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LOWE IF_58_第01話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 23:18:41

広く暗い議長室に男性が二人、テーブルを挟んで座っていた。
一人はこの部屋の主であるプラント最高評議会議長、ギルバード=デュランダル。もう一人は10代後半〜20代前半ぐらいの茶髪の青年だった。

「ついに始まっちゃいましたね……戦争」

青年は憂鬱そうに呟きながら、手に持った黒のナイトをテーブルの上にあるチェスボードに置く。

「我々人類は常に争いを生み、そして続けてきた。争いを誰もが望んでいるわけではないのに、だ」

デュランダルはそう言うと、白のクイーンを少し動かした。

「しかしそんな負の連鎖もそろそろ終わらせなければならない、ですよね?」

青年が口元に小さな笑みを作りながら言う。

「先に言われてしまったか……その通りだよ、キラ。そんな負の連鎖など今すぐに断ち切らなきゃいけない、君はそう思わないかい?」

デュランダルも口元に小さな笑みを作りながら話す。が、彼の瞳は決して笑ってはいなかった。

「僕は世界がどうなろうが別に構いませんよ。ただこの戦争が終わった時、その時僕は二人もいません。生き残るのは……僕だけです」

キラと呼ばれた青年はそう言って、黒のクイーンを上にずらした。

「チェックメイトか、君は本当に強いよ。……さて、そろそろアスランの所に行ってあげなければ。彼が私に面会を要求してきているのでね」
「アスランが?」
「あぁ、アスランだ。彼も本当に私の期待通りに動いてくれるな、嬉しい限りだよ。……ではまた後で会おう、キラ」

デュランダルは言い終わると同時に部屋を後にした。部屋にはキラ一人が残された。
残されたキラは席を立ち上がると、デュランダルの座っていた議長席に移動した。そして、席に座ると同時に高笑いをしだした。

「アハハハハハ!アスランが戻ってくる?そうか、まさか同じザフトの軍人として再開するとはね。……戦場で再び殺し合うのを楽しみにしてたのにな」

その時のキラの表情は傍から見ればとても綺麗な笑顔だった。だが、その笑顔が本当は酷く醜い歪んだものだったということは、誰も知らない。


「……はい、そうです。それでお願いします。これはデュランダル議長からの特命なのでくれぐれも内密にお願いします。……でわ」
受話器を置いたキラは椅子にもたれかかかり、大きく伸びをする。

「さて、これで準備は整った……多少強引だったかもしんないけど、このくらいしなきゃ彼女達は出てこないもんね。さぁ、再び表舞台に出てきてもらうよ……ラクス=クライン」

不気味な笑みを浮かべながらキラはそう呟くと、黒いコートを羽織り部屋を後にした。

一方デュランダルは、ザフトレッドの制服を再び身に纏ったアスランと共にいた。アスランの制服の左の襟元では、デュランダルから与えられたフェイスの徽章が燦然と輝いていた。
デュランダルと別れの挨拶を済ませたアスランは、新たな愛機に乗り込むと一度深く息を吸った。

(オーブの情勢も気になるところだろうから、君はこのままミネルバに合流してくれたまえ。あの艦には私も期待している、以前のアークエンジェルのような役割を果たしてくれるのではないかとね。君もそれに手を貸してやってくれたまえ)

デュランダルの言葉を思い出したアスランは再び深く息を吸い、そして叫んだ。

「アスラン=ザラ、セイバー発進する!」

アスランを見送ったデュランダルは一息つくと、後ろを振り向いた。そしてそこには全身黒尽くめの格好をした男が立っていた。

「何時からいたんだね?」
「フェイスの徽章を渡した辺りからですかね……ずっと隠れてたんですよ」
「まだ顔を見せないってわけか……そういえばどうだったかい、久しぶりの親友との再会は?」
「議長が前に言ってた通りですよ、全くもって覇気を感じませんね。あの時のアスランはあんな腑抜けてなかったのに……」
「そうがっかりしてくれるな。あれでもパイロットの腕だけは確かなのだからね」
「さぁ、それもどうなんでしょうね?……今のままだとあっさり殺せちゃいそうで面白くないですよ」
「……そんな事を言わないでくれたまえ、これから君達には共に戦ってもらうと言うのに」
「アハハハ、冗談ですよ……少なくとも今は殺しませんよ、今は」

一瞬キラは満面の笑みを見せたが、またすぐに表情を戻し淡々と語る。

「今のアスランを殺してもしょうがないんですよ。それに……議長を敵に回すのは僕にとって厄介になるんで」
「そうか、それならよかったよ。こちらも君を必要としているのでね……そうだ、例のMSの件だがもうすぐ完成するそうだ」
「そうですか……これで僕ももう一度戦えますね」
「君には期待してるよ、キラ」

デュランダルの言葉に笑顔で返したキラは、そのままその場を後にした。そして、誰にも聞こえないほどの声で一言だけ呟いた。

「……もうすぐ終わりの始まりが始まるんだ」

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