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GUNDAM EXSEED_B_65

Last-modified: 2015-12-31 (木) 14:39:33

「なんだか、気持ちよくなってきたね。どうだい感じてる?」
ヴァリアントガンダムとフリーダムガンダム・センチネルの二機のガンダムは異常な速度で動き回りながら、お互いを傷つけていた。
ユリアスはヴァリアントガンダムの動きに異常なキレが生じていることを理解していた。速さだけならば、フリーダムの方が間違いなく速いが、動き自体つまりは手足の挙動などそういった、細かな部分での動きの速さがヴァリアントガンダムは段違いになっていた。
フリーダムを操るユリアスは近距離戦は不利と考え、間合いを離しビームライフルを撃つ。しかし、発射されず、ユリアスは何事かと思いビームライフルを見ると、その銃口には小型のナイフが刺さっており、ユリアスが気づくと同時にナイフが爆発する。
その衝撃によってユリアスはライフルを失われたのを理解し、使い物にならなくなった武器を放り捨てた瞬間、目の前にヴァリアントガンダムが接近していた。
フリーダムは即座にビームサーベルを振るうが、ハルドはさして避ける気も無く、僅かに機体を動かす。ビームサーベルの刃がコックピット前の装甲をかすめ、コックピット内から、ハルドは真空の世界を見ていた。
宇宙の空気は良いね。空気が無いけど。そう思いながら、最低限の動きで致命傷を避けたヴァリアントガンダムは、間合いなど無視して、フリーダムの懐に踏み込む。ほぼカウンターのような動きにユリアスは対処できなかった。
そしてそんな相手にハルドとヴァリアントガンダムは、両手の武器を捨てフリーダムの頭を掴むと、力任せにヴァリアントガンダムとフリーダムの頭部、人間で言えば口に当たる部分をぶつける。
「キスだ、キス!一回やってみたかったんだよなぁ。外から見たら、どんな絵面なんだろうな、ははははは!」
ハルドは狂ったように、否、自らの狂気に従って、コックピットで笑い転げるのだった。ユリアスは一瞬、訳が分からなくなったが、即座に自分を取り戻し、フリーダムの膝蹴りでヴァリアントガンダムを引きはがす。
「熱いベーゼはお嫌いか、王子様?」
ハルドは何とも面白味のない男だと思ったが、そういう無粋なところも悪くないと思いながら、フリーダムの腕に刺していたソリッドナイフを、いつの間に引き抜いたのかヴァリアントガンダムの手元で弄んでいた。
ライフルとビームピストルを放り捨てたヴァリアントガンダムは、残っている左胸のビームピストルを引き抜き、右手に持ち、左手にはソリッドナイフを持つ。
「人生には愛が必要らしい。俺の師匠が言ってたような、今、俺の耳元で言っているような変な感じだけど。そうなんだってさ」
ハルドは、まとまらないが目の前の敵を殺すという一点に特化した思考から出た言葉を垂れ流していた。
ユリアスは、もはや目の前の敵には恐怖しか感じなかった。強すぎる。戦闘自体はノンビリとしているような気もするのに、気づけば、自分の機体はかすり傷だらけで、向こうも同じだった。遊んでいるのかとユリアスは思ったが、ハルドにそんな意思はない。

 
 

純粋に相手との刃をもっての語らいを楽しんでいたのだった。負わせる傷もつけられる傷も共に愛おしい。ハルドはそんな境地に達していた。そして今が永遠に続くのも悪くないと、そんな気持ちになっていた。
対するユリアスは必殺の構えだった。フリーダムの両手にビームサーベルを握らせ、近接戦闘で、何とか相手の上を行って仕留めるという、そんな考えだった。
長期戦になればなるほど、あの狂ったような意思に呑まれる恐怖がユリアスにあった。それが、ユリアスが勝負を急ぐ理由だった。
さて、続けるか、そうやって動き出すハルドのヴァリアントガンダム。対して、必ず仕留めと決めたフリーダムガンダム・センチネルの二機は互いに真っ直ぐに突進する。
ユリアスはビームピストルの銃撃に関しては、無視することを決めていた。コックピットにでも当たらない限り心配はない。そして自分は絶対に弾に当たらないという自信が、そう選択させた。そして、身を守るより突撃の速度を優先する意味もあった。
そう思った瞬間である、互いに加速する二機、接近するギリギリで、ハルドはヴァリアントガンダムのビームピストルを全力で投擲した。狙いはフリーダムの頭部。
お互いの加速と全力の投擲で、ビームピストルは予想外の物理的威力を発揮し、フリーダムの頭部に直撃し、その頭部を上へと向かせる。
ユリアスからすれば、急にメインカメラが上を向いた状況であった。しかし、ユリアスは動じずにビームサーベルを振るう。
「ひひっ」
ハルドのヴァリアントガンダムは辛うじて、その直撃を避けたが、両足首から下が斬り落とされていた。
避けたと思ったがなぁ、とハルドは妙に冷静な思考のまま、回避機動の最中に機体を急稼働させ、フリーダムの頭部に膝蹴りを叩き込む。
「それでも!」
ユリアスは即座に反撃に移ったが、ハルドのヴァリアントガンダムは膝蹴りから即座に、機体のスラスターを噴射させ、フリーダムの攻撃を回避する。
そして、フリーダムの頭部をロックし、すぐさま、ねじ折り引き千切ると、フリーダムを飛び越すように移動し、ナイフをそのバックパックに突き刺し、フリーダムの背後に立つ。
「それがどうした!」
フリーダムはビームサーベルを即座に手の内で回転させ、逆手に持つと、背後を見ずに後ろに対して無理がある姿勢で振り上げた。その刃は無茶な体勢であったもののヴァリアントガンダムの右腕を付け根から斬りおとした。
「愛してるぜ、ユリアス君」
ワクワクする戦いだ。気持ちが昂るこういう言葉の表現にはハルドはこれしかないと思った。
「僕が愛しているのはただ一人だ!」
凄まじい速度で振り返るフリーダム。対して、ヴァリアントガンダムは目線を合わせた状態でビームサーベルを抜き放ちながら、前蹴りを放つが、ユリアスは超絶的な反応速度で、その蹴りを躱した。
そして、必殺の一撃をヴァリアントガンダムに叩き込む。それは二本のビームサーベルを同時に機体の胸部に突き刺すという攻撃。ヴァリアントガンダムはそれを回避できず、その胸に二本のビームサーベルを受けるのだった。

 
 

「僕の勝ちだ」
ユリアスは確信をもって、そう言ったが、外から見えるコックピットの中のハルドは、手を横に振って否定を示していた。
その瞬間にユリアスは気づく、自分の機体の左肩と胴を繋ぐ関節部に突き刺さる小さなナイフの存在を。それはヴァリアントガンダムの最後のスローイングナイフであった。
ナイフは爆発し、フリーダムを揺らす。その瞬間に、ヴァリアントガンダムの左腕に持ったビームサーベルがフリーダムの左肩を斬り裂き、左腕を斬り落とす。
「俺だって、本当に愛するのは一人だけどよ。一応、仮初めだけど俺の愛も受け取っておけ」
ユリアスは間合いを離そうとした。しかし、瞬間、機体の腹部にビームサーベルが刺さるのを確認した。
「愛の確認はハグだぜ」
ヴァリアントガンダムは胸にビームサーベルが二本も突き刺さっているのにも関わらず動き、片腕と脚を使いフリーダムに絡みつく。
ハルドはレビーとマクバレルに感謝したくなった。とにかく何があっても動ける機体にしてくれと、ヴァリアントガンダムを作る際に適当に頼んでいた。その結果が、ビームサーベルが二本も刺さっているのに問題なく動くヴァリアントガンダムだ。
「くそ、離せ!」
ユリアスはとっさの判断でスラスターを全開にしたが、それは大きなミスだった。ヴァリアントガンダムによって突き刺されたナイフによってバックパックは破損し、メインスラスターも故障しており、スラスターを噴射させるたびに、機体がおかしな挙動をする。
「読み勝ちだ、クソ坊ちゃん!」
ハルドは狂気から平常に戻り、フリーダムに絡みつくヴァリアントガンダムを器用に操り、スラスターの方向を調整する。
何を!?と思った瞬間、ユリアスはアプリリウスが近すぎることを理解し、そしてまさかと思うのだった。
「一緒に墜落体験はいかが?」
ハルドは、機体を操り、ヴァリアントガンダムとフリーダムが、アプリリウスの外壁に最高速度で激突するように調整する。
あとは神のみぞ知るってやつだ。神様信じてねぇけど。そんなことを思いながら、二機のガンダムは絡み合ったまま、アプリリウスの外壁に激突し、そのまま、コロニー市外へと墜落していくのだった。

 

墜落した衝撃は凄まじかった。ハルドはむき出しに近い状態になったコックピットの中で、半ば意識を失いかけていたが、ヘルメットを脱ぎ自らの頬を叩き、辛うじて意識を正確にする。
しかし、同時にしくじったことを理解した。墜落してコロニーの地面に激突した際に、フリーダムを離してしまったことを。
「まだ、終わっていない、ハルドぉぉぉぉぉ!」
頭部と左腕を失ったユリアスのフリーダムが、最後の決着をつけるべく迫る。やってやるとハルドは思ったが、機体が、上手く立たない。そう言えば両足首から下が無いのだと思い出したが、フリーダムの方もよろ付き、倒れる。

 
 

「バランサーが壊れた。いや、一時的な故障だ!」
ユリアスは即座に機体の直立システムを立て直す。対してヴァリアントガンダムは近くの建物に寄りかかって座るのがやっとといった様子にユリアスには見えた。
「貰った!」
機体を立て直し、ようやくといった様子でビームシールドを形状変化させビームソードにし、ヴァリアントガンダムに向けて突き出すフリーダム。
「こっちも貰ったよ」
ヴァリアントガンダムは突如、左腕を上げる。その内手首にはビームサーベルが出力されていた。ヴァリアントガンダムの左手はフリーダムの腕を掴み、内手首のビームサーベルはフリーダムの右腕を貫き、斬り裂いた。
「まだだ!」
ユリアスは切り札を切った。それは脚のビームエッジであり、フリーダムの右脚が真っ直ぐ上がった瞬間、脚のビームエッジがヴァリアントガンダムの左腕を切り裂いた。同時にフリーダムの右腕も斬り裂かれ千切れ落ちるが、ユリアスは無視した。
「これで、終わりだ、ハルド!」
フリーダムの武器はこれしかない。だから、フリーダムは右脚で建物に寄り掛かり座るヴァリアントガンダムの胸元に、ビームエッジを帯びる右のミドルキックを叩き込む。
「終わりを決めるのはおまえじゃねぇ!」
ハルドは多分死ぬと思ったが、コックピットのシートの下に潜り込んだ。運が良ければ生きるはずだ。全力は出した。これでも死なないなら、もっと死ぬに相応しい場所があるということだ。
フリーダムの右脚の蹴りは、ヴァリアントガンダムの損傷しきっていた胸部分を薙ぎ払う。ユリアスは機体が蹴り終えた瞬間に切断されたコックピットのシートが見え、勝利を確信した。
だが、直後にハルドの姿がコックピットの下の方から現れた瞬間に、ユリアスの時は止まった。コックピットのシートの下に隠れて攻撃をやり過ごした?ユリアスの思考はそこで止まり、フリーダムを蹴り終えた姿勢で止まっていた。
上半身が半分なくなっても、まだ動くとは最高の機体だマクバレル!ハルドはそう思いながら、ヴァリアントガンダムの全スラスターを起動させ、フリーダムに機体を突っ込ませる。
真っ先に突き出るのは膝。ユリアスはただの膝蹴りで何ができる。そう思った。だが、それが間違いであることに、すぐに気づかされた。
「あるんだよ、こっちにも最後の武器が」
それは膝に収納されていた最後のソリッドナイフ。それが刃を突き出しながら、フリーダムに迫る。まさか、こんな……ユリアスの意識があったのはそこまでだった。
ヴァリアントガンダムは全てを使いきった一撃をフリーダムガンダム・センチネルのコックピットに叩き込む。
直後、もはや自立するような能力もなく、二機は共に崩れ落ちるが、コックピットから這い出す人影が一つだけあった。
それはハルド・グレン。ハルドはヘルメットを脱ぎ捨て、叫ぶ。
「俺が強すぎんだよ!ばかやろうがっ!」
激闘を終え、叫びながらハルドはヘルメットを全力で放り投げる。そこでハルドは疲れ切って、その場に座り込むのだった。

 
 

「もういい、ウンザリだ」
クズオロチの大剣が、真横から襲ってくるのに対し、オーバーブレイズガンダムはビームサーベルでそれを受け止める。同時にクズオロチの左手の刀がオーバーブレイズガンダムを挟み込むように左から襲ってくるが、それもビームサーベルで受け止める。
その瞬間、クズオロチは前蹴りを放つが、コード:ブレイズを発動しEXSEEDの能力を獲得し、驚異的な直感能力と反応速度、そして機体を自身の身体のように動かす能力を得たセインは、容易くその前蹴りを躱す。
だが、直後、クズオロチの頭突きがオーバーブレイズガンダムを襲い、回避できず、その直撃を受ける。バリアでは衝撃までは消しきれない。機体とほぼ同化状態にあるセインは、直撃を食らった頭突きのダメージを自身の身体に受けていた。
「オラぁっ!」
頭突きから即座に膝蹴りがオーバーブレイズガンダムの腹部に叩き込まれ、セインにもそのダメージが通り、更にクズオロチの脚が高く上がり、顔面を真っ直ぐ蹴り飛ばす。その一撃にオーバーブレイズガンダムが吹き飛ばされる。
セインは痛みに一瞬、気を失いかけたが、それだけは駄目だという意識が働き、ギリギリで意識を保つが、倒れるオーバーブレイズガンダムにクズオロチは大剣を振り下ろし、追撃を仕掛けていた。
セインは咄嗟に両手のビームサーベルで受け止めるが、振り下ろされた大剣の圧力は凄まじく、刃がじりじりとオーバーブレイズガンダムに迫る。
「もしかして、俺に勝てるかもなんて、思ってたか?えぇ、おい、こらぁっ!」
オーバーブレイズガンダムはギリギリでクズオロチとの間に脚を滑り込ませると跳ね上げるようにクズオロチを蹴り飛ばし間合いをあけようとした、瞬間だった。
クズオロチは蹴り飛ばされ、うしろに下がるが同時に左手の刀をオーバーブレイズガンダムに投擲する。
だがセインはバリアがまだ残っているため、機体は持つという確信を持って、回避不可能だった、その攻撃を受け止めた。しかし、刀に意識が僅かに集中した瞬間、クズオロチが、自身の間合いにオーバーブレイズガンダムを入れていた。
クズオロチはオーバーブレイズガンダムと比べれば二回りほど大きい、それゆえ手足のリーチも長かった。ガツンという衝撃がセインを襲う。セインは最初それが何かわからなかったが、もう一度衝撃を受けた瞬間に理解した。それはジャブだ。
クズオロチが左手の拳を素早く、オーバーブレイズガンダムの顔面に叩き付けていた。
「ははっ、痛いのは辛いだろ?」
セインは確かに顔面に痛みを感じていたが、外傷などはなく、ただ痛覚神経が機体とリンクして痛みを伝えてくるのだった。セインは、その痛みから逃れるようにオーバーブレイズガンダムを後退させるが、その瞬間に伸びのあるクズオロチの拳が素早く顔面を捉える。
「そして、痛いのは怖いよなぁ」
セインはまたジャブが来ると思い、オーバーブレイズガンダムの両腕でガードの構えを取る。だが、その瞬間にクズオロチの拳は軌道を変え、オーバーブレイズガンダムの顔面から右わき腹へと叩き付けられた。
「恐れる馬鹿はこうなる」
二発、三発とジャブではなく、大きな威力を持ったボディブローが何発もオーバーブレイズガンダムに叩き込まれる。
もちろん機械であるから、わざわざボディブローにする意味は薄いが、ロウマはこうすると弱い奴は面白い反応を示すことを子どものころから知っていた。
クズオロチはわざと、その拳を放たず、フッと軽く動かした。それだけでオーバーブレイズガンダムは顔面か右わき腹を防御するかで、動きに戸惑いが生じる。
だが、本命はそれらではなく、純粋に大剣での一撃であり、オーバーブレイズガンダムはマトモにそれを受け、弾き飛ばされる。

 
 

「わかるぜ、ガキの頃からやってたからな。何発か殴って痛みを教え込んでやると、こちらが手を動かすだけ、それだけで痛みに怯える奴は、こっちの手の動きに目が釘付けになる。本命は全く違うのになぁ」
ガキの頃の喧嘩では左ジャブと左ボディブローで、左手に恐怖心を抱いた相手に、右の拳のストレートを叩き込んでいたりしたが、まさか、そんなガキの頃の喧嘩の技術が今になって生きるとは思わなかった。それもこれも痛みを感じるシステムである。
「コード:ブレイズさまさまってな。さて、さっきの感触だとバリアが消えた感じだが、どうかね」
クズオロチは先ほど投げた刀を拾い上げ左手に持つ。そして、ようやくといった様子で起き上がるオーバーブレイズガンダムの頭部、メインカメラを刀で横一線に斬る。
「っああああああっ!」
セインは一瞬、自分の眼が斬られた感覚に襲われたが、見える。大丈夫だと冷静に戻った瞬間、再び痛みがセインを襲う。次に訪れたのは左の肩に貫くような痛み。
「おうおう、いいねいいね、良く刺さるし斬れる斬れる。ついでに綺麗に死んでくれるとうれしいねぇ」
セインはオーバーブレイズガンダムをすぐさま後ろに下がらせ、肩に刺さった刃を引き抜く、急ぐ必要があったのは、クズオロチの大剣が迫っていたからであった。
オーバーブレイズガンダムは転げそうな勢いで刀を引き抜くとバックステップで大剣を辛うじて躱す。相当にギリギリであったが、無傷だ。そう思った瞬間、セインの膝に痛みが走る。
その痛みによって、どうやら回避しきれず、膝をかすめていたことをセインは理解した。
「おい、どうしたぁ?俺に一太刀も入れてないのに、もう息切れかセインきゅ〜ん。ぎゃははははは」
下卑た笑い。その声を聞いた瞬間、セインは怒りに駆られそうになったが、同時に冷静さが芽生えてくるような気がしてもいた。そういえば、コイツは小物なんだよな、と。下卑た笑いからして小物そのものではないかと、冷静になった。
そして、よくよく考えれば、こいつの攻撃はこちらに痛みを与えることに特化したものじゃないかとも、もしもこれがハルドならば、こちらが痛いとか何かを考えずに、相手にならないなら、問答無用で殺しに来る。
こちらのメインカメラを斬った時だって。自信があればさっさと殺しにくればいいのに、わざわざ面倒をかけた。そして、バリアがないと分かっているのにもかかわらず、肩を刺しに来た。
セインは何となくだが、ロウマもビビっているのではないかと思った。嬲るようなこと言ってはいるが、その実、真正面から戦うと危なくて怖いから、少しずつ相手を削るような戦い方をしているのではないかと。
確証はないが、そう考えるとセインは愉快になってくるのだった。
「おまえ、すごく情けない奴だな」
何となくセインは言ってみた。その瞬間、無言でクズオロチが動き出し、異形の大剣を叩き付けるように振るうが、オーバーブレイズガンダムは軽く回避した。
直後に、クズオロチの刀が真っ直ぐ突きだされるが、オーバーブレイズガンダムは回避せず、頭部で受け止めた。セインは死ぬほど痛いと思いながらもオーバーブレイズガンダムのかろうじて動く左腕のビームサーベルでクズオロチの頭部を貫いた。
オーバーブレイズガンダムの頭部を貫く刀が跳ね上げられ、オーバーブレイズガンダムは顔面の三割を切り取られたが、問題なく、後方に大きく飛びさがる。
セインはよくよく考えてみれば痛いだけじゃないかと思った。ハルドには木剣で全身を滅多打ちにされたことがあるしに、腹には虎の全力に近い拳を受けたり、銃弾を食らったりしている。
考えてみれば、今までの経験に比べてたいしたことないなとセインは思った。ロウマはきっと、痛みを恐れ動きが鈍るところを狙っているんだろうが、多分、もう平気かなとセインは思った。

 
 

「恐ろしいのは痛みじゃない。痛みを恐れて動けなくなることだ」
痛みが恐ろしくない?だったら、恐ろしくなるまで痛めつけてやるよガキィ!ロウマは無言でクズオロチを動かす。
その速度は尋常ではなく、異形の大剣が横一閃に振るわれるが、オーバーブレイズガンダムは恐れずに、その下をくぐり、そろそろ限界を向けつつある左腕に最後の仕事として、クズオロチの胸にビームサーベルを突き立てる栄誉を与えた。
ビームサーベルを胸部に突き刺してもクズオロチはにとっては、それは致命傷にならず、左手の刀を振り下ろし、オーバーブレイズガンダムを叩き斬ろうとする。
だが、セインは怖くはなかった。多分イオニスさんの剣の方が速いし、絶対に殺すという意思を考えたら、ハルドさんの機体捌きとは比べ物にならないと思いながら、辛うじてといった動きで、刀の一撃を避ける。
しかし、避け斬ることはできなかったのか、オーバーブレイズガンダムは左腕を失っていた。
「余裕余裕っ!」
二個ある物は一個無くなっても大丈夫なように出来ているとストームさんが言っていた。肺とか目玉とか色々、つまりは右腕があればオールオッケー、すっごく痛いが、そこは我慢とセインは機体を動かす。
「このクソカス!」
急に動きが良くなりやがった。ロウマは焦りを感じていた、自分がこんなヘドみたいなガキに負けるなど冗談ではないと思い、状況を立て直そうと一瞬後ろに下がった瞬間だった。
ニンゲン、イキモノ、ダイタイ、ナグリコロセル。確か虎先生の言葉だ。だったら、やってみるかと、セインのオーバーブレイズガンダムは後退するクズオロチを追いかけ、その腹部に拳を叩き込んだ。
タイミングがずらされた!?ロウマは一瞬狼狽し、左手の刀を振りまわし、オーバーブレイズガンダムを遠ざけようとするが、オーバーブレイズガンダムとセインの反応速度は圧倒的であり、それを避けながら、身を低くしつつ素早く動く。
「至近距離が一番安全ってね」
オーバーブレイズガンダムは転がるようにして、クズオロチの背後に回り込むと、肘打ち、そして、全力の蹴りを叩き込み、クズオロチを弾き飛ばす。
ロウマは何だこの状況はとしか思えなかった。スネークヘッドが全て破壊されても、セインの乗るオーバーブレイズガンダムくらいは叩き潰せるはずだった。それがどうした、今は自分が遊ばれているではないか。
コード:ブレイズの恩恵とはいえ、こんなはずではなかったとロウマは思う。自分は舐めすぎていたというのかという自省がロウマに一瞬芽生えた。そして、それが命運を分ける瞬間となった。
「オマエ程度は、セインっ!」
弾き飛ばされたクズオロチはすんでの所で体勢を整え、背後から迫るセインのオーバーブレイズガンダムに異形の大剣を振るう。それに対してセインは驚異的な反応速度を見せるが、間に合わず、オーバーブレイズガンダムの左脚が斬り飛ばされる。
セインは左脚が斬りおとされる激痛を感じながら右腕のビームサーベルを構えたまま、クズオロチに突撃するが、クズオロチの左手の刀がビームサーベルの出力口を斬り落とし、ビームの刃が消滅する。
そして、クズオロチは、異形の大剣をオーバーブレイズガンダムに振り下ろし、その半身を叩き斬る。避けたのかズレたのか、その刃は僅かに曲がり、オーバーブレイズガンダムの首根本から左側を断ち切った。
幸運だったのはコックピットを巻き込まなかったことと動力の“セラフの火”が無事であったことだった。しかし、それでも、機体は動くか分からない状態であり、パイロットのセインは身体を半分に裂かれるような激痛に襲われショックで意識を失っていた。

 
 

「終わりだ」
クズオロチがようやくといったように、その腕を上げ、コックピットめがけて大剣を振り下ろそうとした瞬間、高出力のビームがクズオロチの左半身を焼き払い消し炭と化した。
「色々としてくれたお礼がまだ済んでいませんでした。アンドー大佐」
そのビームを放ったのはアッシュのEX・キャリヴァーであった。
「このっ、ゴミ……っ!」
クズオロチは左上半身を失ったことで、よろめき体勢を整える必要があった。ロウマは焦りながら思う。アッシュの機体は下半身が無い。放っておいてもいい。それよりも、動力が生きているオーバーブレイズガンダムだ。
そう判断し、再び大剣を振り上げるが、その瞬間、衝撃を受け機体の右手が軽くなるような感覚をロウマは得た。
「先輩から後輩への贈り物をしていなかったのを思い出してな。まぁ遠慮せず受け取ってくれ」
聞こえた声はイオニス。そして、ロウマは自機の剣を探すと、はるか遠くにイオニスの機体が持っていた対艦刀と一緒に転がっていた。
「お前ら、元でも騎士団だろうが!俺の味方をしろ!」
ロウマは気づいてもいなかったし、興味もなかったので分からなかった。その騎士団の誇りを踏みにじり、アッシュとイオニスの怒りを招いたのが自分だということを。
「このクソどもが!後で必ず殺す!」
今は何よりも目の前のオーバーブレイズガンダムだ。これを仕留めたら何とでもなる。そうロウマが思った瞬間、オーバーブレイズガンダムが僅かに動き出すのが見えた。
冗談じゃない。自分はここで終わるわけにはいかない。武装は無いがヘルメスの水銀球がギリギリで動く。ロウマのクズオロチの手が水銀で覆われその先端が鋭利な刃となり、まだ動きを完全に取り戻していないオーバーブレイズガンダムにその刃を突き刺そうとする。
だが、それをしようとした時、突然にクズオロチの左脚が直立から崩れ、膝をつく。ロウマは何だと思い、確認すると。クランマイヤー王国の量産型MSがビームサーベルをクズオロチの左脚に突き刺していた。
「誰だよ、おまえ?」
ロウマは呆然と尋ねる。尋ねた機体は両脚を失っており、腹部にはクズオロチの刀が突き刺さっている。
「ジェイコブ三兄弟、長男のジェイコブだ」
誰だ、そのクソカス。一瞬ロウマはそちらに気を取られたが、すぐにそんな場合ではないことを思い出す。
「あああああっ!」
眼前には完全に動きを取り戻したオーバーブレイズガンダムが右の掌をクズオロチに突きつけながら、突っ込んでくる。マズイマズイマズイマズイマズイマズイっ!
ロウマは半ば狂乱した状態で、クズオロチの水銀に覆われた右手を、オーバーブレイズガンダムの動力に突き刺すために伸ばした。
ロウマは、自分はいつも勝利者で終わるという自信と確信があった。しかし永劫に勝利者でいられる人間はいない。
「僕の勝ちだ」
伸びるオーバーブレイズガンダムの右掌そこには砲口があった。コード:ブレイズによって生じるエネルギーを砲撃や近接武装として発射する砲口。それがクズオロチの胸に押し付けられていた。
オーバーブレイズガンダムの掌から放たれるのは太陽の光に似た一閃、それがクズオロチの胸部を貫いた。放たれた光は暖かさを感じさせながらも、確かな炎として無慈悲な一撃によって九の蛇を持つ大蛇を討ったのだった。

 
 

GEB第64話 【戻】 GEB最終話

 

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