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LOWE IF_592_第04話1

Last-modified: 2011-02-23 (水) 16:45:09

訓練は辛かった。兎に角辛かった。泣いた。多分、毎日泣いたんだと思う。
そのたびに基地の長官に怒られては、やっぱり泣いていたんだと思う。
私は、あの作戦の後、村を離れ…いや、村を守るためにあえて軍に入る事にした。力をつけるのにはうってつけだったし、
それに、戦う意味をそこで知りたかった。でも、結果は今言ったとおりだ。
元々運動能力のコーディネイトを受けていたわけではなく、ナチュラルのそれと大して変わらない私は、戦士としての能力は最低クラスだった。だから、人の二倍いや5倍訓練しなければいけなかった。
泣いて泣いて、泣きじゃくって。泥だらけになって、血だらけになって。アイドルであった時がどれだけ恵まれていたのかと思うと、やっぱり泣けてきた。何度気が狂いそうになったか。
でも、そんな辛いと思う心のどこかで充実感を覚えていた。辛い、しかし、そうする事で私は強くなっているのだと実感できた。
MSの動かし方も、人の10倍訓練した。MSでこけたり、壊したり、そのたびに怒られたり泣いたり。でも、他の兵士達とバカみたいに笑ったり、泥だらけになっても挫けないで。
何時の日か、私はバカピンクと呼ばれた。熱血バカと単純バカからとったらしいとこっそり聞いた。
最初は本当に馬鹿にされているんだと落胆していたんだけど、熱血バカって言われるのは悪くないと思った。
私は、感情を無くした賢者よりも感情を表に出し、愛を伝えられるバカになりたい。
そういう願いを胸に、私はヤキン・ドゥーエへと場所を移した。

第四話 世界が終わるまでは

「デブリ戦、あんまり成績良くなかったのよね…」

デブリ帯の中、ルナマリアの愚痴が機体の中で響く。
ミネルバを発したシンのインパルス、ルナマリアのガナーザク・ウォーリア、ショーンのゲイツR、そしてラクスのジンは捕捉したガーティー・ルーに向かっていた。
辺りは戦争の傷跡か、何かの施設が破壊された後にできたデブリや小惑星がゆらりゆらりと漂っている。
デブリは危険なものだ。こうやってゆっくり進んでいる時は良いものの、こちらが速度を上げているときは勿論の事、
たとえネジ一個であれ、速度を持ったものがフレームの隙間などに衝突すれば、それだけで致命傷になりかねない。
だから、デブリ帯で戦闘を行う事自体が、危険な行為なのだが、こういう状況ならば仕方がないのだ。
それが一番憂鬱に感じていたのがラクスだった。彼女はヤキンで一度、余所見をして小惑星に衝突し、気絶してしまったという恥ずかしい過去があったからだ。

「向こうだってこっちを捉えているはずだ、油断するなよ」

と、そこでシンは淡々とした口調でルナマリアを注意する。しかし、その声から少しばかりの緊張が伺えた。

『わかっているわよ。レイみたいな口の利き方しないでよ。調子狂うわ』
「別にいいだろ、油断しているのは本当なんだからさ」
『あんたねぇ…』
『まあまあ、喧嘩なさらずに、ね』

極度の緊張と、新型MSを奪われたという事実からの苛立ちからか、ルナマリアとシンの間に険悪なムードが漂い始めた。
それをラクスが割り込んで和ませる。

「あんまり緊張しすぎても、MSの動きが硬くなって、昔の誰かさんみたいにデブリに当たって気絶してしまいますわよ」
『それって誰の事なんだ?』
「ご察しください」

ショーンの言葉に顔を少し赤らめ、苦笑して答えるラクスを見て、その場にいた人間はすぐに誰の事かわかり、ちょっとだけ笑いが起こった。
そして、険悪な雰囲気もなくなったところで、再び気を引き締めなおす。

「…しかし、何でまだ動かない?敵は…ここまで近づいて…」

シンはレーダーを見て、いまだ敵艦が動いていない事を不審に思う。敵の動きが全く見られない。こうもこちらが近づいているのにもかかわらず、何のリアクションもとらないというのはどういうことか。
そんな時、ふと、ラクスが辺りを見回したとき、ある異変に気がつく。
デブリとして浮かんでいた、ガラスが光景を反射して映し出していたそれに、何か違和感を感じ、拡大して見ると、そこには。

「(MSの足…?これは…はっ、しまっ…!)シンさん、これは罠ですわ!!!」
『何!?うわっ!』

全てに勘付いた頃にはすでに遅し。ラクスがシンに報告したと同時に、上からのビームの雨が降り注ぎ、彼らを襲う。
シンとラクスは対ビームシールドで何とか防ぎ、ルナマリアのザクとショーンのゲイツRも散開して避けるが、強奪部隊も姿を現し、彼らに襲い掛かる。

『アウル、ステラ。奴さん、掛かったみたいだぜ』
「へっ、馬鹿な奴ら。おい、スティング、ステラ。僕はあのクソッタレ桃色のジンを相手する。邪魔すんなよ」

無邪気な声でスティングの通信に答えているアビスに乗っているアウルだったが、その言葉のどこかには憎しみがこめられている。
リターンマッチといったところか、とスティングは苦笑して答える。
『了解了解。俺は今度こそあの新型の首を貰うとするか。ステラ、お前は赤色のザクをやれよ。宙域戦闘じゃあ、そのガイアは不利だからな』
『うん、わかったよ…』
「よっしゃ、決まりだな!!」

アウルは指を鳴らし、アビスをラクスのジンに突っ込ませる。カオスとガイアもそれぞれの担当する敵MSに向かって突撃する。
それを見たシンは指示を送る。

「くそ、待ち伏せか!!だけど、そっちの奇襲は失敗だよ!各機迎撃!ショーン、お前は艦に戻ってくれ!」
『了解、死ぬなよ!』
「誰が!よし、ショーンが戻れるだけの時間を稼ぐ、行くぞ!」
『メイリン、待ってろよ!今行くからな!』

シンはブラストインパルスの武装、腰部大型ビーム砲ケルベロスでまずカオスを牽制しつつ、ビームライフルで追撃を咥える。
それに対し、カオスはスラスターを吹かして大きく避け、兵装ポッドを射出すると同時にビームライフルを放つ。

「ステラ、逃がすな!」
『うん…うぇい!?』

ステラの乗るガイアは、艦の護衛に戻ろうと背を向けたゲイツRに対しビームライフルを撃とうとするが、目の前にルナマリアのザクが現れ、思わず下がってしまう。

「あんたの相手はこの私よ!!」

ルナマリアはザクのシールドを使って、ガイアに体当たりを食らわし、ショーンと距離をとらせる。ステラは衝撃に悲鳴を上げながらも、体勢を立て直す。
この一撃でステラのどこかのスイッチが入ったか、一心不乱にザクに攻撃を加え始めた。
ルナマリアもその攻撃に耐えながらも、ガナーザク・ウォーリアの最大の武器、オルトロスを命中させられるタイミングを計る。

「はぁん?全く、ステラもスティングもだらしねぇの。ま、いいか。あっちにはネオもいることだしな」

対して、ラクスのジンに当たっていたアウルはどうでもいいようにゲイツRを見送っていた。
そして、至極愉しそうにラクスのジンを甚振ろうとする。ラクスも必死に避けてはいるが、前の戦いのようにケイのサポート無しでは分が悪い。
何か策はないか、そう考えてはいるが、避けるのに精一杯で思いつかない。

「(元々遠距離支援用のような武装してからに、胸部のビーム砲とかもう…。どうすれば、接近戦に持ち越せますか…)」

何度かビームライフルを撃ち、アビスを牽制する。が、その内数発はデブリにあたるだけだ。対して、アビスはバラエーナ改を放って逃げ場を無くし、連装砲でジンを攻撃する。
ジンは連装砲をシールドで防ぐも、その反動で吹き飛ばされ、デブリに背中をぶつける。

「かはっ!」
「おらおらどうしたどうした!!あん時の威勢は何処行ったよ、ええ!?」

アウルは狂ったような笑みを浮かべながらラクスをどんどん追い込んでいく。ラクスは何とか避けては見せるが、それでも全弾を避けれるわけではなく、
どんどんとジンはダメージを蓄積してゆき、ついにはシールドが黒く焦げあがってしまった。これ以上はビームを防ぐ事などできない。

「ナタリーさん!!…ちぃ!!」
「うぇぇぇい!!この赤いのがぁぁぁ!!」

オルトロスで援護しようとしたルナマリアだが、それを見たステラがビームライフルでルナマリアを牽制し、そのまま突っ込んでいく。
ルナマリアは突っ込んできたガイアに舌打ちをしながらも、オルトロスをガイアに放ち、避けたところでビームライフルを乱射し、近づけない。
弾切れになっても、演習通りに素早くリロードし、再び距離をとり始める。

「こいつら、ザフトの新型MSをこうも簡単に!だけど、俺だってインパルスを使いこなせるんだ!!やってやる!!」

シンはケルベロス後部に付けられているミサイルランチャーを起動させ、現在交戦しているカオスとジンを攻撃しようとしているアビスにマルチロックオンし、ミサイルを放つ。
そして続けざまにレールガンを撃ち、ミサイルを回避していたカオスを予測射撃する。カオスはミサイルに気取られ、レールガンの弾丸の直撃を受けた。

「ぐあ!!くそ!」

衝撃に揺さぶられ、スティングは喘ぎ声を出しながらも、すぐさま歯を食いしばってペダルをふみ、ブラストインパルス最大の弱点、接近戦に持ち込む。
インパルスはビームジャベリンを取り出し、柄の部分でカオスのビームサーベルを抑える。
一方、ミサイルを自慢のバラエーナ改で迎撃したアウルは不敵な笑みを浮かべながらラクスのジンを見つめる。彼は残虐な性分があるため、追い込んだ敵は嬲り殺すのが一番だと考えていた。
だからこそ、どのような風に倒そうか、そう考えていた。
ラクスもそれを感じ取ったか、バイザー越しに見える顔には冷や汗が流れていた。

「ああ、もう!こうなったら…ハイネ隊長から教えてもらったこの手で…恥ずかしいですけど」
「あん?」

ラクスはやけくそ気味に国際救難チャンネルを開き、アビスへと通信を開く。何事かとアウルも答えてしまった。

「やーいやーい、オバカさん、アオ髪ー。変な髪型ー。ぇーと…アビスカッコワルイーですわ」
「…」

場が一瞬だけ凍りつく。流石に幼児過ぎたか、とラクスも顔を赤らめそうになるのを必死に我慢する。
国際救難チャンネルだったため、他の者達にも聞かれていたので、ステラと、その相手をしているルナマリア以外、凍りつく。
しかし寒い、あまりにも寒い。こんな子供だましに引っかかる者などいるのだろうか。というのも、これはハイネが冗談でラクスに教えてたもので、それを真に受けて使ってしまったというわけだ。
しかも普段悪口など言う事など少ないラクスにとって、語彙が少ないのでどうしても幼児なものになってしまう。

「ナ、ナタリー…あんた…酷い…」
「こんなんに引っかかる奴なんか…」
『…誰が変な髪形だぁぁぁ!!!』
「…いたか…」

スティングはバイザー越しに顔を抑える。誰も、言った本人さえも引っかかるとは思わなかったのに、アウルは怒っていた。
そして、ビームランスを片手に、ラクスのジンへと突撃する。

「うわ、本当に引っかかりましたわ!しかも一直線にって…!ちょっちょっと!」

あまりの突然の事だったので、嵌めようとしていた本人が一番狼狽してしまった。ジンは一旦下がりながらビームライフルを撃ち、ガラス表面の大きなデブリに降り立つ。
少しはなれたところで、アウルのアビスも着陸する。

「よっしゃあきなさぁぁぁい!!」
「言われずともぉぉぉ!!!!」

アビスはデブリをけり、浮かび上がって、デブリの表面のスレスレを飛んでジンへ突撃する。
ラクスはあえて動かず、ジンを仁王立ちさせて待ち構える。

「(ランスは長いから、少し早めに…ケイさん、期待してますわよ!!)」
『ナタリー、何やってるんだ!迎撃しろ、おい!!』

そんなラクスの様子にシンが怒鳴るが、ラクスはそれでも動かない。そして、ジンにアビスのビームランスが迫り来た、まさにその時だった。
ジンが後ろへのけぞりながら、腰のミサイルをアビスに発射する。至近距離だったため、アウルは反応しきれず、アビスにミサイルが着弾する、はずだった。
しかし、爆発は起こらず、代わりにネットが飛び出してきた。そして、アビスの体全体を覆うように絡みつくと、アビスは無様に吹き飛ばされた。

「な、なんだよこれ!?くそ、取れろよ!!」

もがいてみるが、ビームランスもネットの隙間に引っかかって動かせないし、シールド内臓のビーム砲や連装砲やバラエーナ改もネットで引っかかって起動できず、このまま発射すれば自滅してしまうのがオチだ。
しかももがく毎に慣性で変な回転をしたりして、実に不愉快だ。

「くそ!だが、カリドゥスなら」
「たああ!!」

もがくのをやめ、カリドゥスを起動させようとするアウルだったが、その前にラクスのジンが彼の機体に取り付き、マシンガンを至近距離で打ち込んで、カリドゥスを潰す。そして、重艦刀を取り出す。太陽光が当たったのか、眩い光を反射させ、それが一層威圧感を感じさせる。

「よぉし、いいぞ!ナタリーいけぇ!」

援護しようと兵装ポッドを射出したカオスの邪魔をするように応戦しているシンも歓声を上げていた。ラクスもそれに答えるよう、アビスの腹部目掛け重艦刀を振り下ろす。
と、その時だった。デブリが避けたと思えば、そこからルナマリアのザクが飛び出してきて、ラクスのジンと衝突する。続けて、ガイアが現れた。

「きゃああ!!」「く、うう…!だ!」

一緒に吹き飛ばされたルナマリアとラクスはそれぞれ悲鳴を上げつつも、ブースターを吹かし、何とかブレーキをかける。

「ナタリーさん、ごめんなさい!」
『私は大丈夫ですわ…それよりも!』

ラクスとルナマリアはお互いの機体の背を向け合い、アビスとガイアと向き合う。ガイアのお陰でやっと解放されたアビスとガイアもまた、ジンとザクを挟む形で立ちふさがる。

「今度はあんな手にのらねぇぞ!」

アウルも冷静さを取り戻し、彼女らの出方を伺っている。

「ルナ、ナタリー!っくそぉぉぉ!!」

救援に向かいたいシンだったが、予想外にカオスの力が強く、またブラストとカオスの相性があまりよくないせいもあるのか、苦戦を強いられていた。
換装できるものならしたい。だが、ミネルバは先ほど届いたメールが正しければ交戦中のはずだ。だから戻らなければいけないのは自分達のはずなのだが、戻る事ができない。
そのもどかしさに歯痒さを感じつつ、シンはカオスに突っ込んでいく。

そのミネルバだが、ガーティー・ルーに背後を取られ、立場を逆転された状態で交戦を続けていた。いや、攻撃を受けていた。
足自慢のミネルバはその機動性を活かし、小惑星を盾にしつつ、背後に回れないかと模索はしていたが、ガーティー・ルーも素早い立ち回りでミネルバを追い詰める。

「シン達の帰還は!?」
「敵MSに阻まれ、まだ…あ、いえショーン機がもうすぐ帰還できます!」

タリアの言葉にミネルバオペレーターのメイリン・ホークはすぐに答える。
MSを発進させたいのは山々だが、デブリ地帯の中でももっとも密度が高い場所ゆえに発進進路がとれず、中で待機中のレイとゲイルは外に出られずじまいだった。
こんな中でショーンの機体一機が戻れるだけでも状況は違うだろう。タリアは更に指示を送る。

「では、ショーン機にはそのまま敵艦の妨害に行かせなさい。30秒でもいい、時間を稼ぐように。但し、無理は禁物よ。一機だけでは高が知れているし。
すぐにレイ機とゲイル機を出させます」
「了解しました!ショーン機、応答願います!」
『おう!メイリン無事か!』
「ええ、こちらも何とか…。ショーン機は敵艦へ攻撃し、少しでも時間稼ぎをしてください!こちらもその間に援護を出します!」
『了解!メイリン、俺の活躍、見ててくれよ!』
「…がんばってね!」

メイリンはすぐにタリアの言葉をショーンに伝える。因みにこの二人、恋人同士、といわなくとも親友同士だった。年も一個違いで、兄妹のような関係だった。
さて、その間も戦況は動き、タリアは檄を飛ばす。

「ここが正念場よ!マリク、小惑星の地形を利用して直撃を回避して!アーサー、迎撃よ!!」
「了解!!」
「了解!ランチャー5、ランチャー10、エスパール、てぇ!」

戦艦でありながら、ドッグファイトさながらの戦闘を繰り広げるミネルバとガーティー・ルー。
ミネルバに対し、何度も攻撃を加えるものの、それを全て避けられているガーティー・ルー内では流石に焦りを見せていた。

「粘りますな」

イアンが言う。それに対し、ふっと笑い、ネオが答える。

「ああ。足自慢という名は伊達じゃないな。だが、それは足を止められたら終わりって言う意味でもあるんだぜ?
小惑星に火力を集中させろ!敵艦に岩の雨を降らせてやれ!!」

ネオの指示を受け、ガーティー・ルーはバリアントと呼ばれるミサイルをミネルバの近くにある小惑星向けて撃った。
ミネルバ・クルーは始めミネルバを狙った攻撃と判断し、それを回避する。その判断自体は間違っていない。
事実、バリアントの中の数発はミネルバへの直撃コースを飛んでいる。だが、これは囮だ。
対空砲火でバリアントを打ち落としているうちに、小惑星にぶつかるバリアントはミネルバの左右を通り過ぎようとしていた。
その様子を遮蔽されていたミネルバのブリッジ・ゲスト席で見ていたアスランは思考を巡らせ、そして叫んだ。

「(直撃コースじゃないのが二つ、いや三つか…!これは)まずい、小惑星から艦を離してください!!」

しかし、アスランが叫んだところですでに遅い。そんなゲストの突然の言葉に反応しきれるわけがなく、バリアントは小惑星にぶつかって爆発し、
割れた岩がミネルバを襲う。それにより、右舷の一部のスラスターが破壊されてしまった。
その衝撃により、ミネルバ中にクルーたちの悲鳴が響き渡る。そんな事にはお構いなしに第二波が襲い掛かり、ミネルバに更に岩をぶつける。

「4番、6番スラスター破損!これでは身動きが取れません!!」
「針路、塞がれます!!」
「更にモビルアーマーとモビルスーツ接近!!」

クルー達の状況報告にタリアは舌打ちをしながら歯をかみ締める。嵌められた。タリアは艦内通信を開き、格納庫につなげる。

「エイブス!レイとゲイルを出して頂戴!!」
『はっ。しかし、進路が塞がれていますが』
「歩いてでも何でもいいから!!兎に角、このままじゃ狙い撃ちにされるわよ!」

タリアの言葉を聴いて、マッドは頷き通信機を置いて、他の整備士たちに指示を送る。

「よぉし、お前ら、ザクとゲイツRを出すぞ!レイ、ゲイル!お前らは歩いて外に出てくれ!いいな!!」
「了解」
「りょ、了解!!」

レイのザクとゲイルのゲイツRは歩いて艦の外へと出ようとする。と、ふとレイはピンポイント通信で前方で誘導しているケイに繋げる。

『どうしたんだい?レイ』
「いや、何故お前がMSに乗らないのかと思ってな…」

レイの記憶では、ケイはMSパイロットのはずだ。それが何故今メカニックマンという役目を負っているのか。
それに、議長が乗っているこの艦を守るためにも、MSパイロットはひとりでも多くいたほうがいい。しかし、その期待をケイが簡単に裏切った。

『…怖くなったのさ、何もかも。僕はね。操縦桿を握っただけで、嘔吐物ぶちまけるMSパイロットなんて、邪魔者以外なんでもないでしょ?』
「本当なのか、それは…」
『一種の恐慌症さ。そうでなきゃ、今頃インパルスで僕が戦っていたところだよ』
「そうか。悪かったな」
『いや』

レイは一言謝って通信を切る。真相はどうかはわからないが、MSに乗る気がないのは確かなようだ。だとすれば、自分達でどうにかするしかない。
MSをカタパルトの出口まで歩かせ、そして外へと出る。岩が多く、視界が利きづらい。しかし、それは相手も同じこと。
レーダーが使えない今、どちらが先に敵を見つけられるか。それに掛かっている。

「ゲイル、お前は艦に迫ってくるMSを頼む。俺はあのMAをやる」
『ああ、頼むよレイ。あんなMA、相手に出来るのお前だけだからさ…死ぬなよ』
「ああ。わかっている」

レイとゲイルはお互いの機体の手でハイタッチし、二手に分かれる。ゲイルは艦の近くでその護衛に辺り、レイは艦から離れて索敵を行う。
レイの持つ空間認識能力によって、同じ能力を持つ相手を感知する事ができる。そして、アーモリーワンでの戦いで、敵のMAパイロットもまた、同じ能力を持つ者だと感じていた。
だからこそ、自分が相手をしなければいけない。こんな状況では、あの空間認識能力による空間攻撃は、その思考を認識できる自分でしかできない事だ。
ゲイルがいてくれてよかったとレイは心の中で安心した。もしゲイルがいなければ自分だけでMAとMSを相手にしなければいけない。流石にそれは厳しいだろう。

「(ミネルバにはギルが乗っているんだ!やらせてたまるものか!!)」

これでMA一体に集中できる。気合を込め、レイは索敵を始める。そして、何かを感じ取った。
それを感じたか、MAエグザスのパイロット、ネオも頭に何かが走るような感覚を覚え、気を引き締める。

「(あの白い坊主か…面白い!)ミラー、お前は新型艦を狙え。俺はあの白いザクを相手にして道を開く。残っているMSは教習生上がりだ。お前なら楽勝だろ?」
『どうだか。しかし、やって見せましょう』
「ふっ、頼んだ」

ダガーLのパイロット、ミラーに指示を与え、自分は何かを感じた方へと向かっていく。ミラーは指示されたとおり、ミネルバへ真っ直ぐ突っ込んでいく。

「…いたか!!全く、何なんだね、君は!!」
「うおおお!!」

ガンバレルを切り離し、レイのザクに向かわせるネオ。対し、レイはトリガーを引いてビームライフルをエグザスに向けて発射する。
エグザスはバレルロールの要領でビームをギリギリでかわし、そのままザクへビーム砲を撃つ。
レイはデブリの影を上手く使い、エグザスの攻撃を回避しつつ、ガンバレルの一つを撃ち落とす。

「ちぃ!!」

デブリを撒き散らした事でミネルバの足をとめることが出来たが、その分ガンバレルを使うには障害物が多すぎる。
そのガンバレルを動かすだけでも集中力を要するのに、戦闘機であるエグザスの操作。エグザス自体は耐久力に欠けるものだ。
ザクのビームライフルは勿論、このデブリに少しでも衝突するだけでも致命傷になりかねない。そもそも高速戦闘が出来ない
このデブリ帯では、この機体は不利だった。
しかし、ダークダガーLやダガーLが整備が終わっていない状況である以上、使えるものは使わなければいけない。
ともなれば、この機体を最も扱えるのはネオである。ネオだからこそ、このような場所でも高速戦闘が可能なのだ。

「さぁて、こりゃ気合を入れなおさなければいけないな」

ネオは一度ザクをデブリの少ない場所へ誘い、そこで再びガンバレルを展開して迎え撃つ。レイもそれをあえて受け、狙いをエグザスだけに絞る。

一方ナタリー達はいまだカオス達と交戦を続けていた。変わったところといえば、担当するMSくらいか。
相変わらずカオスとインパルスは戦闘を続けていたが、アビスはザクと、ガイアはジンを交戦していた。

「確かにガイアの動きは他のと比べて鈍いですけど…」
「うぇぇい!!」
「何なんですの、このむちゃくちゃな攻撃は!!まあ人の事言えませんけど!」

遠距離攻撃によって接近できない状況ではない今、幾分かはましにはなったものの。それでもガイアの動きは常人のそれとは比べ物にならない。
ガイアはデブリを利用し、まるで地上にいる時のそれと変わらぬ機動力を再現している。ガイアは変形状態で背中のビーム砲をジンへ撃つ。
ラクスは追う様にトリガーを引いてビームライフルを撃つが、急に引金を引いても反応しなくなった。どうやらエネルギーがなくなってしまったようだ。
それを好機とステラはビームカッターを展開し、ジンへ特攻する。ラクスは歯を食いしばりながらビームライフルを盾にし、防ぐ。
しかし、当然ながらビームライフルはビームカッターにより切り裂かれてしまう。しかし、完全には切られていないので、ラクスはジンを押されるがまま、斜めに倒れながらガイアの進行方向を変えて避ける。
そして、完全に切れたビームライフルを放し、ガイアの体を掴んだ。

「あう!?」

突然のことでステラは驚いてしまった。それを知ってか知らずか、ラクスはそのままジンの姿勢制御用のブースターを全開にして、まるでブレーンバスターのような形でガイアを小惑星にたたきつけた。
VPS装甲のお陰でヘッドパーツに異常は見られなかったが、それを胴体と連結するフレームに異常をきたし、ガイアのメインモニターにノイズが入り始める。そのついでにステラ自身にも自分の体が上に引っ張られるような衝撃を受け、嗚咽を吐いてしまう。
と、それと全く同時期にミネルバのある方向から爆発が起こった。しかし、あの距離はミネルバではない
事実、ミネルバはまだ何とかではあるが、一番遠いシンのコクピットからでも確認できていた。
ともなれば。

「は?」
「あら?」
「え?」
「何!?」
「ガーティー・ルーかよ!?」
「うぇぇ…い?」
『時空を越えて俺、参上!!ってか!待たせたな、ミネルバ!ショーン様のお帰りだ!!』

そう、目立たぬよう、誰にも悟られぬよう遠回りをしてガーティー・ルーに近づいていたショーンがガーティー・ルーの左側面を攻撃したのだ。
ミネルバ付近でゲイルとミラーの交戦があった所為か、すぐに攻撃しなければという切迫感からか、狙いを定められず、急所を攻撃できなかったが、それでも十分な一撃だ。

「メイリン、俺やったぜ!初任務、大成功だ!ははは!」

ショーンはコクピットの中でガッツポーズをし、ミネルバにいるメイリンへ喜びの声を叫ぶ。といっても、通信が使えないこの状況では聞こえやしないが。

「ぐ、ぅぅ!!被害報告!!」
「は、はい!各ステーション被害報告急げ!!」
「対空砲火は使えるか!?」
「使えます!」
「よし、迎撃!!敵を離したらスティング達に帰還命令を!この宙域を離脱する!」
「了解!」
「おっと!」

対して、ガーティー・ルーはすぐに対空砲火を撒き散らしてショーンのゲイツRを牽制する。ショーンもすぐにペダルを踏み、そのまま上方向へと逃げる。難を逃れ、ショーンは安堵の息を吐いた。
が、しかし次の瞬間、ショーン機が胴体から真っ二つになった。エグザスのサーベル装備のガンバレルが、ショーン機を襲ったのだ。

「あ、あ…メイリ…」
「調子に乗るなよ、ザフトの諸君」

悲鳴を上げる事も叶わぬまま、ショーンは爆発に巻き込まれ、死んだ。それと同時に、ガーティー・ルーから信号弾が発射される。
それを見たスティング達は少し納得の行かない表情をしながらも、ガーティー・ルーへと下がろうとする。

「ショーン!!いや、そんなぁ!!」

ミネルバのブリッジにメイリンの悲鳴が響き渡る。あまりにも痛々しいその光景に、ゲスト席に座っていたカガリは眼をそらしてしまった。
一方のアスランも、何か悔やんでいる表情で俯きながら歯を食いしばっている。

「ショォォォン!!畜生、お前らぁぁぁぁぁ!!!」

シンは怒りの叫びながら、ビームジャベリンをインパルスの片手にカオス達に突っ込んでいく。エネルギー残量が少ない所為もあり、有効な武装はこれしかないのだが、それでも無謀だ。
ルナマリアとラクスはそんなシンの援護に向かう。感情を押し殺してはいたが、彼女らの心情も同じだ。目の前で仲間を殺されて平気な人間などいるものか。

「あん?しつこい奴らだぜ…おい、アウル!」
「しょうがねぇな…」

アウルはスティングの声にこたえるようにアビスの踵を返してバラエーナ改をばら撒くようにはなつ。
頭に血管を浮かべながら、怒り狂ってカオス達に襲いかかろうとしていたシンだったが、ビームの雨に曝され、下がざるえない。
ビームは所々デブリに当たって、それは爆発し、そして煙幕のようにカオス達の姿を隠す。
その爆発の中に巻き込まれたインパルスは腕で頭やコクピットを保護する。

「逃がすかよ!!」

そして、シンは闇雲にケルベロスを撃とうとしたが、その時には煙幕は晴れ、三機は遠く遥か彼方へと飛び去っていった。

「…くっそぉぉぉ!」

インパルスのコクピット内にシンの無念の叫びが響き渡る。
ショーンとはレイやルナマリア、ゲイルと同じ、士官学校での友達だった。お調子者で、すぐ図に乗るのが玉に瑕だったが、それでもいい奴だった。同じミネルバ所属と決まって、互いに喜んだ。
その友が死んだという事実をシンは認めたくなかった。だが、ショーンは死んだ。

「シンさん…」

ラクスはそっとジンをインパルスへ近づけ、その肩に手を置かせる。ルナマリアも沈痛な表情を浮かべていた。
初めての実戦で友を失う事になるとは、誰が予想しただろうか。いや、戦場に出た地点で、それは予想されていた事なのかもしれない。だがしかし。
その事実を認めることは、この場にいる誰よりもラクス自身が知っていた。彼女もまた、ヤキンで仲間を失った経験を持つ。
しかし、認めなければいけない。死者に魂を引かれては自分も死ぬ事になる。

「シンさん、戻りましょう。ショーンさんが救ってくれた、ミネルバへ…」
「ああ…」

シン達は、自分達の未熟さをかみ締めながら、ミネルバへと戻っていった。

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