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KtKs◆SEED―BIZARRE_第43話

Last-modified: 2011-01-29 (土) 22:50:33

 『PHASE 43:GUNDAM』

 
 

 銃(Gun)よ。
 戦場(Domain)よ。
 最強の兵器を持って、最悪の戦場を支配する者よ。それは戦士(Gun Domain)―――ゆえにその名は『ガンダム』。

 

 ガンダム、それは兵器であり、それは戦場であり、それは戦士である。
 ガンダム、それは兵器でしかなく、それは戦場ではなく、それは戦士でしかない、はずだった。

 

 だがそれは、もはやそれだけでは納まらない。
 ガンダム、それは兵器にして、それは戦場にして、それは戦士にして、それはそのすべて。すなわち―――戦争なり。戦争という時代そのものなり。
 たとえ忌わしく血濡れようとも、それは人間の歴史そのものなり。歴史は過去となり、未来に語り継がれてゆく。

 

 ゆえにガンダム―――それは物語である。

 

     ◆

 

「おおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ギャハハハハハハハハハハーーーッ!!」

 

 雄叫びと哄笑が激突する。
 その有様は、到底MS同士の戦いではない。拳や蹴りが飛び、牙と爪が唸る。
 出鱈目なれど、苛烈で容赦のないガイア――エボニーデビルの猛攻を、ファフニール――シュトロハイムは軍隊流の実戦格闘術で迎え撃つ。金属同士がせめぎ合う、けたたましい音が響き渡った。

 

「ウケケケッ! よく動くじゃねーかぁ。けどよぉ、所詮人間の技術で作られた物だ! スタンドの動きに、どこまでついてこれるかなぁ!!」
「フンッ! 連合軍の技術力は世界一ィ!! 能力にあぐらをかいている貴様ごときに、勝てぬ道理などあるかぁ!!」
 シュトロハイムは、相手の台詞からこの敵が新技術で造られたMSではなく、スタンド能力によって怪物化したものであると認識した。
 もしも彼がスタンド使いであれば、ガイアと重なるようにうっすらと、アフリカの先住部族が作った呪術人形を思わせる、まぶたも瞳も無い玉のような二対の目と、一対の触覚を持った、表情の無い不気味なスタンドがナイフを構えているのを見ただろう。
(ただのMSではないとわかってはいたが、MSを操るようなスタンド使いがいたとはな………。これはブチャラティから説明を受けたところの、物質と同化するタイプのスタンドだろう。ならば、物理的に破壊することは可能なはず。ならば勝ち目は、確かにある!!)
 敵がスタンドという、通常は並みの人間では抗しえない超常の存在であると理解しながら、シュトロハイムの戦意は微塵も衰えはしなかった。むしろ勝利の希望さえ見出し、改めて構えをとる。
(確かコイツは、ガイア。もともとはザフトの機体で、地上戦に優れるが、飛行能力は無い。空から攻撃すれば有利に戦えるか………いや、今飛べば、その隙にここを突破される。今、俺以外にとコイツを止める者はいない。ミネルバが落とされてしまう)
 このまま地上にとどまって戦うしかないと判断し、シュトロハイムは装備を確認する。
 元々ファフニールは近接格闘戦を得意とするMS。圧倒的機動力を生かし、至近距離ならばリスキニハーデン、中距離ならビームガトリング砲で戦い、隙あらば、目からの高出力ビームで撃ち抜くのが常套。
(しかし問題は、ファフニールが今まで常勝不敗であれたのは、他のMSを凌駕する機動力、敏捷性ゆえ。だがコイツの機動力はファフニールに勝るとも劣らぬ。上手くきめられるか………)
 改造型ヴォワチュール・リュミエール、『シュラム・ベトラハター』を使えば更なる加速が見込めるが、距離を詰めるのには使えても、小回りがきくとは言い難く、白兵戦ではあまり意味が無い。
(もう一つ………装備があるが………)
 シュトロハイムは、格闘戦の為に強化した拳を見る。そこには、ただ強度を高めただけではない、今までのMSには無い武器が存在していた。
(だがこいつはまだ完全ではない。一度使えば、手自体が使い物にならなくなる。おいそれとは使えん………クソッ、最初に殴った時に使っておけばよかった)
 シュトロハイムは歯ぎしりをして悔しがるが、今更仕方がないと思考を改め、敵の動きを見据える。すると、エボニーデビルは獣型のMAから、MSの形態に姿を変えた。
 MS形態の頭部にも口が裂け、目はギョロギョロと飛び出し、牙が鋭く光っている。シュトロハイムが黙って睨んでいると、突然、首をドリルのように急回転させ、耳障りな笑いをあげた。
「ぶばははははははははあっ!! 獣の形も面白かったが、やっぱこっちの方が動かしやすいな」
「噛み付いたり、引っ掻いたりするのはやめたのか。ドラ猫め」
「ギャハハハ、そうだな。お遊びはお終いだぜ………死ね」
 エボニーデビルはいきなりビームライフルを抜いた。その動きにはよどみが無く、一流のガンマンに匹敵する。ただスタンド能力というだけが理由ではない。本体であるデーボの、暗殺者として危険を潜ってきた、修練と経験のたまものというところだろう。
 しかしシュトロハイムも負けてはいない。発射されたビームを、シュラム・ベトラハターによって加速することで、間一髪で避ける。その直後、方向転換してエボニー・デビルに向かって突進する。
「甘いってんだよぉ!!」
 エボニーデビルはすぐさま両腰に備え付けられた、二本のヴァジュラビームサーベルを放った。振り下ろされた刃の前に、シュトロハイムは急ブレーキをかけて、後ろに下がる。ただ下がるだけでなく、腹部にあるビームガトリング砲を放つことを忘れない。
 このビームガトリング砲も多少の改造を施されており、ビームの威力を調節することで、よりエネルギー効率のいい運用を可能としている。
 名も新たに『ラインゴルト』―――ワーグナーの歌劇『ニーベルングの指輪』の序章である、『ラインの黄金(ラインゴルト)』よりとってシュトロハイムがつけた。
 更にいえば目に備え付けられた高出力ビーム砲につけられた名は『ヴァルハラ』、『戦死者の館』を意味し、北欧神話における、主神オーディンの居城の名前である。
 ともかく、放たれたビーム弾によってエボニーデビルは足を止め、追撃の剣を振るうことはなかった。

 

(コイツの動き。無茶苦茶なようでいて、実のところ無駄や迷いというものが一切ない。危険だな)
 その評価は正しい。かつてポルナレフとの戦いの時も、エボニーデビルの動きは乱雑なようでいて、的確にポルナレフの動きを封じ、自分が有利な戦況に誘導して、確実にダメージを与えていった。実に頭脳的な相手なのである。
 対するシュトロハイムも直情的な男と見られがちだが、考え無しでは決してない。スパイを放って情報を収集し、綿密な安全管理に気を配る男である。ただ、柱の男たちとの戦いでは、そんな慎重さを持ってしても勝てぬほどに、敵は強大であったが。
(ケッ、小細工を。だが単純な猪武者ではないということか。油断できねえ………)
 エボニーデビルも、シュトロハイムの性質をある程度感じ取り、次の行動に移る。
「うっぜえんだよぉ! ガルルルーッ!!」
 ビームライフルが再び放たれた。だが狙いはファフニールそれ自体ではなく、その周辺の地面や建物であった。
「ぬ、何を!」
 距離を置くシュトロハイムの疑問は解消されずに、次々と爆発が起こり、それによって爆煙が立ち込める。
「これは………目くらましか」
(だがこちらが見えないのは向こうも同じはず………いや待て。コイツとは別方向から、本体であるスタンド使いがこちらを見ている可能性がある。爆煙に邪魔されずに、俺を見れる方向から。となれば、視覚的にはこちらが不利か)
 緊張が高まった瞬間、煙の中で影が動いたのが感じ取れた。シュトロハイムは反射的にファフニールを動かし、気配の方向へとビームガトリング弾を撒き散らす。光弾は煙を貫き、幾つかは確かに影に命中した。が、
(おかしい! 反応が無さ過ぎる!)
 シュトロハイムが嫌な予感を覚えたとほぼ同時に、影が飛ぶように煙の中から躍り出る。しかし、それはエボニーデビルではない。
「ウィンダム!?」
 それは先ほど、エボニーデビルにコクピットを噛み潰されて横たわった、ウィンダムの残骸。今は更にガトリング弾の傷も増えている。残骸はファフニールに向かって飛んでくる。勿論、既にパイロットも息絶えたMSがこのように動けるはずがない。動かしたのは、
「ひっかかったなダボがぁ!!」
 ウィンダムが飛び出てきた直後、後を追うように煙を散らして現れたエボニーデビル。そしてその手にはビームサーベルが、ファフニールに先端を向けて握られていた。
 シュトロハイムは突進してくるエボニーデビルの姿を見て、自分が策にはまったことに気付いた。今、自分とエボニーデビルの間にはウィンダムが存在する。
 エボニーデビルは、ウィンダムをサーベルで貫き、更にファフニールをも貫こうと言う算段だろう。対して、こちらにはウィンダムごとエボニーデビルを破壊できるほど威力のある武器が無い。
 リスキニハーデンでも高出力ビーム砲『ヴァルハラ』でも、ウィンダムを破壊するにとどまってしまうだろう。
(では避けるか? 駄目だ! 避けた体勢からでは、奴の素早い攻撃に対応しきれん。追撃をくらって、結局やられるだけだ! どうする!?)
 シュトロハイムの命運は、もはや2秒に満たぬ時間でとれる、次の行動にすべてがかかっていた。

 

(そうだ、あいつなら………どうする?)

 

 絶体絶命の危地に陥ったシュトロハイムの脳裏によぎったのは、走馬灯ではなくある一人の男のことであった。
 彼の魂に刻まれた、一人の男。本来は国家的にも敵同士の間柄で、規律と愛国の人であるシュトロハイムとは、気の合わないはずの不真面目で自由奔放な男だった。だがシュトロハイムをして尊敬に値する勇気と正義を持っていた。
 頭が回り機転が利き、冗談と悪戯が大好きで、そしてどのような強大な敵に対しても、どれほどの圧倒的な危機に陥っても、それを乗り越えていった男だった。
(あいつならば………)
 あの男ならば、まず、諦めることはしないだろう。逃げるにせよ、迎え撃つにせよ、彼はどのような状況も勝利へと繋いでいく。そして彼のことを思い出した時、シュトロハイムに起死回生の手が浮かんだ。
「!! そうだ! 今使わないでいつ使う!!」
 シュトロハイムは拳を握り、最後の力を機動させた。リスキニハーデンの光刃が消えたと同時に、右拳が赤い光に包まれ、空気が鳴動する。
 そしてその赤い拳を、シュトロハイムは迫るビームサーベルの先端に合わせ、突き出した。普通であれば、拳はビームサーベルに貫かれ、爆発するはずである。だが今の光景はどうか。赤い光に触れたビームサーベルは、逆に砕け散らされていた。
 そのままビームサーベルをかき消し、サーベルに貫かれたウィンダムを殴りつける。瞬間、拳から赤い光が流れ込むようにウィンダムの体表を走り、爆発を起こした。
 爆発はウィンダムの半分近くを吹き飛ばした。ビームを放射しているビームサーベル本体にまで、その爆発は及び、エボニーデビルの右手まで破壊される。
「何だぁ!?」
 エボニーデビルは驚愕しながら、思わず引きさがる。そこでシュトロハイムは止まることなく、左拳を握りしめた。左拳もまた赤い光に包まれる。それは、ファフニールに秘められた最後の武器。
 ファフニールの拳はロケットのように発射できるが、これは本来武器としての機能ではない。『フォックスノット・ノベンバー』の戦いでハイネ相手に使いはしたが、あくまで敵機の破壊ではなく、ビームトマホークを止めるためだけの使用だ。
 このロケットパンチに破壊力はほとんどないし、空気抵抗や重力の影響を考えると、地球圏内では使えやしない。そう、これは武器ではなく、拳を簡単に交換できるようにするための機能なのだ。
 ファフニールの拳に秘められた装備は、一度使うと、その威力ゆえに二度と使いものにならなくなるがために。
「くらうがいい!! これが最後の武器!!」
 シュトロハイムはが吠える。
 拳をまとう赤い光は、ビームシールドの一種だ。ザムザザーなどにも使われ、戦艦から発射される高主力ビームをも防ぐ高機能の防御システムであるビームシールドを、格闘用の武器として使ったものである。
 ビームエネルギーを展開していられる時間は短期間であるが威力を高め、たとえ相手もビームシールドで防御したとしても、そのシールドさえ突き破ることが可能である。ただビームシールドで直接殴りつけたのでは破壊力が足りない。
 そこで、拳を打ち込んだ直後、ビームシールドのエネルギーを意図的に暴走させ、大爆発を引き起こす機能を付け足した。結果として現時点で存在する全ての防御機能を貫くことができ、MSならば確実に一撃で破壊できる武器が誕生した。

 

 名付けて『ガントレット・オブ・ダメージ』。一回使っただけで拳が耐えきれず、砕け散ってしまうこの武器は、自他共に傷つける、まさに諸刃の剣。

 

 あまりにデメリットが過ぎるため、シュトロハイムと言えど今までに使ったことはなかった。それでも、この武装を外さずにおいたのは、ただの感傷であったのだろう。
(それがここ一番で役に立つとは、思わなかったが………見ていろイギリス人!!)
 そして赤い光の拳が、エボニーデビルの左胸、心臓部へと突き刺さる。同時に、エネルギーがエボニーデビルに注ぎ込まれ、体表を、赤い『波紋』が広がった。その光景こそは、シュトロハイムが役に立たないと考えてなお、この武器を手放さなかった理由。
 かつて吸血鬼を、柱の男を打倒した、闇を照らす太陽の力。シュトロハイムの思い出に焼きつく、生命の輝きそのもののエネルギー。それを思い起こさせてならぬ光景。思うだけで勇気が湧いてくるような情景。ゆえに、シュトロハイムは叫ばずにはいられない。

 

「波紋疾走(オーバードライブ)!!」

 

 ドッゴォォウウウウウウウウンンン!!

 

 声と共に閃光が炸裂し、エボニーデビルの、ガイアの上半身が吹き飛んで消滅した。下半身はゆっくりと後ろ向きに倒れ、機能を完全に停止する。
 呆気ないと言えば呆気ない、悪魔の終焉であった。スタンドによる攻撃でない以上、本体は無傷であろうが、これだけスタンドパワーを使ったのだ。この戦いではもう動けまい。
 一息つき、シュトロハイムは、砕けた両手を見つめる。

 

「………やはりこいつはいかんな。もう両手が使えん。この場は退くしかないか。まったく、やはり貴様は気に食わんな。ジョセフ・ジョースター」

 

 文句を口にしながらも、隠しきれない親愛の情を感じさせる呟きを最後に、シュトロハイムは戦場を退く。しかし、その短時間の宣戦は、この戦場にあるMSの中でも上位から十番以内に入る怪物を撃ちとったのだ。
 もしシュトロハイムがいなければミネルバを落とされていたのは、間違いないところであったろう。

 

 しかし、2機の怪物的MSが戦場を去っても、戦争はまだ終わらない。

 

 物語(ガンダム)はまだ終わらない。

 

   ◆

 

 インフィニットジャスティスにインパルスを破壊されたルナマリアは、コアスプレンダーのみでミネルバに戻ろうとしていた。しかし、そこを敵側のザクによって追撃を受け損傷し、どうにか逃げ延びて和平式会場の付近まで来たところで地面に不時着する。
「あーもう! かっこ悪い!」
 思わず愚痴をこぼしながら、ルナマリアは外に出ようとする。だが、ハッチが開かない。
「………え? 嘘でしょ?」
 一瞬でルナマリアの顔が青ざめる。冗談ではない。ここはいまだに戦場なのである。このままここにいては、下手をすればこのコアスプレンダーを棺桶にして終わることになる。
「冗談じゃないわよ! 開きなさいよ!!」
 泣こうが喚こうが、それで機械が直るわけはない。そうこうしているうちに、ルナマリアの顔色を更に悪くする事態が起こる。
 コアスプレンダーのエンジン部の熱量が以上であるというデータが、スクリーンに表示されたのだ。明らかに暴走している。すなわち、まもなく爆発する可能性が高い。
「そんな、だ、誰か助けて………」
 そして彼女は、名前を呼んだ。最もここにいてほしい人の名を。
「ブチャラティさん!!」
 そして予想外なことに、
「ああ、何かな?」
 答えが返ってきた。

 

「………ほえ?」

 

 間の抜けた声を出すルナマリアの右手首を掴むと、いつの間にかコクピット内に顔を出したブチャラティは彼女を引っ張る。そして、開かれたジッパーの中に引き込み、素早くルナマリアを外に連れ出した。
 コアスプレンダーが爆発したのは、その直後だった。

 

「ふう……危機一髪だったな」
 まだこの幸運が信じられないという表情で茫然としているルナマリアを抱き、安堵の息をつくブチャラティ。やがて、状況が分かると、今度はルナマリアの顔が赤くなる。
「あ、あの、ありがとうございます。またまた、助けていただいちゃって………」
 ブチャラティの手はまだルナマリアの手首をつかみ、もう一方の手を肩に回し、胸に抱き寄せているのだ。地獄から天国という状態に内心パニックになりそうなほど興奮しつつ、何も言わずにもうしばらく今の状態を楽しもうと考えていたルナマリアだったが、
「………オホン、もう、離してもいいんじゃないか?」
 のしかかってくる氷のような、重く冷たい声が、発せられた。
「………レナ『おば様』」
 ルナマリアは赤い顔を急速に冷まし、思い切り嫌そうに彼女のことを呼んだ。
「………ただでさえ、ブチャラティ隊長は先日の任務で右足を失うという重傷を負っている。義足は付けたものの、本来ならまだ休んでいても不思議ではない。
 それを無理して仕事しているんだ………そして『子供』がドジを踏んだせいで更に無理をさせる羽目になった。もう勘弁してもらえないだろうか………。ああ、それと、お前が無様に落ちるのを見つけたのは私だ。私にも礼の一つは無いのかな?」
「へえ、それはどうもありがとうございます『おば様』。御歳の割に、目がよろしいんですねえ」
 二人が睨みあう空間の中、ブチャラティは脂汗を流しながらも、言葉を絞り出す。
「ああいや………ここにいても仕方ない。ひとまず移動を………」
 だがそこで、ブチャラティの表情が張り詰めた厳しいものへと切り替わる。

 

「『スティッキー・フィンガーズ』!!」

 

 ブチャラティのスタンドの拳が大地に振り下ろされる。拳が大地を叩く前に、大地から、別の拳がせり上がった。大地から生えた腕はスティッキー・フィンガーズの一撃をたやすくはじく。

 

「くうっ!!」
 ブチャラティはすぐさまルナマリアを更に抱き寄せる。レナも片腕で抱くと、二人と共に後方へ下がり、大地から生えた腕と距離を置く。
 ブチャラティが腕から5メートルほど距離を置いたところで、その腕の更に先が、肩、胸、頭と順に、大地の底からせり上がってきた。
「ち、地面から伝わる振動か何かで、わかっちまったのかぁ。ええ、国語の先生よぉ〜」
 相も変らぬ濁った眼で、全身を奇妙なダイバースーツのごときもので包んだ男はこちらを見る。

 

「まあいい。今度こそ、てめーをグジャグジャにしてやりにきたぜぇ?」

 

 ブチャラティとセッコ、二人の3度目にして、最後の戦いの幕が、今開いた。

 
 

TO BE CONTINUED