
ロウマの声が聞こえると同時に、セインはコックピットに僅かな衝撃を感じた。セインはその衝撃が何か理解しているため、別段焦ることもなかった。それがロウマの機体によって自分の機体に銀色の剣が突き刺さっていてもだ。
直後にセインの腹に激痛が走る。痛みは右のわき腹を斜め後ろから刺しているようだと感じた。状態はまさしくその通りであり、ロウマの機体はオーバーブレイズガンダムの右わき腹を左手に持った銀色の短剣で斜め後ろから突き刺していた。
ロウマの機体はバックパックからあふれ出てくる銀色の液体を右の手に掴むと、液体は瞬時に銀色の剣に変わった。ロウマの機体はその剣を振り下ろし、オーバーブレイズガンダムの右腕を肩から斬りおとした。
「ははは、痛くしてごめんな。でも、これくらいしたいくらい俺は君にムカついてるんだ」
せっかく用意したオーバーブレイズガンダムを奪われてムカついているのが多少、それよりもそこらで野垂れ死にしているのがお似合いの餓鬼が自分に生意気にも立ち向かってきていることに腹が立つのが殆どといったところだ。
さっさと死ね。ロウマはそう思い銀色の剣を振り下ろそうとした。その時である、ロウマの乗るコックピットにダメージの表示が現れたのは。
「こちらこそ謝るよ、アンタじゃなく、その機体にな。痛くしてごめんって」
何をされた?ロウマは機体に深刻なダメージが入っていないことは分かったが何が起きたかは咄嗟には理解できなかったが、確認して、苦笑した。
ロウマの、機体マリスルージュの腹部にビームサーベルの刃が突き刺さっているのだ。それもただ、刺さっているのではない、オーバーブレイズガンダムの腹部を貫いたうえで突き刺さっているのだ。
「ハラキリかい?」
「そうとも言う……」
セインはロウマに後ろを取られた時点で覚悟を決めていた。そして行ったのが、自機の腹にビームサーベル突き刺して、後ろにいるロウマの機体もろとも串刺しになってやろうという覚悟だった。
普通に攻撃したところでロウマには避けられるだったら、こうするしかないと思っての攻撃だった。払った代償は大きかったが、ようやくロウマに一太刀を入れた。セインは腹部に走る激痛に耐えながらも満足を抱いていた。
だが、ここで終わらせるわけには行かない、セインはビームサーベルに伸びろと念じた。するとビームサーベルは伸びて、ロウマの機体をビームの刃が完全に貫通する。
ここまで行けば、セインは直感に従い、ビームサーベルの柄の角度を下にずらす。セインにとっては内蔵をかき回されているような痛みだったが、これでいいとセインは思った。ビームサーベルの刃は柄の位置の変化により、刃が跳ね上がり、ロウマの機体を切り裂いた。
これで限界だ……セインの全ての気力を振り絞った自滅覚悟の攻撃。それは確かにロウマの機体をに届いていた。ロウマの機体はビームサーベルが突き刺さった箇所から真上にビームの刃で斬り裂かれていた。

 
 

セインはビームサーベルの刃を消す、それと同時に気力の限界によってコード:ブレイズが解除される。セインは機体をゆっくりと動かし背後を振り向こうとしたその時だった。
「くっそつまんね」
ロウマの今までにない冷たい声がセインの耳に届いた。セインは慌てて機体を振り返らせると。そこには異形がいた。銀色の液体によって、斬り裂かれ分かたれた機体を繋ぐMSの姿である。
「まぁ頑張ったのは褒めるけどね。ただまぁ少し頑張りすぎかな。俺がイラつくくらい頑張ってくれて。まぁ、なんともねぇ」
ロウマの機体、マリスルージュは斬り裂かれた部分同士を結合し、その傷口を銀色の金属で覆った。そして、何も無かったかのように動いて見せる。自滅覚悟の攻撃をしたセインに対して。
「そんな……」
必死の攻撃だった。ロウマ自身は仕留められなくても機体は仕留めたと思ったセインには絶望しかなかった。
「もういいだろう?俺もウンザリだ。見て分かるだろ。俺を倒せる奴はいないってこと」
絶望に襲われたセインだったか、ロウマの言葉には否定する部分があった。
「アンタを倒せる奴?いるに決まってるだろ。ハルドさんにアッシュさんがいる。アンタなんか、あの二人と比べれば雑魚だ」
そう言うと、ロウマは哄笑した。確かにそうだと思ってだ。ハルドには勝てないし、アッシュ相手でもアッシュの機体次第では危ないだろう。だが、今その二人はいない。来るはずもないとロウマは思った。
「試しに叫んでみるといい、もしかしたらやってくるかもしれない。キミの尊敬するハルドさんがさぁ」
来るわけないだろうと思いながら、ロウマは右手に持つ銀色の剣にバックパックからあふれ出る銀色の液体をまとわせ、銀の大剣を作り上げた。
「さぁ、叫んでみなよ、人生最後のセリフだぜ」
ロウマのマリスルージュは銀色の大剣を掲げる。セインは終わりを覚悟した。今度こそ本当の終わりである。だからこそか、思い切って叫んでみたい衝動に駆られ、セインは叫んだ。
「ハルドさぁぁぁぁん!」
セインはありったけの声で叫んだ。だが、それで何か起きるわけでもないと分かっていた。当然のごとく何も起こらなかったのだ。
「気が済んだなら、殺すけど。文句ないよな」
ロウマはそう言って、銀色の大剣を振り下ろした。これでこの餓鬼ともお別れだ。ようやく鬱陶しいものから解放される。そう思って振り下ろした銀の大剣。
ロウマはその刃をしっかりと見定めていた。だが不意にその軌道がずれる。ロウマはその瞬間を見届け、そして銀の大剣が途中で爆発したのを見た。
何が起こった。ロウマはシステムの不具合等の、ありえない何かが起こったとしか思えなかった。だが、セインは違った。セインには確信があった。あの人が来たという何の根拠もない確信である。だが、それは事実だった。
ロウマは咄嗟に周囲を見回す。冗談ではない、奴はいないはずだと。それは半ば祈りに近かったが、それは容易く打ち砕かれた。遠く彼方からやってくる、白と黒のツートンのガンダムタイプの姿によって。
「まさか……」
「いや、まさかだよ……」
自分の叫びが呼び寄せたとは思わないが、セインはあの人が来たとわかった。
そして一つの通信が入る。それは味方のみならず、敵軍、それどころかコロニー内部にスラ届く、全周波の通信だった。その通信は僅かな言葉しか伝えなかった。だが、それで充分だった。
「――ハルド・グレン。戦闘に参加するっ!」

 
 

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