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GUNDAM EXSEED_B_64

Last-modified: 2015-12-31 (木) 14:37:34

アプリリウス市内での戦闘。ロウマは半ばどうでも良くなってきたようでスネークヘッドによるビームの乱射を続けていた。
「言っとくが、こっちのエネルギーは無限だし、ビームの粒子も無限だ。隠れてエネルギー切れを狙うってのは意味ねーからな!」
そう言って、グロリアスルージュ改め、クズオロチはバックパックのスネークヘッドから強力なビーム砲を撃ち続けていた。
わずらわしいが、焦って攻めても仕方がないとロウマは思った。とりあえず殺す。それさえできれば、問題はないと思い、遠距離からじわじわと嬲り殺しにしようと考えながら、スネークヘッドのビーム砲をひたすらに撃つ。
対して、セインとアッシュは機体にシールドを構えさせながら、回避運動を取りつつ接近戦の機会を狙っていた。とにもかくに、遠距離戦では勝負にならない。
大抵の武装はスネークヘッドがビームシールドを張って防ぐうえオーバーブレイズガンダムに至ってはビームライフルを失っているからだ。それにあのハイパービームマチェットなどという武装の巨大なビーム刃が遠距離からのビーム攻撃をほぼ無効化する。
なんとか後ろを取るしかない。セインもアッシュもそう考え、機体を動かす。相談はせずとも互いにやるべきことは理解していた。
武装に関して余裕のあるEX・キャリヴァーが正面から攻撃をしつつクズオロチを引き付け、オーバーブレイズガンダムは背後に回り込んで、ビームサーベルで攻撃する。単純だが、セインとアッシュは現状、有効な手立ては、それしか思いつかなかった。
EX・キャリヴァーがバックパックのミサイルランチャーから大量のミサイルをクズオロチに向けて発射する。当然、クズオロチはビームシールドを展開し、ミサイルを防ぐが、その隙にオーバーブレイズガンダムが背後に回り込むために動く。
「見えてんだよ!」
スネークヘッドの二機が水銀の身体を伸ばし、オーバーブレイズガンダムに直接襲い掛かるが、セインは咄嗟の判断で機体をスライディングさせ、襲い掛かるスネークヘッドの下を潜り抜け、かろうじてクズオロチの背後に回り込む。
クズオロチは即座に振り向こうとしたが、そうはさせまいとEX・キャリヴァーが腰のリニアキャノンと両肩のメガビームキャノンを撃ち、注意をひきつける。
完全にクズオロチの背後を取ったオーバーブレイズガンダムはビームサーベルでクズオロチを斬るために刃を振るうが、その瞬間、オーバーブレイズガンダムのコックピットのセインは凄まじい衝撃を受け、機体も弾き飛ばされ、ビルに叩き付けられる。
「そういや、バリアがあったんだっけね。ミスった」
そう言うロウマはさして気にした様子もなかった。セインは何が起きたのか、クズオロチを見ると、その背中に生えている尻尾が不自然に長く伸びており、尻尾の各所からはビームの刃が発生していた。
よく見れば、クズオロチの尻尾は節に分かれ、その節を水銀が繋いでいた。だから異常な長さを得ているのだとセインは理解した。
「さて、これでこっちは背後の防御手段も完璧だと証明できたわけだが、どうする。セイン君とアッシュ君」
思ったよりも楽だとロウマは感じていた。この分なら、ハルドが来たとしても相手が出来るのではと、自らが操るクズオロチに絶対の自信を抱いていた。
まぁ、ハルド云々に関しては、とりあえず目の前の鬱陶しい奴らを片づけてからだなと思い、八機のスネークヘッドを半分に分けて、二機のMSに襲い掛からせた。
ヘルメスの水銀球を可動部分に仕込んだことにより、おそらくオールレンジ兵器としては最高の性能になったスネークヘッドに対して、二機のMSは逃げることしかできていない。自分に散々面倒をかけさせたゴミが必死で逃げ回るさまは痛快だった。
しかし、それも最初だけで、必死に逃げ回るさまは、虫のようでロウマは次第に不快感と苛立ちを覚えてくるのだった。

 
 

「もういいから、死ねよ。おまえら」
ロウマは精神を集中し、スネークヘッドの速度を二倍まで上げる。その瞬間、EX・キャリヴァーの腹部にスネークヘッドのユニットが激突する。そして、オーバーブレイズガンダムは急に速度が上がったスネークヘッドの動きに対応できず、一機に掴まった。
スネークヘッドはその口を開いて、オーバーブレイズガンダムの腕に噛みついたのだった。そして、その噛みついた牙はビームの刃だった。
凄まじい速度で、オーバーブレイズガンダムのバリアのゲージが減っていくのに危機感を抱いたセインは、ビームサーベルでスネークヘッドとバックパックを繋ぐ水銀を斬りおとすが効果はなく、逆に自由となった水銀が、無事な方の腕にまで伸び絡みつく。
「アホか。エネルギー供給を水銀でやってるわけじゃないんだから、斬っても無駄だ」
ロウマはオーバーブレイズガンダムを襲わせていた残り三機のスネークヘッドにもオーバーブレイズガンダムへ喰らいつかせる。両脚、そして頭部をスネークヘッドが襲い喰らいつく。
「セイン君!」
「アッシュ君は自分の心配でもしてろ」
ロウマの言う通りだった。アッシュも速度を上げたスネークヘッドの対応に追われ、セインの救出には向かえそうもなかった。
アッシュはSEEDを使うべきか迷った。今SEEDを使えば、おそらくスネークヘッドの内、二つは破壊できるだろうが、おそらく、それで自分のSEED発動時間は限界を迎える。
アッシュは体質的に一度SEEDを使うと次の使用まで、五分以上はかかる。それもコンディションが良い時の話しで、今の疲労状態では、どれくらいで再使用が可能になるか分からなかった。それがアッシュにSEEDの使用を躊躇わせる原因だった。
「今、思えば最初からこうやって、始末しとくべきだったなぁって思うよ。セイン君。キミのことは今後の教訓にさせてもらって、今度からは子供でも情け容赦なく始末させてもらうよ」
ロウマは、そろそろバリアも限界だろうと思い、ゆっくりとクズオロチを、スネークヘッドに捕まり、動けなくなっているオーバーブレイズガンダムの方へと進ませる。最後は斬り殺して終わりにでもしなければ、これまでの鬱憤は晴れないとロウマは思ったからだ。
アッシュの機体がちょろちょろとしているが、そちらはスネークヘッドに任せておけばいい、そう思い、ロウマがクズオロチをオーバーブレイズガンダムの目の前に立たせ、鉈の形状をした大剣を振り上げた時である。
突如、ビームがクズオロチに飛来し、ロウマは即座に機体に回避運動を取らせる。誰かは効く必要が無かった。どうせクランマイヤー王国のMSだろうと思ったからだ。
「結局、そこまで役には立たなかったな」
ロウマはガルム機兵隊が全滅したことを悟りながら、クランマイヤー王国のMSを見るが、毛ほども脅威を感じなかった。
ロウマは取り敢えず、オーバーブレイズガンダムを拘束しているスネークヘッドをオーバーブレイズガンダムから剥がし、新たにやって来た機体に向けてスネークヘッドのビーム砲を撃つ。
だが、それらは全てグリューネルトのフレイド・クルセイダーのアルミューレ・リュミエールによって防がれた。その瞬間にロウマは仕留めるべき敵の優先順位を決めたのだった。
「うおおおお!」
そうしている間に拘束から解放されたオーバーブレイズガンダムがクズオロチに突撃してくるが、ロウマは面倒くさいと思いながら、オーバーブレイズガンダム蹴飛ばし、ビルへと叩き付ける。
その瞬間、高出力のビームが再びクズオロチに襲い掛かるが、スネークヘッドのビームシールドで防ぐ。しかし、それと同時グリューネルトのフレイド・クルセイダー、そしてペテロとセーレのフレイドが機体に内蔵されているミサイルを一斉に発射する。

 
 

「鬱陶しい!」
ロウマは全てのスネークヘッドのビームシールドを展開し、全てのミサイルを防ぐが爆発の煙まで防ぐことはできず、ロウマの視界は煙に包まれた。
しくじった、そうロウマが思った瞬間、イオニスのフレイド・クルセイダーが対艦刀を片手にクズオロチに斬りかかる。
ロウマは咄嗟にハイパービームマチェットを構え、斬撃を防ぐ。しかし、それと同時に、黒と金のガンダムタイプがビームライフルを連射してくる。ロウマは回避が不可能な現状、スネークヘッドのビームシールドで、それを防御するしかなかった。
黒と金のガンダムタイプのビームは問題なく防いだ。そう思った時である。ビームシールドを展開していたスネークヘッド突如、破壊され爆発する。
「ビームシールドは後ろまでは展開できないようだな」
背後にはいつの間にか、アッシュの機体があった。俺のスネークヘッドを後ろから撃ちやがった。ロウマはすぐに理解した。確かにビームシールド展開中、スネークヘッドの後ろ側は無防備だ。しかしこの機体の背後に回るのがどういうことだか忘れたか。
ロウマは即座に機体の尾を伸ばし、アッシュの機体に叩き付けようとしたがグリューネルトのフレイド・クルセイダーがアルミューレ・リュミエールを展開して、その一撃から、アッシュのEX・キャリヴァーを守る。
邪魔をするな。イオニスの下僕風情が!ロウマが怒り抱いた瞬間、ハイパービームマチェットが弾かれ、イオニスのフレイド・クルセイダーの対艦刀が、クズオロチの頭部をかすめた。
「っこのカスどもっ!」
クズオロチは咄嗟に蹴りを出すが、イオニスのフレイド・クルセイダーはバックステップでそれを躱す。
ロウマは周囲を見ると、自分が囲まれていることを理解した。圧倒的に不利な状況、だが、それがどうしたのかという思いがロウマにはある。
「数に頼らなきゃ、俺とマトモに戦えないゴミカスどもに俺が負けるわけが無いだろうが!」
いつだって、そうだった。子どもの時から自分はいつも大勢と戦ってきた。仲間など誰一人としていなかったし、味方と思っていた人間には裏切られてばかりだった。それでも、自分は人生を勝ち続けてきた。
子どもの時からだ!相手が何人いようと一人で全員を倒してきた!多くの人間に思い知らせてきた、何人そろえたところで俺には絶対に勝てないということを!
今回もそれと同じだ。たいした問題ではない。数が多かろうが、このロウマ・アンドーには敵わないということをその命を代価に教えてやるだけだ。
「さぁ来い、カスども。相手をしてやる」
そう、ロウマが言った瞬間にクランマイヤー王国のMS部隊は一斉に動きだす。対してロウマのクズオロチは異形の大剣を構え、迎え撃つ。
クランマイヤー王国とロウマ・アンドー、その最後の激戦が始まろうとしていた。

 

ハルドは極限の戦いの中にいた。全身の産毛すら神経細胞の一端にしなければならないほどの集中と反応を強いられていた。
フリーダムのパイロットのユリアスは強いというレベルではなくなっていた。人間の限界に到達しているとしか思えない速さで機体を操り、攻撃を仕掛けてくる。それに対してハルドは反撃もままならず、回避を優先するしかなかった。
「つえーよ、クソヤロー」
ハルドはそんな悪態をつく程度しか出来なかった、なぜなら、フリーダムの姿が見えたと思った瞬間には消え、逆に消えたと思ったら、まったく普通の速度のままビームサーベルで斬りかかってきたりする。
完全に機体の緩急を操り、ハルドのヴァリアントガンダムを圧倒しているのだ。
ハルドは何とかしなければと思い、右腰にマウントしてあったソリッドライフルを抜き放ち、グレネード弾を時限信管で撃つが、その程度の仕掛けでは全く物ともしないのが今のユリウスであった。
抜き放ったはずのソリッドライフルは即座に真っ二つに斬り裂かれ、同時にヴァリアントガンダムが蹴り飛ばされる。
こりゃ勝てないわ。そうハルドは思いながら吹き飛ばされる機体のコックピットで思う。まぁ、全力でやっているし、別に良いかとハルドは思う。だが、その瞬間だった、何か生暖かい手がハルドの首筋を撫でているような気がした。

 
 

(まだ全力じゃないだろう?)
まいったとハルドは思う。死に近くなっているせいで、死人の声が聞こえてきた。この声は自分の師匠のエルザ・リーバスのものだった。
そうは言ってもなぁ、とハルドはフリーダムが撃つ。追撃のビームライフルを回避しながら、もう、アンタとは関わりたくないんだよとハルドはエルザの声に対して、心の中で思う
(しかし、私のことを思い出さなければ、全力は出せないだろう?)
まぁ、そうなんだけど。そうハルドが思った瞬間、世界が暗転した。戦闘中に幻覚を見るとは自分も相当に駄目だなと思いながら、ハルドは暗闇の中で自分が白線の上に立っていることを理解した。
白線の両側を見ると、片方は綺麗な感じの世界、そして片方には自分が殺してきたイカレた人間の集まり、その中にはエルザを筆頭にヤバい奴らが手招きをしていた。
常識で考えれば綺麗な世界の方に行くべきなのだろうが、そっちへ行っても自分は結局何をすることもないだろうとハルドは思うのだった。
「嫌だけど、そっち側なんだろうな、俺も」
全力を出す。そのための狂気だ。もう受け入れるしかないだろう。自分はマトモではないと、ハルドは、白線の上から狂気に満ちた世界へと足を踏み入れた。
それと同時に世界が変わる。ハルドは恐ろしく気持ちが楽になっていくのを感じながら、抑えていた自分が解放されていくのを感じるのだった。
「仕留める!」
ユリアスの声が聞こえたがハルドは、そりゃ無理だと思い、突進してきたフリーダムを蹴り飛ばし、即座にビームライフルの銃身を叩きつける。
ビームサーベルでそれを防御するフリーダムに対し、シールドを捨てながら、左手で右胸にマウントされたビームピストルを抜き放ち、速射するヴァリアントガンダムに対しフリーダムはその全てを回避しながら、ギリギリで距離を取る。
ハルドは色々と楽しくなってくるのを感じていた。そして一番楽しいのは、目の前の敵をどうやって殺すかであった。
「こういう感じ、すっげー好き」
ハルドは笑みを絶やさず、フリーダムへと機体を突進させた。自分の感覚の様々なものが欠落してきている感じがしていたがハルドは構わなかった。全ては一瞬のためにある。自分か相手の命が失われる一瞬。それ以外に価値は無いとハルドは戦うのだった。

 

「邪魔!邪魔っ!邪魔ぁ!邪魔だぁ!」
ロウマは叫びながら、クズオロチは異形の大剣を片手に、もう片方の腕に刀を握り、周囲の敵を薙ぎ払うように振り回していた。
異形の大剣の一撃に対してはイオニスのフレイド・クルセイダ―が対処し、その強烈な斬撃を受け流す。対して、刀の側にオーバーブレイズガンダムが前に出て、ビームサーベルでその鋭い刃を受け止めていた。
粘るな、鬱陶しい。ロウマはそう思い、スネークヘッドに真上から二機を襲わせる。だが、イオニス側の方はスネークヘッドが口を開けた瞬間に、セーレのフレイドがスネークヘッドの口の中にビームスピアを突き刺し、破壊する。
「私の首を吊るすことができなくて、失敗だったな」
セーレはコックピットの中でロウマのクズオロチを見下ろしながら、不敵な笑みを浮かべていた。
「死ぬ運命だったゴミ女がカッコをつけるんじゃねぇ!」
ロウマはクズオロチの肩のビームマシンガンをセーレのフレイドへと連射する。セーレは回避しようとしたが、ロウマの射撃技能は、セーレの回避技能を遥かに上回り、ビームマシンガン、セーレのフレイドをズタズタに切り裂く。
「遅いか早いかの違いだったな、ゴミ女!」
しかし、ロウマはセーレの方に気を取られていたため、にオーバーブレイズガンダムの方を襲わせたスネークヘッドがアルバのゴールドフレーム天ジンによって容易く切り裂かれていることに気づくのが遅れたのだった。

 
 

「ぽっと出が粋がるなよ!」
ロウマの叫びと共に、クズオロチの尻尾が今までの中で最大の長さに伸び、周囲を薙ぎ払う。クランマイヤー王国のMSのほとんどは回避できたが、唯一攻撃のために前へと出ていたアルバの天ジンだけが、その直撃を受け、上半身と胴体を断ち切られる。
「ロウマ!」
アッシュの怒りの叫びと共に、クランマイヤー王国のMS全機が射撃攻撃をしたが、スネークヘッドのビームシールドによって防がれる。
しかし、そんな中、オーバーブレイズガンダムとイオニスのフレイド・クルセイダーは味方の射撃が当たることも恐れず、スネークヘッドの内側へと踏み込み、クズオロチに二機が持つ剣を叩き込もうとしたが、その瞬間、ロウマは超絶的な反応速度を見せる。
イオニスのフレイド・クルセイダーは大剣を持つ拳で殴り飛ばし、オーバーブレイズガンダムにはまさかの頭突きを叩き込み、二機を同時に弾き飛ばす。
「俺の隙をつきたけりゃ、ハルドでも持ってこいや、カスどもが!」
遅い、遅すぎる。一対一だったら、どいつもこいつも相手にならないクソカスどもだ。それが数を揃えれば、俺に勝てると思っている。胸糞が悪い。ロウマは自分がカスと断じる相手を薙ぎ払うためにクズオロチの腹部ビーム砲を発射するのだった。
狙いは、接近してブッ飛ばされた馬鹿二人、死に腐れ!そう思った瞬間である、グリューネルトのフレイド・クルセイダーがクズオロチに接近し、アルミューレ・リュミエールを展開し、クズオロチの腹部ビーム砲を直に受け止めた。
「ちぃっ!」
防がれた距離が近すぎたせいで、腹部のビーム砲もダメージを受けた。この戦闘中の使用は不可能だと思いながら、ロウマは防いだ機体を見ると、防いだ機体の方も限界のように見えた。
おそらくエネルギー切れ、ロウマはそう思った。そして、ロウマが思った通り、グリューネルトのフレイド・クルセイダーはアルミューレ・リュミエールの大量使用で、エネルギー切れとなっていた。
ロウマは期せずして倒すべき優先順位の高い機体を無力化したのだった。クズオロチは総座に大鉈の形ともいえる異形の大剣を振り上げ、振り下ろす。これで死ね、イオニスの下僕、そう思ってだったが、それは果たされなかった。
「どわっじ!」
横から全速力で突っ込んだジェイコブのザバッグがタックルでグリューネルトのフレイド・クルセイダーを突き飛ばしながら、一緒に横一線にクズオロチの前を抜けようとしたが、大剣の刃は無情にもジェイコブのザバッグの膝から下を両脚ともに斬りおとしていた。
「メイドのためなら命も惜しくない!」
以前からメイド服のグリューネルトが気になっていたのだ。ここで男を見せないでどうするかという下らない理由だったが、ジェイコブは何とか仲間の命を救ったのだった。
「このクスカスどもぉ……」
ロウマはもう完全に騎士団として振る舞っていた自分を捨てていた。その精神と殺意は一番暗かった時代、マンホールの下で生きていた時代のロウマに戻っていた。ロウマにとって、それは、そもそも人間自体が鬱陶しくてたまらなかった精神状態の時代だった。
「殺すか生かすかは後で決めるが、お前らここで地獄を見ろ」
ロウマの言葉と共に発せられる強烈な悪意がクランマイヤー王国陣営にプレッシャーを与える。
「悪いが、地獄を見るのはお前の方だ。ロウマ・アンドー!」
アッシュのEX・キャリヴァーがリニアキャノンを連射しながら高速で、降下しながら、両手にビームサーベルを抜き放ち斬りつけるが、スネークヘッドのビームシールドが、それを防ぐ。
「全機に告ぐ、先に息切れするぞ!」
アッシュは味方のみの通信でそう叫んだ。その瞬間、EX・キャリヴァーの動きが異常なもの変わるのをセインは見た。それはほとんど静止した世界の出来事だった。
全ては一瞬だった、突撃してきたEX・キャリヴァーを突き放そうとビームシールドを展開したスネークヘッドが襲い掛かるが、EX・キャリヴァーはスラスターを僅かに噴射させるだけで、そのスネークヘッドを回避して見せ。
さらに、ビームシールドの無い側にビームサーベルを突き刺し。二機のスネークヘッドを破壊していた。
「アッシュぅぅううう!、牢屋の中で死ぬのもここで死ぬのも同じだろうが!」
セインは時間が戻ったことを理解し、アッシュのEX・キャリヴァーがクズオロチの目の前に達している段階で現実に戻った。
「働かなくちゃ死んでいると同じなんで。それを教えてくれて、どうもお世話様でした、アンドー大佐」
そう言って、EX・キャリヴァーはミサイルを至近距離で全弾を発射した。しかし、ミサイルによって生じた爆煙からロウマのクズオロチは、姿を現した。
そして、左手の刀で、EX・キャリヴァーを真っ二つに斬り裂き、弾き飛ばす。

 
 

「俺を大佐と呼ぶんじゃねぇ!今の俺は准将だ!偉いんだぞ!」
クズオロチの表面装甲は、ミサイルのダメージにより、火傷の水ぶくれのように、泡立ち膨らみ醜悪さを露わにしていた。
「すまない、少し休みだ」
アッシュの声が聞こえ、セインは安心した。まだ戦える。向こうはバケモノみたいな奴だが心配はない。いやバケモノだが大丈夫だセインはそう思い、息を整える。
対して、ロウマも思いのほか、損害を被っている現状から、少し冷静になる必要があるとかんがえていた。
スネークヘッドの残りは三機。敵の戦力はオーバーブレイズガンダムとイオニスのフレイド、そして名前も知らない雑魚が二匹と、ちょろちょろと動き回っている腕の立つ奴。
「お前が邪魔だ!」
ロウマは冷静さを捨て、ストームのザバッグめがけて残り三機のスネークヘッドを襲い掛からせる。
「まずった!?」
ストームはなるべく遮蔽物に隠れながら、一撃必殺の狙撃機会を狙っていたが、まさか見つかるとは思わなかった三機になったとて、ザバッグの性能で完全な回避が可能なほど、スネークヘッドは甘くなかった。
オーバーブレイズガンダムとイオニスのフレイドがロウマの気を散らすために、斬りかかるが、クズオロチは回避のステップを踏み、相手にしなかった。
「油断したぁ」
ストームが諦めの声を出すと同時に、スネークヘッドが食らいつき、ストームのザバッグの全身を食いちぎるが、ストームはただでやられる男ではなかった。ロウマの位置からは見えなかったが、ストームのザバッグはスナイパーライフルを持っていなかった。
「イタチの最後っ屁って感じで、皆さん勘弁ね」
ストームがそう言った瞬間、スネークヘッドの一機がビームシールドを展開する間もなく貫かれ、爆散する。そのビームはストームのザバッグも貫いたが、もはや大破したザバッグには関係なかった。
それは、ストームが最後に用意していたスナイパーライフルのトラップだった。スネークヘッドに狙われた瞬間に用意しておいた、自爆覚悟のスナイパーライフルのトラップ。
狙われた一瞬で全てを予測し、ほとんど刹那の間にトラップを設置した技量は異常としか言いようがないが、これがストームの本気だった。悪く言えば、ここまでにならないと本気を出さないのが、ストームの問題だったが、とりあえずの結果は出た。
スネークヘッドはものの見事に破壊されたが、しかし、ロウマはどうでも良いという気持ちになっていた。所詮はただの武装だ。それも自分が楽をするための。
「おら、どうした。お仲間減ってるよ。こっちは最高に楽しいけどな!」
本当にガキの頃を思い出すと、ロウマは何とも言えない気持ちに浸っていた。
昔も十数人に囲まれていて、相手は皆、自分より年上、その頃の自分はやせっぽちだったが、色んなものを犠牲にして、一人ずつ動けなくして、全員の顔に一生消えない傷を残してやった。あいつらはどうしているだろうか、今も傷を屈辱に感じているだろうか?
それならば良いなと思い、ロウマは機体を操る。目の前のカスどもに屈辱と絶望を与えるために。
前衛は、セインのオーバーブレイズガンダムとイオニスのフレイド・クルセイダーに固まっていた。残ったクランマイヤー王国側のMSで、まともに前衛が務まるのがその二人と、二人が乗る二機しかいなかったためである。
ロウマはこの二機さえ、何とかすればいいと思っていた。名前も知らない雑魚二匹は実力差がありすぎて、戦いに割り込めないでいる。それにビビッているというのが、ロウマは直感的に分かった。
幼いころから、大勢相手に喧嘩やそれ以上の争いをしていた経験から、大勢の方には必ず、味方がやられると、ビビッて動けなくなる奴がいるのを知っていた。数を頼みにしているから根性が無いのだとロウマそういう輩をそんな風に断じていた。

 
 

相手をする必要はないと、目の前の二機を叩き潰すために、スネークヘッドを真上から襲い掛からせる。その瞬間だった、思いもよらぬ方向からのビームライフルの一撃が、スネークヘッドを貫いた。咄嗟のことと油断がビームシールドの展開をロウマに忘れさせていた。
そしてそれを撃ったのは、先ほどグリューネルトのフレイド・クルセイダーを助け、両足を失った機体のものだった。
「俺の名前はジェイコブだ!覚えとけ!」
クソカスぅ!ロウマは武器が少なくなることも構わず、左手に持つ刀を投げつけ、ジェイコブのザバッグを貫き、大破させる。
「あと、よろしく」
ジェイコブの行動に触発されて、その弟と妹が動く。ビビッて固まってれば良いものをと思いながら、ロウマは残り一機となった、スネークヘッドを向かわせながら、勢いを増す眼前の二機の相手に苦慮していた。
ビビりはそのまま死んでいろ。スネークヘッドがジェイコブの弟のペテロと妹のマリアの機体に襲い掛かるが、二機は何とか、その直撃を回避するものの、即座にスネークヘッドの口が開いた。
マリアは普通にしていたら防げない。そう思い、機体の右腕をスネークヘッドの口中に叩き込む。その瞬間、ビームとの連鎖で右腕が吹き飛ぶが、構いはしなかった。
「アタシはマリアだ!忘れんな!」
そう言って、落ちていくマリアの機体。同じように爆散したスネークヘッドが落ちていく。
「お前らの名前など知ったことか」
ロウマは落ちていく、マリアの機体にクズオロチの肩のビームマシンガンを連射する。初弾は確かに命中し、マリアの機体を大破させるが、即座にペテロの機体が守りに入りながら、クズオロチへと突っ込んでいく。
「僕の名前はペテロだ!」
「だから、お前らの名前など!」
そう言った瞬間、ロウマはしくじったと思った。この機体は思いのほかやると。
「ペテロは兄弟で一番だぜ……」
「ペテロ兄さんがうちでは一番よ……」
クソが、しくじったと思った瞬間に、一瞬で両肩のビームマシンガンが潰されたことをロウマは理解した。
「そういう腕があるなら前に出ろやクソが!」
ロウマは怒りのままにクズオロチの尻尾を伸ばし、ペテロの機体を両断する。
「僕の名前はペテロだ。ジェイコブ三兄弟を甘く見るなよ」
鬱陶しい、ロウマのクズオロチはペテロの機体を全力で蹴り飛ばした。その瞬間である、イオニスの機体が全力で対艦刀の一撃を叩き込んできた。
「アンタも鬱陶しいんだよ、先輩!」
ロウマは伸ばしたままのクズオロチの尻尾を更に延長し、イオニスの機体に叩き付ける。その瞬間、割って入る機体の存在が目に入った。

 
 

「このクソアマぁ!」
アルミューレ・リュミエールによって、クズオロチの尻尾の一撃が弾かれた。その瞬間、イオニスのフレイド・クルセイダーは尻尾に対艦刀を突き立て、尻尾を縦に切り裂いていく。
エネルギー切れで動けなかったはずの機体が、どうしてと思った瞬間ロウマは、あのジェイコブとかいう奴が乗っている機体を思い出した。
「てめぇ、エネルギーを分けてもらいやがったな」
おそらくジェイコブとかいう奴の機体のエネルギーを直接、受け取ったのだろう。
「ジェイコブ三兄弟の長男のジェイコブを忘れんな」
通信で鬱陶しい声が聞こえてきたが、ロウマは無視して、このイオニスとグリューネルトを始末するために大剣を全力で振るった。
エネルギーが切れたのかアルミューレ・リュミエールはエネルギーを停止している。邪魔をしてくれたという怒りを露わにロウマはクズオロチの大剣を振るうと、イオニスのフレイドが無防備なグリューネルト機をかばった。
しかし、たいして意味はない。二機とも大破だ。もっともかばわなければ、片方は死んでいたが。何にしろ戦闘に参加することは出来ない。
さて、とロウマは一旦状況を整理してみた。クランマイヤー王国側のMSはほぼ全滅、しかし、こちらのクズオロチもほとんどの武装が使えなくなっている。
対して、相手はビームサーベルを健気に構えているオーバーブレイズガンダムだけだ。
「お仲間は皆ダメになってるけど、頑張れるかい、セイン君?」
「答えるまでもないだろ」
そりゃそうだと思い、ロウマはクズオロチから余計な武装ユニットを排除したスネークヘッドの基部と、尻尾の根本だ。武装も無い以上、斬って終わりにする。ロウマはその構えで左腰の刀を左手で器用に抜き放つ。
対してセインはというと、最後の切り札を切ることにした。そ
「コード:ブレイズ」
その瞬間、オーバーブレイズガンダムの背中の大型スラスターユニットから炎の翼が生じるが、セインは、それを意図的に抑えていた。爆発させるのは一瞬、全力をで相手を仕留める時だと。
「面白いような、そうでもないような。なんだろうね、この感覚は」
「僕には、まだわからない」
セインの素直な答えにロウマは口元を、緩め、必殺の斬撃を叩き込むのだった。
宿命なのか、因縁多き二人の最後の戦いが始まったのだった。

 
 

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