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GUNDAM EXSEED_B_57

Last-modified: 2015-11-28 (土) 23:27:32

コロニー同盟設立の日、同盟参加の調印式にクランマイヤー王国を訪れたコロニーの代表者はアマツクニの代表者とセーブルの代表者のみであった。他は急に都合がつかなくなったなどという理由で国家間の行事を欠席したのだった。
「まぁ、そんなもんだって」
ハルドは調印式の夜。アッシュと酒を飲みながら話す。
「基本的にコロニーは独立独歩の気風を持つ。その理由は?」
「僕の血縁のユウキ・クラインがコロニーの自治と独立を認めたからだ。」
ハルドはつまみに用意したドライフルーツを齧ると、ウィスキーを口に含んだ。
「そのせいで、コロニーは他のコロニーの支配下に入ったりすることを嫌がるし、変に協調を求められるのも気に入らない。自分たちのコロニーは自分たちの物であり、口出しをされるいわれはないってことだ」
ハルドは三年間の何でも屋生活で学んだ知識を、そうやってアッシュに披露した。
アッシュはウンザリした表情でナッツが乗ったチョコレートを口に入れ、チョコレートが溶け、ナッツだけになると噛み砕き、グラスのウィスキーに口をつける。
「その食い方よぉ、チョコとナッツ、別々に食っても同じじゃね?」
ハルドが疑問を口にするが、アッシュは小さいころからナッツ入りのチョコレートはこの食べ方でないと落ち着かないのでハルドの疑問は無視して、コロニーの話しを続ける。
「現実問題、今後コロニーを同盟に加盟させるにはどうすれば良い?」
そういうとハルドは手を広げて簡単な話だと言う。
「力を見せれば良い。コロニー同盟に入ったほうが圧倒的にメリットがあるってな。今はどこのコロニーもクライン公国から侵略を受けるんじゃないかって、戦々恐々。そこで、俺たちコロニー同盟の仲間になれば絶対安全だと分からせる」
「一回は勝ったぞ」
アッシュが不満げな表情でウィスキーのグラスを飲み干す。ハルドは空になったアッシュのグラスにウィスキーを注ぎながら言う。
「一回だけじゃダメだってことだろ。あと一回でも勝てば風向きが変わるかもな。それも、こっちからクライン公国を攻めて勝つ」
また厄介なことになりそうだと思いながら、アッシュは空になったハルドのグラスにウィスキー注ぎ、ドライフルーツを口に入れウィスキーを飲むのだった。

 

「とまぁ。やっぱりというか加盟国は少なかったですね」
予測がついていたなら、もっと先に言ってもらいたかったとアッシュは、病院を一時退院して、会議の場に出席していたクリスを睨んだ。
クリスは片耳が吹き飛んで無くなっていたが、音を聞き取ることには問題は無いようだった。ちなみに弾の当たり所が悪かったせいで、左腕は肩から上に上がらないし、左脚は歩く際に常に引きずる羽目になっていた。
最高の医療設備を持つ施設なら治療が可能らしいが、そんなものはクランマイヤー王国にはない上、極めて高い治療費が要求される。
話しを聞くぶんには、ユイ・カトーも当たり所が悪かったらしく、腕に関しては、いっそ義手にした方が面倒はないと噂で聞いていた。
「やっぱり、どこかのコロニーを解放したほうが良いかもしれません。社会的な評価にも繋がりますし」
「ま、そうだろうな」
ハルドはわざとクリスに見せるように耳を折りたたんで見せていた。イジメる時はホントに容赦がないとアッシュは思う。人の身体的欠損をネタにするとは不謹慎だと思いながらもクリスなら別にいいかとアッシュは思った。
不意にセインが手を挙げた。珍しいなとアッシュが思うと。ハルドが口を挟む。
「お、脱童貞をギリギリのタイミングで逃した大先生が話すぞ。ここでも空気を逃した発言がくるか!?」
ハルドが茶化すが、セインは無視した。ホントに成長したなぁとアッシュは思うのだった。

 
 

「あの、疑問なんですけど。僕たちが勝手にどこを攻めるか決めていいんですか?だって、コロニー同盟の代表は――」
そうクランマイヤー王国ではなく、アマツクニだ。色々と協議をした結果、アッシュや他の国の代表との間でアマツクニ代表を務めるのが筋が通っていると結論が出たのだ。
発起人と代表が別なことは珍しいことでもない。クランマイヤー王国と比べ、アマツクニは名前こそ変わったが元はオーブという歴史ある国の一部であり、歴史と格式も高い。
同盟の代表としての格は申し分ない。逆にクランマイヤー王国は同盟という一大組織を背負うには国として格が落ちるというのも事実だった。
「まぁ、その辺は気にすんな。とりあえず、ウチの国が一番強いから、戦いに関しては任せろって具合に話し合いで決まっている。それに代表国の名代もいるしな」
そうハルドが言うと、会議の卓についていた。アルバ・ジン・サハクが、はいっと言いながら起立した。
「クランマイヤー王国には恩義があります。戦いにおいてはクランマイヤー王国の手伝いをせよというのが父の命です」
アッシュは、やはり口で言うだけでは駄目かと痛感したのだった。結局の所、コロニー同盟の話に乗って来たのも、クランマイヤー王国が助けたコロニーだけだ。何かしら恩を売るか、昨夜、ハルドと話したように力を見せる必要があるなと思うのだった。
まぁ代表が認めてくれているなら、こちらは好きに軍事力を動かせるが、どうしたものかとアッシュは思い、クリスに尋ねる。
「戦闘ばかりに頼りたくないな。MSを売るなどでも他のコロニーを引き込めないか?」
アッシュが言うと。クリスは難しい表情になる。
「商売取引だけだと関係は弱いですけど、やれなくはないと思います」
そう言うと、クリスは手持ちのタブレットに情報を打ち込んだ。
「とりあえず、僕が考えているのは、攻め落とすコロニーはアービル。商取引に関してはユイ・カトーさんが主導の方がいいと思いますので、取り敢えず人員配置だけ発表しますね。
アービル行きは、アッシュさん、アルバさん、ハルドさん、セーレさん、セイン君で。取引関係はストームさんにジェイコブ三兄弟。居残りはイオニスさんと」
その発表が終わると、皆がクリスを無視して立ち上がり、はぁ疲れたといった感じで、さっさと会議の部屋を去るのだった。クリスは自分がイマイチ尊重されていないと思い、傷つくのだった。だが、クリスが傷ついてもクランマイヤー王国の面々はどうでもよかった。

 

「アービルに来るかな」
ロウマは自らが所属している秘密結社プロメテウス機関のメンバーである白髪をぼさぼさに伸ばした老人であるバルドレンを隣に座らせ、そう言うのだった。
「アービルは意外に良い土地だよ。これまではデブリとかの関係で進みにくい場所とされていて、少し田舎って感じの場所だったけれど、デブリを綺麗に抜けるルートが見つかった今だと、アービルからヤキン・ドゥーエまで直線でいける。
今後は交通の要所になると俺は考えてる。だからコロニー同盟も攻めるならアービルだという可能性が高い。今後の地球連合との連携も考えたらね」
バルドレンは興味が無いという風に聞いていた。ロウマはそれでも良いと思った。とりあえず。ロウマとて、コロニー同盟の動きを止めたいだけなのだから。
「アービルの指揮官は別にいるし、俺が口を挟む気はしないけど、戦力だけは送ってあげたいよね。頑張ってという感じでね」
ロウマはそう言ってバルドレンを笑顔で見ると、バルドレンもその意図を察したのか、邪悪な笑みを浮かべるのだった。

 
 

そうして多少の準備期間を経て、アービルへの出発となった。
「多分、奇襲をかけられると思うんですけどね」
そうは言うものの、不安からかクリスは戦闘についていくことを望んでいた。そして戦闘が確実であるため、アービル行きはシルヴァーナを用いることが決定していた。
レビーとマクバレルも戦闘の際の整備補給担当として、艦に乗り込んでいた。
「じゃ、シルヴァーナ出すぞ」
ベンジャミンが軽い調子で言うと、操舵士のコナーズが艦を出港させた。
そして続くのはユイ・カトーを先頭にした、MS販売部隊であった。ストームはヘラヘラとしており、ジェイコブ三兄弟は商談と聞いて病院から飛び出してきたユイ・カトーに目を丸くしていた。
ジェイコブ三兄弟は知る由もなかったが、ある意味、こちらの方がアービル行きよりもはるかに辛い旅路となるのだった。

 

「そういえば、春ごろか、アービルに行ったのは」
アッシュは、思い出すがあまり良い思い出でなかったとを思う。今のクライン公国という現実を突きつけられ、絶望したのだ。
もうすぐクランマイヤー王国も冬になる、そうすれば、春になり、一年かと時の流れ早さを感じずにはいられなかった。
そういえば、アービルではセーレが仲間に加わったなと、思い、セーレを見たが特に何も思わなかった。彼女には悪いが、アッシュはセーレを見た瞬間どうでも良いことかと思ってしまっていた。
多分、アービル解放戦でも、大活躍も大敗北もしないでそれなりの戦果で終わるのだろうなと思うのだった。
ハルドはアービルが近づくにつれて、多少だがイラつきを感じていた。ハルド自身その理由は理解していた。アービルはロウマに負けた場所だからだ。もっとも機体が悪かっただけで機体が互角以上になったら問題はない相手だったので、多少なりとも溜飲は下がるが。
それでも一度負けたという事実は消えないので、面白くないというのも確かだった。
「多少は良くなっていると良いですけど」
セインが呑気に言うと、ハルドとアッシュが即座に否定する。
「ないな」
「ないよ」
ハルドは端的にセインに伝える。
「誰かに命令されて人を虐げる奴は、ずっと命令に従い続けるさ。急に改心して聖人になることはねぇ」
アッシュは別のことを言う。
「前に来た時は子どもがいたから控えたけど、アービルでは女の人の姿がほとんどなかった。僕はその方が心配だな。赤ん坊をが生まれていたらどうするか……」
ハルドは溜息をつきながら、答える。
「赤ん坊と女は保護だな。文句を言う奴はいるかもしれんが、最初に被害を受けるのはそいつらだ。クリスと相談して虎(フー)を一応連れてきて良かった。できれば、ストームの方がこの手の処理は上手いんだがな」
虎(フー)は何とも言えない表情でハルドらの言葉に頷いていた。セインはアッシュとハルドの話しを理解できなかった。それは同室にいたアルバも同じであった。
「あの、お二人は何を話していられるんですか?」
アルバが丁寧に話しかけると、ハルドとアッシュは、あまり楽しくない話であるためか、重く口を開いた。
「民族浄化ってやつ。昔から占領国家はよくやってた奴だよ」
そう言われても、セインもアルバもピンと来なかった。戦場を知っているハルド、アッシュ、虎(フー)は見慣れたものだった。

 
 

「薄汚いその地の民族の血を薄くするって名目で女をレイプするだけ。アービルの場合は劣ったアービル人の血を薄くして高貴なクライン公国人の血を持った人間を増やすって名目でレイプして子どもを産ませんだ」
「兵士のストレス発散には良いという、とんでもないことを言う士官を何人か見たことがあるけどね。言っておくけど今のクライン公国でなく、昔のクライン公国軍でもだよ」
ハルドはセインらとは目を合わさずに淡々と語る。
「女の方だって必死だよ。腰を振らなきゃ殺されるかもしれん。それに自分から誘った方が何故か知らんが受けが良い。しかし、そうすると身内からは売女と蔑まれる。何とか生活していくために取った手段だってのにな」
「サイゴ、ヒサン」
虎は悲しげに言った。
「占領者が同じならいいが、占領者が変われば一気に責められるのが、そういう女たちだ。もしも、前の占領者だったやつらの子どもを孕んでいたりしたら、殺されかねない。
生まれた赤ん坊もあんまり良い思いは出来ねぇな。大概捨てられるし殺されたりする。女にとっては面倒だしな」
と、ハルドは語ると思い切り手を叩き、この話を打ち切った。
「ま、お前らが見ることはねぇようにするよ。こっちには虎先生もついてんだから心配すんな。綺麗に終わるって」
ハルドはそう言うと、機体の整備状況を確認して来いとセインとアルバにセーレまでもを追い出すのだった。
「リンチは止められないぞ」
アッシュが言う。それに関してはハルドも頷くしかなかった。
「人間はどこまで行っても野蛮。遺伝子いじくったところで、それが変わるわけじゃねぇ。だったら、人間を進化させるしかねぇのかもな」
アッシュはそのハルドの言葉に危惧を覚えた。
「それはプロメテウス機関の思想だぞ」
「別に俺が何を思おうが構わないだろ。俺はクランマイヤー王国の味方だよ。ずっとな。それで、充分ということにしといてくれ」
ハルドがそう言った、直後だった。艦内放送が響き渡る。それはミシィの声であった。
「もうすぐ、アービルに到着します。皆さん準備を」
もうすぐっていつだよと思いながら、ハルドは、心配そうな表情で自分を見るアッシュに対し拳を突き出した。アッシュは僅かに不安げな表情を浮かべながら、その拳に自らの拳を打ちつけた。
そして二人はシルヴァーナのMS格納庫へと向かうのだった。

 

先に格納庫へと辿り着いたセインには、彼を待ち構えていた二人組がいた。それはレビーとマクバレルであり、セインはだいたい予想がついてオーバーブレイズガンダムを見ると、オーバーブレイズガンダムには武装が追加されていた。
両肩と両脚のふくらはぎにビーム砲。腰アーマーには正体は分からないが折りたたまれた砲身があり、その砲身の上にビームサーベルラックが装着されていた。そして最大の特徴は背中の大型スラスターの根本部分に無理やり装備させた感が漂うドラグーンだった。
ドラグーンは通常の物と異なり剣のような形状のものが放射状に六基の装備されている。
「えーと……」
セインは何と言ったものか考えレビーらを見る。
「オーバーブレイズガンダム・バースト。今までの装備とは異なり、純粋な武装強化型だ」
それだけ言うと、レビーとマクバレルは別の仕事に取り掛かるために、その場を去って行った。セインはマニュアルとかは無いのかと聞こうと思ったのだが、完全にタイミングを逃してしまったのだった。
セインは仕方ないと思い、機体に乗り込み、機体の起ち上げを行うと、今までに見たこともないくらい大量の立体表示が現れた。どうやら全て武装関係らしいが勘弁して欲しいと思いつつ、立体表示を手で隅に退けると、オペレーターに発進の許可を取る。

 
 

「セイン・リベルター。発進できます」
セインの声にすぐにミシィが答える。
「了解、ハッチ解放します。発進のタイミングをパイロットに譲渡します」
セインはオーバーブレイズガンダムをMSハンガーからゆっくりと歩かせ、解放されたハッチから、シルヴァーナの甲板へと機体を立たせる。
「オーバーブレイズガンダム。セイン・リベルター、行きます!」
セインのオーバーブレイズガンダムが宇宙へと飛び立った。続くのはアルバの機体だった。それはレビーとマクバレルによって改造されたM4アストレイであり、その名をゴールドフレーム天といった。
ゴールドフレーム天は、ゴールドのフレーム部に漆黒の装甲を合わせた過去に存在したゴールドフレーム天を模した機体であったが、完全な再現という訳ではなかった。
天ジンの特徴は機体全体のラインに対して太く頑丈に強力なスラスターを内蔵された脚部、そして、歪な禍々しさを感じさせるような巨大な左腕。バックパックは大気圏内の飛行も可能にする翼状のスラスターに加え、四本のアームが増設されていた。
巨大な左腕は掌に大出力ビーム砲を内蔵し、手の部分も爪からビームサーベルが出力できるようになっており、その上、肘から下は有線クローアームとなるものであった。アームユニットも長いアームに多重関節を採用し、非常に広い可動性を確保している。
右腕に関しては、ビームライフルと現在最高の実体剣アブソリュートカッターを内蔵されたシールドという元のゴールドフレームと変わらない装備となっている。もちろんミラージュコロイドの使用が可能な用にマクバレルは設計していた。
新たな機体を手に入れたアルバもまた出撃の声をあげる。
「アルバ・ジン・サハク。戦場へ出る!」
黒と金を纏った新たなガンダムが宇宙へと飛び立っていった。
続いて、セーレとアッシュの機体も出撃し、さらにハルドが人選を行ったMS部隊も出撃していき、最後はハルドのヴァリアントガンダムだけとなった。
今回の装備は胸にビームピストル二挺と両腰にビームライフルとブレイドライフルは当然として、手持ち装備にビームショットガン。両肩と両膝脇にミサイルポッド。バックパックにソリッドライフルとバズーカという構成だった。
「ハルド・グレン。ヴァリアントガンダム。出るぞ」
そう言って、ハルドのヴァリアントガンダムは誰の機体よりも滑らかな動きを見せ出撃したのだった。

 
 

「とにかく、こちらは派手に動いて、先行しコロニー内に侵入している虎(フー)たちの動きを察知されないようにするぞ」
アッシュはそう指示を出すと、乗機にキャリヴァーを飛行形態に変形させる。虎とその弟子に一般の歩兵を含めた潜入部隊は小型艇ですでにアービル市街に潜入完了しているという報告がアッシュに届いていた。
目の前ではコロニーの防衛のために動き出した、アービルのクライン公国軍の艦隊が見える。若干旧式の艦が三隻であり、アッシュはそれほど問題ないだろうと、乗機のキャリヴァーを先行させ、敵艦隊を牽制しようとする。
ハルドのヴァリアントガンダムとセインのオーバーブレイズガンダム、そしてアルバのゴールドフレーム天ジンも、アッシュのキャリヴァーを追って、艦隊に攻撃を仕掛けようとした。
だが、そこで思いもよらない事態が起きる。アッシュの乗るキャリヴァーが被弾したのだハルドは機体のスラスターを最大噴射し、アッシュの元に向かおうとすると、真上からビームが飛来し、ハルドは機体の前進を止め、即座に回避機動を取る。
そうしている内に、被弾したアッシュのキャリヴァーが右腕を失った状態で、敵からのビーム攻撃を回避しながら、ヴァリアントガンダムに合流する。
「油断か?」
「いや、普通にやられた」
ハルドが尋ねるとアッシュは面目ないといった調子で答える。
それは厄介なだ。と思いながら、二人は機体を散開させ、降り注ぐビームと横合いから襲ってくるビームを回避した。
そしてハルドとアッシュは、改めて敵を確認する。艦隊から発進されたものではない。だいぶ前から、クランマイヤー王国の部隊が来ることを見通して待機させていたのだろう。アッシュはまんまと待ち伏せを食らったわけになる。
そして、ハルドとアッシュは自分たちを待ち伏せしてきたMSを見て、さらに大きな衝撃を受けることになる。
それは、地球連合のストライク系列に良く似た、ただしモノアイのMSだった。その背中には大型のスラスターが装備されている以外に特徴らしきものはなく、ビームライフルとシールドを装備したシンプルな機体であった。
ハルドもアッシュもその機体には見覚えがあった。
「ジークシードか」
ハルドが苦々しげに言うと、アッシュはハルドに詳細を尋ねるがハルドから帰って来たのはシンプルな言葉だった。
「三年前に俺の師匠が使ってて、俺がぶっ倒した」
なるほど、そうか。と、アッシュはその話を聞いて、とりあえずハルドに伝えた。
「すまないが、三年前に僕はあの機体に負けているので、あれの相手は任せた」
そう言って、アッシュのキャリヴァーが後退するが、その行く手を遮るように新たなジークシードが二機現れる。これで四機か?そう思ったハルドは、直後に下から迫るビームを回避し、数を数え直す。

 
 

遠くからも迫っているようで、数は目視できる範囲では全部で十二機といったところかと、ハルドとアッシュは敵の数にウンザリしつつ、攻撃を仕掛けてくるジークシードの群れから逃れることを第一に選択したのだった。

 

ロウマ・アンドーはアービルからほど近い位置で、戦艦に乗りながらブリッジで戦いの様子をモニターで眺めていた。この戦艦はクライン公国のものではなく、ロウマが所属する秘密結社プロメテウス機関所有のものであった。
わざわざ、プロメテウス機関の戦艦に乗る羽目になったのは、運用しているMSの特殊性からだった。ロウマに言わせれば、少し表の世界の人間には見せられない技術を使ったMSを運用しているためであった。
「博士、ご機嫌?」
ロウマはモニターを食い入るように見つめるぼさぼさの白髪をした老人、バルドレン博士に尋ねる。この老人もプロメテウス機関のメンバーである。
「まぁまぁじゃ!」
まぁまぁというわりにはテンション高いなと思いながら、ロウマは適当にブリッジの椅子に座って、ちょっと訳アリのMSであるジークシードの活躍を見届けることにした。

 

ハルドとアッシュは思わぬ苦戦を強いられていた。ハルドは機体よりもパイロットが良いと感じていた。
一機のジークシードがヴァリアントガンダムのビームショットガンを回避し、懐に飛び込むとビームサーベルでヴァリアントガンダムに斬りつけようとする。
ハルドは瞬時の判断で、ヴァリアントガンダムを操り、懐に飛び込んできたジークシードに蹴りを叩き込み、間合いを離すと、ビームショットガンを撃つが。即座に別のジークシードが間に割り込みシールドで防ぐ。
「一機だけならなんとでもなるが、このレベルがこの数いると、相当にきついぞ」
アッシュはハルドのヴァリアントガンダムの背中側をカバーしながら、片腕を失ったキャリヴァーを操り、ビームライフルを連射していた。
しかし、敵のジークシードは完璧な連携を取りながら、アッシュのキャリヴァーに迫る。
それは一機が盾となりながらビームライフルを受け止めつつ、その後ろに隠れたジークシードがビームライフルを撃ってキャリヴァーに回避機動を取らせる、そして回避機動を取った先にはビームサーベルを構えたジークシード。
アッシュのキャリヴァーは振るわれたビームサーベルかいくぐり敵機に体当たりをし、その瞬間に機体を横方向にスライドさせるように回避させた。なぜなら背後から別のジークシードがビームライフルを撃ったからであった。
アッシュは機体に限界を感じていた。現状、キャリヴァーではハルドのヴァリアントガンダムのカバーをするよりも自分の身を守る程度しか動けなかった。

 
 

「セイン、アルバ、早く来い!」
そうハルドが言っても、セイン達からの返事は一言だった。
「無理です!」
ふざけんな、と思いながら、ハルドはビームライフル一斉に撃ってくる、ジークシードの攻撃を回避しながら、回避したところを絶妙のタイミングで襲い掛かってくる、ジークシードのビームサーベルをヴァリアントガンダムの小型シールドで防いでいた。

 

「いい感じじゃ、いい感じじゃ!」
バルドレンは年甲斐もなくはしゃいでいた。
「どうじゃ、ワシの作り上げたEXSEED部隊は!?」
バルドレンはロウマに感想を求める。ロウマは素直に答えた。
「凄いね」
実際にハルドとアッシュを手こずらせているのだから大したものだとロウマは思った。すると、ロウマの答えがよほどに嬉しかったのかバルドレンは狂ったように喋りはじめた。
「脳味噌弄って完成させた兵士じゃ。最高じゃろう。ワシの作った人工EXSEED兵は!
機体と感覚を同化させ、機体を手足のように操りパイロット技能を極限まで向上。
そしてEXSEED同士の精神干渉を使い、それぞれのパイロットの脳をリンクさせて、完璧な連携を取らせておる。
自分で考えて何かをすることは出来んが命令すれば何でもする最高の兵士たちじゃ!」
バルドレンは、はしゃぎながらロウマに説明していたが、ロウマは一つ疑問があった、最高の兵士というバルドレンの言葉に関してだ。最高の兵士など定義できるものではない。そう思いながら、ロウマはバルドレンに尋ねた。
「連携に関してのプログラムはどっからとってきたの?」
尋ねられ、バルドレンはキョトンとした顔で答えた。
「そりゃ、軍の教本とかからじゃが」
じゃあ、駄目だなとロウマは思った。
おそらく並のパイロット連中が相手なら、あのEXSEED兵は圧倒的な威力を発揮するが、今回はちょっと相手が悪かったなと思いつつ、ロウマはバルドレンの気分を害することは避けようと考え、EXSEED兵は負けるという確信を伝えずにいようと思うのだった。

 
 

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