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GUNDAM EXSEED_B_6

Last-modified: 2015-04-17 (金) 17:34:02

首つりの仕方はいたって原始的だとハルドは思った。街灯に縄がひっかけられ、片方に釣られる人間、そしてもう片方には騎士団の男たちがいる。首つりの合図がされたら、騎士団の男たちが引っ張って、人間をつり上げて殺すのだろう。
ハルドはいつもこの手法でやっているなら、相当に手間がかかると思ったが、どうやら違うようだとも感じていた。それは騎士団の男たちの様子であり、男たちも戸惑っている様子だった。おそらく、ロウマというアッシュとセインの恨みの相手が考えた趣向なのだろう。
「まぁ、なんとかなるか……」
ハルドはそう呟き、懐に隠している拳銃に触れるのだった。
目の前の悪趣味なショーはクライマックスを迎えようとしていた。
「それでは、これよりみなさんご待望の首つりを始めます!」
ロウマの調子は絶好調だった。
「私が合図をしたら、この麗しき女騎士が天へと舞い上がります。女騎士が無事に天国に辿り着きましたら。みなさん、拍手をお願いします。それでは……」
そう言うと、ロウマは手を天にかざし――ハルドはロウマの心臓めがけて銃を撃った。
突然の発砲音である。そして、直後にロウマは演台の上で倒れた。誰もが呆然とする中、ハルドだけが、いち早く動き出していた。
ハルドは人混みの中を駆け抜けながら、縄を引く係の騎士団員を狙い撃った。二発目の発砲音が鳴り響き、人々は我に返ると慌てふためき、場は狂乱状態となった。演台の上では騎士団員がロウマに駆け寄っている。
その横では処刑寸前となっていた女は何が何だか分からない表情で辺りを見回している。
「こっちだ、降りろ!」
ハルドは演台の下に来ると、女に向かって叫ぶ。直後、自分が助けられたことを理解した女はハルドの指示に従い、演台から飛び降りた。演台は高所にあったが、飛び降りれない高さではなかった。
「さっさとずらかるぞ!」
ハルドは自分と同じ高さになった、女にそう言うと、先導して走り出した。

 

ハルドと女は街中を駆け抜けると、やがて地下道へと潜った。
「あなた、どうしてこんな道を」
知っているのかと女は尋ねるが、先導するハルドは何でもないことのように言う。
「初めて来る場所の地図情報ぐらい全部頭に入れておくもんだろ」
まるで常識であることのように言うが、女には全く分からない感覚だった。
「私はセーレ・ディアス。助けてくれて礼を言うわ」
女――セーレは走りながら、ハルドに礼を言うが、ハルドは首を横に振る。
「ハルド・グレンだ。礼は別の人に言ってくれ。俺はアンタを助けようとは思ってなかった」
そう言って、ハルドは不意に足を止めた。
「なに?」
「前から人が来る」
僅かに気配を感じてハルドは足を止めたのだ。ハルドの読みでは誰にも見つからないはずの道だったのだが、先回りした誰かがいたのだ。
「いやいや、クソ女の仲間だから、どんな奴かと思ったが、いやいやまさかなぁ」
声がし、地下道の薄明かりの中、段々と姿が露わになってくる。

 
 

「俺もまさかだよ、心臓に当てたつもりだったが」
そして、地下道の明かりの中、姿を現したのは先ほど撃たれたはずの人物。ロウマ・アンドーだった。
「うそ……」
セーレは思わず口をおさえ驚きの表情を浮かべる。それを見てロウマもふざけて口をおさえ、わざとらしく驚きの表情を浮かべながら言う。
「うそ……は俺のセリフだよ。まさか撃たれるとは思わなかった」
言いながら、ロウマは軍服の左胸に空いた穴を撫でる。
「防弾ベストか?」
ハルドが尋ねると、ロウマはおどけた様子で言う。
「そう、そんな感じ。いやぁ臆病な性格で助かったよ。いつも命を大事にしてるんだ」
「命が大事だったら、ここには来ない方が良かったな」
ハルドは隠し持っていたナイフを抜く。その様子を見てロウマは感心した表情を浮かべる。
「賢いね。銃声は響くからね。他の奴に気づかれないためには、それが一番」
ロウマはセーレを指さして言う。
「そっちのクソ女じゃ、気づかないやり方だ。あと、クソ女。俺が先回りして、ここにいるのを不思議に思っているな」
図星だった。
「初めて来る場所の地図情報くらい全部、頭に入れんのが常識だよ」
ロウマはセーレに対して、明らかな侮りの視線を向けると、改めてハルドに目を向ける。
「安心しろって、少し遊ぶつもりだから、俺も銃は使わないよ」
ハルドはナイフを構える。対して、ロウマは手をだらんと下げている。ロウマの方の武器は見える範囲では左腰の軍刀と右腰のホルスターに収まった拳銃だけだ。
「いまいち信用できないんだよな。アンタみたいな奴は」
「よく言われるよ」
ロウマは微笑を浮かべると、手をおろしたまま。ゆっくりとハルドに歩み寄る。ごくごく自然な歩みのようにセーレには見えた。だが、その直後だった、セーレの視界からロウマの姿が消えたのは。
そして、ハルドの目もロウマを捉えられず、姿を逃す。その瞬間、ハルドは直感で上体を大きく反らした。
そして奇跡的に回避したのだ。ロウマの必殺の一撃を。
ロウマの攻撃は極めて単純だった。単に素早く動き、軍刀を居合抜きの要領で抜き放ち、首を狙った斬撃を出すというそれだけだった。
だが、それら一連の動作が言葉通り一瞬で行われたのだ。常人ならば気づかずに首を落とされる。鍛えた者でも並の鍛錬ならば、気づいても動けず首を落とされる。
極限まで鍛えていたからこそ、ハルドは避けることに成功したのだった。
「へぇ、俺の一の太刀が躱されるとはなぁ。結構自信持ってたんだけどなぁ」
上体を大きく反らしたため、思わず地面に倒れこんだハルドを追撃もせず、眺めながら、ロウマはトントンと軍刀の峰で肩を叩く。
急ぎ、身を起こすハルド。立ち上がりナイフを再び構える。その様子を見ながら、ロウマはニヤリとした笑みを浮かべる。その笑みは見るもの全てに蛇を連想させるような笑みだった。

 
 

「いやぁ、遊びがいがある。流石はエルザ・リーバスの弟子ってところかな」
ロウマのある言葉がハルドを硬直させた。その間にロウマは軍刀でハルドに切りかかる。ハルドが硬直したのは、ほんの一瞬だった。すぐに平静に戻り、軍刀の一撃をナイフで受ける。
「アンタ、エルザの知り合いか?」
軍刀を弾き、ナイフで切りかかるハルドに対して、ロウマは受けることはせずに避けることに徹した。
「そうだよ。友達ぐらいの関係かな。エルザのアネさんとは!」
回避から攻撃に転ずるロウマ、恐ろしく鋭い一撃がハルドを襲うが、ハルドはナイフでその一撃を受け流す。
「だから、キミのことは良く知ってるよ。ハルド・グレン君!」
ロウマの攻撃は独特だった。鋭いのにも関わらず、巻き付いてくるような粘りのような物をハルドは感じた。
「何を知ってるってんだ?」
ナイフの攻撃に織り交ぜた蹴りがロウマの腹に当たる。だが、浅かった。ハルドの攻撃が当たるやいなや、ロウマは一気に間合いを離す。
「キミがぶっ壊れてるってことさ」
間合いを詰めるように、ハルドが駆ける。だが、ロウマは自分の得意な間合いを作ろうと、軽くステップを踏みながら、詰め寄るハルドから距離を取る。
「何を無理して人間らしいふりをしてるんだ?エルザ・リーバスみたくなっちゃえよ。あのイカレた人のようにさ!」
急に間合いを取ることを止め、ロウマが切り込む。タイミングをずらされたハルドは受けに回るしかなかった。
「俺はエルザ・リーバスとは違うよ」
そう言った瞬間だった。ハルドの脳裏にエルザ・リーバスの面影がちらついたのは。
エルザ・リーバス――狂人。だが、自分の育ての親のようなもの。自分に戦いの全てを教えた人物。自分からいつも大切な物を奪う憎むべき相手。そして復讐の相手、そして自分が殺した女だ。
「あんな女と一緒にすんなよ」
ハルドは思い切りの力を込めてロウマを突き飛ばした。突き飛ばされたロウマだがダメージがあるような様子はなく。小休止といった感じで、軍刀をクルクルと回している。
「あ、そう。否定しても後で辛くなるだけだと思うけどなぁ、俺は」
そう言いながらロウマはわざとらしく、憐れむような表情を作って見せる。
「ま、俺はキミが可哀想だと思うよ。だから、何かあったら俺に相談しに来るといい。同じ知り合いを持つよしみで良くしてあげるよ」
そう言いながら、ロウマはハルドに切りかかるために駆ける。対してハルドは受けの姿勢を取る。だが、来ると思っていた衝撃は来なかった。ロウマはハルドの横を駆け抜け、ハルド達が通って来た道を逆走していた。
去り際にロウマは言う。
「言ったろ、遊びだって!俺はガチではやらない主義なんでな!」
まぁ、ガチでやっても負けることは無いよ。と小さな声で言ったのが、最後にハルドの耳に届いた。
確かに強いとハルドは感じていた。ハルドが生身で戦ったことのある相手ではロウマ・アンドーという男は、間違いなく5本の指に入る実力者だ。
「なんとか退けましたね」
「いや、手を抜いて遊んで、勝手に帰っただけだ」
おそらく本気を出したのは、最初の一太刀だけだとハルドは感じていた。
「まぁいいや。行くぞ」
どうせ、もう生身で戦う機会はないはずだとハルドは思い、セーレを先導して、地下道を進んでいった。

 
 

「くっそ、もう。疲れるなぁ。最近ぬるい殺ししかしてなかったせいだな、これは」
ハルド達の通った道を逆走した。ロウマはしゃがみこんで一息をついていた。そこにディッレクス達、ロウマの部下が現れる。
「大佐、ご無事ですか!?」
「そうだね」
無事は無事だ。疲れたが、面白い出会いもあった。疲れも良い運動になったと思えばプラスなので、全体的には何の問題も無く、最高だとロウマは思った。
「ディレックス君、MS隊を出してくれ」
ロウマは立ち上がりながら、ディレックスに命令を出す。
「は?」
ディレックスはロウマの命令の意図が分からず困惑の表情を浮かべていた。
「こんだけ、騒ぎを起こしたんだから、このコロニーからは出ていくでしょうが。だから、このコロニーを出ていこうとする宇宙船を墜とす。そのためのMS隊だよ」
本当のことを言えば、宇宙港を即時封鎖して、宇宙船をコロニーから出られなくすればいいのだが、それではロウマは遊びにならないと思い、わざわざこのコロニーから出してやることにしたのだ。
「次の遊びは追いかけっこってね」
せいぜい上手く逃げ回ってほしいものだとロウマは思うのだった。

 

「大丈夫かハルド!?」
アッシュは1人宇宙港でアッシュを待っていた。
「問題ない。姫様たちは?」
「船の中だ。すぐに出せるぞ」
ハルドは頷くとセーレとアッシュを伴い、宇宙船に乗り込む。
「コナーズ、すぐに出せ!」
「了解です、大将!」
ハルドはブリッジに駆けこむと、コナーズにすぐに命令を出し、このコロニーから脱出することを考えた。
「セーレさんだっけ?姫様に礼を言っとけよ」
ハルドは勢いに流され、ブリッジまでついてきてしまったセーレの方を振り向くとそう言うのだった。
ハルドがそう言うと、アッシュがセーレを姫のところまで連れていくように案内していく。ハルドはブリッジに留まり、その光景を見送るのだった。
「大将、無事に出られそうです」
そうか、とハルドは頷くが、少し引っかかる部分も感じていた。アッサリしすぎではないかと。
自分なら、とりあえず宇宙港を即時封鎖する。それがベターな対応だ。しかし、それがないということは……そしてハルドはハッと気づいた。
「コナーズ!MSが来るぞ、回避用意!」
宇宙船はすでに宇宙に出ていた。そして、ハルドが叫んだ直後、ビームが宇宙船の前を通過した。

 
 

「ディレックス君、わざと外させたな?」
ロウマは騎士団の輸送艦のブリッジから通信でMS隊を指揮するディレックスを咎めた。
「一応、民間船に対しては警告として3発まで外して撃つことが義務づけられていますので」
「そうだね」
ホントに興を削ぐゴリラだとロウマは一瞬、思ったが、すぐに仕留めてはつまらないのでディレックスの判断は賢明かと考え直した。
だが、やはりディレックスに任せるのは面白味が欠ける。ならば、やることは――
「ディレックス君、俺も出るぞ」
「大佐が出撃になられるんですか!?」
「そうだね」
ロウマは軍服のコートと上着をブリッジに脱ぎ捨て、格納庫に向かう。途中で自分の命を守った防弾ベストも脱ぎ捨て、上半身はアンダーウェア一枚になり下半身は軍服のズボンのままだ。
「大佐、ノーマルスーツを着てください!危険です!」
格納庫にいた兵士が叫んだが、ロウマは無視して、自機に乗り込んだ。あの兵士は自分が被弾するとでも思っているのか、それともスーツ無しでは機体にかかるGに耐えられないとでも思っているのか、どちらも無用の心配だとロウマは思う。
「ゼクゥド・是空。出るぞ」
こんなこともあろうかと思い、専用機を持ってきて良かった。これで、好きに遊べるというものだ。
ロウマは蛇と例えられるニヤリとした笑みを浮かべ、機体を漆黒の宇宙へと発進させた。

 

「こっちは民間船ですよ、なにも出来ません!」
コナーズが悲壮感を感じさせる叫びをあげるがハルドは冷静だった。
「デルタで出る。この船にも積んだよな?」
そりゃ、積みましたがとコナーズが答えると同時にハルドはブリッジから出ていこうとする。だが、その時、アッシュがハルドと入れ違いにブリッジに来た。
「いいタイミングだ、アッシュ。船の指揮を任せる。俺は足止め、コナーズはとにかく船を加速させて、こっから逃げろ!いいな!」
そう言ってハルドはアッシュの肩を叩くと、自分はブリッジを去って行った。
「もう知りませんよ、大将!」
コナーズは、去って行ったハルドに対してヤケクソで叫んだのだった。
ハルドは宇宙船の後部、貨物室に詰め込んだ愛機に乗り込んだ。直後、コナーズから通信が入る。
「大将、船を加速させたら、大将が戻って来れませんよ」
心配してコナーズが言っているのだが、ハルドは別段気にする様子も見せず、機体の各システムを起動させながら、平然と答える。
「ガキじゃねぇんだ。帰る時は1人で帰れる。……よし、後部ハッチ開けろ!」
「もう、ホントに知りませんよ、大将!」
そうコナーズは言って、後部ハッチを開けた。ハッチの外には宇宙が見える。
ハルドは機体を、滑るようになめらかに動かし、愛機のストライクΔを宇宙へと飛び立たせるのだった。

 
 

「MSが1機、船から出てきました!」
民間船にMSを積むのは犯罪行為だが、ロウマは別に気にしなかった。
「機体は?」
「ストライクΔ、10年以上前の機体ですよ」
質問に、返した声には明らかな侮りがあったが、ロウマにしてはそうも感じられない。なにせ乗っているパイロットはおそらく……
「セクゥド・パラディンが2機に、クルセイダーが1機。それに専用機か?」
ハルドはなんとか出来る気がしなかったがやるだけはやってやろうという気になっていた。まずはゼクゥド・パラディン2機だ。そう考え、ハルドは標的を見定めた。
ゼクゥド・パラディンは聖クライン騎士団の所属の者が乗る、ゼクゥドの強化機体だ。10年以上前の機体である、ストライクΔなど一瞬で落とせる、そう思っていた。だが、
「こいつ、なんで当たらないんだ」
パラディンのパイロットの1人は焦っていた。機体のシステムは完全に敵機をロックしているのに、ビームライフルから発射されるビームはすんでのところで必ず躱される。
「落ち着け!囲んで仕留めるぞ」
もう一人のパラディンのパイロットがそう言いながら、機体のビームライフルを連射するが、全く当たる気配がしなかった。
ゼクゥド・パラディン2機は前後で挟むような機動を取り、ストライクΔを囲む。推力、機動性に関してはゼクゥド・パラディンが圧倒しているのだから、難しいことではない。
「ちょこまかとするな!」
ストライクΔの背後を取った直後、ゼクゥド・パラディンがビームをストライクΔに連射する。それと同時に、前を取っているゼクゥド・パラディンはストライクΔが回避しそうな場所に向けて、ビームを連射する。
だが、ストライクΔは無傷だった。背後の攻撃を振り向くこともなく回避しつつ、前から来る乱射されたビームも軽く回避してみせる。それどころか、その回避の中、ストライクΔは反撃をして見せた。
攻撃を回避しながら腰からナイフを引き抜き、背後を取っているゼクゥド・パラディンに振り向くことなく、ナイフを投げたのだ。
当たるわけがない。誰もがそう思うだろう。相手を見ないナイフ投げなど。だが、ストライクΔのナイフは直撃した。背後を取っているゼクゥド・パラディンの右肩の関節部に。

 

「良い腕だなぁ……」
ロウマは戦いに加わることもなく、のんびりと眺めながらストライクΔ、そしてそのパイロットの動きを観察していた。
「とにもかくにも迅速、動かなきゃ死ぬってことを、身をもって知っている動き、動きの読みは経験と実戦勘かな、反応も悪くないね」
ロウマはコックピットないでストライクΔのパイロット、ハルド・グレンについて分析していた。まだ、もう少し見ていたくなる戦いぶりだとロウマは思った。自分が遊ぶのはその後で良いと思えるほどに。

 
 

「クソ、当てられたぞ!」
「大丈夫だ。軽傷だ!」
ゼクゥド・パラディンのパイロットはお互いに通信で連携を取っている。
「右肩から下が死んだ。ライフルが使えん」
右肩にナイフの刺さったゼクゥド・パラディンのパイロットは苦心しながら機体の右腕から左手にライフルを持ち替えようとするが、そこに隙が生じた。
「だから、下手に止まるなって」
ロウマはその光景を見ながらコックピットで呟き、対してストライクΔを操るハルドは一気呵成と言った様子で攻めに転じるのだった。
「おい、狙われているぞ!」
ライフルを持ち替えようとした隙を狙って、ストライクΔが突進していた。いくら性能で勝るといっても、このタイミングで性能差は現れなかった。
「ナイフを返してもらうぜ!」
コックピットの中でハルドが叫びながら機体を操る。ストライクΔは突進し、衝突するとゼクゥド・パラディンにそのまま組み付き、右肩に刺さったナイフを力づくで、引き抜くと、そのままの勢いでコックピットめがけて、ナイフを突き刺した。
「貸しの代金は命ってなぁ!」
コックピットの中のハルドは高らかに叫ぶと、ストライクΔを操り、組み付いたゼクゥド・パラディンのコックピットを滅多刺しにした。
「くそぉ!」
残った、ゼクゥド・パラディンのパイロットが叫びながら、機体を突進させながら、ライフルを連射する。
「だから、それも愚策だよ」
コックピットのロウマは高みの見物をしながら呟くだけだった。
ライフルを連射して突進してくる機体に対し、ストライクΔは今さっき行動不能にした機体を踏み台にして加速し、同じように突進する。
ストライクΔのコックピット内では警報が鳴り響いていた。脚部に多大な負荷があったという内容だ。
「この、ポンコツめ!」
ハルドは機体の中で、機体に対して悪態をつく。カスタマイズもチューンアップもしてない整備もなんとなくで済ませている機体がこれだけ動いているだけ、褒めるべきことなのだが、ハルドはどうにも機体が気に入らなかった。
もっとちゃんと誰かが、整備してくれていれば、こんなに面倒な戦いになることもないのに、と思うのだった。
だが、それを今嘆いてもしょうがない。ハルドは目の前の敵を始末することを優先して考えることにした。
敵の動きは単純、突進してライフルを連射してくるだけだ。問題ないとハルドは思い機体のスラスターを噴射させ、更にストライクΔを加速させる。
ゼクゥド・パラディンとストライクΔは接触寸前で交錯した。ゼクゥド・パラディンのパイロットは相手の加速のタイミングが読めず機体を動かすタイミングを外してしまったのだ。
その結果は、手痛い物になった。ストライクΔのナイフでコックピットを切り裂かれ、絶命と言う形だった。
これで2機仕留めた、後はゼクゥド・パラディンを更に強化したゼクゥド・クルセイダーと専用機の特別にカスタマイズされたゼクゥドだ。

 
 

「なぁディレックス君。なんで攻撃に加わらなかった?」
ロウマは高みの見物といった様子だったが、一機だけ動いてない機体があるのを見ていた。
「まぁ、いいよ。キミの強い奴とは絶対に関わらないていう姿勢、好きだからさ。艦に戻っていいよ」
そう言うと、ディレックスは感謝の念を述べて艦に戻って行った。ゴリラ以下の脳味噌でしかも臆病、だが強い者は本能的に分かるというディレックスの性分をロウマは嫌っていなかった。
「じゃ、そろそろ俺の遊びの時間かな」
ロウマは自分が死ぬという予感は全くなく、MS戦に臨むのだった。

 

マシントラブルか?ハルドはそう思い、去って行くゼクゥド・クルセイダーを見送った。だが直後に、ハルドのストライクΔと同じ目線に専用機のゼクゥドが降りてきた。本音を言えば相手をしたくなかった相手だとハルドは思った。
只のゼクゥドとは明らかに違うシルエット。極限まで軽量化したため、体型は異常にスマートになり、見た感じでは完全に別の機体だ。そして、背部のスラスターはバインダーでまとめてあり、それだけで機体の機動性が格別な物であることを想像させる。
そして、武器だ。武器は日本刀を思わせるような太刀が一本だけしか装備されておらず、それ以外は何もない。
「よう、遊びの続きをしようぜ」
陽気だが根に陰湿な物を含んだ声がハルドに届いた。
「ロウマ・アンドーか!?」
相手としては嫌な予感しかハルドはしなかった。
「そうだよ。機体はゼクゥド・是空。よろしくな」
陽気ではあるが、悪意を含んだ声がハルドに突き刺さる
「アンタがここまで出張るとはな……」
嫌な感覚の中、ハルドは声を絞り、ロウマに言う。
「言ったろ、遊びだって。だから色々ゆるくしてるんだ」
直後、ハルドの視界からゼクゥド・是空が消えた。だがハルドは直感でスラスターの噴射と機体の上体を操作することで、感覚を襲っていた嫌な物から逃れた。
“抜刀”
直後、ゼクゥド・是空の刃が何も無い真空を薙ぎ払った。人間の時と同じく常人の感覚を遥かに超越した居合抜きだった。
「あら、まぁ」
回避されたのにも関わらず、ロウマには悔しさなどの感情はなく、ただ感嘆があるだけだった。
「MS戦で避けられたのは生まれて初めてだよ!」
抜き放たれた太刀が、返す刃でストライクΔを襲う。間合いは既に詰められている、躱すことは出来ない一撃だった。
そのため、ストライクΔは左手に持ったナイフで、その一撃を防ぐしかなかった。防御のナイフに太刀が直撃する。
防いだ。そう感じた直後にコックピットに警報が鳴る。「左腕の負荷極めて大」うるさい、黙れとハルドは思うのだった。

 
 

「大変だな、機体がおんぼろだと」
ゼクゥド・是空は上段に構え、太刀を振り下ろす。それは回避できる一撃だったが。振り下ろした直後に太刀の軌道が変化し、ハルドのストライクΔを狙う。
回避は出来ない。防御するしかない一撃だった。右手に持ったナイフで防ぐと「右腕の負荷大」と警報がなるのだ。
「はは、古い機体は大変だな」
それまでとは打って変わって斬撃の乱れ打ちがストライクΔを襲った。
「アンタ、遊んでるだろ!?」
ストライクΔがナイフでかろうじて太刀の一撃を防いだ時にハルドは言った。
「最初から、言ってたろ、遊びだって」
ナイフを弾き、ゼクゥド・是空の刃が再び近接戦闘で乱舞する。両手に持ったナイフで、かろうじて防ぐストライクΔだったが、不意にゼクゥド・是空の蹴りが放たれ、防御もできず弾き飛ばされる。
「遊びだから、見逃してやったんだぜ、キミのお友達もさ」
ロウマが言いながら、ゼクゥド・是空は太刀を適当な方向に切っ先を向ける。その切っ先の先にいるとは限らないが、ハルドが守ろうとした仲間は間違いなく逃げおおせたろう。
「もう、無事に逃げただろう。だから、少し遊び無しを見せようか」
ロウマが言うと、ゼクゥド・是空は太刀を鞘に納めた。今度は何気ない動作からではなく、ある程度の構えがあった。
「うれしいね。俺程度に本気を見せるか?」
「遊びだからね。何でもありさ、本気を見せるのも遊びのうちってね」
そうロウマが言った瞬間だった。ハルドの目の前のゼクゥド・是空が消えた。視界には捉えられない動き、だが、ハルドは直感で相手の動きを捉えていたおぼろげではあったが回避できるという感もあった。
だが、機体が追い付かない。ストライクΔはハルドの直感と、そこから生じる操縦に全く追いついてくれなかった。
「くそ、ポンコツが!」
ハルドの断末魔はそれだった。それを最後にストライクΔの上半身と下半身は真っ二つに断たれた。
「ま、本気で遊びをやるならプレイヤー以外はイーブンな条件というのが妥当だね」
ロウマはストライクΔの上半身から飛び出る人影を見たが、追う気にはならなかった。もう遊びは充分だからだ。これ以上は無粋。そう思った直後だった。機体の挙動がおかしいことに気づいたのは。
ロウマが確かめると、ストライクΔのナイフが左胸に突き刺さっていた。機体の挙動がおかしいのはこれが原因だった。
「ははははは。ポンコツの意地か」
ロウマとしては感嘆に値する。人間ならば、片方は胴体と下半身を切り離され、片方は心臓に短剣を突き立てられた状態だ。ある意味では、相討ちということだ。
「まぁ、いいよ。ハルド・グレン君。今度はもう少し良い条件で遊びをしよう」
そうコックピットの中でひとり言いながら、ロウマは輸送艦へと帰還するのだった。

 
 

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