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GUNDAM EXSEED_B_9

Last-modified: 2015-04-17 (金) 17:37:03

ハルドはとにもかくにも、特別製造区画へ行くルートを確保することに専念した。看守の兵士はまだ残っており、抵抗を続けているが壊滅は時間の問題だろう。
とにかく誘導だとハルドは思った。久しぶりの自由を獲得してハメを外している輩を何人か殴り倒し、死なない程度に銃で撃ったら、ほとんどの人間がハルドの言うことに従った。
途中、死体から物をあさる、ユイ・カトーを見つけたが無視した。しかし無視しても平気な顔でついてくる。この女も3年で随分と強くなった。と思った瞬間ハルドは思いだすベンジャミンはどうしたかと。するとユイ・カトーは平然と答える。
「艦長もちゃんと運んでるんでご心配なく」
ならばいいとハルドは思い、さっさと脱走の準備を始めることにした。
「しかし、このレベルだと脱走と言うより暴動とか反乱とか言うんじゃ……」
ユイ・カトーが疑問を口にするがハルドは無視することにした。
銃声はほとんど聞こえなくなっている。おそらく看守側はほぼ全滅したのだろう。
「あとは輸送艦までいくだけだ」
ハルドはそう言いながら、特別製造区画まで戻ってきた。収容所の囚人はあらかた連れてこられたはずだとハルドは思う。流石に点呼まで取って、全員いるかを確認はできない。ここまで来られなかった奴は運が無かったということで片付けるしかない。
「隊長、こっちの準備はいいです。人を輸送艦へ!」
レビーがハルドに大声で呼びかける。相当に遠距離からハルドを呼んでいた。
「あと、隊長に見せたいものがあるんで来てください!」
レビーが声を張り上げハルドを呼んだ。ハルドは囚人たちに行けと命令すると、後は虎やらユイ・カトーに任せることにし、レビーの方へと向かうのだった。
レビーは大きな扉の前にいた。車椅子のレビーはドアのロックを解除する。ふと気になったのでハルドは聞く。
「その体も3年前か?」
ドアのロックは複数にかかっているようで、レビーは手際よく解除しながら答える。
「そうですよ。あの時、艦が沈んだ時にこうなりました。命があっただけ良いと考えることにしてます」
ハルドは、そうか。としか言えなかった。そうしているうちにドアのロックが開く。するとハルドは思わず声を上げる。
「これは……」
ドアの奥にあったのはMSであった。それも全く見たことのない機体。
「とりあえず、私たちはNEX(ネックス)と呼んでいる」
機体の陰からマクバレルが意味深に現れるながら言うが、特に意味はないようでレビーにスパナを投げられていた。
「本当はNEXTと名前を付けたかったんですけど。軍のトライアルに落ちちゃって、トライアルのTは不吉だって教授が名前から削ったんで、今はNEX(ネックス)です」
ネックスそう名づけられた機体をハルドは改めて眺める。
顔はガンダムタイプだが、かなり細身である。そして気になるのはガンダムタイプの機体なのに特徴となるV字型のアンテナがない。代わりに大きなトサカが付いている。
上から下を眺めていくと胴体は、胸部にもスラスターが付いている。
背中はというと大型のバックパックはマントのようにも見える形状だが見た感じではスラスター以外の機能を内蔵しているように見えない。
腕に目をやると、肩の先にシールドらしきものが見えるが、よく見るとこれもスラスターユニットだ。しかも肩先にあることでスラスターの向きを自由に変更可能なっている。
ハルドは嫌な予感がして背中に回り込んで肩を見ると、肩の後ろもスラスターだった。
「お前ら、弾が当たった時のことを考えていないだろう?」
ハルドはマクバレルとレビーに尋ねたが、二人とも目を逸らした。
とりあえずハルドは機体を眺める作業に戻った腰は普通だった。両腰にビームサーベルが懸架してあるくらいだ。
しかし問題は脚部にあった、妙なラインの脚だとハルドが視線を下にしていくと、不意に目を止め、色々と聞きたいことがあった。

 
 

「足が無いぞ」
ネックスには足が無かった。足首のように見える部分と、かかとらしき部分で立っている。よくよく見るとかなり不安定に立っている気がした。
「MSに足が必要だと考えるのは凡人の発想だ。宇宙で戦うなら足はいらんだろう」
「大丈夫です。現状でネックスは100%の性能を発揮できます」
とマクバレルとレビーは言うが、ハルドにも言い分はあった。
「蹴れねぇじゃん」
ハルドはMS戦の時に蹴りを使いたいときどうすんだという感想を持った。それに対して、研究者の二人は、あ。という顔をするだけだった。
しかしマクバレルは気を取り直して説明する。
「宇宙空間での戦闘でわざわざ足なんぞ必要ない。戦闘機動はスラスターだけで充分だ。ネックスはそういう新しい考え方に基づいて考え出した機体なのだ。それをだな、頭の固い奴らは足がないだけで――がっ!」
話しが長くなりそうなのでレビーがスパナで頭を殴った。
まぁ、頭の良い人間が色々考えた結論なのだから酷いことにはならんだろうと、ハルドは改めてネックスの脚を見る。確かに機動性は高そうだった。
前から見ても各部にスラスターの存在が確認できる。そして後ろに回って足を見てみると。圧巻だった。脚の裏面は全てスラスターを束ねたスラスターバインダーである。
「下半身は完全に機動用にしたMSか」
ハルドは全体を見た上での感想を述べると。マクバレルが立ち上がり言う
「そう言うことだ。MSに対する考え方を我々は一度変えなければ――」
言いかけている途中でレビーの車椅子がマクバレルに激突した。
「長くなりそうなんで省きますけど。とりあえず、隊長はこれに乗ってください」
「え、いやだよ」
ハルドは素で言ったが、レビーは理路整然と返す。
「輸送艦が出たら、きっとこの収容所のMS部隊が輸送艦を狙ってくるので、このネックスで迎撃してください。動かせるのはネックスしかないので我慢を!」
言って、レビーはネックスのコックピットハッチを開けると、マクバレルを引きずり、さっさと行ってしまった。
「えー」
とハルドは思う。まさか足無しの機体にのる羽目になるとは。だが、現状、レビーの言った通りになることは分かっているので、仕方がなかった。
ハルドは軽やかにコックピットに乗り込む。それと同時に機体のシステムを起動させる。規格はクライン公国の最新モデルだが、ハルドは特に問題を感じなかった。
システムを操作し、機体の真上、この部屋の天井の扉を開ける。二重構造なっており、酸素は漏れない仕組みだ。
ハルドは機体を軽く跳躍させてみる。だが、思うようにいかなかった。
「なるほど」
とハルドは思う。足がない以上、下半身の動きは全部スラスターで行うのだと理解した。そして理解したうえで、再び、跳躍させる。すると思った以上に軽く浮く。
悪くない感覚だと思い、ネックスは天井の第一の扉を過ぎる。同時に、第一の扉がしまり、区画内の酸素を安定させる。
問題は次だ。ハルドはシステムを操作し第二の扉を開ける。すると、そこは漆黒の宇宙だ。そして月の表面だ。なにせここは月の表面にある収容所だからだ。
「ネックス、発進する」
ハルドは何となく言ってみたかった。しばらくぶりだからだ。こんなちゃんとした施設から機体を発進させるのは。
ネックスは全身のスラスターから青い炎を噴射させ、宇宙へと舞い上がった。

 
 

セインは訳も分からず走り回っていた。当然である。正しい道も知らないのだから、しかし看守に遭遇することもない。それに気づくと収容所内に響いていた銃声も聞こえなくなっている。
「どうなったんだ?」
セインはいったん立ち止まると考えをまとめる。もしかしたら看守は全滅したのかもしれないと。じゃあ、この後はどうすればいいんだ。
セインにはこの後、自分が取るべき行動がイマイチわからないでいた。ハルドを追うそれだけで良いのかという思いもあった。
自分の世界を変えるためにはハルドにだけ頼っていいのかという思いが、セインは考えながら歩き続ける、その思考は真剣な物だった。
そのため、“MS格納庫”という案内のプレートを見逃すほどに。

 

「こっちは良いぞ、輸送艦を出せ!」
ハルドが命令を出すと輸送艦が動き出す。艦長や操舵手を誰がやっているのかは分からないが、文句のない操艦だった。
「とにかく月から離れる。後はそれからだ」
ハルドがそう言うと同時に、十数機のMSが輸送艦に向かってくる。明らかに収容所の看守たちの機体である。
「ほらな、俺の読み通りだろ」
煙草を口にくわえながら、ドロテス・エコーは自分の読みが当たったことにご満悦といった様子だった。
「生死は問わん。ぶっ潰せ!」
ドロテスの口から、指揮官らしくない品の無い言葉が出ると同時にMS隊は動き出し、輸送艦に襲い掛かる。だが、その瞬間だった。月の収容所の中からのビームがMS隊を襲ったのだ。

 

セインは訳も分からず歩く中、広い場所に出た。そこには一機のMSが立っていた。自分の弱さを自覚するセインにはそれが、強さを持った偉大な存在に見えた。そして、その機体をみて呟く。
「ガンダム……?」
セインの見た機体は確かにガンダムタイプの機体である。赤い塗装が施された機体。余計な装備を廃した姿はストライクガンダムやデュエルガンダムの系譜に連なるとセインは思った。
セインは何の用心もなく近づくと、機体の傍にあった、制御用のコンピュータを操作する。操作する中に現れた“ハッチオープン”その字がセインの目には異常な魅力を持って見えた。
セインは迷わずそのコードを押した。同時にセインが見上げる中で機体のコックピットが開いていく。
「はは」
こんなにうまくいくとは思わず、笑いが漏れた。そしてセインは機体に乗り込む。これさえあれば、そんな気持ちは確かにあった。そう、この機体さえあれば、弱い自分を捨て強い自分になり、世界を変えることが出来る
セインは、そう思って乗り込んだのだった。
ぎこちない動作でコックピットに収まるセイン。機体のシステムの把握に戸惑うがそのさ中だった。コックピット内に声が響く。
「因子保有率……67%。起動を承認します」
電子的な音声であった。その声が聞こえた直後、機体の各種システムが一気にたち上がる。
「いける。これなら」
そう思い、セインは機体が装備していたライフルを天井に向ける。機体の操縦はある程度は習っている。全く動かせないということは無い。
「いけー!」
セインは躊躇わずトリガーを引いた、その瞬間、謎のガンダムの持つライフルからビームが発射された。
天井には大穴が開いている、その先には宇宙があった。セインは、機体を操りその穴にガンダムを滑り込ませる。多少、穴にかすったが問題なく、セインの機体は宇宙へと出る。
「やった」
自分一人の力でここまでこれたという達成感はあったが、状況をセインは全く理解していなかった。
月面へと出たセインの視界には輸送艦とその護衛のようなMS、そしてMS十数機の部隊があった。セインには状況の把握が難しく、一旦、動きを止めてしまったのだった。

 
 

ハルドの側にも急に現れた赤いガンダムは訳が分からなかった。
「あの機体が動く……?」
輸送艦の中ではマクバレルが驚愕に襲われていた。
マクバレルは知っていた。あの機体が動かないと。なぜなら何人のパイロットを試しても動かなかったのだ。
あのガンダム元々、月で開発されたものではない。基礎のフレームとコックピットに動力だけが付いた状態で月に運ばれてきたのだ。
フレームに関してはマクバレルの理解の範疇になんとか収まった。それでも現代の常識を超えたようなものだった.
さらに動力に関して、マクバレルは何も出来なかった機体だ。かろうじて、動力と各部を繋ぐラインの調整が出来るくらいだった。
そしてコックピット周りは異常なプロテクトがかかっておりマクバレルにはどうにも出来なかった機体それが動いている。
マクバレルがしたことと言えば、外装などを整えるくらいだった。
マクバレルには驚愕しかなかった。
「あの機体が動くのか……?」
驚愕とともに興味が湧いた。そして見届けようと、輸送艦についている窓に食いついていた。

 

「くそ、こいつ。ホントに動くのか」
セインはままならない機体を何とか動かしながら状況の把握を務めようとしていた。その時だった。
「機体名を登録してください」
電子音声がセインの邪魔をした。セインはイラつき、怒鳴る。
「なんなんだよ、オマエは!?」
その怒声に対して、電子音声は極めて冷静な返しをする。
「なんなんだよ、オマエは!?は名前に適していません。私は本機のプロジェクトコードであるブレイズを推奨します」
セインは本当に訳がわからなくなっていた。だから勢い任せに言ってしまった。
「ブレイズガンダム。それでいい!」
セインがそう言うと、電子音声は何も言わずに消えた。
セインは自分が言った言葉がどれだけの人間に影響を与えたかは分かってはいない。そもそも、それが分かる人間など、この世界には少数しかいないのだ。
そして、当事者であるセインは何も分からず混乱するばかりだった。

 

「味方の拠点を撃つ奴がいるか。奴は敵だ!」
ドロテス・エコーの判断は明確で正確だった。その言葉が彼の部隊行きわたった瞬間、数機のMSがセインが名前を付けたばかりのブレイズガンダムに向かっていく。
「なんなんだよ」
セインの視界には何機かのMSが自分の機体に向かって来る映像が映っている。
「敵か、敵でいいんだよな!?」
コックピットのモニターの映像にはクライン公国機と識別されている、ならば敵だ。セインは手元のトリガーを引きブレイズガンダムにビームライフルを撃たせるが、狙いは全くあっていなかった。
直後、敵の機体がビームを撃つ。完全に直撃のコースであり。そしてブレイズガンダムは回避行動もとらずに直撃する。だが、ブレイズガンダムは無傷であった。
だれもが訳がわからなかった。
「バリアがあるとでもいうのか!?」
ドロテスは驚愕する。
「バリア……なのか?」
セインも驚いたが、よく見ると機体内のモニターの中で減っているゲージがある。セインはそれである程度は理解した。
「攻撃を受けるとゲージが減る。ゲージがなくなったらバリアは無しか」
理解し、機体を跳躍させ、動かすが、やはりぎこちなく、敵に狙われる。
「クソ」
言いながら、ビームを撃つが連射速度が物足りない、当たりさえすれば。そう、セインが思った時だった。

 
 

「ビームライフルのセレクターをAに!」
急に通信が聞こえてきた。誰だと思ったがセインは素直に従いライフルのモードをAに変えた、直後、ビームライフルの連射速度が急に上がった。
「威力を出したいならBモード!」
言われるままにセインはライフルをBモードにする。すると、ライフルの形状が変形する。銃身が縦に広がり、銃口が拡大されたのだ。
そして、発射されるビームも巨大なものになる。ライフルとは思えない威力のビームが発射されたのだ。
「そしてCモード!」
言われるままにセインはCモードにする。するとBモードの状態からさらに銃身が延長された形態になるが、ビームは発射されない。
「CはチャージのC。だから少し待って」
と声が聞こえた直後に極太のビームがライフルから発射された。
「これが、そのガンダムの主武装のヴァリアブル・ビームライフルよ!」
その女性の声は、それだけ言うと消えた。直後、激しい衝撃がセインを襲った。
「一発も当たってないが、貴様は遊んでいるのか?」
ドロテス・エコーの乗る褐色のゼクゥドのタックルによる一撃だった。セインのブレイズガンダムはそれによって大きく弾き飛ばされ、機体が月面に叩き付けられる。
「くそ」
セインがライフルを撃つが狙いはあっておらず、敵は軽く躱す。
「全機、輸送艦を相手にしろ。これは俺一人で充分だ」
ドロテスは褐色のゼクゥドをゆっくりと動かしながら、機体の両手にビームアックスを持たせ、ビームアックスでの二刀流の構えを取る。
「新型だが、素人が乗っていてはな」
直後、褐色のゼクゥドがブレイズガンダムに向けて突進した。そしてその勢いのままブレイズガンダムに切りつけるが、ブレイズガンダムに触れる直前でビームアックスの刃は光の壁に阻まれる。
「やっぱりバリアが……?」
セインが驚きの表情を浮かべながら、コックピットのバリアのゲージを見ると凄まじい勢いでゲージが減っていた。
「接近戦は辛いのか!」
なんとか距離を離そうとブレイズガンダムは後方に逃れようと跳躍するが、そのタイミングを狙っていたかのように褐色のゼクゥドがタックルを仕掛ける。
ブレイズガンダムは避けられず、衝撃によって月面に倒れ伏す。
「くそっ」
バリアのゲージはほとんど残ってなかった。自分が下手なのかとセインは思う。
「下手くそが。機体が泣いているぞ」
通信でセインが思ったことに対しての答えが返って来た。
「なめるなー!」
ブレイズガンダムは立ち上がり、勢いに任せてビームサーベルを抜く。
「ふん、相手にならんな」
褐色の機体のパイロットは余裕と言った感じの声だった。
「やってみなければ!」
サーベルを左手に持ったブレイズガンダムが突進し、サーベルで切りかかるが軽く弾かれる。セインは必死で機体を動かし、サーベルを当てようとするが敵の斧は軽く攻撃を弾くのだった。
「パワーもスピードもゼクゥドとは比べ物にならんのだがな……」
実際スペックではブレイズガンダムが圧倒しているのである。セインはそれを知らないが。
「動かすのがやっとの素人にその機体はもったいない」
褐色のゼクゥドが反撃に転じる。ガードするように構えているビームサーベルを軽く弾くと、直後、ビームアックスでブレイズガンダムに切りかかる。
セインにはそれを避けるだけの技量は無い。なので、バリアに頼るしかない。再びビームアックスの刃はブレイズガンダムの装甲表面に発生する光の壁に阻まれたが、それは一瞬だった。
斧の刃を受けた瞬間、バリアの表面が弾けたのだ。その勢いによって、褐色のゼクゥドのビームアックスも弾かれ、結果的には攻撃には失敗した。
しかし、セインの側にも大きな問題が生じていた。バリアのゲージが0になったのだ。僅かだがゲージは回復しつつあるが、ゲージの色は暗くなっており、バリアの機能が停止していることをセインに理解させた。

 
 

もう、バリアに頼ることはできない。そう思うとセインの気持ちは急に弱くなった。それに同調するかのように、ブレイズガンダムの動きも逃げ腰となっている。
「その様子ではバリアは切れたか?ならば」
褐色のゼクゥドが再び突進する。
「安心しろ。コックピットだけを潰して機体は有効利用してやる!」
両手にビームアックスを持った褐色のゼクゥドがブレイズガンダムにとびかかろうとする。セインは避けられる気がしなかった。
やられる。セインがそう思った時だった。真上からビームが飛来し、ブレイズガンダムと褐色のゼクゥドの間に割って入った。
その少し前――

 

「あの機体は味方でいいんだよな」
ハルドは状況が分からないが、敵の隊長機らしきゼクゥドは赤いガンダムに攻撃を仕掛けているし、こちらの輸送艦側にMS部隊が大挙して押し寄せてくる。
「隊長、やれますか?」
ユイ・カトーの声が聞こえる。おそらくブリッジでオペレーターの真似事でもしているのだろう。
「やれなくはないと思うが」
実際は分からないとハルドは思う。何せ初めて乗った機体で十数機のMSを相手にするのだ。
言っている内に敵の一機がビームを撃ってきた。牽制の攻撃なので相手も当てるつもりはないし、ハルドも当たる攻撃だと思ってなかったが、機体を馴らしの意味も含めて大げさに避けてみた。すると、
「お」
ちょっとした驚きがハルドにはあった、想像以上に軽く動く機体だという印象を得たのだ。下半身は独特の形状だが、機能自体は悪くないとハルドは思った。
「下半身は脚じゃなく自由に動くスラスターと考えりゃいいか。あとは武装だが……」
ネックスの右手にはビームライフルと両腰にビームサーベルがあるだけだが……ハルドは適当にコックピット内をいじるといくつかの武装データが出た。バルカンそれだけである。
「まぁ何とでもなるか」
そう思い、ハルドはビームライフルを発射させた。月面では、ガンダムがごちゃごちゃやっているようだったが、ハルドには手を貸す余裕もなさそうだった。
ハルドはハルドで十数機のMSを相手にしなければならないのだから。しかし、少しの時間が経つと楽なことがハルドには分かった。
確かに、数で負けているため、すぐに囲まれるが、ネックスの運動性と機動性なら軽く囲みを抜け出すことが可能であり、そしてハルドの腕なら、一射で相手の機体のコックピットを撃ちぬくことが可能だった。
気づくと数分で敵の機体は十機を切っていた。
「なるほど、最新鋭機っていうのはこういう感じか」
ハルドはご満悦だった。なにせ生まれて初めて最新鋭機という物に乗って、その性能に満足しているからだ。
余計な策を弄せずとも機体のスペックだけで圧倒できるということがこれほど楽だとはハルドは思わなかった。
ネックスがビームを3連射、全て別の方向に撃つと、撃ったビームは全て敵機のコックピットに吸い込まれるように直撃した。
接近戦を仕掛けてくるゼクゥドがあったが、それに対して、敵より速くビームサーベルを抜刀し、切り捨てる。
後の数は5といったところか、とハルドが把握すると、月面を見る余裕も出来てきた。月面では、ガンダムが褐色のゼクゥドにいいようにあしらわれている。
「ヘボだなぁ……」
ハルドは可哀想なものをみるような様子だった。その時、ネックスは止まっており、敵機は隙だと思ったのか攻撃をするが、軽く躱され、反撃のビームを受けて敵のパイロットは絶命した。
接近戦をしかけてくる機体もあったが、軽く相手の攻撃をビームサーベルで弾き、返す刀で反撃し撃破する。敵機などまるで相手にして無いような動きだった。

 
 

ハルドは月面を見ている。注目しているのは赤いガンダムだ。相当なパワーとスピードのある機体だが、パイロットがそれを全く活かせていない。パイロットの実力が圧倒的に不足しているのだ。
輸送艦の周囲の敵機はほとんど戦意を無くしていたが、ハルドは見逃さず、全員仕留めた。
ネックスが軽くビームを3連射するだけで、ことは済んだ。ビームは全て直撃し敵は全滅した。
「一応、助けるべきか……」
誰が乗っているのか分からないが、ハルドの乗るネックスは輸送艦周囲の敵を全滅させると月面に向けて、急降下する。
その途中だった。明らかにガンダムの側が逃げ腰になって、褐色のゼクゥドが仕留める構えになっている。
「よくないな」
ハルドはそう思い、ネックスのビームライフルを二機の間に発射するのだった。タイミングはギリギリだったが、褐色のゼクゥドを止めることに成功した。褐色のゼクゥドはすぐに上を向きネックスの存在を確認する。
ネックスはそのまま、褐色の機体にビームライフルを連射するが、2発防御され、1発回避された。
その結果から、それなりに腕の立つパイロットだとハルドは思った。ネックスは月面に降下し、褐色のゼクゥドと同じ目線に立つ。
褐色のゼクゥドは接近戦に特化しているのかビームアックスを片手に一本ずつ持っている。
「だったら相手をしてやるか」
ネックスもビームサーベルを左手に持つ。そして、褐色のゼクゥドに突っ込む。尋常ではないネックスの加速だったが、褐色のゼクゥドはかろうじて対応し、後ろに下がりながら斧を構える。だが
「その腕じゃ俺には勝てねぇよ」
ネックスが右腕のビームライフルを構え、撃つ。その一撃は、褐色のゼクゥドの頭部に直撃した。ハルドとしてはコックピットを狙ったつもりだったが、そこは褐色のゼクゥドも警戒していたということだろう。
直後、ネックスのビームサーベルが褐色のゼクゥドを襲うが一撃目は斧で防がれる。が、ハルドはそれも織り込み済みでサーベルの二撃目が走る。
それは、褐色のゼクゥドのパイロットの想定外の角度からの一撃だったらしく、一太刀で褐色のゼクゥドは両腕の肘から下を切り落とされる。
「冗談じゃない。こんな化け物とやれるか!」
褐色のゼクゥドのパイロット、ドロテス・エコーも操縦には自信があったが、目の前の敵には勝てる気がしなかった。なので、迷わず撤退を選んだ。
褐色のゼクゥドはネックスとその後ろで及び腰になっているブレイズガンダムに背を向け撤退するのだった。
ハルドは別に逃げる敵を追ってまで始末するような趣味を持っていない。それよりも問題は、このガンダムだ。ハルドは通信で呼びかけた。
「おい、そこのガンダム。パイロットは何者だ?」
尋ねると、返って来たのはハルドが思いもしなかった人物である。
「セイン・リベルターです」
返って来た声を聞いても、ハルドには、ハ?という言葉しかなかった。

 

お互いの事情を説明しあった結果。ハルドはネックスの拳で、ブレイズガンダムを小突いた。ブレイズガンダムにはバリアがあるため、無効化されたが。
ネックスとブレイズガンダムの二機は輸送艦の上に張り付いていた。輸送艦の中は人やらマクバレルが持ち込んだもので溢れかえっており、MSを二機入れるスペースがなかったからだ。
「お前はアレだな、まず物事をよく考えてから行動するってことを覚えよう」
ハルドは通信でセインにそう言った。セインにも言い分はあったが、
「あれが、考えた結果なんです」
と言い返した。すると。
「だったら、脳味噌の出来そのものに問題があるな。頭がよくなるような努力をしろ」
とハルドは言うと、真面目な声で続ける。

 
 

「俺がいなきゃ、死んでたってことを忘れんなよ」
褐色のゼクゥドとの戦闘を言っているのだ。確かにあれはハルドがいなければ死んでいたとセインは思う。
「気をつけます」
セインとしては、それしか言うことがなかった。その直後であるハルド以外から通信が入る。マクバレル教授という人物からだった。
「キミ、どうやって、その機体を動かした!?」
マクバレル教授は興奮した様子だった。
「普通に乗ったら、動いたんですけど」
セインは、自分が理解している限りを言ったつもりだったがマクバレルは納得しなかった。
「普通!?普通とはなんだ!?抽象的な言葉を使うんじゃない!もっと正確にだな、キミが乗った時のことを事細かに余すところなく――がっ!」
苦悶の声が聞こえ、マクバレルからの通信は途絶えた。次に通信にを入れたのレビーという女の人だった。
「教授がうるさくて、ごめんなさいね。その機体、あなたがブレイズガンダムと名付けた機体は誰が乗っても動かなかった機体なの。だから、少し落ち着いたらキミも含めて少し調べさせてほしいんだけどいいかな」
セインとしては、良く分からないので、
「はぁ、まぁ良いですけど」
と答えるしかなかった。
「じゃ、後でまた」
というと通信はそこで途絶えた。セインはコックピットの中からぼんやりと宇宙を見ていた。
すると輸送艦の中から脱出艇らしきものが出ていった。セインにはなぜだか良く分からなかった。
「地球連合の奴らだよ、捕虜になってた。救難信号を出して、地球連合に拾ってもらうんだ」
なるほどとハルドが思うと、脱出艇がもう一機出てきた。
「今度はコロニーを占領されて収容所送りになったけど、他のコロニーに身寄りがある奴ら」
そういう人たちもいるのかと単純にセインは思った。
「そして、いまもこの輸送艦に残ってるのは俺たちも含めて他に行くところが無い奴ら」
ハルドはおどけた調子で言うが、セインはなんとも寂しい気がした。しかし、この艦の行く先はクランマイヤー王国なのだ。そう思うとセインの気持ちも少しは軽くなった。今ではクランマイヤー王国はセインの第二の故郷となっていたのだった。

 
 

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