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LOWE IF_58_第02話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 23:18:33

無数の星が煌く宇宙を一機の輸送艦が地球に向かい進んでいく。その輸送艦の中にはデュランダルがいた。
デュランダルの両隣には白服と赤服の男が二人いて、二人とも制服の左の襟元にはフェイスの印が輝いていた。

「ハイネ、君は地球に降りるのは初めてかい?」

デュランダルが白服の青年に尋ねた。ハイネと呼ばれた白服の男はデュランダルの方に向き直ると、

「はい、自分は今回が初めてになります」

難い言葉でデュランダルに返すハイネ。その様子を見ていた赤服の男は、何故か少し微笑んでいた。

「何がおかしいんだよ、キラ?」
「ハイネが敬語を使う姿見たら笑っちゃって。人には敬語使わせないくせに、自分は使うなんておかしいよ」
「キラ、オレが今話していた御方は議長だぞ。いくらオレと言えども敬語を使うのは当たり前だ」
「でも、やっぱりハイネが敬語なんておかしいよね」

キラが再び微笑する。そして、二人のやり取りを窺ってたデュランダルが口を開いた。

「ハイネ、そう難くならなくていいのだよ。現にここには私達三人しかいないじゃないか。それにこんな時ぐらいしか、私も気を緩める事が出来ないのでね」
「議長、そのようなお言葉自分にはもったいない……」
「アハハハ、だからハイネ難すぎだって。もっと楽にしなよ」
「難くて悪かったな!大体オレには何でお前が議長を目の前にして緊張しないのかが不思議だよ……そういえばよ、お前は地球行ったことあるの?」

ハイネの言葉を聞いたキラは突然窓の方へ振り向いた。そしてしばらく外を見つめ、一言呟いた。

「一度だけ……一度だけあるよ」

キラの脳裏には地球に行った時の記憶が甦っていた。キラはその記憶をすぐに振り払おうとした。
何故ならキラにとっては、地球での思い出などどれも苦々しいものばかりだからだ。しかし、一つだけどうしても振り払えないものがあった。

それはキラが自分を失った時。

宇宙を駆ける輸送艦はもうすぐ地球に降下しようとしていた。
デュランダル一行が地球に降下している頃、ミネルバはディオキアのザフト軍基地を目指していた。
「ユニウスセブン落下事件」以降、ミネルバは様々な戦いを戦い抜いてきた。
オーブ沖の海戦ではインパルスのパイロットであるシン=アスカの鬼神の如き活躍により連合を退け、
インド洋では奪取されたセカンドステージのMSとウィンダムの大部隊を相手に帯同していたボスゴロフ級を撃破されたものも何とか撤退させ、
ガルナハンではマハムール基地のザフト軍と共に難攻不落と言われていたローエングリンゲートを攻略した。
このような激戦をなんとか制してきたミネルバは、今ディオキアで一時の休息を得ようとしていた。
ミネルバがディオキアに入港した時、ちょうど上空から3機のザクが降りてきた。そして、その3機の中心にいるザクの手の平には一人の黒髪の美しい女性が立っていた。

「ミーア=キャンベルだ!」

ミネルバクルーの一人が叫んだ。ミーア=キャンベルとは、ラクス=クラインの居ないプラントで国民から絶大な支持を得る女性歌手だ。
高い歌唱力と定評のあるダンス力、そして豊満な胸とスラリとした美しく長い脚を強調した露出度の高い衣装を身に纏うミーアは、いまやプラントの新しい「歌姫」と言っても過言ではなかった。
そして今、ミーアは戦いに疲れた兵士達を慰問する為に地上のザフト軍基地を転々としていたのだった。
この日はこのディオキア基地に訪れる日予定だった為、ミネルバクルーはこのライブを観戦する事が出来たのだ。

「やべぇ、ミーアちゃん超かわいくねぇ?」
「気持ち悪い声出してんじゃねぇよ、ヴィーノ」
「おい、シン!お前はミーアちゃんを見て何にも思わないのか?」
「あぁ、何にも」

ミネルバクルーの男性陣の大半がミーア=キャンベルを見て興奮している中、シンはとても冷めていた。

「はぁー、うちのエース様は色事に関しての関心はゼロなのかね?副艦長なんかあの興奮ぶりだぜ」

ヴィーノが一人ディオキアの兵士達と共に飛び跳ねるアーサーを見てため息をつきながら話していた。

「知らねぇよ。レイ、先に艦に戻ろうぜ」
「あぁ、そうするか。ルナマリア、お前はどうする?」
「えっ、私?……うん、私も戻ろうかなぁ」

レイに突然話しかけられ不意を突かれたルナマリアは、少し曖昧な回答をした。

「ルナ、戻るんだったら早く来いよ!レイ、先行くぞ」
「あぁ」
「ちょ、ちょっとシンってば!」

三人はミネルバに向かい足早に進んでいく。その途中彼らの目の前にある男が現れた。

「よっ、久しぶりだなお前ら!元気にしてたか?」
「ハイネ!?」

彼らの目の前に現れたのは、サングラスを掛けたハイネだった。
ハイネは掛けていたサングラスを外すと、そのサングラスをポケットにしまった。
シン達が初めてハイネと会ったのは彼らが士官学校に通ってきた時の事だった。
ハイネがまだ赤服だった頃、後輩指導の名目で士官学校に訪れた時にハイネはシン達と出会い、そこから彼らは交流を深めていった。

「何故あなたが地球に……?」
「ってか、いつ白服になったんですか?」
「それにフェイスにまで任命されてんのかよ」

三人がそれぞれの言葉を口にする。ハイネはその様子を見ながらニヤニヤと笑っていた。

「まぁまぁ、お前ら落ち着けよ。オレに再開出来て嬉しいのはわかるけどよ、まずは落ち着け。それとシン!オレにタメ口使うとは、お前も偉くなったな!」

ハイネは言いながらシンの耳を思いっきり引っ張り上げた。シンの表情が苦痛で歪む。

「痛っ!ゴメンナサイゴメンナサイ……あぁ、痛ってぇ」
「まぁ、今日はこんぐらいで許してやろう!シン、お前こっちで随分と活躍してるらしいけど調子に乗んなよ。じゃないと、お前死ぬぜ」
「わかってますよ、そんくらい。オレだって成長したんですから」
「お前、やっぱ天狗になってんな?これでもくらえ!」

今度はシンの脳天にチョップを喰らわすハイネ。当たった瞬間、シン声にならない声を上げながらうずくまった。

「よし、修正完了と。で、何だっけ?……レイからもう一度話してって」

そこから彼らはお互いの近況を話していった。ハイネにとって、士官学校時代から目に掛けてきた言わば愛弟子とも言うべき存在の彼らの武勇伝を聞くことは、地球に降りた時の楽しみの一つでもあった。

「……そうか、お前らも随分成長したな」
「やだ、ハイネったら。そんな言い方年寄り染みすぎですよ」
「ハハ、そうかもな。オレもまだまだお前らに負けてらんねぇな!……そうだ、今回お前らの隊に新しいパイロットが来るんだぜ」
「また来るんですか?」
「あぁ、何たってお前らは今となってはザフトのシンボルの一つ、だもんよ。簡単に落ちてもらっても困るんだよ。……それに、今度来る奴の腕は保障してやるぜ」
「ハイネ、あなたは会ったことがあるんですか?」
「あぁ。それに何度かシミュレーションもやってる。はっきり言っとくけどよ……今のザフトに1対1で奴に勝てる奴はいないぜ。アイツを倒すにはエース級のパイロット五人はいなきゃまず無理だな」

ハイネの言葉を聞いた三人は驚いた。何故なら、彼らは士官学校時代にハイネの実力を嫌というほど見せつけられてきたからだ。
彼ら三人が束になって勝てなかったハイネにここまで言わせるパイロットに、彼らは少し恐れた。そんな様子をじっと見ていたハイネは、何故か笑いをこらえていた。

「どうしたんですか、ハイネ?」
「嘘だよ、嘘。お前ら、そんな怪物みたいな奴がいたらザフトは安泰だよ。アイツでも、多くて四人が限度だろうな」
「……変わんねぇじゃん」
「うん?何か言ったか、シン?」
「いや、なんでもないです」
「ならいいや。それじゃ、オレ用事あるから……あ、お前ら今夜議長に食事に招待されてるからちゃんと身だしなみ整えて来いよ。じゃあ後でな」

ハイネが去ってすぐ、三人が絶句したのは言うまでも無かった。
シン達がデュランダルに招待され食事に行っている頃、ミネルバに2機のMSが搬送されていた。その為、ミネルバの技術スタッフ一同は多忙を極めていた。

「すいません……この艦の責任者の方はいらっしゃいますか?」

新しく搬入されたMSの最終確認をしていたマッドに、見知らぬ男から声がかかった。

「グラディス艦長ならデュランダル議長に招待されて食事に行ってるよ。何のようだい?」
「すみません、申し遅れました。この度、ミネルバ隊に配属されたキラ=ヤマトです。明日からミネルバに正式に合流する前に、一度挨拶に伺おうと思いまして」
「おお、それはどうもご丁寧に。って事は、アンタがあのMSのパイロットかい?」

マッドは言いながら1機のMSを指差した。そのMSはセカンドシリーズのMS達によく似た顔立ちをしていた。
キラはマッドを見ながら、クスッと笑って頷いた。

「ええ。少し難しいMSですけど、整備の時はよろしくお願いします」
「ああ、結構やっかいな奴だけどよ……ミネルバには他にもやっかいな奴が2機いるんだ。こんな、自分らの腕を試されるような場所は他にはねぇよ」

この人は職人気質な人だな、とキラは思った。それと同時にキラは自分がよく知ってる整備のプロを思い出す。
(マードックさんか……元気にしてるかな)
キラがそんな事を考えていた時、遠くから声が聞こえてきた。どうやら、食事に招待されていた彼らが帰ってきたらしい。

「レイ、お前の新型どんな奴なんだろうな」
「オレも楽しみだ。議長から期待されているのだと考えると、嬉しくてな」
「ルナ、お前も頑張んなきゃずっとザクのままだぞ」
「うるさいわね、シン。私ももしかしたら新型貰えるんじゃないかって、一瞬期待しちゃったんだから」

キラが見たのは仲が良さそうな赤服の三人と、その集団から一人外れている赤服の男だった。
そんな中、赤髪の少女が声を上げる。彼女の声は少し震えていた。

「レイ……もしかしたあれじゃない?」
ルナマリアが1機のMSを指差す。それはザフトの軍人なら誰もが知ってる機体だった。

「まさか……あれは」
その機体を見たアスランは真っ先に言葉を漏らした。何故なら、その機体は彼の親友がラクスに与えられた剣だったからだ。
「何故こんなところにあれが……」
アスランに続いてレイが声を出した。視界に映るその機体は、兄のように慕った男をこの世から葬った男の機体だった。
「フリーダム……!」
最後にシンが叫ぶ。何故ならそこには、彼から全てを奪った悪魔が立っていたからだった。

「僕の愛機……君達はお気に召さなかったみたいだね」
フリーダムを見て立ち尽くしていた四人に男から声が掛けられた。その男を見て、ルナマリア以外の人間は呆然とした。

「アンタはあの時の……」
「キラ……!?」

四人の目の前に現れたキラを見て、シンとアスランは思わず言葉を漏らした。レイはキラを前にしてただ動揺するだけだった。
そして、そんな彼らを見たキラは妖しい笑みを浮かべるだけだった。

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