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GUNDAM EXSEED_EB_14

Last-modified: 2016-01-12 (火) 20:45:02

C.E.2XX――エルヴィオ・マルキー二は、執筆も一段落したので、休憩がてら、昼食にでもしようと思い、家を出るのだった。向かう店は家の近くのダイナーであり、エルヴィオの行きつけの店であった。
こじんまりとした落ち着いた店構えの店内に、エルヴィオは入ると勝手にカウンターのいつもの席に座る。
「オムレツにミニサラダとコーンスープ、ついでにコーヒーを」
エルヴィオは朝食のようなメニューを頼み、店主は何も言わず、コーヒーを出してから調理を始める。話さなくて済むのは面倒がなくていいと思い、エルヴィオはコーヒーを飲みながら、料理が出来るまでをノンビリと待つ。
とは言っても、ただ待っているということも出来ず、店内に備え付けられていたテレビをボンヤリと眺める。ちょうど番組は昼のワイドショーであった。
「――ついに、我が国もオーブの攻略に成功し、地球全土への攻略の足場を築き始めたわけですが、これからの展開については、どうなるんでしょうか?」
テレビの中では番組の司会がコメンテーターに今後の展開について質問していた。コメンテーターは軍事評論家という肩書きの人間であった。
「今後の展開ですが、もしかしたら、停戦もあり得るかもしれません。地球は現在、地球連合とクライン公国残党による共同戦線がはられているので、オーブだけを足場に突破は難しいでしょうから、ここは一旦引くこともありえますね」
ずいぶんと考えが甘いとエルヴィオは思うのだった。停戦などを考えるような連中は、軍にはいない。軍部のジュール家もエルスマン家も好戦的であるし、政治の方ではカナーバの家の人間は変わらずしたたかであり、なにより、今のクランマイヤーは果断で優秀な若者だ。
少しでも国家全体の利益になると踏めば、一気呵成に攻勢に出るよう命令を下すだろう。エルヴィオは間違いなく戦いは続くし、地球全土を支配下にするまで戦いは続くだろうと思うのだった。
ろくでもないことだとエルヴィオは思う。何十年も戦い続けてきて、未だに誰も飽きはしない。そんな国を作ったのはリヒトと自分であること理解しながらもエルヴィオには、後悔はなかった。
そもそも、どうしようもなかったのだ。あの当時は人々をまとめるために、外に敵を造り、人々を団結させ、そして人々を貧しさから救うために、豊かな者たちから奪うしかなかった。方針を変えるタイミングはいくつかあったが、結局はズルズルと戦い続けることとなった。
理由は……バカバカしくて思い出すのも嫌になる。エルヴィオはそこで思い出すのをやめ、ちょうどよく食事が、目の前に置かれたので、出てきた食事に手をつけることにした。
オムレツをナイフで切って口に運んでいる間も、テレビは変わらず地球への侵攻作戦の動向についてコメンテーターが適当に話している。
「――このように、ケビン・ジェイド元帥が健在である以上は、攻略は難しいでしょうね」
不意に、懐かしい名前が聞こえ、エルヴィオはテレビの方に目をやるが、ケビン・ジェイドの話しはそれで終わりだったようで、話題は別に移っていた。
ケビンはまだ現役か。アイツも年寄りのくせによくやる。
エルヴィオは、自分より一つか二つ年上だった男のことを思いだす。ケビン・ジェイド――若い頃は仲間だったが、結局は考え方の違いでリヒトや自分と決別したうちの一人だ。
もう80歳も近いだろうに、元帥などやっているというのは、地球側は相当に人材不足なのかもしれんな。そんなことを考えながら、エルヴィオは急に思いつく。アイツのことも一応、細かく書いておくかと。
決別はしたが、今でもケビンのことは友だとエルヴィオは思っている。向こうはどうだかしらないが、一応、友である以上は、何かしら奴の足跡を残してやってもいいだろうと思い、エルヴィオは、ケビン・ジェイドについても書くことに決めたのだった。
とは言っても、今すぐにではない。ケビンについて書く前に、昼食を済ませなければな。エルヴィオはそう思い、フォークでサラダを突っつくのだった。

 
 

C.E.168――間違った。それも途轍もなく大きな間違いだ。ケビン・ジェイドは行軍中、そんな考えが頭をずっとめぐっていた。金髪碧眼で爽やかな顔立ちと言われる、その顔も不眠不休の行軍によって、げっそりとし全く生気を感じさせないものになっていた。
それでも、ケビンはリーダーという立場から、自分のことばかり気にしているわけにもいかず、後ろを何度も振り返り、全員が無事についてきているかの確認を怠らなかった。
後ろをついてくるのは皆、ケビンと同じ年頃の少年少女だった。それも当然である。なぜなら、ケビンも含め行軍中の全員がクライン公国士官学校の候補生だからだ。
そう、ケビン・ジェイドはれっきとしたクライン公国士官学校の士官候補生である。そんなケビンが何故、不眠不休の行軍をするはめになっているのかというと。その理由を説明するには、三ヵ月ほど時間をさかのぼることになる。

 

ケビン・ジェイドは期待に胸を高鳴らせながら、地球への大気圏突入のシャトルの中にいた。周りにいるのは皆、士官学校の同期の候補生達である。同期生たちも、皆それぞれに表し方は違っていたが、期待に満ちている。
「地球ってどんな所だろうな?」
「別にコロニーと変わりはしないだろ」
「特別訓練ってなにするのかな」
「わかんないけど、修学旅行みたいな感じだと思っていいんじゃないかな」
「重力に慣れる訓練程度だろ。志願してない候補生は普通に学校でいつも通りのことやるらしいし、俺達だけが、そんなに特別なことやるわけねーよ」
ケビンは周囲から聞こえてくる雑談を耳にしながら、ボンヤリとしていた。少し気になったことがあったからだ。
ケビンたちは、今回、士官学校の教官から案内された特別訓練に志願したわけだが、その定員は30名限定で志願制。と言っても志願したものの中から士官学校での成績の良い順に30人が選ばれるというものだった。
ケビンの士官学校での成績は3位であり、選ばれるのは分かりきっていたが、1位と2位の二人の姿が見えない上、他にも30番内に入っているのに姿が見えない。それも全員が貴族出身の候補生だ。
だが、気にすることはないかもしれないとケビンは考える。訓練の内容次第では貴族の生徒を出し抜ける。平民出身の自分には、願ってもないチャンスだとケビンは思うことにした。

 

現在のクライン公国は貴族政となっている。
十数年前に国の体勢が変わったからだ。クライン公国がプラントと呼ばれていたころから、十数年前になるまで、議員やその他の国家の要職に就く家系に対して、公王の名のもとに貴族としての身分と爵位、そして有力な家系には領地として、コロニーを与えた。
しかし、貴族という身分が生まれても、公国が変わることはなかった。昔のクライン公国は公王による独裁と圧政が行われていたが、今は少数の貴族が、貴族ではない平民を虐げるような政治に変わっている。
結局のところは少数の人間が、良い思いするために作られたものだとケビンは理解していた。そのことに嫌悪を覚えるが、嫌っても自分はクライン公国の人間であり、その社会に適応して生きていくことしかできないという諦めに似た思いがあった。
だが、それでも少しでも良い生活や待遇を受けたいと気持ちはある。平民が貴族と同じような生活を手に入れる。そのためには、軍人となるのが一番楽だとケビンは思い、士官学校を受験し、合格、好成績を修め、この場にいる。
ケビンにとって士官学校は這いあがるための手段の一つに過ぎない。
士官学校での生活は、平民であるにもかかわらず貴族の候補生よりも良い成績を修めていることで、なにかと難癖をつけられるなどして良い思い出は全く無かったが、もうすぐ、それも終わる。
ケビンはこの特別訓練の成績も、全体の成績の内に入るだろうと思っていた。この特別訓練で良い成績をとって、主席と次席の二人を追い抜く。二人は貴族であり、ケビンに度々、嫌がらせをしてきた。
幸い奴らは、ここにはいない。出し抜くには最高のチャンスだ。そして自分が主席卒業の果たし、貴族の奴らを見返してやるのだ。そんな風に考えるとケビンは、訓練への期待が抑えることができず、口元に薄っすらと笑みを浮かべていた。そんな時である。

 
 

「大丈夫ですか?」
ケビンは声をかけられハッとして普段の爽やかと言われる顔に戻り、隣の席に座り、自分に声をかけてきた、ジェシカ・エイプリルの方に顔を向けて、逆に尋ねる。
「何が?」
ジェシカはブロンドの髪を肩の下まで伸ばした、おっとりとした感じの少女だった。穏やかで誰に対しても優しい、士官学校が極めて不似合いな少女だった。
ジェシカは心配そうな顔でケビンを見ながら口を開く。
「何か思いつめてません?」
「別にそんなことはないよ。ただ、訓練が早く始まらないかと思って、落ち着かないだけだよ」
そう言うと、ジェシカは心配そうな顔のまま言う。
「なら、良いんです。ですけど、何かあったら言ってくださいね。出来る限り力になりますから」
ジェシカはそう言って、姿勢を戻して前を向く。いつも気にかけてくれて、ありがたいとケビンは思う。
そして、もしかしたらジェシカは自分のことが好きなのではないかと、ケビンは常々考えていた。いつか告白しよう。ケビンはそう思い、とりあえずシャトルが目的地に到着するまで身体を休めることにした。

 

ほどなくして、シャトルは着陸する。それは、北アフリカのクライン公国支配地域内にある軍事施設であり、正確にはプロメテウスPMCという民間軍事会社が管理している施設であった。ケビンら候補生にはそのくらいの情報しか与えられていなかった。
ケビンたち候補生がシャトルから降りると、シャトルは候補生を置き去りにするように動き出し、飛び立っていった。
まいったな、ここからどうするんだ?ケビンは基地のようにも見える軍事施設に置き去りにされ、どうしていいのか判断に困る。基地の外を見回しても荒野であり、周囲には人のいそうな気配はなかった。
そんな風にしてケビンら士官候補生達が、途方にくれていると、ゆっくりとした足取り、ケビンら士官候補生に近づく人影があった。
「やぁ、こんにちは」
声をかけられ、ケビンら士官候補生達は、その人物の方を向く。そこにはカーキ色の戦闘服を着た男性が立っていた。極めて整った容姿を持つ男性であり、二十代以上ではあるだろうが、年齢に関しては予測がつかなかった。
ケビンはその男性が、訓練教官だと理解し、男性の発言を待つ。すると男性はすぐに尋ねた。
「この中で学校の成績が一番良いのは?」
そう言われて、ケビンはすぐに手を上げ、発言する。
「自分です!」
そう言うと、男性はケビンに近づき、握手の手を差し出す。それに応じて、ケビンも手を出し、握手する。
「よろしく、ハルド・グレンだ。クライン公国軍から依頼されて、キミ達の訓練教官代表を務める。所属はプロメテウスPMCだ。今はお互い気楽にいこう」
「こちらこそ、よろしくお願いします。ケビン・ジェイドです」
互いに挨拶すると、グレンという名の教官は、握手の手を離し、候補生全員に対して言う。
「取り敢えず現状はジェイド候補生がキミ達のリーダーだ。彼を中心に上手くまとまってくれ。宿舎はそこの四角い建物だ。とりあえず、宿舎に入ったら訓練開始だ。健闘を祈る」
そう言って、グレン教官が去って行くと、候補生たちは一斉に話し始める。
「すっごいイケメン。どうしよう」
「あんなカッコいい人、見たことないよ。ちょっと話しかけてみない?」
これは女子の士官候補生の言葉である。
「そりゃ顔は良いけど、民間軍事会社だろ」
「つまりは傭兵でろくでなしだ。そんな奴が俺らに何を教えるんだ?こっちは士官学校できちんと訓練を積んでんだぞ」
これが男子の士官候補生の言葉である。
ケビンはとりあえず、この場で話していても仕方ないので、候補生に指示を出す。
「とりあえず、ここで話していても仕方ない。宿舎に入ろう」
そうケビンが提案すると。どこからか小さな声が聞こえる。
「成績いいだけで、いきなりリーダー気取りかよ」
ケビンは聞こえてきた言葉を無視して、候補生の全員に宿舎へ向かうように促した。
自分があまり好かれていないことをケビンは知っている。それが勉強などに手一杯で候補生との関係をつくることをしてこなかったせいだということも。実際、候補生の殆どがケビンを好きではないが嫌いでもないという微妙な感覚であった。
反感を買うのも当然かもしれないと理解しながら、ケビンはリーダーとして指名された以上、やるべきことはやる。その思いで、候補生の全員に急いで宿舎内に入ることをうながした。

 
 

そうして、全員を宿舎内に入れ、最後にケビンが入ると。ケビンは宿舎内を見回して何とも言えない気持ちになった。なぜなら、宿舎と言ってもそこは倉庫に安物の二段ベッドを二列に並べただけのものであった。
ここで寝るのか?ケビンがそんなことを考えていると、候補生の女子が大声でケビンに対して呼びかける。
「女子と男子で部屋が分かれてないんだけど!」
「シャワーとトイレも男用しかないみたいだけど、女子は違う宿舎なのかな?」
ケビンは女子のその声を聞いて、どういうことだと確かめに行く前に、とりあえず荷物を置く。ベッドを迷うことが無かったのは、丁寧にベッドが成績順に並んでいるためであった。
「とりあえず、みんな、自分の士官学校の成績の順番のベッドに荷物を置こう。問題があったら、その時に変えよう。とにかく、自分の居場所を決めるのが重要だ」
ケビンがそう言った直後だった、突然、宿舎のドアが開き、銃を持った兵士たちが一斉に宿舎になだれ込んできた。
「おら!何やってんだ、グダグダとやってんじゃない!」
兵士たちの後からやって来たのは、グレン教官だった。グレン教官には最初に会った時の穏やかな様子は全くなかった。
「何を見ている。ジェイド候補生?」
グレン教官はケビンに尋ねる。
「どういうことですか!?」
ケビンはそれしか言えなかった。対してグレン教官は特に何も思わずに答えを返す。
「言っただろ。宿舎に入ったら訓練開始だと」
ケビンはその言葉に強く反応する。
「こんな訓練だとは聞いていません!」
そうケビンが言った瞬間、グレン教官はケビンの鳩尾に拳を叩き込む。ケビンはこれまでの人生で味わったことのない重い痛みに耐えられず、膝をつく。
「体罰は一回だけだ。もう二度としないから安心しろ」
そう言った後でグレン教官は言う。
「オマエが聞きたいことはいろいろあるんだろうが、それは無視する。聞いても仕方がないからだ。逆に俺の方が聞きたい。なぜ、この程度のことで慌てるのかと。
これはプロメテウスPMCが訓練に付き合うことになってから、毎回やっていることだ。情報を仕入れておけば、さして慌てることもないはずだ。だが、情報を仕入れていなかった。これは誰の怠慢だろうな?」
グレン教官がそう言った直後、候補生の一人が殴られ、倒れる。体罰は一回だけとさっき言ったはずなのに、とケビンはグレン教官を見る。
「俺は体罰をしないように努力するが、他の教官は俺ほど自制心はないかもしれんのでな。ああいうことにならないようにするのも、オマエの仕事だ。だがまぁ安心しろ、今後こちらが直接的な暴力を振るうことはないと思って良い。その辺りは常識をわきまえてるんでな」
どこが常識的なんだとケビンは思い、膝をついた姿勢で、グレン教官を睨みつける。
「お、どうした?睨むだけか、殴って来ないか?随分と臆病な奴だ。お前は軍人に向いてないな。良く分かる」
ケビンは挑発されているということが分かったが、挑発に乗ってもいけないことを理解していた。挑発に乗って教官を殴りでもしたら、自分の評価にも影響される。ケビンは好成績で訓練を通過すること目標としていたため、手を出すのはマズイと判断し耐えた。
「根性無しが。だが、まぁいい。お前のような根性無しのクソを、小便臭いガキ程度に鍛え上げるのが俺の仕事だ。覚悟しておけ、タマナシ野郎」
グレン教官はケビンにそう言ったあと、訓練生全員に呼びかける。
「とりあえず言っておく。俺はお前らを地獄に叩き落とすために仕事をしている。ここでは公国のぬるい士官学校のような考え方は通じないし、ルールも違う。ここでのルールはシンプルだ、俺の命令が絶対だということだけだ。それだけを頭にいれろ」
候補生は皆、怯えるような表情で、グレン教官を見ていた。それに対してグレン教官は言う。
「なぜ、こちらを見る?俺を見ていいなどとは一言も言ってない!全員、気をつけ!そこ、頭をこっちに向けるんじゃない、気をつけも満足にできないのか!能無しどもが!全員、その場で腕立て伏せ、俺がいいというまで、続けろ」
グレン教官がそう言うと、候補生全員が腕立て伏せを始める。
「もっと、キビキビ動け!全員、気をつけ!だらしない動きをするな、素早く動け!」
グレン教官は、腕立て伏せを始めようとした候補生全員を立たせる。
「腕立て伏せとはこうするんだ」
そう言って、グレン教官は気をつけの姿勢から素早く、腕立て伏せの体勢に移り、正しい姿勢で数回行うと、立ち上がり、候補生に指示を出す。

 
 

「腕立て伏せ開始!」
そう言われて、候補生全員は、素早く腕立て伏せの姿勢に移り、腕立て伏せを始める。
「バラバラにやるんじゃない!全員、タイミングを合わせろ!タマナシ野郎、貴様が声を出して合わせろ!」
ケビンは自分のことかと理解し声を出し始める。その瞬間に、グレン教官の怒声が飛ぶ。
「なぜ、勝手に声を出し始める!?了解と言え!確認は何よりも重要なことだ!理解しろタマナシ野郎!」
ケビンはミスをしたと思い、慌てて返事をする。
「了解です!教官!」
「よし、タマナシ野郎、声出しはじめ!」
ケビンはそう言われて、声を出して腕立て伏せを始める。それに合わせて候補生全員が腕立て伏せを始める。
「よし、俺がいいと言うまで、続けろ」
そう言ってグレン教官は候補生の宿舎から退室したのだった。

 

グレン教官は候補生の宿舎を出ると、大きなため息をついて、ハルド・グレンに戻る。
「お疲れ様です。グレン教官」
同じく、宿舎から出てきた訓練教官の一人がハルドに対して労いの言葉をかける。2mの巨躯を持った、黒人男性であり、顔には大きな傷がある。男性の名はボブ・ヴィッチャーという。
「やめろ、ヴィッチ。教官と呼ぶのはガキどもの前だけにしろ」
ハルドはウンザリとした様子で、ヴィッチャーを連れて、教官の控室に戻る。教官の控室に入ると、待機していた教官がハルドを見て、お疲れ様ですと声をかける。
ハルドは自分のデスクに座ると、とりあえず候補生へのプログラムの予定を見る。既に何年か士官候補生の訓練プログラムをクライン公国軍から依頼されて行っているが、毎年、予定通りに行かないプログラムだ。実際、今年も予定を変えざるをえなくなった。
ハルドは教官全員に伝える。
「予定変更。とりあえず初週は徹底的に体力を消耗させる」
「理由はなんです?」
眼鏡をかけた理知的な顔立ちの若い男性教官トニー・ジョンがハルドに尋ねる。トニーはクライン公国出身であり、クライン公国軍の最精鋭MS部隊、ガルム機兵隊に所属していた経験があり、今回の訓練ではMS操縦の訓練担当である。
「例年のことだが、やっぱりぬるい。とりあえず甘い考えを無くさせるのと、ここのルールを体で覚えさせるためにだ」
分かりましたとトニーは言う。するとヴィッチャーが嘆かわしいような大袈裟な身振りで喋り出す。
「全く去年よりも酷い、あんなレベルで、どうなることやら」
ヴィッチャーは歩兵技術の訓練の担当であり、本人は地球連合軍の歩兵部隊に所属していた経験があり、歩兵一筋の男であった。年齢はハルドよりも上だが、プロメテウスPMCではハルドが上司にあたるため、ハルドには敬語で接していた。
「レベルは去年と変わらんよ。ぬるま湯で育ってきたってのも同じ。客観的に見りゃあ、毎年、候補生のレベルにそんなに変わりはない。酷く見えるのは錯覚だ」
ハルドは切って捨てるように言うと、トニーの方を見て、付け加える。
「ただまぁ、士官学校に入って相当経つのに、基本的な軍人らしさが身についてないのは問題あるがな」
自分もクライン公国の士官学校出身のトニーは肩を竦めて答える。
「公国がザフトだった時から緩いですから、もう慣習のようなものですよ。私の卒業時は敬語がキチンと身についていないのだって何人かはいましたからね。
まぁ、それでも何とかなってしまう。そんな土壌がクライン公国にあるのは事実で、なにせ旧ザフト時代には階級すらありませんでしたから」
「それでも、軍隊として機能していたんだから、凄い時代だったわね」
そう言ったのは、トニーの前に座る健康的に日焼けした肌の女性教官ヨアンナ・ブレシコフだった。ヨアンナは地球連合軍の特殊部隊であるMSデルタに所属していたという経歴を持ち、今回の訓練では歩兵技術とMS操縦の二つの訓練を担当する。
さらに女性であるので、女性の士官候補生の面倒を見るのも彼女の担当であった。
「とは言っても、結局、階級があった方が面倒がなくていいということで階級が出来て今に至るわけですが」
トニーはそう言って話しを締めくくった。
「だったら、学校でもう少し厳しく教えてやってほしいもんだ」
ヴィッチャーが愚痴るような調子でトニーに言うが、トニーは自分に言われてもと苦笑いを浮かべながら肩を竦める。
ハルドは適当に同僚の話しを聞きながら、今後の訓練のプログラムを頭の中で練っていた。クライン公国軍から要求されているのは、すぐに実戦に出しても大丈夫な程度に鍛えられた士官を要請することだ。
そんなのはそっちで勝手にやれ。とハルドは思うが、クライン公国には、トニーも言ったが、ザフトを元としているクライン公国軍は無意識に軍隊らしい縦社会を嫌うような風潮がどこかにある。

 
 

実戦に出せるようなレベルの兵士をすぐに育成するには、どうしても厳しい方法を取らざるを得ず、そういうような土壌もクライン公国軍には基本的にはないし、現在のクライン公国の士官学校は貴族制度が出来たことにより仲良しグループのようにもなっている。
士官学校で厳しい訓練などをすると、候補生を子に持つ貴族のお偉方の反感を買うので、厳しくもできないというのが現状である。
それでも即戦力になる士官が欲しいので、クライン公国軍は士官学校とプロメテウスPMCに頭を下げて、特別訓練を実施させているのである。
基本的に貴族の候補生は来ない。士官学校の方で、そんな風に手を回している。ついでに、この時点で卒業までの成績は決まっているので、この特別訓練に参加したところで、成績は上がらないという。
成績を上げるために、この訓練に参加している奴にはご愁傷様としか言いようがないとハルドは思いながら、デスクを立つ。
「そろそろ良いだろう。ヴィッチャー教官、プレシコフ教官、行くぞ」
ハルドはそう言って、グレン教官になる準備をすると、再び役立たず共の寝床へと向かうのだった。

 

ケビンは延々と声を出しながら、腕立て伏せをしていた。既に周囲から声は聞こえなくなっている。おそらく腕立て伏せをやめている者も多いだろう。だが、ケビンはそれを確認しようとは思わない。
確認したら自分の気持ちも折れそうだったからだ。やめるのは仕方がない。コーディネーターとて筋力や持久力は鍛えなければ身につかない。肉体の基礎スペックはナチュラルより上だが、それでも鍛えなければ限界はある。
ケビン自身もそろそろ限界だった。声が出なくなり、身体を支える腕が震えだし始める。もう駄目だ。そうケビンが思った時である。
宿舎の入り口のドアが開き、グレン教官が二人の教官を伴い宿舎に入ってくるなり、言う。
「やめていいぞ」
その言葉を聞いた瞬間、ケビンは崩れ落ちるように宿舎の床に突っ伏した。
「全員、起立、気をつけ!」
グレン教官の言葉を聞き、ケビンはよろよろと立ちあがり、直立不動の姿勢を取る。グレン教官は候補生全員を見渡しながら、歩きはじめると、何も言わず一通り候補生を見ると、最初の位置に戻り、言うのだった。
「根性無しがどいつか、だいたい分かった。誰かは言わん。本人が一番分かっているだろうからな。だが、安心しろ、この訓練が終わるころには嫌でも根性が身についているだろう。お前たちに紹介する。ヴィッチャー教官とプレシコフ教官だ。
お前たちが根性のある兵隊になれるように手伝ってくれるありがたい教官殿だ。敬意を持て」
グレン教官はそう言って巨漢の男性教官と日焼けした女性教官を紹介した。そして二人の教官が挨拶をする。ケビンは正直、体力的に限界に近かったので、早く休ませて欲しいと思うだけだった。だが、グレン教官はそこまで優しくなかった。
「挨拶は済んだ。全員、着替えて宿舎の外に集合。五分以内だ。着替えはベッドの下にある」
ケビンはその言葉を聞いた瞬間に倒れそうになったが、別の方向からの声で意識を取り戻す。
「更衣室はどこにあるんですか?」
それは女子の士官候補生の言葉だった。その言葉に対して答えを返したのはプレシコフ教官だった。
「なぜ、更衣室が必要だ?ここで着替えろ」
「ですが、男性に見られてしまいます」
その言葉を聞くとプレシコフ教官は、発言した女子の候補生の前に行き、強い口調で言う。
「貴様は自分が女だから特別扱いしてもらえるとでも思っているのか?甘く見るなよ。ここでは全員が平等だ。男も女もない。戦場でもそうだ、女だからと言って、銃弾は貴様を避けてくれたりはしない。完全な男女平等な世界だ」
そう言うと、プレシコフ教官は、女子の候補生を突き飛ばす。
「手を出すのは無しだ。プレシコフ教官。だが、まぁプレシコフ教官の言ったことは事実だ。ここでは男女の区別はない。それで嫌な思いをすることがあるのなら、自分たちで工夫しろ。候補生同士のルールに関して、こちらは関与しない」
そう言った後で、グレン教官は時計を見て言う。
「あと三分だ。準備をしろ」
そう言ってグレン教官を含め教官全員が退出する。ケビンは疲労が抜けきらないまま、自分のベッドらしき場所に向かうと、その下を探る。
すると、金属製の大きなケースが見つかり、それを引きずり出し、ふたを開けると、カーキ色の戦闘服が入っていた。それも丁寧に名札付きである。
ケビンはその戦闘服を急いで着る。ケースの中には腕時計も入っており、それで時間を確認する。おそらく間に合っていない。だが、それでも急ぐ必要がある。そう思い、ケースの中身を確認せず。慌てて外に出る。

 
 

「姓名と階級を報告しろ」
ヴィッチャー教官がケビンと女子の士官候補生に尋ねる。
「ケビン・ジェイド候補生であります」
「ライア・キュールズ候補生であります」
二人がそう言うと、ヴィッチャー教官は頷き、手元のメモに名前を書くと、時計を見た後に言う。
「よし、いいぞ。では走れ。グレン教官の後を追え」
ケビンとライアの二人は訳が分からないと思いながらも、グレン教官が走り出すのを見て、それに続いて走り出す。
速い。ケビンはそう思いながら、グレン教官の後を追う。グレン教官は全力疾走ではない。あくまで、マラソンのような持久走の走り方だったが、ケビンもライアも追いつけない。遠い背中を追うような形で二人は走った。
グレン教官の走るコースは単純で、ひたすらに訓練施設を回るというものであった。だが、グレン教官に追うのに精一杯の二人はそういうことを考えるに至るのは、二週目を終えた時だった。そして、コースが決まっていることを二人は理解した。
かなりキツイがいける、ケビンは三週目の途中で全力を出して、グレン教官の隣に並ぶ。
「若いんだからそうでなくちゃな」
グレン教官はそう言うと、同じペースで走り続ける。キツイ。とにかくキツイ。ケビンは走りながら、グレン教官を見て、ありえないと思った。グレン教官は息を乱さず、散歩程度に走っている。自分は必死にペースを合わせているというのに。
限界だ。ケビンはそう感じると、段々とグレン教官から離されていく。事前の腕立て伏せで体力が削られているとしても、これほど差があるとはケビンは思えなかった。
ケビンは必死にグレン教官に追いつこうと思ったが、無理だった。どうしても遠い背中に追いつけなかった。ケビンは何とか追いつこうと、脚を速めるが、そうした瞬間に脚がもつれ転びそうになる。
マズイ。そう思った時、ケビンを支える手が伸びた。それはライア・キュールズのものであり、その手に支えられ、ケビンは体勢を整え、再び走り出す。
「追いつくのは無理だから、ゆっくりペースを上げていこう」
ライアの言葉に対してケビンは頷くと、ライアのペースに合わせて走る。そうして何週かしている内に、ケビンは後から遅れてきた集団を目にする。
「周回遅れだぞ!」
グレン教官が、そう言っても、周回遅れの集団は急ぐ様子もなかった。彼らはプレシコフ教官に引き連れられ、ひたすらに走っているだけであった。
周回遅れの集団にはジェシカもいたが、ケビンはそこに注意を向けている余裕はなかった。ケビンの意識は、グレン教官についていく。それだけに集中していたからである。
「限界の奴は俺の所に来い!」
ヴィッチャー教官の声が聞こえてくるが、ケビンはまだ余裕があった。問題なく、このまま走り続ける。隣を走るライアも問題はなさそうに見えた。
そうして、走り続けている内に、何人かが脱落してヴィッチャー教官の後ろに並んでいるのを見るようになってきた。ケビンはまだ頑張れるだろうと思ったが、諦めるのは自分の勝手だと無視をしてグレン教官のペースに合わせて走る。
何度か、プレシコフ教官が先導する集団を追い抜かし、二時間近く走っただろうか、気づくと夕方に近くなっていた。そこでグレン教官は足を止め、ケビンとライアに対して振り向き、言う。
「終了だ」
グレン教官は少し大きく息を吐くと、呼吸の乱れは無くなっていた。ケビンはそれを見て、人間離れしているとしか思えなかった。ケビンもライアも息切れと疲労で限界に近いというのに、グレン教官は問題がなさそうだった。
「お前ら二人は俺の後ろに並んで休んでいていいぞ」
そうグレン教官に言われて、ケビンとライアはグレン教官の後ろに並び、一休みする。
やがて、プレシコフ教官が先導していた集団も到着し、プレシコフ教官の後ろに並ぶ。
結果としてはヴィッチャー教官の後ろには、候補生の約半数。プレシコフ教官の後ろに10人程度、そしてグレン教官の後ろにはケビンとライアしか並んでいなかった。
そんな中、グレン教官は候補生を指さし、列を変わるように指示を出す。その結果、プレシコフ教官の列からグレン教官の列に並ぶものも何人かおり、逆にヴィッチャー教官の列に移動させられるものもいた。

 
 

「この列移動の意味が分かるか?分かる奴は、黙ってろ。分からない奴は考えろ。質問は受け付けない」
グレン教官はそう言った後で、さらに指示を出す。
「全員、その場でスクワット。俺の列は200回、プレシコフ教官の列は300、ヴィッチャー教官の列は500回だ。それで今日は終わりにしてやる。根性を見せろ」
ケビンはそう言われ、冗談じゃないと思ったが、教官の命令なので仕方ないと思い、声を出してスクワットを開始する。グレン教官の列はケビンを中心に全員が声を出してスクワットを始める。
ノロノロと始めるのはプレシコフ教官の列とヴィッチャー教官の列だった。ケビンは他の列が遅れていても気にすることは出来なかった。なぜなら、自分のことをするのに精一杯だったからである。
そんな中、ケビンは後ろの方で人が倒れるような音が聞こえた。気になったが、振り向くような余裕はなかった。
グレン教官が、ケビンの前から移動し、音のした方に向かう。無理矢理やらされるんだろうかとケビンは思った、だがグレン教官の態度は違った。
「よし、よく頑張った。少し休め」
グレン教官はそう言って、再びケビンの前に立つ。その時、別の列で倒れるような音がした。その瞬間であるグレン教官が怒鳴り声を上げる。
「なに休んでる!続けろ!」
先ほどとは全く違う対応にケビンは僅かに面食らったが、体力の限界のせいか感受性が鈍っており、深く考えることはできなかった。グレン教官は早歩きで、倒れた候補生の所へ向かうと、無理矢理立ちあがらせ、スクワットを再開させる。
そして、ケビンの前に戻ると、全員に向かって言う。
「俺が求めてるのは全力を尽くすことだけだ!結果はどうでも良い!とにかく全力を尽くせ!全力を尽くしてない奴は見れば分かる!自分を極限まで追い込めるか、俺たちはそれを見てる!」
グレン教官はそう大声で候補生に伝えると、腕を組んで、候補生の様子を見るの。そこからは、スクワットの回数を数える声だけが響くのだった。そうしている内にケビンは200を数え終える。
終わると同時にケビンはグレン教官に設定された回数をこなしたことを報告する。
「よし、休め」
そう言われてケビンら200回の列は全員が一休みをする。ケビンとしては正直限界であった。このまま休みたい。とにかく一刻も早く身体を休めたかった。もう食事も何もかもどうでもよく、とにかくベッドに横になりたかった。
ケビンらが休憩している中でも、別の列では延々とスクワットが続いている。
「やるべきことを全力でやらないとああなるってことだ。少しは勉強になるだろ?」
グレン教官は自分の列に並ぶ候補生に対して言う。
「お前らはやるべきことを全力で取り組んだ。まぁ完璧ではないが、許容できる範囲だ。そうして正しいことをしているから、こんな風にゆっくりしていられる。明日も今日と同じ調子で頑張れ。では、お前らは今日の訓練は終了。食事を摂り、自由時間にしろ」
ケビンはその言葉を聞いて、いいのかとグレン教官を見る。グレン教官は面倒くさそうに手を振り、さっさと行けと手で示す。
ケビンとその他のグレン教官の列にいた候補生はグレン教官の言葉に従い、その場を後に食堂へと向かうのだった。
ケビンらは限界に近い状態で、よろよろと食堂に辿り着くと、一人がバタリと倒れる。ケビンはそれを放っておくことも出来ず、肩を抱いて起こすが、自分も限界だったせいでケビンも倒れそうになる。だが、すぐにライアが手を貸し支える。
「無理しすぎだって」
ライアが言うのも無理はない。グレン教官の列にいる全員が限界であった。グレン教官の列にいたのは最終的に、5人だった。ケビンとライアそして倒れた男子の候補生。
「二人はそいつを座らせとけよ。俺とコイツでお前らの分まで、食事をとってくるから」
そう言ったのは、別の男子の士官候補生が二人であった。一人は坊主頭で、もう一人は褐色の男子である。二人は食事を取りに行く。その間に、ケビンとライアは、倒れた男子の士官候補生を椅子に座らせる。
「ありがとう、二人とも。僕はベルトリオだ」
男子の士官候補生は名乗り、ぐったりと椅子にもたれかかる。聞こえているかは怪しいが、ケビンとライアも名乗る。
「ケビンだ」
「ライアだ」
そう言うと、ベルトリオは薄っすらと笑みを浮かべながら言う。
「知ってるよ。二人とも有名人だし」
そう言われてもケビンとライアは訳が分からず顔を見合わせるしかできなかった。そこへトレーに食事の皿を乗せた、男子の士官候補生二人がやってきて、全員の前に食事を並べる。

 
 

ケビンは食事を見て、何とも言えない気持ちになった。食事の皿には何肉かは分からないがシチューのような物と豆を煮た物、温野菜に、良く分からない粒上の物体に、赤みがかったソースのかかった料理があった。
「とりあえず、どれくらい食うかは分からなかったから、食堂の配膳の人に少し少なめに頼んだ。そんなに食えないだろ。みんな」
ケビンもライアも頷く。すると、坊主頭の士官候補生は、ケビンとライアに握手の手を伸ばす。
「リグだ。よろしく、ケビンにライア」
ケビンはそう言えば、こんな奴もいたなと思い、手を伸ばし握手する。続いて褐色の肌の候補生が握手を求める。
「俺は、シャルマだ。よろしく頼む」
ケビンは続けて握手をする。リグとシャルマの二人はライアにも握手を求め、ライアもそれに応じる。
そこで、ケビンはようやくおかしいことに気づいた。なぜ、この二人は自分の名前を知っているのかと。ケビンは不思議に思い尋ねる。
「聞きたいんだが、なんで俺の名前を知っているんだ?」
ケビンはこの二人に自己紹介をした覚えはなかった。それはライアも同じだったようで、ライアも尋ねる。
「悪いんだけど、私も二人に名乗った覚えはないんだ」
リグは別に気を悪くする様子もなく答える。
「そりゃ、二人が有名人だからだな。貴族と張り合って必死にトップを目指す二人。キミら二人は自分より成績の下の人間には興味ないかもしれないが、俺達、下の奴らは興味があった。それだけだよ。そんなことより、さっさと食おう」
リグが、そう言って五人は食事を始めるが、誰も話すことはなく黙々と料理を食べ、そして食べ終えると無言で宿舎に戻る。
五人は特に話すこともないので、宿舎に戻ってもわざわざ話すということはなかった。ただ、不思議なことにケビンは他の四人といて息苦しいということはなかった。ケビンは自分でも不思議に思っていたが、他の四人を仲間だと思っていた。
「シャワーを使う」
ライアが他に四人しかいない宿舎でそう言う。ケビンは、その頃には頭を働かせる余裕が生まれていたので、思い出す。そう言えば、男女のシャワーが一緒だということを。
「悪いが、俺も使いたい。早く寝たいんだ」
ケビンはそうライアに伝えると、ライアは特に気にすることもなく言うのだった。
「だったら使えば良いじゃないか」
ライアの方も気にしていないようなので、ケビンは着替えの下着を持ち、シャワー室へ向かう。シャワー自体はブースに分かれているので、やはり気にする必要も無いと思い、ブースに入りシャワーを浴びて体の汗を流す。
少しして、ベルトリオらもやって来たようで。シャワーを浴びる音がする。
「では先に」
ライアはそう言って、さっさとシャワー室から出ていく。
「ああ」
ケビンも特に気にしなかったが、ベルトリオは気になったようで、ケビンに話しかける。
「彼女は気にしてないのかな」
「何を気にするんだ?男女平等なんだし、気にする方がここでは変なんだろう?」
ケビンがそう言うと、男子の士官候補生三人は沈黙し、何ともいえない空気になるがケビンは気にせずにシャワーを終えたので、シャワー室から出る。
そして自分のベッドに向かうと、ベッドの中に潜り込んで眠ることにした。明日も訓練がある、今日の疲労を残しておくのは賢明ではないと判断したためだった。
ケビンは横になった瞬間に、一日の疲れが一気に襲い掛かり、泥のように眠るのだった。

 
 

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