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KtKs◆SEED―BIZARRE_第40話

Last-modified: 2010-09-28 (火) 15:15:33

 『PHASE 40:ラクス・クラインによろしく』

 
 

 月面で二つの勢力が戦闘を繰り広げていた。一つは連合軍の月面基地、ダイダロス基地を拠点とするロゴス。もう一つは反ロゴス同盟軍である。地球における『オペレーション・ラグナロク』の開始と同時に、同盟軍は、ダイダロス基地に攻め入った。
 反ロゴス同盟軍がダイダロス基地を叩くのには理由があった。基地に内蔵されている秘密兵器、軌道間全方位戦略砲『レクイエム』。
 巨大ビーム砲と、月の周辺に配置されたコロニーによって形成された戦略兵器。コロニーに取り付けられたビーム偏向装置によって、月面から発射されたビームを曲げることで、どこにでも狙いをつけられる。その威力は極めて大。
 過去の大戦で軍事基地一つを、一撃で消滅させた『ジェネシス』にも劣らぬ威力の超兵器である。もし使われれば、その脅威は悪夢的だ。
 それゆえに、まだレクイエムの作動準備が整えられていない今のうちに、完全に潰しておかねばならない。この作戦は、『オペレーション・ラグナロク』と呼応して、『オペレーション・ハティ』と名付けられた。
 ハティとはゲルマンの神話に登場する巨大な狼で、その名は『破壊者』を意味する。ハティは月を食べようと追いかけており、月はハティから逃げるために天を上り下りして動いているが、『ラグナロク(世界の終焉)』においては、ついに食べられてしまうという。
 月基地を破壊するという目的には、丁度よい名称といえよう。
 しかし当たり前のことだが、喰われる側も座して黙ってはいない。ロゴスの側にとっても、レクイエムは最強最大の切り札である。絶対に落とされるわけにはいかない。戦闘は、互いの全力を尽くしたこの上なく激しいものとなった。

 

 その中でも、最も激しく戦い、最も多くの戦果をあげていたMSがあった。
 黒を基調とした装甲をまとい、逆三角形の頭部には二本の角と二つの目をした、『ガンダム』と呼ばれるタイプのMSである。特徴的なのは右目で、左目よりも四倍近く大きく、円形をしている。この目は高出力ビーム砲になっており、一撃でMSも撃墜できる。
 両腕は人間では曲げられない方向にも曲げられるように設計されており、従来の動きに捕らわれぬ戦闘が可能。また腕には他にも三日月型ビームサーベル『リスキニハーデン』や、ロケットパンチまで仕込まれている。
 高い機動力を誇り、腹部にはビームガトリング砲も内蔵した、高性能のMSである。更に新規の改造により、背中からは激しい光が放出され、さながら翼のように見えた。機動力を上げる新型の推進システムによるものだ。

 

 機体の名は、GAT−1938『ファフニール』。ゲルマンの伝説に登場するドラゴンを由来とし、その名は『抱く者』を意味する。宝を抱き、守護するドラゴン像の原形となった存在である。
 そして、コズミックイラに蘇った魔龍を駆る戦士こそは、

 

「我がファフニールのォォ! 戦闘力はァァ! 世界一ィィィィィ!!」

 

 ルドル・フォン・シュトロハイム。現ブルーコスモス盟主。連合軍の英雄。鋼鉄の勇者。様々な肩書を持つ連合軍人であり、また『オペレーション・ハティ』の名付け親でもある。
 彼は過去の戦闘の結果、首から下がなくなっており、MSを普通に操縦するのではなく、機体と頭部を直接つなぎ、自分の体同様に考えた通りに動かせるようになっている。ゆえにその動きの良さは並みのパイロットとは比べ物にならない。
 ファフニールが腕を振るうたびに、ロゴス派のMSが爆発して散っていく。まさに一騎当千である。

 

「う〜〜む、やはりとんでもないですね、シュトロハイム閣下」
「いやまったく。サイボーグであることを差し引いても、人間とは思えませぬわ」
 反ロゴス同盟軍のオペレーションルームでは、ファフニールと、シュトロハイム自身の機械の体のメンテナンスを行っている科学者たちが、シュトロハイムの戦いぶりを見て唸っていた。感心半分、呆れ半分という感じだ。
 モニターには、デストロイを破壊するファフニールが映し出されている。そのパワーもスピードも、科学者たちが今まで見てきた以上のものだ。それは、この戦いの前に、彼らがファフニールに施した改造が上手くいった証でもある。

 

 本来、ファフニールは機動性を高めるために装甲を軽量化し、結果として防御力が通常と比べて薄い。しかし、現在のファフニールはある改造によってその欠点をクリアしていた。

 

 新たに搭載された機能『ヴォワチュール・リュミエール』。DSSD(深宇宙探査開発機構)の開発した推進システムである。
 DSSDは技術の軍事利用を一切拒否しているため、ファフニールに取り付けてあるのは、連合軍が公表された基礎技術を元に組み上げたものだ。これによって、多少の重量増加も問題にならない機動力を得た。
 今のファフニールは以前に比べて強い装甲を持ち、それでいてスピードは上がったというわけだ。もっとも、その力を初めてでここまで使いこなせるのは、シュトロハイムの技能と度胸のたまものであるが。

 

 シュトロハイムが今まで見た中で最も印象に残っているコーディネイター。それは軍人でも政治家でもない。科学者であった。
 シュトロハイムに『目的のためなら手段を選ばない』と評された女性、夢を叶えるためなら戦場に出ることも厭わぬ、強い意志を持った科学者、セレーネ・マクグリフ。
 彼女が遥か遠い星を夢見て開発を続ける、宇宙探査用MS『スターゲイザー』――『星を見る者』。SDDSはコーディネイターだけで構成された組織ではないが、スターゲイザーはシュトロハイムからしてみれば、まさにコーディネイターの象徴と思えた。

 

 コーディネイターは宇宙を、更に先を、更に遠くを目指す。それが悪いとは言わないが、好きではない。遠くばかりを見ていては、足元のことを忘れてしまう。
 星の世界に来てなお故郷たる地球を想い、護り、戦うこと。身を泥で濡らし、血塗られた現実を見据え、なお愛することこそが、シュトロハイムの目指すところだった。
 その想いゆえにシュトロハイムは、コーディネイターに対し挑戦するように言葉を放ち、その言葉から、このシステムはこう呼称された。

 

 ファフニール専用推進システム『シュラム・ベトラハター』。

 

 ドイツ語で、『泥を見る者』である。

 

「こんなものかロゴスよ!! かつては連合軍の陣営であったものがこの体たらく!! 所詮、志しの無い軍などこんなものかァァァ!!」
「勝手に突っ走るんじゃあない!! 死ぬ気か!!」
 ご機嫌に雄叫びをあげるシュトロハイムに、同じくらい大声で叫ぶのは、シュトロハイムの次ほどに多大な戦果をあげている男、イザーク・ジュールだった。
「これはあんたらだけの戦いじゃねえんだぜ? 連合軍だけで突っ走らないで、俺たちザフトの部隊とも連携をとってさぁ」
 イザークの次にやってきた、イザークの副官を務めるディアッカ・エルスマンがシュトロハイムをいさめるが、
「フン! 死ぬのが怖いのかァ、ザフト兵士!!」
 シュトロハイムは鼻で笑って挑発的な台詞を返した。
「な、なんだとォ!?」

 

「俺たち連合軍人はお前らザフトどもとは根性が違うのだ!! この『腰抜け』がッ!!」

 

「なっ………!!」
「祖国の、地球のためならばこの命の二つや三つ、簡単にくれてやるわぁぁぁぁ!!」
 そう言い捨てると、シュトロハイムは部下たちを率い、更に敵陣深く突進していった。その勢いたるや鎧袖一触。ロゴスのMS部隊は、時間稼ぎもできずに吹き飛ばされていった。
「あーあ、どうする? やっこさん、口で何言っても駄目なタイプよ?」
 ディアッカが肩をすくめる。彼自身はシュトロハイムという人間を嫌いではないが、付き合っていて疲れることは否めない。しかし、訊ねられたイザークは副官の問いに答えず、顔を伏せ、身を震わせていた。
「えーっと、イザークさん?」
 何か嫌な予感を覚えて冷や汗を流しつつ、ディアッカは上官に呼び掛けた。そして返ってきたのは、どこに向けて放たれたものでもない独り言だった。
「腰抜け………?」
「え?」
 伏せていた顔をあげたイザークの表情は怒りに歪み、顔色は真っ赤に染まっていた。

 

「こ、腰抜け、この俺に向かって、腰抜けだとぉ!?」

 

 その叫びにディアッカは頭を抱えた。同時に諦めた。もうこうなっては誰にもこの友人を止めることはできない。
「ジュール隊! 俺に続け!! シュトロハイム隊に後れをとるなぁ!!」
 純白のグフイグナイテッドが弾けるように動き出す。愚かにも襲いかかったロゴスのウィンダムが、ビームソードの一振りで爆散した。その成果を見ようともせず、イザークはシュトロハイムを追い、突っ走る。その背を見ながらため息をつき、
「ったく、やっぱこうなるのかよ。薄々わかっちゃいたけどねぇ!!」
 ディアッカもザクファントムを発進させる。イザークを追いかけながら、ディアッカは確信する。二頭の猛獣に襲いかかられるダイダロス基地の命運は、もはや長いことはないだろうと。

 
 

 さて、この戦闘においては、これ以上、特に語るものは無い。餌場に翼を得た龍が放たれた以上、後にあるのは、ただ当然の結果だけ。

 

 ダイダロス基地、陥落。レクイエム、完全破壊。その結果のみである。

 

   ――――――――――――――――――

 

『オペレーション・ラグナロク』、そして『オペレーション・ハティ』。二つの戦闘が同時期に行われていたことは世界中の人々に公表されていたが、もう一つ、血を血で洗う戦いが行われていた。多くの人が知ることのない、陰の戦いが。

 

『エンジェルダウン作戦』

 

 知る人からは、そう呼ばれる戦いが。

 

   ――――――――――――――――――

 

「見つけた」

 

 たった今入った報告を、砂漠をさまよう遭難者が、水を求めるような思いで待ち望んでいた男は、歓喜の声をもらした。
 場所は北極海。ボズゴロフ級大型潜水母艦『セントヘレンズ』に、哨戒させていた偵察用MS『ディン』から標的が現れたという連絡がきたのだ。

 

「とうとう見つけたぞ……!」

 

 アークエンジェル。大天使の名を持つ船は、大陸を通らず、海上を飛ぶルートを使って、臨戦態勢となった『ヘブンズベース』に迫っていた。あの船のことだ。このような世界の情勢を決定づける戦闘を、見過ごすはずがないと予想していた。
 そしてザフトや連合の基地に見つかる可能性が少ない、海上ルートを通ると踏み、重点的に監視していた。その甲斐はあった。

 

「待っていろ……! 今そっちに行く」

 

 深い怒りを込めて、男は呟く。
 彼らはザフトとオーブの混成部隊。目的は、ベルリン等の戦闘に介入し、ザフトに被害を与え、更にカガリ・ユラ・アスハの誘拐やオーブ政権に対するクーデターを行った、アークエンジェルの捕縛、さもなくば殲滅である。

 

「降参なんかするな。抵抗しろ。でなきゃ……殺せねえからよぉ………!!」

 

 男の名はイルーゾォ。人呼んで『鏡のイルーゾォ』。
 オーブから派遣された、特別戦闘員である。

 

   ――――――――――――――――――

 

「さて、と………もう長いことはないな」

 

 ヴェルサスは時計で時刻を確認し、ヘブンズベースまでの時間を計る。
(ようやく、ようやくだな………)
 ヘブンズベースのジブリールが握る、ヴェルサスが長い間、忍耐に忍耐を重ねて情報を待ち望んだもの。それを手に入れるために、自分からヘブンズベースの戦いに参戦することを提案し、受け入れられることに成功した。
 しかし本来、オーブでの傷が癒えぬ現状で戦うなど無謀に過ぎる。一応ターミナルの施設で整備したとはいえ、応急処置レベル。
 装備も大分削られているし、頼みのキラ・ヤマトは今までにも増して深く沈んでいる(アスランが生きているという情報を受け、いくらか持ちなおしはしたが)。
 ラクスへの忠義に狂って暴走しているルカたちは、今度こそ勝利すると意気込んでいるが、ちょっとでも冷静に見れば、まず勝ち目はない。両軍から集中砲火を受け、今度こそ終わりだ。だがヴェルサスだけは逃げ延びさせてもらう。
(アークエンジェルは沈むだろうが、最低でもキラ・ヤマトを連れて逃げれば、クライン派は俺を受け入れる。失敗の責任から、組織内での権限は奪われるかもしれんが……その時にはもう、誰も俺を止められなくなっているはずだ!)
 ヴェルサスは近い未来の計画を思い描きながら、傍らのトランクを右足のつま先でつつく。そのトランクの中には、彼に更なる力をもたらすはずのものがしまわれていた。前回で酷使したスタンド力が完全に回復した後、試すつもりでいる。
(例のブツさえ手に入れば、この組織からおさらばしてもいいが、まだ利用価値はある。俺の目的のための舞台をつくるためにな。それに)
 それに、やはりできることなら、もう少し気のきいたお別れにしたいものだとも思っていた。
(そう、今まで散々、この俺の胃を痛めてくれた借りを返せるような、そんな別れを思い知らせてやりたいものだ………!!)
 獲物を見据えた狐のように、ヴェルサスは笑う。どうするのが、一番すっきりできるか考えながら。しかし、その余裕の舌舐めずりがまだ早いものだったと知らせる通信が入った。

 

 すなわち、『5機のMSを前方に確認、4機はオーブのムラサメ、1機はガンダムタイプのMSである』という現状が。

 

   ――――――――――――――――――

 

 前回の敗戦の鬱憤を抱えた艦長ルカ・リビコッコは、愛用のスコップを床に叩きつけながら、即時殲滅の命令を下した。一応MSからは降伏を求める声明が発信されたが、それは当然のごとく無視された。
「ラクス様に逆らう不埒物ども、キラ様が出るまでもない!!」
 吠えるルカの指図により、アークエンジェルの進行が一時中断され、ミサイルが発射された。

 

 繰り出されるミサイルの群れを目にして、焦る者はいなかった。これくらいのことはしてくるとは予想されたことだったのだ。
『散開しろ! フォーメーション・イプシロンを持って、各自行動を始めろ!!』
 5機のMSに、セントヘレンズから命令が下される。それに従い、4機のムラサメはそれぞれ別方向へ移動し、機敏にミサイルをかわして攻撃に入る。しかし、鮮やかな赤に塗られたガンダムタイプのMSはその場から離れなかった。
 フォーメーション・イプシロンにおいては、ここが彼の持ち場であったからだ。
「この程度!!」
 遅れて動いたにも関わらず、先ほどのムラサメよりも余裕のある動作でミサイルを回避するガンダムタイプ。
 その名は『デスティニーインパルス』。装備を付け替えて、様々な戦局に対応するインパルスに対し、すべての装備を一度につけて、一機であらゆる状況でも対応できるようにしたものである。
 レーザー対艦刀、大口径ビーム砲、ビームブーメラン、ビームシールドといった数々の装備を施され、大きな翼のようなスラスターユニットを広げた強力な機体であるが、装備過多による負荷や、エネルギー効率の悪さといった欠点も多い、難しいMSだ。
 だからこそ、この男のような並み外れた腕のパイロットでなければ任せられない。

 

 ミサイルを撃った後、アークエンジェルはMSを出動させた。数は10機。敵1機に対し、2機ずつという体勢で攻めるつもりのようだ。機体はすべてムラサメである。オーブ内のクライン派が手をまわしたものだろう。
「ムラサメか。ナチュラルどものものにしてはいい機体ではあるが、それもパイロットが無能ならば無意味だ」
 パイロットの男は呟き、ビームサーベルを抜いた。彼に対する2機のムラサメが、ビームライフル『イカズチ』を向ける。ムラサメの動きからは、この間合いであればサーベルよりライフルの方が圧倒的に有利。狙い撃ちであるという余裕と緩みが感じとれた。
 しかし、男は一笑に付した。
「銃は剣よりも強し。そう思っているか?」
 デスティニーインパルスには、ムラサメを遥かに上回る威力と量を併せ持つ長距離用兵器を搭載しており、その気になればいつでも撃てた。しかし、彼はそれを使わなかった。
 ビーム兵器を乱用すると、すぐにエネルギーがきれるということもあるが、何より今の彼にとって、それは最強の選択とはならないからだ。
 男はただサーベルを振りかざし、
「それは間違いだな」
 2機のムラサメの間を滑り抜けるように、高速で突進した。ムラサメのライフルからはビームが放たれたが、それらはデスティニーインパルスの残像を過ぎるだけで、本体にはかすりもしなかった。
 そしてムラサメの横を通り過ぎる一瞬に、サーベルが閃き、ムラサメの胴を薙ぎ払った。一拍遅れて、2機のムラサメが爆発し、残骸が海へと落下していく。
 その劇的な速度、鋭敏な機動力、敵の動きに対する見切り、そして、そこから繰り出される剣撃からなる戦闘様式は、ナチュラルでありながらザフトの教官となった男の戦法と酷似していた。
 男は背後の爆発音を聞き流し、敵を討ちとったことに感慨を持つこともなく、本命たるアークエンジェルを真っ直ぐに睨んでいた。

 

「さあ………さっさと出てきたらどうだキラ・ヤマト! シン・アスカを圧倒し、ジャン・ピエール・ポルナレフを破ったその腕を見せろ!!」

 

 彼はこの大戦の最初の負傷者といってもよく、前半においては病院で横になっていた。己の無様さに歯ぎしりをたてていたものの、復帰後は目覚ましい活躍をし、今はこの最新機を任されることになった。
 本来アビスに乗るはずであった男。ナチュラルである師を嫌いながらも、その剣を学び、ついにその存在を認めたコーディネイター。

 

「この、マーレ・ストロードに!!」

 

 切れ味の鋭い美形が、刃を突き立てるように言い放った。

 

   ――――――――――――――――――

 

 気合いに満ちたマーレたちの戦闘をモニターで眺めながら、潜水母艦『セントヘレンズ』においても、準備が進められていた。
「さぁて、第1段階が過ぎた。それじゃあ始めるとするか。覚悟はいいか?」
 オーブから派遣されたイルーゾォたち、特別戦闘員のお目付け役であり、今回の作戦――オーブとプラントの相互協力作戦『エンジェルダウン作戦』の指揮官でもあるスピードワゴンが確認をとった。
「フン、今さらグズグズ言ってんじゃねえ。さっさとやりな」
 イルーゾォの急かす声があがる。
「もっと落ち着きなイルーゾォ。しょぉがね〜なぁ」
 そんなイルーゾォを宥めるのは、もう一人の特別戦闘員であるホルマジオである。見た目はこわもてであるとはいえ派手な方ではないが、意外と知性派で、精神的にもタフな男だ。
「かなり危険な仕事なんだぜ? 何せ、戦闘中の敵艦に忍び寄って、潜入するってんだからよぉ」
 スピードワゴンはこの任務の危険性を確認する。
 彼らの任務は、アークエンジェルへの潜入、人質の解放、艦の制圧である。オーブで捕らえたクライン派の証言によると、アークエンジェル内にはマリューたちが捕らわれているらしい。
 艦から下ろさずに閉じ込めているのは、アークエンジェルのことを最もよく知る人間を非常時のために確保しておくという理由、また、カガリたちに対する人質という意味があるのだろう。
 ザフトとしては、マリューたちもまたテロリストであり、ただ仲間割れを勝手に起こしているだけと見ているが、この作戦の指揮権及び責任は、アークエンジェルの被害を直接被ったオーブにあることになっているので、あえて異は唱えていない。
「聞いた話じゃ、あのむかつくブチャラティのチームも、こっちで同じような真似して成功させたそうじゃないか。奴らにできて、俺らにできねえなんてことはねえ」
 自信と対抗心を胸に、イルーゾォはさっさとやれと促した。
「OK。準備がいいなら始めよう。重ちー」
「了解なんだど」
 少年が親指を立てる。彼のスタンド、ハーヴェストがわらわらと動き出した。
「ではエンジェルダウン作戦………第2段階、開始だ。早くしねぇと、あいつらアークエンジェルをそのまま落としちまうぜ」

 

 モニターには鮮やかな動きで、巨大な戦艦を翻弄する5機のMSの雄姿が見て取れた。同じムラサメ同士の戦いであったが、力の違いは歴然としていた。4機のムラサメが8機のムラサメを翻弄している。撃墜も時間の問題だろう。
 その中の4機のムラサメのパイロットのことを、スピードワゴンはよく知っている。誰もが、この前のアークエンジェル来襲においてもよく戦った男たちだ。

 

『こないだよりもヌルいじゃねえかよ』
『ああ。このまま俺たちだけでも潰せそうだな』
『………それは作戦と違う』
『そうだ。調子に乗ると痛い目を見ることくらい、理解できるだろう』

 

 ワイド、ファンフェルト、サース、ホースキン。かつてSPW(スピードワゴン)隊のメンバーとして戦った、オーブ下級氏族の実力者たち。彼らもまた、故郷を襲った大天使を討ち果たすべく、空を駆けていた。

 

「じゃ、あいつらのこと頼んだぜ」
「別に義理があるわけじゃないが、契約くらい守るさ。言うことはちゃんと聞いてやる」
 ホルマジオはスピードワゴンの言葉に頷いてやった。
 スピードワゴンは指示を出す身として、この艦に残らねばならない。そもそもアークエンジェルにいるとされるスタンド使いを相手にするに、スピードワゴンでは力不足だ。
 アークエンジェルに潜入するのは三人だ。イルーゾォ、ホルマジオ、そしてもう一人。このもう一人は、重ちーではない。重ちーには別の役割がある。

 

「じゃあいくど。『ハーヴェスト』!!」

 

 重ちーのスタンド。消しゴムほどの大きさの虫のようなスタンド、ハーヴェスト。その能力は『物を探し、運び集めること』。群体型のスタンドで、その数は500体ほどもある。町中に散らばれるほど射程距離も長く、それほど速くはないが空も飛べる。
 そして今回運ぶものは、

 

「優しく運んでくれよなぁ」
「しょーがねぇけどよぉ、なんかこの格好って間抜けだよなぁ」
「………」
 5センチほどにまで『小さく』なった、3人の成人男性であった。

 

 ホルマジオのスタンド能力『リトル・フィート』。人差し指がナイフのように尖ったロボットのようなスタンドである。この指によって斬られたものは、10分程度でゴキブリほどのサイズまで小さく縮んでしまう。自分自身を縮めることも可能だ。
 これによって小さくした3人を、ハーヴェストに運ばせてアークエンジェルまで連れていくという寸法である。

 

 ハーヴェストは3人を腹についたポケットに入れ、アークエンジェルに向けて飛び立っていった。

 

   ――――――――――――――――――

 

 マーレはアークエンジェルの周囲を飛び回り、時折、銃撃を浴びせて、自分に敵の注意を引き付けていた。
「つまらんな。臆したかキラ・ヤマト………!」
 自分が囮であることも忘れがちになるほど、マーレは彼自身が認識していない敵愾心を、キラ・ヤマトを含めたクライン派に対して抱いていた。
 自分が超えるべき壁であり、認めがたいものなれど、感謝と敬意を抱いていたポルナレフの片腕を奪った者たちに対して、今にも作戦も何もなくアークエンジェルを沈めてしまいたいほどの怒りを、心の深い部分で燃やしているのだ。
 それでも軍人として勝手な行動もできず、その内なる敵意をアークエンジェル全体ではなく、キラ・ヤマトというアークエンジェルの象徴的人物にして最強戦力に集中させることで、暴走を抑えている。
 そのため今はまだ大人しく陽動と挑発に専念しているが、これでフリーダムが出撃してきたら、それこそ彼は抑えてきた怒りのすべてを爆発させ、危険も命令も顧みず、キラを討ちにかかるだろう。そんな不安定な心境で、マーレは囮としての行動を続けていた。

 

 一方、オーブの下級氏族の4人は、敵のムラサメを3機落としていた。元々数で勝るアークエンジェル側のムラサメの方が2対1で攻めてきたのだが、戦っているうちにその構成は乱れていった。
 パイロットとしての腕もさることながら、チームワークの良さと言う点で、ワイドたちの方が遥かに相手の上をいっていたのだ。
 2対1の構成は、やがて8対4の混戦となり、ついにはワイドの相手をしているうちに背後からホースキンに撃たれる者や、はたまたサースを撃ったビームをよけられ、サースの後ろにいた仲間の機体を破壊してしまう者が出た。
 かつてスピードワゴンに教えられたこと。すなわち、『敵の思考に立って考え、予測を立てる』、『恐怖を知り、克服する』、『危険を受け入れ、乗り越える』。
 それら、戦闘の極意をわきまえたワイドたちにとって、ろくにチームでの訓練もしていないクライン派パイロットなど敵ではなかった。

 

   ――――――――――――――――――

 

 そうやってアークエンジェルの注意がマーレたちに向かっている間に、ハーヴェストに運ばれた3人は、アークエンジェルの外壁にたどり着いていた。しかし、ここから先は、イルーゾォやホルマジオの能力では入ることはできない。
 ラミネート装甲に覆われたアークエンジェルに潜入するためには、装甲をどうにかできる能力者が必要である。そしてその能力者こそ、3人目の人物であった。
「じゃあ開けるから、大きさを戻してくれ」
 3人目がホルマジオに向かって言った。ホルマジオは言われた通り、リトル・フィートの縮小化能力を解き、彼を元のサイズに戻す。3人目は高い空の上を吹き荒れる強風に吹き飛ばされぬよう、自慢の脚で踏ん張り、腰から一本のナイフを抜いた。
 何の変哲もない、ただのナイフ。到底、宇宙戦艦の装甲を破壊できるような代物ではない。しかし、この三人目の男の力をもってすれば、その限りではない。

 

「『イン・ア・サイレント・ウェイ』!!」

 

 男がナイフを虚空に向けて振るう。同時に男の背後に、髑髏のような顔をした、人型のスタンドが出現する。

 

『ギュオンギュオンギュオン』

 

 ナイフがあげた唸りが、『文字』となって空中に具現化した。その『文字』空気を切り裂いたという『破壊』の証明。そして、その『文字』がアークエンジェルの装甲に張り付いた次の瞬間、

 

『ギュオンギュオンギュオン』

 

 もう一度音が上がり、分厚い金属の装甲は、ナイフで切り裂かれたかのようにスッパリと切り裂かれ、内部の通路まで届く大穴を開けた。
「行くぞ。時間はあまり無い」
 クールに言い放ち、三人目の男――プラント側から選ばれた戦士、サンドマンは穴に身を躍らせる。イルーゾォとホルマジオも後に続く。

 

 天使の船に、かつて暴力に魂を染めた3人の悪魔が入り込んだ。どちらが勝利をつかむにせよ、もはや血が流れることは、神様にも止められはしない。

 

   ――――――――――――――――――

 

「何をやってる! 早く奴らを落とさんかぁッ!!」
 ルカがスコップで艦橋(ブリッジ)の床を殴りつける。近くにいるクルーが身をすくませた。激高したルカが振り回したスコップに打たれて、病院送りにされた者は少なくないのだ。
(ちっ………まずいなこれは)
 冷静に状況を判断できたヴェルサスは、そのときすでに、アークエンジェルを捨てて脱出する計画を練っていた。
(まず自分が助かるのが第一条件。できればキラも連れていきたいところだが、こだわりすぎるとやべえ)
 ちなみにセッコは前回の傷を癒すため、一時的に艦を離れて静養していて、ここにはいないので考える必要は無い。
(敵の腕はこちらより数段上だ。あれに勝てるのはキラくらいだろうが、今の奴が出撃できるかどうかわからない。だが脱出するにしても、ここは空の上、下は海。脱出しても墜落死するか、溺れ死ぬのが関の山。陸地まではまだ遠い。
 生身でそのまま脱出はできない。MSを使うしか……。だがこの包囲網を突破できるほどのMS操縦の技術は俺にはない。やはり『アレ』を使うしかないか。スタンド力は完全ではないが、使わなければ命が危ない)
 ヴェルサスは自分の部屋に置いてきた、トランクを思い浮かべる。
(せいぜい、時間をかせいでくれよ。『涙目のルカ』)
 顔を怒りに染めながら、涙をぬぐうことも忘れて怒鳴るルカを刺激せぬよう、そっと艦橋(ブリッジ)を出る。足早に自室へと向かうヴェルサスは、ふと違和感を覚えて立ち止まった。
「…………?」
 いつもの廊下と、何かが違うような気がして、目を凝らす。さほど時間は必要なく、違和感の正体が見つかった。
「鏡………?」
 廊下の曲がり角の部分に、一枚の鏡が掛けられていた。何の変哲もない、上半身をすべて映せる程度の大きさの、長方形の鏡。ただ、それはさきほどこの廊下を通った時には無かったはずだった。
 なんとなしに手を伸ばし、ヴェルサスは鏡の表面に触れる。冷たく硬い触感が伝わるが、それだけだ。スタンドエネルギーが籠っているわけでもない、普通の鏡であることは確かだった。だが気になる。
「………ハッ!」
 しかし、鏡以上に気にすべき事柄が出現した。鏡に、ヴェルサス以外の人間の姿が映り込んだのだ。ヴェルサスの背後に立つその男は、幾房にも結んだ黒髪を垂らして、不敵な笑みを浮かべている。服が軍服でないことから、男がこの艦の人間でないことがわかった。
「………貴様、どこから」
 ヴェルサスは恐怖を懸命に押し殺し、アンダー・ワールドを出しながら、振り向いた。そして振り向いた先に、彼は予想外のものを見る。いや、見なかったというべきか。
 背後には男も、他の誰もいなかった。その場所にいたのはヴェルサス一人だけだった。
「な………?」
 再度、ヴェルサスは鏡を見る。鏡の中には、さきほどよりもヴェルサスとの距離を詰めた男の姿があった。
「こ、これはっ!」
 また、鏡の逆側を見るが、やはり男の姿は無い。
 男は、鏡にのみ映っていた!
「こいつッ! やはり、スタンド使い!」
 どういう能力かは分からないが、現状のやばさを感じたヴェルサスは、アンダー・ワールドの拳を鏡に向けて叩きこもうとし、
「な!?」
 自分のスタンドが黒板消しで拭き消されていくように、姿を削られて消失していく自分のスタンドを見た。
 スタンドの姿が完全に消えたのとほぼ同時に、ヴェルサスの右頬を強い衝撃が襲った。ヴェルサスは歯が折れたことを感じながら、床に倒れる。横目で攻撃が来た方向を確認すると、案の定そこには、鏡にだけ映っていた謎の男の姿があった。
「よお。はじめまして。会いたかったぜヴェルサス!!」
 本当に嬉しそうに、男は笑う。
「俺の名はイルーゾォ。別に忘れても構わないぜ。これからすぐ死ぬ奴に憶えていてもらってもしょうがねえからな」
 明確な殺意を向けられたヴェルサスは、反撃のためアンダー・ワールドを繰り出そうとするが、
「!? 出ない!!」
 どこにもアンダー・ワールドの姿は現れなかった。『側に立つ者』が、側にいないという異常事態に、ヴェルサスの顔がこの上なく引きつる。その表情を見て、イルーゾォは心底愉快そうに教えた。
「残念だが、お前のスタンドはここに来ることを許可していない」
 そして、イルーゾォのスタンドが現れる。目の部分は大きなゴーグルのようで、嘴のような口をしている人型スタンド。その名は、
「『マン・イン・ザ・ミラー』!!」
 掛け声と共にラッシュが放たれる。身を守る術のないヴェルサスは拳をまともにくらい、吹っ飛ばされる。スタンドの打撃力や速度は人間並みらしく、致命傷になることはなかったが、このまま殴られ続ければ、いずれは撲殺に至るだろう。
「ど、どういう、ことだ? なぜ俺のスタンドが……」
(こいつの能力のせいか? 一体どういう力だ? スタンドの封印………いや、鏡だ。最初にあった鏡。そこに何かがあるはず………さっきの鏡は……)
 ヴェルサスは思考を巡らせながら、きっかけとなった鏡を見た。そして、早くも答えがわかった。
「鏡の掛かっている曲がり角の位置が、逆になっている……?」
 鏡を正面にした時、廊下は右側に曲がっていた。だが今は左側に曲がっている。つまり、ここはさっきまでいた場所ではない。『左右が逆』のどこか。すぐに思いつくのは、
「鏡の中、だと………馬鹿な。鏡はただの光の反射。鏡の中の世界など、ファンタジーやメルヘンじゃあるまいし」
 否定するヴェルサスを、しかしイルーゾォは肯定した。

 

「いや、それであってるぜ。鏡の中の世界を創りだす。それが俺の能力『マン・イン・ザ・ミラー』」

 

 鏡の中の世界。イルーゾォの世界。イルーゾォに都合のいい世界。そこに他者を引きずり込み、絶対者として君臨する能力。多くのスタンドの中でも反則に近い、無敵の能力。
「ここには俺の許可したものしか出入りできない。だからお前は決してここから逃げられないし、助けも来ない。さあ………」
 イルーゾォは笑う。心から笑う。だって、嬉しくて嬉しくて仕方がないのだから。

 

「ギアッチョとメローネの仇だ。くたばりやがれ」

 

   ――――――――――――――――――

 

「外はどうなっているのかしら」
 元アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスはため息をついた。独房に閉じ込められてから長い時間が経っている。独房と言ってもキラやラクスの配慮で、テレビやベッドなどの備品もあり、居心地は悪くない。
 それでも監禁された自由の無い状態であるのは確かであり、最新の情報もあまり入ってはこない。
「キラ君………大丈夫かしら」
 呟きながらも、大丈夫なわけは無いとわかっていた。テレビのニュースで、キラがオーブでの戦いでアスランを撃墜したと知らされている。アスランは生きているそうだが、心が不安定なキラが、親友を撃ったという行為を背負い切れるとは思えなかった。
「何もできないなんて………」
 バルトフェルドに会わす顔がないと、幾度となく思う。そして独り言が多くなっている自分を自覚する。自分の精神状態も、少々危ういと感じていた。感じていたから、それを最初、ついに幻聴が聞こえるようになってしまったかと絶望した。
「ドアから離れてくれ。壊す」
 そっけない言葉が、ドアの向こうからかけられ、十秒ほどして、

 

『ザクザクザクザクザクッ』

 

 紙を乱雑に切るような音を立て、捕虜がどれほど身を叩きつけたとしても破れない頑丈なドアが、チーズケーキでも切ったように容易く破壊された。同時にけたたましいブザーが鳴り響く。

 

 破壊されたドアの向こう側には、長い脚が印象的な、精悍な男が立っていた。
「マリュー・ラミアスだな。俺はザフトのサンドマン。オーブとプラントの共同作戦、『エンジェルダウン作戦』に基づき、お前たちの救助及び、アークエンジェルを沈黙させるために来た」
「え? え?」
 突然すぎる状況の変化に、マリューは間の抜けた表情でうろたえる。
「とにかくここを出てもらおう。時間がないから早くしてくれ」
 戸惑うマリューにろくに説明をすることもなく、サンドマンは一方的に要求する。
「ま、待ってよ。ザフトがこの艦を攻撃するのはわかるけど、なんでわざわざ救出なんか………」
「俺はお前たちなどどうでもいいが、オーブの方から頼まれたらしい。詳しくはうちのリーダーに聞け」
「リーダー?」
「ロバート・E・O・スピードワゴン。お前たちとも縁があるという話だが」
「彼が!?」
 世間の一般人程度の情報しか持っていないマリューにとって、スピードワゴンがオーブとプラントの共同作戦のリーダーにまでなっていたことは驚愕に値した。
 マリューがマリア・ベルネスとしてモルゲンレーテ社で働いていた頃にも、モルゲンレーテの重要なプロジェクトにおいて様々な依頼を受けていた腕の立つ何でも屋であったが、まさかの軍人でもない外部の一般人である彼がリーダーになるなど誰が予想できただろう。
 それほど、その能力と人格と実績に対する、ユウナたち上層部の信頼が厚いということである。
「そんなことより………お前たちにはこの艦の占拠に協力してもらう」
「私たちも?」
「手伝わないというのなら、お前たちもテロリストの一味として片づけるまでだが、どうする?」
 マリューはサンドマンの申し出を理解した。つまり、自らこのアークエンジェルを陥落させることによって、自分の無罪を証明しろというわけだ。
 もし自分たちが協力しなかった場合でも、おそらく先ほどの能力なら彼一人でこの艦にいる普通の人間なら皆殺しにできる。
「わかったわ。ひとまずそちらの言うことを聞くことにする」
「助かる」
「他のみんなは?」
「これから出す。さしあたって、お前には彼らに協力を命じてもらおう」
 元のクルーたちの多くは身柄を拘束された後、既に艦を下ろされているが、マリューやノイマンたち、中心的人物にあたる十数名はいまだ監禁されていた。これはキラに対する人質にするための、ヴェルサスの判断だろう。
 その十数名が一気に動けば、この狭い艦であればそれなりの戦力になる。アークエンジェルの構造や運用にも通じているから尚更だ。
「多分、みんな協力してくれると思うわ」
(そうでなければ命は無い。そもそも選択を与えてくれるというだけで望外のこと。まとめてアークエンジェルを撃墜した方がよほど簡単だし、そうしない理由など向こうには無い。私たちを助けるのは、オーブ政府の温情以外にはありえない)
 マリューは、カガリやスピードワゴンに感謝する前に、自分たちの無様さ、情けなさに絶望的な気分になってくる。少なくとも国家元首誘拐や戦闘介入にはマリューたちも関わっている。それを許してくれようというのだ。
 あまりにも甘すぎるやり方だが、恥を知る人間にとっては、いっそ殺してくれた方が楽とも思える。
「急いでくれ。もうとっくに兵士が駆けつけてきているだろう。ホルマジオが足止めをしているが、彼のスタンドは戦闘に向いていない。機関銃か何かを使われたらもたない」
 マリューの心境を知ってか知らずか、サンドマンは淡々と要求する。対するマリューは思考を切り替えて、頷いた。悠長に落ち込んでいる暇は無い。償いたいのならば生きねばならない。そのためには、命がけで行動する他ないのだ。

 

   ――――――――――――――――――

 

「ハアッ、ハアッ、ハアッ」

 

 ヴェルサスは傷の残る体を無理矢理に動かし、走っていた。
 背後からは追手の足音がする。しかしその歩みは緩慢で、到底本気を出しているとは思えない。本気を出せば怪我人のヴェルサスなどすぐに追いつけるであろうに、わざとゆっくりと追っていることが察せられた。
「おいおい? そんな鈍足じゃすぐに追いついちまうぞぉ?」
 イルーゾォのからかう声が響く。

 

(ネズミをいたぶる猫のよーに、俺をじわじわとゆっくり殺していくつもりかッ! なめてくれやがって!)

 

 ヴェルサスは奥歯をギリと噛みしめ、右手を護身用の拳銃に伸ばした。
(スタンド相手に、こんな中っても致命傷を与えられるかも分んねえような小口径の銃じゃあ意味ねえと思ったが、あれだけ余裕こいて油断してりゃ、あるいは通用するかもしれねえ!)
 そして彼は決断し、拳銃を内ポケットから抜くと同時に、急速に振り向いて銃口をイルーゾォに突き付ける。
「くらいなっ!!」
 雄叫びと同時に引き金を引く。しかし、
「『マン・イン・ザ・ミラー』!!」
 またしても顔面を酷く殴りつけられ、ヴェルサスは吹っ飛ばされた。手から拳銃が転がるが、ヴェルサスは必死で起き上がると、拳銃を拾おうともせずに逃げることを再開した。

 

(引き金が引けなかった!? 錆ついていたなんてわけはねえ! だがまったく引き金が動かなかった……。まさか、『鏡の世界(ここ)』じゃあ武器は使えねえのか!?)
 またも逃げるしかない状況になった彼だったが、三十歩と移動せぬうちに、更に深刻な状態へと事態は変化する。艦内のエリアを仕切るドアが開かない。鍵がかかっているなどということは無いはずなのに。
(こ、ここを通らなきゃ、俺の部屋には戻れねえ!! ど、どうすれば)
 本気で青ざめるヴェルサスだが、押しても引いてもドアはびくともしない。
 それもそのはず。マン・イン・ザ・ミラーの作り出した鏡の世界では物体は動かすことができない。それができるのはマン・イン・ザ・ミラーの使い手であるイルーゾォのみ。
 衣服のように、自分の肉体の一部としてイメージできるほど身近なものでない限り、ヴェルサスには何も動かせない。所有していた拳銃にしても、動かすことができる程度で、使用することはできなかった。
 たとえ消しゴム一個であろうと、持ちあげることもできないし、トイレットペーパーでさえ千切ることもできない。
「おやおや、もうお終いか。ちと手ごたえに欠けるが、仕方ないか」
 イルーゾォはあくまで余裕の足取りで近寄り、大振りのナイフを取り出す。それをスタンドに持たせ、切っ先をヴェルサスの心臓に向けた。
「もう楽になることを許可してやる。くたばれ、ドナテロ・ヴェルサス!」
 いかに人間程度の速度といえど、スタンドのナイフによる刺突は、拳銃よりも正確で強力だ。丸腰で疲労した、肉体を鍛えているわけでもない男が防げるはずはない。そのままだったらヴェルサスは、野望を目前にして地獄に落とされていただろう。
 しかし、彼の勝利に飢えた精神は、その死の洗礼を免れた。突如としてドアが開き、ヴェルサスはドアの向こう側へ転がりこむ。すぐさまドアは閉じ、マン・イン・ザ・ミラーのナイフは、ドアに阻まれて血肉を味わうことはできなかった。
「なっ! どうして!」
 イルーゾォはドアが開いた理由を知るため、手にした小さな鏡を見る。その鏡に映っているのは。鏡の外の、本来の世界の光景だ。そしてドアの前には、ヴェルサスのスタンド、アンダー・ワールドの姿があった。
「………ふん! 向こうに取り残されたスタンドを操作して………向こう側でドアを開かせたわけか。単純ではあるが、簡単なことではない。遠隔操作型のスタンドとはいえ、本体と隔絶されたところで、こんなに動けるとはな。まあまあ、やるじゃねえかよ」
 鼻を鳴らし、忌々しげに再びドアを開けるイルーゾォ。ドアが開いた先には、既にヴェルサスの姿はなかった。
「逃げ足の速い野郎だ。リゾットから逃げ出しただけのことはあると言っておこうか。だがよぉ、どうあがいても所詮………この世界からは逃げられねえ!!」

 

   ――――――――――――――――――

 

 アークエンジェルの主導権をめぐる戦いの優勢は、サンドマンたちの方に傾いていった。
 人数も、戦闘技術の質も、ルカの側が上である。しかし、優れた技術士官でありアークエンジェルを最もよく知るマリューが、メインコンピュータにアクセスし、あらゆるシステムを支配下においた。もはやアークエンジェルはただ空に浮く金属の箱にすぎない。
 人数差はサンドマンのスタンドによってなぎ倒すのみ。はっきり言って、旧アークエンジェルの乗員たちがやることは、戦闘不能になった兵士たちを拘束することくらいだった。
「楽ちんだねえ。いいことだ」
 時折飛んでくる流れ弾をさばきながら、ホルマジオは戦況を眺める。
「ブリッジまではもうすぐ………ルカを取り押さえればアークエンジェルは完全陥落する」
 キラ・ヤマトはいまだに自室にこもっているという。現状がどうなっているかもあまり察してはいないだろう。ならば下手に舞台に引っ張り出すと面倒だとして、彼の処置は後回しになった。
 外に出ているMSも、ほぼ撃墜されている。このままなら作戦が成功に終わるまで、三十分はかかるまい。
(順調………実に順調だが………なんか上手くいきすぎて、こう、落とし穴がある気がするんだよなぁ)
 考えすぎかもしれないが、どうもピリピリした感覚がする。

 

「しょうがねーなぁ。まあ注意しておくかよ」

 

   ――――――――――――――――――

 

 イルーゾォの足取りは迷うことなく、ヴェルサスの逃げた方向へと向かっていた。床に不規則な感覚で、血の落ちた痕が残されていたためだ。
(血をぬぐう余裕もなく逃げている。つまり、策を弄することさえできねえわけだ)
 念のため鏡で、あちら側にいるアンダー・ワールドを探すが、さきほどから見当たらない。しかし、姿が見えないとしても力の弱い遠隔操作系、こちらに影響を及ぼすほどのことができるとも思えない。できることはせいぜいドアを開け閉めする程度。
(アスハ代表からの情報によれば、奴の能力は、大地から過去を掘り起こし再現すること。だが、ここは海の上の空! 大地からは遥かに遠い。奴に能力を使うことはできない!)
 自信を持って、イルーゾォは敵を、いや、獲物を追い詰める。やがて、荒い息をつき、一枚のドアの前に寄りかかる、ヴェルサスの姿を見つけた。
「よく逃げたものだが………ついに諦めたか?」
「………そんなわけ、あるか」
 ヴェルサスが答えると同時に、イルーゾォの頭上のライトが砕け、鋭く尖った無数の破片が降りかかる。
「ちっ」
 舌打ち一つ、イルーゾォはマン・イン・ザ・ミラーの腕を振るい、破片を払い落す。その間にドアを開けさせたヴェルサスが、室内に入って行った。
(アンダー・ワールド。見えないと思ったら………だがこんな程度、目くらまし程度にしかならねえよ)
 一度閉められたドアを再び開き、イルーゾォは身構えながら足を踏み入れる。圧倒的有利な状況ではあるが、かつての世界における敗戦もある。用心にこしたことはない。果たしてヴェルサスは、特に隠れることもなく、ベッドに疲れ果てた体を座りこませていた。
 足を踏み入れた同時に、イルーゾォの顔面に向かって何かが飛んできた。スタンドで弾くと、それは先端鋭いペンであった。次に、分厚い本、ペーパーナイフなどが飛んできたが、イルーゾォは余裕で弾き飛ばす。
「はっ、こんなものか」
 やや拍子抜けし、イルーゾォはこちらに殺意の籠った視線を向けてくるヴェルサスに、首の骨を圧し折るほどの渾身の拳を放つ。しかしヴェルサスは、その拳の前に、ベッドの下に置かれていたトランクを潜り込ませた。
 衝撃でトランクの留め金が砕け、開く。大きく開いたトランクから、中身が飛び散った。
「!? 土………?」
 その中身はトランクいっぱいに詰まった、土とも灰ともつかない、細かい粒だった。それは部屋中に飛び散り、ヴェルサスの体にも降りかかる。全身を汚しながら、ヴェルサスは裂けるようにニヤリと笑った。
(土………こいつまさか、この土から何かを掘り起こす気か!)
 危険を感じたイルーゾォは、もはや殴るなどと悠長な真似はせず、さきほどドアに阻まれたナイフを出し、ヴェルサスの首に斬りつけた。頸動脈が断たれ、赤い血が噴き出す。それでもなお、ヴェルサスは笑いを消さなかった。
「く、くははは………そうさ。やはり……この血こそが、この瞬間には相応しい………」
「な、何を言ってやがる!!」
「ふはは……こいつは正確には『土』ではない……『死体』なのさ!! 『アンダー・ワールド』!!」
 向こう側の世界で、アンダー・ワールドは能力を発動させた。一見して土と思える、部屋中に飛び散った粒に対して。
 そして、過去が掘り起こされる。

 

『―――容赦せん!!』

 

「!?」
 イルーゾォは、自分とヴェルサス以外の男性の声がしたことに驚愕する。この鏡の世界には、他に誰もいないはずなのに。
 周囲を見回すと、床にばらまかれた『土』の隙間から、黒く長い髪をした、美しい男の顔が覗いていた。

 

『俺の名はペイジ』
『ジョーンズ』
『プラント』
『ボーンナム』
『『『『血管針攻撃!!』』』』

 

「ま、また!?」
 声のする方を見ると、4体の異様に醜い姿の怪物が、『土』の間から浮かび上がっていた。他に何かが起きている様子は無い。だが、これがヴェルサスの狙いだとすれば、無意味であるはずはない。
 イルーゾォがヴェルサスを睨むと、ヴェルサスは既に多くの血を流し、顔面を蒼白にしながらなおも、その目は爛爛と、鬼火のように輝いていた。

 

『散滅すべし、ディオ!』
『このディオがッ!』

 

「何をしようしているのかわからんが………」
 力強い男の宣告と、絶望に染まった叫びを背後に、イルーゾォは戸惑いを振り棄てる。

 

『私はどんどん老いる。「波紋法」でさえ、この老いは止められん………』

 

「何かが起きる前に殺す!!」
 マン・イン・ザ・ミラーがナイフをかざす。ナイフは鋭い動きで、ヴェルサスの心臓に向けて突き出された。だが、ヴェルサスはそれを嘲笑った。
「残念ッ! もう見つけたぜ! 求めていた『過去』をッ!!」

 

『私はこれから貴様の血で―――』

 

 粒の中から、『過去』が具現化して掘り出される。今度はただ映し出されるだけの幻像ではなく、確かに手にすることのできる実在である。
(な、なんだ? あんなものをどうすると………)
 イルーゾォは拍子抜けした。一体何が現れるかと思えば、それはどう見ても、古ぼけた、多少不気味な見た目の『仮面』でしかなかった。それでも動きは止まらずに、ナイフはヴェルサスの心臓に迫っていた。
「これだっ! これこそがっ!!」
 だがヴェルサスは、自分の命を奪わんとするナイフですら気にも留めていなかった。ただ、現れた石造りの『仮面』に、すべての感情を注いでいた。そして、『過去の声』が響いた。

 

『不死を手に入れる!』

 

『声』と同時に、その『仮面』はヴェルサスの顔に被さり、ナイフが彼の心臓を突き刺す直前に、その役目を果たした。

 

 ビンッ! ビンッ! ビンッ!

 

 ヴェルサスの顔に被さった『仮面』の縁から、何本もの針が高速で突き出し、

 

 ガシィィィン!!

 

 ヴェルサスの頭部にガッチリと喰い込んだ。

 

「なっ、なにィイイイィーーーッ!! こ……こいつ………バ…バカなッ!!」

 

 それはどう見ても脳内にまで達する深さであり、普通なら確実に即死している状態であった。更にナイフもまた心臓を確実に突き刺しており、人体の超重要部位を二つ同時に貫かれ、死んでない方が異常だ。
 だが、イルーゾォは安心できなかった。普通なら死んでいる。そのはずなのに、目の前の男からは命が尽きる気配がない。それどころか、得体の知れないプレッシャーが急速に増大していくのがわかった。
「『マン・イン・ザ・ミラー』!!!」
 不可解な恐怖に突き動かされ、更に攻撃を与えようとしたイルーゾォに、トラックに跳ねられたかのような急激な力が加わった。イルーゾォは部屋から飛び出し、向こう側の壁に衝突した。
 愕然とするイルーゾォの目に、いつの間にか間合いを詰めて、右の掌をこちらに向けるヴェルサスの姿が映った。それで、イルーゾォは自分の身に何が起きたのかわかった。彼はただ、ヴェルサスに『押された』だけなのだ。

 

「ふふ、ふは、くはは、あっはははははははーーー!!」

 

 全身を貫いた衝撃によって、意識を失おうとしているイルーゾォの耳に、最高に絶頂に達した笑い声が届いたが、すぐに何も聞こえなくなった。同時に、『マン・イン・ザ・ミラー』のスタンド能力が途切れ、『鏡の世界』は消滅した。

 

   ――――――――――――――――――

 

「おのれ………グスッ、こ、殺してやる!! 絶対に殺して、バラバラにして、下水に捨てて流してやる!! 糞がぁッ!!」
 縛りあげられてなお怒りに燃え続けるルカの罵声を聞き流し、サンドマンはマリューに質問する。
「とりあえず、我々の作戦は成功した。君らはひとまずオーブに連れていく。それ以上、俺にどうこうする権限はないが、協力的であったことは報告しておこう」
「ありがとうございます……それとキラ君のことなのですが」
「彼については………俺としても複雑な気分だが、聞いた話からすると、不安定な精神状態での責任能力の有無が問題になるだろうな。まあ、ここでは何もすることはできん。とにかくは………!?」

 

 ゴウンッ!!

 

 アークエンジェルが、爆撃を受けたような衝撃に揺れた。
「ど、どうした! 外には攻撃中止の連絡はしておいただろうが!」
 イルーゾォに通信を送っても返事がないことに、不吉な想像を浮かべていたホルマジオが、突如として起こったショックに声を上げる。彼に対して、ノイマンが応じた。彼自身、動揺を抑えられぬ声で。
「外からの攻撃ではありません!! 内側からこじ開けられたのです! 格納庫の壁を無理矢理破壊して、MSが出撃した模様………! モニターに出します!!」
 そしてモニターに映し出されたのは、翼を広げるフリーダムの姿だった。
「キラ君!?」
 マリューの叫びをよそに、フリーダムはマーレたちの操縦するMS部隊に向かって、攻撃を仕掛けていく。
「キラ・ヤマト………今の奴がこんな行動に出るのは不自然だ。誰かにやらされでもしない限り………ヴェルサスの仕業だとすりゃぁ、クソッ、やられちまったっていうのかよイルーゾォ!」
 ホルマジオが拳を血が滲むほどに握り締める。
「くっ! 格納庫に行くぞホルマジオ!! ヴェルサスを探して倒さねばならない。いるとすれば、ここからの脱出のためのMSなどがある格納庫だろう」
「………しょうがねぇなぁ!! 了解だよっ!」
 仲間がまた一人失われたかもしれないという事態に、さすがに感情を高ぶらせながら、ホルマジオは頷いた。
「君らはアークエンジェルを海に着水させてくれ。もし戦闘となれば、この艦を壊さずに戦えるかどうかわからない。後はスピードワゴンと通信して相談して決めてくれ」
 ともすれば、アークエンジェルを墜落させるかもしれないと言い、後をマリューたちに任せて、二人は格納庫へと向かった。

 

   ――――――――――――――――――

 

 キラ・ヤマトの意思は既に無いも同然であった。戦闘に必要なだけの能力は保持されているが、今の彼の行動はすべて、ヴェルサスが望んだことに過ぎない。
(――――撃つ)
 殺す、でさえ無い。ただ撃つ。それも当然。
 道具に殺意は無い。
 機械に敵意は無い。
 ただ行動し、ただ結果を出すのみ。今のキラは、つまりそういうものだった。
(――――斬る)
 この時代において最高位の技量が、一機のムラサメの右腕を斬り落とし、追撃によって完全破壊を達成する。どうやらパイロットは事前に緊急脱出することに成功したようだが、そのことにキラは関心を向けなかった。
 ただ一機の撃墜という結果と、それによる変化、残りの敵の撃墜のみを考え、行動を進めた。

 

   ――――――――――――――――――

 

 格納庫へと走る二人だったが、その途上の廊下にて既に、彼は逃げも隠れもせず、堂々と立ちはだかっていた。どこにも傷は無く、疲れも無く、そこにドナテロ・ヴェルサスは立っていた。
 身にまとっているのは、今まで着ていたオーブの軍服ではなく、全身をくまなく覆う、漆黒のパイロットスーツ――ストレイツォが愛用していた衣装だ。足元には白いショルダーバッグが置かれている。
「クク………来たか」
 ヴェルサスは笑う。『アレ』によって手に入れた、人間を超えた力に、喜悦を抑えきれずに。
「ヴェルサス……てめえ、イルーゾォをどうした!?」
 ホルマジオが吠える。返答は、
「うん? そういえばどうしたかな。とどめは忘れていたから、生きているかもしれないが、わからないな。とりあえず骨の何本かは折れていたと思うが」
 本当に興味が無いという口調だった。歩いていたら、蟻を踏んでしまったとして、その蟻の安否を深く気にすることもないだろうというような。本当に、人間の生死をその程度にしか考えていないようだった。
「まったく先ほどは………自分の力がどの程度のものか、確かめる間もなく、あっという間に終わってしまったからな………。今度はもう少し長引かせて、今の自分をよく知りたい」

 

 トランクに詰め込まれていた『土』、ヴェルサスの切り札たる『アレ』―――すなわち『太陽の光で塵となった、ストレイツォの死体』。
 そこから、ストレイツォが『吸血鬼』となった過去を探し出して掘り当てた物。それこそは、飛び出す『骨針』によって脳を押し、ショックを与えることで、人間を吸血鬼と変貌させる、悪魔の道具であり、とある一族の長きに渡る戦いと冒険の元凶『石仮面』。

 

 土ではないものから、ちゃんと過去を掘り出せるかは賭けだったが―――イルーゾォが粒を土と認識してくれたことで、他人から見ても土であると、思い込みやすくなったこともあり、彼は賭けに勝った。ドナテロ・ヴェルサスは、人間をやめ、怪物となった。

 

 DIOと、父と同じ存在となった。

 

「これからこの艦より逃亡させてもらうが、その前に少し………実験台となってもらうぞ」

 

 今のヴェルサスは、自分の力を思う存分振るい回したくてたまらなかった。さきほどキラに対しても、自分の力を試してみたところであった。

 

『催眠術』

 

 人を操る法としては陳腐なものだが、それをキラはかけられていた。
 かつてディオが使った力の一つ。波紋法でも催眠術がかけられるように、波紋法と真逆にして同質、表と裏の力である吸血鬼の力で同じことができても不思議ではない。
 その威力は、臆病ないじめられっ子を、大胆不敵な盗人に仕立てるほどのものだ。もとより衰弱したキラを操るなど造作も無いこと。
 今やキラは、キラではない。ついに本当の意味で人形となり、戦場を駆ける哀れな少年でしかなかった。
 その結果には満足しつつ、今度は戦いのための能力を試してみたいと、ヴェルサスは願っていた。ショルダーバッグを100メートルほど後方に投げ、邪魔にならないようにして、肩をゴキゴキと鳴らす。

 

「10分程度は持ってくれよ? ク、ク、クハハハハハハ!!」

 

 ヴェルサスは笑い続ける。唇の端から覗く、鋭い牙を隠すことも無く。

 

「何かわからないが……とりあえず、やばそうだな」
 サンドマンはポケットから一枚の紙を取り出し、両の手で引きちぎった。細かくちぎられた紙は、二十枚ほどの断片となる。サンドマンはその断片を、ヴェルサスに向けて振りまいた。
 紙の欠片は空気の中をユラユラと舞いながらも、不自然な指向性を持って前に進み、ヴェルサスの体に届こうとしていた。よくよく見れば、紙の一枚一枚にさっきまで書かれていなかった文字が張り付いているのがわかった。
「紙………?」
 ヴェルサスは訝しげに見ながらも、その紙をまとめて素手の一振りで払いのける。その動きを認めて、
「かかったな」
 サンドマンが呟き、

 

 ビリッビリリリッ

 

 ヴェルサスの腕から紙をちぎるような音がし、見ればヴェルサスの腕そのものが引きちぎれて、肉が裂け、白い骨が覗いていた。
「む! こいつは………」
「貴様にどんな力があるか知らんが、右腕一本の犠牲はきつかろう」
 何らかの事象によって起こった音を具現化させ、別の物質に送り込む。最後まで音が伝わりきった時、最初に音が生まれたのと同じ事象が再現される。それがサンドマンのスタンド、『イン・ア・サイレント・ウェイ』の能力。
 今のは、紙が『破れた』という音が具現化し、その音がヴェルサスの体に伝わりきったことで、ヴェルサスの肉体で事象が再現され、ヴェルサスの腕もまた、紙同様に『破れた』のである。
 確かに、戦闘において腕を失うことは相当な戦力ダウンになる。にも関わらず、ヴェルサスは能力の効果に驚きはしても、傷つけられたことに対する苦痛や危機感はまったく覚えなかった。
「クク、それが、そんなにきつくもないんだな」
 ヴェルサスはサンドマンに見せつけるように腕をかざす。すると、本来なら縫い合わせでもしなくてはならないような傷が、見る見るうちに塞がっていき、三十秒としないうちに、傷は跡形もなく治ってしまった。
「それが………貴様の能力か!」
「そうさ。そして、これだけではない」
 言うなり、サンドマンの前からヴェルサスの姿が掻き消えた。かと思っていると、隣で重い音が響く。サンドマンが振り向くと、そこにはヴェルサスが立ち、ホルマジオの腹に拳をめり込ませていた。
「ぐ………は………」
「ふん、本来だったら腹を突き破って、背中まで貫通していたはずなんだが………とっさにスタンドで防御したか」
 見れば、拳はホルマジオの体から出たリトル・フィートの腕に止められていた。しかし威力を完全に殺すことはできなかったらしく、ホルマジオは苦痛に顔を歪めている。
「まあ、いい」
 ヴェルサスはホルマジオの襟首をつかむと、ゴムボールでも投げるような気軽さで、大の男の体を放り投げる。勢いよく投げられたホルマジオは、壁にぶち当たって相当な衝撃に身を貫かれる。
「ぐおおお………」
 呻きもがくホルマジオの様子から見るに、命に別条は無くとも、しばらくは動けないだろう。サンドマンは一連のヴェルサスの動きを見て、その戦闘能力を洞察する。
(あの怪力………人体を突き破るというのもふかしじゃなさそうだ。それに、速度と瞬発力も、野獣並みに鋭い。俺も常人より運動能力はあるが、こいつのそれは人間の範疇を超越している)
 再生能力もかんがみれば、接近戦は自殺行為とサンドマンは判断した。
(つかず離れず、イン・ア・サイレント・ウェイの能力で、再生がおっつかないほどにバラバラにする!)
 サンドマンが距離を取ったのを見て、ヴェルサスは嘲笑を浮かべた。
「おいおい、そんな逃げ腰にならなくてもいいじゃねえか。ヒャハ、逃げるというのなら………こういう手もあるぜ?」
 ヴェルサスの両の瞳に、小さな穴が開いた。

 

「空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)!!」

 

 体液を強い圧力で発射する、大岩をも切り裂く必殺技。以前、ストレイツォより見聞きしたものであった。
 しかし、サンドマンはこの人外の攻撃を前にしても、冷たい視線で睨みながら冷静にナイフを取り、軽く振り回す。空気をかき乱す音がした直後、空間にその音を表す文字が浮かび上がる。
 丁度マンガの効果音が背景に書かれているのを、実際の光景で見ているような感じだ。
 そしてその文字に体液の弾丸が触れると、弾丸は三つに分断されてはね飛ばされ、サンドマンの体に届くことは無かった。

 

「む………」
「無駄だ。この文字の盾は、空気を切り裂いた音を具現化させた、『切断』そのもの。触れればあらゆるものが斬り裂かれる。一つの例外を除いてな」
「随分と自信があるようだが、あいにく俺にも自信があってな………。貴様も、斬っても死なないような怪物と戦ったことはないだろう? フヒヒヒ」
 ヴェルサスが動いた。いまだに浮かぶ文字に対し、恐れるでもなく真っ直ぐにサンドマンに拳を突き付ける。拳は文字に触れ、ズタズタに破壊された。血しぶきが飛び散りながらも、それをいっこうに意に介さず、そのままに殴りつける。
 拳を破壊した時点で役目を果たした文字は消え、無防備となったサンドマンは、持ち前の反射神経を駆使して、拳を避けることに成功した。
 拳はサンドマンの背後にあった壁を撃つ。轟音をあげて壁は大きくへこみ、天井にまで届くクレーター状の痕が生まれた。
「おっと、手加減しなければ艦を沈めてしまうなぁ」
 軽薄な口調で喋っている間にも、ヴェルサスの拳は再生していく。
「大体5分か………まあ、こんなもんで終わりにしとこうか!」
 そして、ヴェルサスは渾身の拳を振り上げ、サンドマンに向けて突進した。
「『イン・ア・サイレント・ウェイ』!!」
 サンドマンはまたも文字の盾を作る。
「ハッ! 通用しねえってのはわかってんだろうが! そうあれよ、無駄無駄無駄無駄無駄ァってなぁ!!」
 一発で人間のやわな体など、粉々にしてしまう威力を込めたパンチが迫る。左右に避けたところで、ここは逃げ場を制限された狭い廊下だ。吸血鬼の感覚と身体能力を本気で使えば、すぐさま避けた先にいるサンドマンに二撃目の拳を打ち込むことも可能だ。
「URYYYYYYYYYYY!!」
 かつて父が使っていたという雄叫びをあげるヴェルサスは、サンドマンがこれから挽肉になることを、まったく疑っていなかった。
 が、
「この文字で破壊できないたった一つの例外………」
 サンドマンが宙に浮かぶ文字に足をかける。
「それは『俺』だ」
 そして文字を踏み台に高く跳び上がり、一撃目の拳を回避する。
「なっ、上だとぉ!?」
 予想外の避け方に驚くヴェルサスだったが、下に落ちてくる時を見計らい、二撃目を繰り出せばいいと気を取り直し、左手を握り締める。
「ふっ!!」
 サンドマンは体を反転させ、上下逆さまとなり、天井に足裏を向ける。そして天井をスタンドの力も含めて強く蹴った。通常よりも速度のある落下、否、急降下攻撃が開始された。
「URYY!!」
 サンドマンの加速によりタイミングを外されたヴェルサスは、一瞬遅れで左拳を放つ。だがまさに手遅れだった。
 ナイフが、閃く。音が、叩き込まれる。

 

「勝った……この俺の………」

 

 ヴェルサスの体が跳ね飛ばされ、ゴムボールのように弾んで転がる。右足が切断され、胴体も引き裂かれたような深手を受けた。周囲は撒き散らされた鮮血で赤く染まり、胸の悪くなる悪臭が充満した。
「ハア、ハア………馬鹿、な………」
 荒い息をつきながら、残った左腕で床をつき、上半身を起こす。しかし全身は深いダメージに震え、痛みはなくても戦闘を続けられる状態ではなかった。これほどの重傷は、さすがにすぐには治らない。ヴェルサスはサンドマンに背を向け、右腕だけで這いずり進む。
 這いずった後には、ナメクジが残す粘液のように、血の痕がついていた。ブツブツと何かを呟いているようだが、サンドマンにはよく聞き取れなかった。
「逃げられはしないぞ。一撃で9つの部位に斬り裂くとまではいかなかったが……さすがにそれではもう何もできまい」
 サンドマンがナイフを構えたと同時に、ヴェルサスはようやっと背後を振り向いた。
「そうでも……ないぞ!」
 振り向いた直後、その目から圧縮体液が発射された。
「通用しないのは、わかっているだろう」
 すぐに文字の壁が生み出され、空裂眼刺驚はたやすく防がれる。しかし、ヴェルサスの顔には悔しさや絶望は浮かばず、見る者を不快にさせる類の笑顔だけがあった。
「ああ、だがな」

 

 大爆発が、起こった。

 

「!!?」
 背後でいきなり起こった大破壊に、サンドマンはまるで対応できなかった。壁や天井が砕け散り、爆風と閃光が空間に満ちた。ただし、サンドマンが作った文字の壁の内側でのみ。
「ぐ………あ………」
 全身を黒く焦がされ、凄まじいパワーに滅茶苦茶に振り回されたサンドマンは、爆発で砕け飛んだナイフを手から放し、そして仰向けに倒れ込んだ。視界に、笑いながらこちらを見ているヴェルサスの顔が見える。
 その腕には、さきほどヴェルサス自身が投げたショルダーバッグがあった。今、ヴェルサスはその中から何かを取り出そうとしているようだった。
(こいつ………俺の文字の盾を、己の盾にしたのか)
 さきほどの爆発は、文字に阻まれてヴェルサスには届かなかったらしい。それを狙って文字の盾を『出させた』というのなら、今の爆発はヴェルサスが起こしたものということになるが、一体どうやって?
「む………」
 天井には大穴が開いていて、穴の縁は高熱によって融けている。そして穴の奥には空が見えた。そしてその空の中には、
(フリー………ダム)
 こちらに向けてビーム砲の口を向けている、最強にして、今や最悪の、MSの姿があった。
(フリーダムが外から強力なビームを撃ち、アークエンジェルの装甲を貫通させてここで爆発させたというのか。そういえば………奴が這いずっている時、何かブツブツと呟いていたのは………うわごとではなく、携帯無線機でフリーダムに指示を飛ばしていたと)
 重傷でありながら、脳内麻薬か何かのせいか、苦痛はさほど感じず、いやに冴えている頭脳で、サンドマンは思考する。
(しかし………穴から見えるのはフリーダムだけ………他のMSが見えない。まさか、全滅したというのか? 全滅………たった1機で、せいぜい10分で、5機の最新鋭MSが、全滅だと………?)
 しかも操縦するパイロットはすべてエース級、ザフトの赤服やエクステンデッドに勝るとも劣らぬ腕であるのに、それを10分とたたずに屠り尽くす。
 ヴェルサスから口頭でどのブロックの辺りかを聞いただけで、アークエンジェルの内部構造も、装甲による妨害もすべて計算し、完璧に指示通りの場所を撃ち貫く技量。
 サンドマンの持つ語彙の中で、そのような真似のできる存在を表す単語はそう多くは無い。
「『化け物』か………奴は」
 さっきまで相手にしていたヴェルサスと比べても、遜色のないどころか上回りかねない怪物、そのようなイメージをキラ・ヤマトに抱く。
「まったく、敵に回せば恐ろしく、味方に回せばそれはそれで死ぬほど厄介だが………それでも頼もしい奴よ」
 そう言うヴェルサスはバッグから取り出した黒いヘルメットと、同じく黒いマントを身にまとい、全身を包んでいる。太陽の光を一筋も通さない構えだ。いつの間にか、切断された足をくっつけたらしく、両足で立っている。
「さて、お前はもうそのまま死にそうだな。この吸血鬼の肉体をここまで破壊できるスタンド使いだったとは………ちょっと調子に乗りすぎていたようだぜ。自重しなきゃあな」
 次に気絶して転がっているホルマジオを見て、
「そいつは俺同様、文字の盾に守られたらしいな。ビーム攻撃のダメージは無い。運がいい奴だ。だが………念のため殺しておくか」
 そしてホルマジオの首の骨を踏み折ろうと、足を延ばすと同時に、ホルマジオの姿がかき消える。その変わり、太陽の光を反射して煌めく鏡の破片が見つかった。
「イルーゾォ………生きていたのか。しぶとい奴め………さすがに鏡の中にまでは追っていけん。仕方がないか」
 頭を掻こうとして、既にヘルメットを被っているため掻けないことに気付き、少し気分を悪くする。
「お前………は………」
「あん?」
「何を、しようというの……だ………」
 息も絶え絶えのサンドマンの言葉に、ヴェルサスは少し考え、答えた。
「とりあえず………今の世界は終わっちまうようなことだなぁ」
 卑しさを含んだ声で、瀕死のサンドマンを嬲るように言う。
「なるほど………だが……それは無理だろう………」
 サンドマンは知っている。かつて自分を打倒した者たちのような人間が、この世界にもいるならば、ヴェルサスの野望は決して叶わない。曲がった生き方を選んだ者では、正しい道を貫く者には敵わない。
(だから………この世界のことなど、砂漠の砂の一粒たりとも、心配は無い。ただミーアのことだけは、気にかかる。幸せになって欲しい。最期に願うことは………やはり、それだけだ)
 そしてサンドマン――本当の名をサウンドマンは、この世界においても最後まで自分ではない誰かのことを想いながら、息を引き取った。

 

「なんだこいつ。死に際に妙なこと言いやがって。まあ戯言だろうよ」
 気を取り直すと、床を蹴って高く跳躍し、穴から外に出たところで、丁度降りてきたフリーダムの手に納まる。
「さて、こうなってはもうヘブンズベースに行ってもしょうがない。近くの基地に行くぞ。その後は、お前には宇宙に昇ってもらう。その時は」
 完全に足がくっついたことを、足首をひねって確かめながら、

 

「ラクス・クラインに、よろしくな」

 

 フリーダムの中で、眼に力の無いキラは頷き、ためらうことなく彼らはその場を後にした。

 

   ――――――――――――――――――

 

「それで、ワイドたちは無事なんだな?」
「ええ。ギリギリでコクピットへの損傷は免れたようです」
「不幸中の幸い、か」
 さきほどの戦闘において、ワイド、ファンフェルト、サース、ホースキン、マーレ・ストロードの五人は撃墜されたものの、どうにか命までは奪われずにしのいだ。ここは流石と言っていいところだろう。
「救出したアークエンジェルのクルーは?」
「指示通り、丁重に取り扱っています」
「ま、軟禁には変わりないけどな。イルーゾォとホルマジオは?」
「重傷ではありますが、命に別状はありません」
「そうか………死んだのはサンドマンだけか」
 報告を聞き終えたスピードワゴンはため息をつく。この作戦で初めて知り合っただけの間柄だったが、仲間が死ぬのは耐え難いものだ。
「エンジェルダウン作戦………アークエンジェルは確かにダウンさせたが、もう一体の自由の天使は逃した、か。一番面倒なのを逃がしちまったのを成功と言っていいかどうか………フリーダムがどこに行ったのかはわからないんだな?」
「はい。そちらは別の部隊が捜索するそうです」
 スピードワゴンはキラのことと、そして彼にとって深い因縁のある吸血鬼となった、ヴェルサスのことを考える。
(もうじき戦争は終わる。そう思ったんだがな………)
 そう簡単にはいかないようだ。かつてディオを倒し、何もかもが解決したと思われた後、新婚旅行の途上でジョナサンがディオの逆襲によって殺されたように、まだ何かが起こる。そのような、嫌な予感がする。
「今ここにジョースターさんはいない。ジョセフもいない。ツェペリさんも、シーザーも………それでも」
 しかしスピードワゴンは不敵に笑う。
「負けはしないぜ」
 彼は知っているのだ。今いない人々に教わったことだ。恐怖を超えた勇気は、邪悪に負けはしないということを。

 

     ◆

 

 イルーゾォ(マン・イン・ザ・ミラー)―重傷
 ホルマジオ(リトル・フィート)―重傷
 サンドマン(イン・ア・サイレント・ウェイ)―死亡

 

 ドナテロ・ヴェルサス(アンダー・ワールド)―生存、逃亡

 
 

 エンジェルダウン作戦―――終了。成功か失敗かは、取り逃がしたキラとヴェルサスの、今後の行動による。

 
 

TO BE CONTINUED