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LOWE IF_12_第01話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 23:12:39

 目覚めて、まず感じたのは、痛みだった。
 (ここはどこだろう?確か僕はアスランと戦って、それで…、とんでもない衝撃が来て…。)
 そこまで思い出したところで、ドアの開く音がした。
 「よう、少年。」
 入って来た人に、キラは絶句した。
 左顔面がズタズタになっているが、その人は間違い無く自分が殺したはずだからだ。
 「まあ、今ではこんな顔だが、僕のことは判るね。」
 「バルトフェルドさん…。」
 (ここはあの世だろうか…?死んだはずの人がいるなんて…。)
 「どうだい、体の調子は?ちなみに、ここは天国でも、もちろん地獄でもないぞ。」
 心の中を読まれたような言葉に、キラは驚いた。
 が、その前の質問に答えるために、体に意識を向ける。
 体全体が、ひどく痛い。 骨が折れているのか、かなり痛む。
 「大丈夫……、じゃないと思います。」
 キラは他人事のように言う。
 寝起きやらで、本当にこの痛みが、他人事のように思えているからだ。
 「そうか。痛み止めは、飲むか?」
 「いえ、いいです。それよりも……。」
 「状況が知りたい、かね。」
 「はい。」
 「いいだろう。」

 バルトフェルドは、戦闘があった所のジャンクを売って、生計をたてているので、
 キラ達が戦った所にも行き、そこでストライクを見つけた。
 それで、ボロボロになったストライクのハッチをこじ開けたところ、
 キラが見つかったので、手当てをしたと、バルトフェルドは説明した。
 「…でもバルトフェルドさんは、ザフトの人でしたよね?」
 今の説明だと、バルトフェルドは軍人を辞めたことになる。
 ザフトが、負けたといえども『砂漠の虎』を手放すなんて事は、考え難い。
 むしろ本国で、『還って来た英雄』などと祀り上げられそうなのは、目に見えている。
 「僕は…、逃げてきたんだよ。アイシャが死んで、それで自分が生きていて、
  そんな僕が嫌になって、それで、…逃げ出したんだ。卑怯な男だろ?」
 「………。」

 キラは知っている。 大きな期待をかけられるというのが、とてつもないプレッシャーなのを。
 それに応えられず、そして愛する人を失ったのだ、逃げたい気持ちは良く分かった。
 そして…、
 「君には、いろいろなモノを奪われた……。」
 その全てはキラのせいなのだ、恨まれていないはずが無い。
 バルトフェルドの言葉に、キラは背筋に冷たい物が通った気がした。
 だが、
 「だからって憎んだりはしないよ、僕のほうから仕掛けて、いやそれ以前に戦争だったんだ。
  憎む方が、筋違いさ。」
 「本当に、そうなんですか?」
 「まあ、僕が意気地無しなだけかもしれないけどね?」
 どうやらバルトフェルドは、キラを恨んでいなかったらしい。
 それが良いのか、美しいかは関係無く、キラには嬉しいことだった。
 全ての人が、バルトフェルドの様な人ではないかもしれないが、自分の犯した罪が
 許されたからだ。
 無論、それが人殺しを犯していいという理由にはならない。
 しかし、少しだけキラの心の重しが、軽くなった気がした。
 
 突如、キラの腹の音が鳴る。
 「ああ、何日か食べなかったことになるから、当たり前か。
 お粥を作ってあげよう。」
 「あ、ありがとうございます。」
 バルトフェルドが、部屋から出て行く。
 キラの思考は、アークエンジェルや、アスランの方に移っていった。
 
 
         アラスカ――JOSH-A
 
 
 アークエンジェルのクルーは、アラスカ入港後、下船を許可されなかった。
 数日たってマリュー等は、艦内のブリ―フィーリングルームに集められ、
 そこで査問会が行われた。
 「軍令部の、ウィリアム・サザーランド大佐だ。
  諸君等第8艦隊アークエンジェルの審議、指揮、一切を任されている、座れ。
  既にログデータはナブコムから回収し、解析中であるが、なかなか見事な戦歴だな、
  マリュー・ラミアス艦長。」
 「………。」
 「では是より、君達からこれまでの詳細な報告、及び証言を得ていきたいと思う。
  尚、この査問会は軍法会議に準ずるものであり、ここでの発言は、全て公式なもの
  として記録されることを申し渡しておく。各人、虚偽のない発言を。よいかな?」
 「はい。」
 「ではまず、ファイル1。ヘリオポリスへのザフト軍奇襲作戦時の状況。
  マリュー・ラミアス当時大尉の報告から聞こう。」

          ―数日前―
 
         オーブ飛行艇内
 
 
 アスランは、自爆した後付近の島に打ち上げられているのを、
 アークエンジェルから連絡を受けたオーブに発見され、回収された。
 「ううっ。」
 「気がついたか。」
 アスランはまだ完全に覚めていない目で、周りを見渡す。
 目の前には、アスランも知っている少女、カガリが銃を構えて立っていた。
 「ここはオーブの飛行艇の中だ。我々は浜に倒れていたお前を発見し、収容した。」
 「オーブ、か。」
 「…聞きたいことがある。ストライクをやったのは…、お前だな…。」
 「……あぁ。」
 そんなこと当たり前だ、といわんばかりに、アスランは普通に答える。
 「ぅ!…パイロットはどうした!お前の様に脱出したのか?…それとも…。」
 アスランはカガリの言葉を受けて、ふっ、と小さく笑う。
 「見つからないんだ!キラが!…なんとか言えよ!」
 勢いこそあるが、不安な声だ。
 アスランは、ボンヤリとした頭で、質問に答える。
 「あいつは…、俺が………、コロシタ………。」
 一瞬、部屋の中の時間が、止まったようになった。

「殺した…、俺が…、イージスで組み付いて…、自爆した…。
  脱出できたとは…、とても思えない…。」
 軽く棒読みの様な口調で、アスランは続ける。
 その内容はカガリにとって、心の片隅で思いながらも、決して認めたくないものだった。
 別れる時に、「死ぬな!」と、カガリは言い、キラはそれに「大丈夫。」と、応えてくれた。
 それをずっと信じていた。
 ストライクの撃墜を聞いた時も、ストライクがまったく見つからないと聞いた時も。
 …今、目の前にいる少年の言葉を聞くまでは………。
 アスランが嘘を言っている可能性もあるが、少なくとも、カガリの知っている
 アスラン・ザラは、嘘を言うとは思えない。
 それに、今のアスランはボンヤリしていて、とても嘘を言う状態ではない。
 「それしかもう、…手がなかった、…あいつを殺すには…。」
 カガリの心を他所に、アスランは続ける。
 アスラン自身、ただ頭に浮かんできた言葉を喋っているだけかもしれない。
 「でも…、何で俺、生きてるんだ?……あの時脱出しちゃったからか…。」
 あくまでも真面目そうな自問自答だ。
 「うっ、うっ。」
 カガリは後悔するしかなかった。
 (あの時コイツを殺しておけば、…キラは死なずに済んだ…。)
 感情の爆発を抑えきれずに、銃をアスランの頭に突きつける。
 「お前が…、俺を撃つからか…。」
 自分が殺されそうなのに、なおも冷ややかとした言葉に、カガリはより腹を立てる。
 「キラは…!危なっかしくて、…訳分かんなくて、…すぐ泣いて、
  …でも優しい、…いい奴だったんだぞ!」
 「…知ってる…。やっぱり変わってないんだな、…昔からそうだ…、
  あいつは、…泣き虫で、甘ったれで、…優秀なのにいい加減な奴だ…。」
 「え、キラを知ってるのか!?」
 アスランの口から出た、思いもよらぬ言葉に、カガリは戸惑う。
 「…知ってるよ…、よく…。小さい頃から…、ずっと友達だったんだ…、仲良かったよ…。」
 「それで…、なんで!…それでなんでお前があいつを殺すんだよ!?くっ…。」
 カガリには、友達同士が殺しあうなんてことは、とても理解できない。
 「解らない…解らないさ!俺にも!ぅぅ…別れて…次に会った時には敵だったんだ!
  一緒に来いと何度も言った!あいつはコーディネイターだ!
  俺達の仲間なんだ!地球軍に居ることの方がおかしい!」
 その言葉の向き先は、カガリか、それともアスラン自身か…。
 「なのにあいつは聞かなくて…、俺達と戦って…、仲間を傷つけて…、ニコルを殺した!」
 「だからお前は友をっ、キラを殺したのか!」
 「敵なんだ!あいつはもう…、なら倒すしかないじゃないか!」
 さっきとは打って変わって、アスランは激情する。
「くっ…バッカ野郎!なんでそんなことに!なんでそんなことしなきゃならないんだよ!」
 「あいつはニコルを殺した!ピアノが好きで、まだ15で…。
  それでも、プラントを守るために戦ってたあいつを!」
 「キラだって、守りたいものの為に戦っただけだ!
  なのになんで殺されなきゃならない!それも友達のお前に!
  殺されたから殺して、殺したから殺されて、それでほんとに最後は平和になるのかよ!
  ホントに戦いでしか解決できなかったのか!
  それで満足出来たのかよ!
  オマエそれでもコーディネイターなのか!
  もっとその賢い頭で考えろよ!」
 「コーディネイターだって、出来ない事くらいある…。」
 カガリの執拗な言葉に、アスランはこうとしか反論できなかった。
 
 
 「なるほど、これが真のOPスピットブレイクか…、くくっ。」

 「GAT−01ストライクダガー、ブーステッドマン、セカンドXナンバー、
  これさえあればコーディネイター駆逐だって夢じゃない…。」
 
 「ほら、お粥だ。」
 「ありがとうございます。…熱っ。」

          ――誰がどう時を過ごそうとも、世界は動き続ける――
 

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