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LOWE IF_12_第04話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 23:13:18

アスランは、今プラント行きのシャトルの中にいた。
 それが発進し、急速に大地が遠ざかっていく。
 シャトルは雲を割り、どんどんと漆黒の宇宙に近づいていく。
 ふと下を見ると、旧世代の飛行機雲の様な物が見えたが、気にする事でもない。
 目を閉じて一つ息をつき、再び目を開いたら、無数の星が目に飛び込んできた。
 この無限とも思える宇宙のどこかに、コーディネイターブームの理由の一端である、
 宇宙鯨がいる。
 彼らに会ってみたい。
 それは、アスランの子供の時からの夢の一つだった。
 もっともそれは、プラントの子供の大半が持つ夢なのだが。
 彼らが何を教えられ、何を信じ、何を考えているか、今のアスランはとても知りたかった。
 知れば、この心の霞が晴れる気がしたから。
 プラントの独立のために始まったこの戦争は、コーディネイターとナチュラルが、
 互いを憎み、殺し合うものになっていった。
 その中には、ナチュラルがナチュラルを、コーディネイターがコーディネイターを
 殺す事もあっただろう、…自分の様に。
 議長となった父上は、この戦争をどう終わらせるつもりなのだろう?
 まあ、突っ走る所もあるが、聡明な父上の事だ、
 きっと上手くこの戦争を終わらせる戦略を練っているだろう。
 こんな事は終わらせたい。
 皆がこう思っていることを、アスランは願っていた…。

              アラスカ――JOSH-A
 
 
 砲弾がザウートに命中し、ザウートは爆発する。
 その爆煙からバクゥが踊り出て、ザウートをやった戦車を自重で押しつぶし、
 そのまま跳躍して、空からレーダードームを撃つ。
 そこに戦闘機がミサイルを当て、バクゥを地に落とし、そのバクゥは運悪く地雷に引っ掛り、
 爆散する。 その戦闘機はディンにあっさり撃ち落される。
 
 海上では、地球軍の船が砲弾を放ち、ミサイルで近づいて来るアジャイルを落とす。
 が、グーンの魚雷に当たり、あえなく撃沈された。
 そのグーンも、爆雷と対潜ミサイルの雨にやられる。
 
 そこへ、滝を割りアークエンジェルの白亜の艦体が現れた。
 「ウォンバット、ってー!!」
 マリューの指示と共に、ミサイルが放たれ、反応が遅れたディン一機に当たった。
 が、喜んでいる隙もなくディンが近づいてきた。
 「ミサイル来ます!」
 「取り舵30!グリーンチャーリーのディンにミサイル集中発射!」
 ノイマンが必死に舵を回すが、ミサイルが一発当たった。
 「右舷フライトデッキ、被弾!」
 艦載機の無いアークエンジェルには、大した事のない被害だが、このままじわじわと
 削られるのは危険だ。
 ミサイルは全て回避されたので、また攻撃を仕掛けてくるだろう。
 守備隊全体も、善戦しているものの、この少ない戦力では容易に突破されてしまう。
 「オレーグ、轟沈!」
 考えている隙も無く、凶報が飛び出してくる。
 「面舵25!オレーグの抜けた穴を埋める!ゴットフリート、てぇ!」
 閃光が走り、それはジンを貫く。
 「尚もディン接近!数6!」
 「主力部隊は全部パナマなんですか!?」
 サイは、眼下でジンが戦車を蹂躙している様を見やり、唸る。
 「ああ、そう言うことだね!」
 チャンドラがそれに答えた。
 しかし、接近するミサイルがそれ以上の会話を打ち消した。
 「ミサイル接近!24!」
 イーゲルシュテルンがそれをなんとか撃ち落とす。
 また艦が一隻火を噴き、撃沈される。
 「リューリク轟沈!」
 そういえばユーラシアの艦が多い…。
 しかしそんなこと考えている時ではない。
 またディンが迫って来た。

 ムウは人気の無い基地内をバイクで疾走していた。
 やっと戦闘機の姿が見えた。
 整備士が三人程いた、彼らに質問しようとバイクを降り、走る。
 が、シグーがマシンガンで駐機場を蹂躙する。
 「進入路確保!よーし、ナチュラル共はこの奥だ!行くぞ!」
 シグーのパイロットが隊員に伝え、続くジンがハッチを破壊し中に向かう。
 それを見送り、ムウは立ち上がる。
 戦闘機はほとんど破壊されたが、なんとか一人だけ生き残ったらしい。
 「おい!ここは撤退だ!基地は放棄される!ほらしっかりしろ!」
 その整備士は、辺りに散らばった同僚の肉片を見て呆然としている。
 ムウは彼の頬を引っ叩き、正気に戻らせた。
 「生き残った奴を集めて、早く脱出するんだ!
  最低でも、基地から10km以上離れるんだぞ!いいな!これは命令だぞ!」
 彼が走り去っていくのを見て、ムウは生き残った戦闘機に乗り込み、発進させた。
 「チィ!ヒーローは柄じゃねぇってのに!」
 
 
 戦闘が始まって何時間かしたころ、アークエンジェルは限界が近づいていた。
 「バリアント、1番2番沈黙!」
 「艦の損害率、30%を超えます!」
 「イエルマーク、ヤノスラフ、轟沈!」
 もう報告は、絶望的な事だらけだ。
 「既に、指揮系統も分断されています!艦長、これでは…。」
 トノムラもかなり絶望的な報告をしてくる。
 「パナマからの救援隊は?」
 「全然何にも見えません!」
 「友軍機接近!被弾している模様!」
 「着艦しようとしているの!?」
 マリューは慌てて艦内マイクで格納庫に伝える。
 「整備班!どっかのバカが一機突っ込んで来ようとしているわ、退避!」
 「おらおら、みなさんどいててくださいよぉ!」
 ムウは無理矢理着艦し、急いでブリッジに向かった。
 ムウがこの作戦の事を伝えると、皆顔面蒼白になった。
 ザフトの主力を引き込み、サイクロプスで壊滅させるという作戦だ。
 「戦争だから、私達軍人だから、そう言われたら、…そうやって死ななきゃいけないの? 」
 ミリアリアは、泣き出しそうな顔でだれとなく問う。
 「まあ、それが役目なわけだけどなぁ。」
 「でも今回は少し勝手が違うわ。」
 ムウの答えに、マリューが反論する。
 「あそこを攻めろと言われたり、ここを守れと言われれば、それも半分死ねという事
  だけど…、何も知らされずに自爆の巻き添えになれなんて…、割り切れないわ。」
 「じゃあどーすんの?」
 ムウが試すようにマリューの顔を見る。
 「ザフト軍を誘い込むのが、この戦闘の目的だと言うのなら…。」
 マリューは決意を決めて語りだす。
 「本部隊は既に、その任を果たしたものと判断致します!尚これは、アークエンジェル艦長、
  マリュー・ラミアスの独断であり、乗員には、一切この判断に責任はありません!」
 その言葉に、それぞれの乗員も意を決して持ち場の仕事に向かった。
 「本艦はこれより、現戦闘海域を放棄、離脱します!
  僚艦に打電!我ニ続ケ。機関全速、取り舵、湾部の左翼を突破します!」
 「そう気張るなって。」
 ムウが、マリューを落ち着かせる様に肩を叩いた。
 「脱出もかなり厳しいが、諦めるな。俺も出る!」
 「少佐…。しかしこの数では…。」
 マリューがムウの目をみつめる。
 「心配しなさんな、忘れた?俺は不可能を可能にする男だってこと。」

 ムウの乗ったランチャー装備のスカイグラスパーは、ディンの銃弾をひらりと避け
 アグニでそのディンを撃ち落とした。
 どうやらメインゲートはもう陥ちてしまったらしい。
 しかし、敵は殲滅するつもりなのか、隙間なく包囲している。
 海上では、少ない僚艦もどんどん撃沈されていく。
 そして…
 「後方より、デュエル!」
 会いたくない宿敵に、クルーは息を呑む。
 「足つき!今日こそ終わりだな!!」
 そしてまだまだ敵がやってくる。
 「ジン接近!5!」
 「取り舵20!」
 「64から72ブロック閉鎖!艦稼働率、43パーセントに低下!」
 「うわぁぁもう駄目だぁ!」
 カズイは、もうパニック状態だ。
 「推力低下…艦の姿勢、維持できません!」
 ノイマンは、もうほとんどきかない舵を力任せに回す。
 そこに、ジンが対空砲火を越えて艦橋の前に肉薄する。
 ジンの単眼が光り、マシンガンの銃口を艦橋に向ける。が――
 「うおおおおぉぉぉぉ!!!」
 空から現れたストライクが、ビームサーベルを一閃し、ジンを真っ二つにした。
 そして、落ちてきたシャトルが水飛沫を上げて、その姿を威圧的なものにした。
 
 
 
   ―無理を成してみせることが、本当の有能なのさ―
                  ―ムウ・ラ・フラガ―

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