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LOWE IF_vKFms9BQYk_第01話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 21:30:22

第1話

 現在、ストライクとそのパイロットキラ・ヤマトは地球の重力に引っ張られていた。
 ストライクは大気との摩擦熱で表面が赤く色付いている。
 コックピットはとてつもない熱気に包まれていた。
 額から流れ落ちる汗の量がおびただしい。
「キラ!早くアークエンジェルに戻って!」
 コックピットの中に女性オペレータの声が響く。
「ミリィ、今はだめだ!動けばストライクが持たない!」
 キラがコックピットの中で叫んだ。
「でもキラ、あなたはナ…」
 ミリアリアと呼ばれた少女が声を上げる。
「大丈夫だ、彼はコーディネータなのだから」
 ミリアリアの声を遮り、別の女性の声が聞こえる。
「副長の言うとおりだ!大丈夫だ必ず戻る!」
 キラはミリアリアを安心させる言葉を言った。
 アークエンジェルと離れすぎたせいなのか通信が途絶えた。
 コックピットの温度が上昇していく。
「僕は必ず皆の所に戻るんだ!」
 キラは一人コックピットの中で叫んだ。熱さで倒れないように自分に言い聞かせるように
叫んだ。

「キラ、返事をして!」
 アークエンジェルのブリッジで先程の女性オペレータ、ミリアリア・ハウの声が響く。
 しかし返事は返ってこない。
「先に降下しているストライクの降下地点を計測」
 副長、ナタル・バジルールが情報解析を担当している兵士に命令する。
 数十秒後、命令を受けた兵士が声を上げる。
「アフリカ北部です。完全にザフトの勢力圏です」
「艦長…、どうします?」
 ナタルがアークエンジェルの艦長を見る。
「ストライクがいなくてアラスカに行っても意味がない。ストライクを追いなさい。これは
命令です。」
 艦長、マリュー・ラミアスは操舵士に命令した。
 その言葉を聞いた操舵士、アーノルド・ノイマンはストライクとの降下地点がずれないよ
うに艦を操作した。

「お父様の裏切り者…!」
 声が聞こえた。ヘリオポリスで出会った金髪の少女の声だ。
 キラはこの状況を理解した。これは夢なのだと。
 少女が寄り掛かっている手すりの向こうにMSが横たわっている。
 キラは心の中で思った。
(所詮、中立っていう言葉は建前か…。)
 近くで爆発が起こった。爆発音とその衝撃が脳を揺らす。
(ここにいては危ないな…。近くにシェルターがあったはずだ)
 少女の手を取り、シェルターに向かってキラは走り出した。

 映像がいきなり切り替わった。

 MSのコックピットの近くに、ザフト兵とキラ、そして肩を押さえてうずくまっている女が
いる。先程の少女はこの映像には見当たらない。
「キラ?」
 その声は月で分かれた友の声に聞こえた。いやキラは確信した。目の前にいるザフト兵は
親友だと。
「アスラン・ザラ」
 目の前のアスランは動揺しているのか動きが止まっていた。
 その隙を狙い、うずくまっている女にキラは体当たりされ、そのままMSのコックピット
に落ちた。
 キラは女を座席の後ろに移動するようにお願いした。
 しかし女はそれを断った。そしてMSを操縦しようとMSのシステムを立ち上げた。
「あなたは一体に何を考えているんですか?そんな傷でこんな物をまともに動かせると思っ
ているんですか!」
 キラは女に怒鳴った。
「君が私に代わって操縦するというのか?単なる民間人が?なにも分からないくせに!」 
 女は怒鳴り返してきた。
「僕は…コーディネータです。あなたの指示があれば動かせる自信はあります」
 女は何も答えない。
「あなたは今ここで死にたいんですか?どうなんですか?僕は死にたくないです。死にたく
ないから今できることを精一杯やりたいんです。」
 女はキラの言葉を聞き顔つきが変わった。
 必ず生き残ろうとの思いか、その表情はまるで軍人のような顔つきだった。
 また映像が変わった。

 アークエンジェルの士官室。そこにはプラントの歌姫、ラクス・クラインがいた。
「またここに居なくてはいけませんの?」
 ラクスの言葉にキラは頷く。
 キラは持っていた食事のトレイをサイドテーブルに置くと、トレイに入ってあるサンドイ
ッチを手に取り食べ始めた。
(味はまあまあだな…)
 ふとラクスを見ると不思議そうな目でこちらを見ていた。
「食べないんですか?」
 ラクスに笑いかけた。
「わたくしもあちらで、皆さんと一緒に食べたかったですわ」
 ラクスは少し悲しい顔をした
「これは地球軍の艦ですから…」
(しかし、コーディネータってだけでそんなに嫌悪する事か?)
「残念ですわね…。でも、あなたは優しいのですね。ありがとう」
(なにかお礼なんか言われることしたか?この子の考えていることが全く分からん)
「僕はコーディネータですから」
 キラはいつもように答えた。
「…あなたが優しいのは、あなただからでしょう?」
 キラの脳内に衝撃が走った。
(なにを言っているんだ)
「お名前を教えていただけますか?」
「キラ・ヤマト」
 ラクスは顔つきが少し変化した。
(ほうこの女、こんな表情ができるのか)
 キラはその表情に何かを感じた。
「いい名前ですね」
 ラクスは笑顔を返した。
 
 キラは夢から覚めた。

キラが目を覚ますとそこはストライクのコックピットでは無かった。
 背中に感じる感触からベッドの寝かされているとキラは感じた。
 あたりを見回すと、どことなく清潔感があふれる部屋にいるようだ。
 キラは腕になにか違和感を感じた。自分の腕を見ると、点滴が施されていた。
(ここは病院なのか…)
 キラは自分が置かれている状況を認識した。
 近くにあるだろうナースコールを探し始めた。
 ドアをノックする音がした。
「失礼します」
 部屋に誰か入ってきた。声からして女性のようだ。
「気付かれたんですね」
 入ってきた女性は看護士にしか見えない服装をしていた。
「先生を呼んできますね」
 看護士はそう言うと部屋から出て行った。
 キラは窓から見える外の風景を眺めていた。子供たちが遊んでいる姿が目に映る。
(サイ達は無事なんだろうか?)
 キラはアークエンジェルに乗っている友を心配した。
 部屋に医者と先ほどの看護士が入ってきた。医者は近くに置いてあった椅子に座った。
「体の調子はどうだい?」
「うまく体に力が入りません」
 キラが言葉を発すると喉に痛みを感じた。そのせいで声が大きく出せなかった。
「喉に痛みを感じるのか。それは自然に治るだろう。体に力が入らないのも心配ない」
「先生、そんな簡単な診察でいいんですか?上に報告しますよ」
 看護士が医者を窘める。その言葉を聞き医者は真面目にキラの体の事を語りだした。
 時間が経てば正常に戻ると言う内容だった。
 医者の表情が変わる。
「君のご両親はいるかい?」
 その言葉にキラは頷く。
「こちらも慈善事業っていう訳にはいかないんです」
 治療費を求めている訳だ。キラは医者に出身地等を教えた。
「ご両親がつくまで、ここにいる事になるだろう。それまで無理はしないように」
「なにかあったらナースコールを押してください」
 二人は部屋から出て行った。
 キラは二人が部屋から出るとベッドから起き上がった。
 覚束ない足取りで部屋から出ると、あたりを歩き出した。
(この病院は思ったより広いな)
 キラは中庭まであると近くに置いてあるベンチに腰掛けた。
「アスランが羨ましいな。アスランならうまくできたかもしれないのに…」
 キラは悔し涙を流していた。
「何泣いているんだい?」
 いきなりの乱入者にキラは驚き涙が止まる。
「ジェス・リブルだ。カメラマンをしている」 
 男はキラに握手を求めてきた。キラは訳もわからず握手をした。
「なぜ握手を?」
 キラは痛みをこらえながらジェスという男に聞いた。
「助けた相手の容態が良くなって聞いたので会いにきたんだ」
「僕を助けてくれたんですか?」
「あの光景はすごかったな…」
 ジェスは目を瞑り、その光景を思い出しているのか何度も頷く。
「どんな状態だったんですか?」
 キラはジェスに聞いた。
「君は覚えていないのかい?」
 ジェスの言葉にキラは頷く。ジェスはその時の事を詳細に説明し始めた。
 キラはその事を聞きながら、その状況を頭の中でシミュレートする。
 シミュレートしていると不鮮明だったその時の記憶が蘇ってきた。
(簡単にまとめると、ストライクをうまく操縦し無事に着陸し、コックピットから出るとそ
のまま倒れたってことか。この体が良く持ったな。いや死にたくないという意思が勝っただ
けだな。あのまま地表に激突したら、例え下が砂漠でも死んでいるか…)
 ジェスはベンチから立ち上がった。
「仕事があるのでそれじゃ」
 キラも立ち上がり、ジェスに握手を求めた。ジェスは嫌がる事もなく握手をした。
「君の名前を聞いていなかったな」
「キラ・ヤマトです」
 キラは笑顔で答えた。
「またどこかで」
「はい」
 二人はその言葉を最後に別々の方向に歩き始めた。

 次の日、朝キラはいきなりの嘔吐感に襲われ目を覚ました。
 ベッドから跳ね起き、洗面所に向かい胃の中に入っているものを吐き出した。
 吐き出しても胃液しかでない。洗面所からでると看護士が外で待っていた。
「大丈夫ですか?」
 看護士はキラを心配して声を掛ける。キラは大丈夫と看護士に言う。
「病院から出ても問題はないんでしょうか?」
「先生に聞いてみないと…」
 看護士がすまなそうにキラの質問に答えた。
「構いませんよ」
 キラはそう言うと病院の中庭に向かって歩き出した。昨日座ったベンチに腰を掛けた。
「ジェスさんに聞きたい事があったんだ…」
「一体何を聞きたいんだい?」
 いつのまにか、キラの横にジェスが座っていた。
「ジェスさん、どうしてここに?昨日仕事で町から離れたんじゃ…」
「何か聞きたい事があったんじゃないのか?」
 ジェスはキラの質問を無視した。
「僕が乗っていたMSってどうなったんですか?」
「あのMSは、君をこの病院に運んだ次の日戦艦が持っていったぜ」
 と言うとジェスはポケットから一枚の写真を取り出した。そしてキラに写真を渡した。
「アークエンジェル」
 キラはその写真に写っていた戦艦の名前を言う。
「僕の居場所はあそこだ!ジェスさんアークエンジェルは今は何処に!?」
 ジェスの胸倉を掴みキラは叫んだ。
「移動はしていない筈だ」
「なら其処に僕を連れていってください」
 ジェスはキラの手を振り解き叫んだ。
「今の君が行ってどうする。半病人が君が」
「僕はコーディネータです。多少の無理は大丈夫です」
 キラの言葉にジェスの表情が引きつる。
「本当に君はそんな事を言っているのか?」
 ジェスはキラを睨みつける。
「自分を偽って何が悪いんですか!あそこにはそうまでして、守りたい人達が居るんです」
 キラは自分の思いをジェスに言う。言い終るとキラはその場に倒れこんだ。
「しかし、死んでしまっては何も意味は無いじゃないか」
 ジェスはキラを背負い病室に連れて行った。 

 ここ数日間キラの周りには特に何も変化が無かった。
 あったと言えばアークエンジェルが砂漠の虎と呼ばれるザフトに襲撃されたと言う事だ。
 MSがそれを撃退したらしい。キラはふと思った。
(一体誰が操縦しているんだ?ムウ少佐しかいないか…)
 キラはそんな事を考えながら、ジェスとの雑談をする。
 ある夜、キラが寝ている病室に誰かが入ってくる。
「起きるんだ!」
 キラは謎の人物の声で目を覚ます。
「ジェスさん。こんな夜にどうしたんですか?」
「先程、ザフト兵が来て警告15分後に攻撃を開始すららしい。ここから出るぞ」
 ジェスの後に続き町から離れた。ジェスが向かった先には町のほとんどの住民が居た。
 キラはその光景を見ると、ザフトの作戦をおぼろげに理解した。
(ザフトの指揮官、面白いことをしてくれる)
 そんな事を考えると、町がザフトに襲撃されていく。町が炎に包まれた。
 キラ達が居るところに車が近づいてきた。車から降りてきた人達が住民に抱きつく。
 格好から見てレジスタンスのようだ。
(こいつらの責任でこの町が焼かれたのか。別にレジスタンスが悪いと思わないが、その後
の事は全く考えてないって感じだな。このレジスタンスにはまともな参謀などはいないのか。
僕には関係ない事だがな)
 キラは冷めた目でその光景を見つめる。
 上空から戦闘機が降り、中から見知った人物が出てきた。
(ムウ少佐)
 キラは人ごみを掻き分けムウに近づこうとした。
 が、こけた。キラはジェスに起こされた。
「いきなり走り出してどうしたんだ?」
「嫌なんでもありません」
 キラは苦笑した。
(後から会いに行けばいいんだ。混乱している状況の中で、未だに完治していない体で酷使
して会いに行かなくてもいい。)
 遠くから車が近づいてきた。乗っているのはナタルのようだ。そしてムウに駆け寄る。
 何か会話をしているようだ。その中にレジスタンスが加わった。
 話していたようだが、レジスタンスが車に乗りこの場から離れていった。

 ムウとナタルが小声で会話をしている。
「全滅しますよ。あの装備で行ったら」
「だよなぁ…」
「キラ少尉を行かせるべきでは?」
 ムウはその提案をアークエンジェルにいるマリューに聞くことにした。
 キラは二人の言葉を聞きその場から足が動かなくなった。
(アークエンジェルに僕と同じ名前のパイロットがいるという事か?)
 キラはジェスに支えられながらその場から離れた。

 アークエンジェルの艦長マリューは、ムウ達の通信を聞き頭を悩ませていた。
(こんな時、キラ少尉がここにいてくれたら)
 今、キラはブリッジにいない。フレイと一緒に自分の部屋にいるのだ。
 マリューは何度かキラに助けられたことがあった。
 サイが思い切ってマリューに聞く。
「砂漠でMSだけ見つかってでしょう?」
 マリューの言葉にサイは頷く。
「その次の日、キラ少尉がアークエンジェルに戻ってきたでしょ?その時から雰囲気が変化
したというか…。今までと何か違うような気がしたのよ」
 キラは地球の重力に引っぱれる時、確実に死を感じた。その時からキラは変わったのだ。
マリューはそんな事を思っていた。
 サイもマリューと同じような事を思いながらも、数日のキラの行動に憤慨を感じていた。
 ミリアリアはさらに別の事を考えたいた。キラがアークエンジェルに戻ってきて身体検査
をした。サイ、トール、カズイはその検査結果を見てコーディネータはすごいと顔にでてい
た。ミリアリアはその結果を見て驚いた。あってはならない欄にチェックが入っていた。
「はぁー」
「大丈夫か?ため息なんかついて」
 ミリアリアは知らずの内にため息をついていたようだ。
「サイ、ちょっとね」
 ミリアリアは適当にごまかし、作業を開始した。
 どのくらい時がたっただろうか、キラからの通信が入った。
 すべてが終わり帰ってくるようだ。
「二人とも、最後に悪いけどキラ少尉を出迎えてあげて」
 マリューの言葉に二人は渋々従った。
 格納庫に向かうとトール、カズイがその場にいた。
 ストライクのコックピットからキラが出てきた。二人はキラを駆け寄っていく。
 サイは少しは離れた所でキラを冷めた目で見る。ミリアリアは、疑惑の目で見つめる。
(コーディネータのキラ・ヤマト…)
 ミリアリアはキラに近寄らず格納庫をから離れた。

 ムウはアークエンジェルから通信が入り、戻ってくるように指示を受けた。
 ムウはナタルに先に戻っていると言い、戦闘機を発進させた。
 ナタルは車に乗り、アクセルを踏む。
 その場に座り込んでいる住民を何気なく見る。その中にナタルが良く知る顔が見えた。
「キラ・ヤマト?」
 ナタルはその思いを即座に否定した。キラ・ヤマトはアークエンジェルにいる。その男が
今こんな所にいる筈がない。しかしナタルはその表情が、最初にあったキラの表情に似てい
る感じがした。ナタルはそんな事を考えながらアークエンジェルに向けて発進させる。

「じゃ、4時間後な」
 カガリが車から飛び降り、キラも続く。その後にミリアリアが続くいて降りた。
「気をつけろ」 
 カガリに従っている男、キサカが三人を注意した。
 カガリがキサカと話している間、ミリアリアはあたりの景色を見渡した。
 キラが後ろからミリアリアに話しかけた。しかし二人の会話は続かない。
 キサカのとの会話が終わったのかその場には、キラ、カガリ、ミリアリアの三人だけが残
された。
 この街は、先日襲撃にあった町タッシルよりさらに東にある、砂漠の虎の駐屯地パナディ
ーヤだ。キラは活気のあるこの街の雰囲気の酔っていた。
「なにボケっとしているんだ!」
 カガリの声にキラは我に返った。横でミリアリアが笑っていた。
「お前は一応、護衛なんだからな」
 カガリがキラを睨んだ。カガリはそう言うと日用品が売ってある市場に足を向けた。
 キラとミリアリアはその後に向かった。

「ジェスさん、こんな事までしてもらってすいません」
 ジェスと呼ばれた青年は車を運転していた。助手席に乗っている少年が済まなそうにジェ
スに言った。
「しょうがないだろ。キラ君の親御さんは先日の襲撃のせいであの町にこれない。だからここら
辺で一番大きな街まで連れて行くしかない。あの混乱で君を連れて行けるのは限られる」
「それでジェスさんに白羽の矢が立った訳ですね」
 ジェスはキラの言葉に苦笑した。
 ジェスとキラが話をしていると目の前にパナディーヤの街が姿を現した。
 ジェスは車を街の入り口に止め、キラをその場に下ろした。
「すまないな。ホテルまで送れなくて」
「いえ、別に構いませんよ。ジェスさんは仕事があるんでしょう」
「気を使わせているようだね。それはそうとその格好大丈夫なのかい?」
 ジェスはキラの現在の格好を指摘する。キラの格好は連合の軍服を着ている。
「その時はその時ですよ。相手だって、こんな子供が連合軍にの兵士だと思いませんよ」
「そうだといいんだが。ここはザフトの勢力圏だ。危険な事はするなよ。それと治療費を指
定の講座に振り込んでくれよ」
 キラはジェスに治療費を立て替えてもらっていた。、キラはその言葉に頷いた。
「君のご両親に一度は会って見たかったが」
 ユニウスセブンの時、マリューは最後の最後で踏ん切りがつかなかった。
 最後の一押しをキラがやってくれたのだ。
(あの子は、子供とは思えない考えをしている。生きるためなら這い蹲ってドブの水を啜り
ながらでも生きていこうとする人間だわ。私にはできない)
 マリューは口には出さないがそんな事を思っていた。
「キラ少尉をストライクで出撃させて」
 マリューはブリッジにいるクルーに命令を出した。
 部屋で休んでいたキラと呼ばれた少年は、ブリッジからの命令を聞き格納庫に向かった。
 その少年の姿は、どこをどう見てもジェスと一緒にいる少年だった。
 キラはストライクに乗りアークエンジェルから出撃した。
 アークエンジェルから離れるストライクを肉眼で見れなくなるまでマリューは見続けた。
「あの子、変わったわね」
「キラの事ですか?」
 マリューは誰も聞かれていないと思っていた。
 声のする方向、CIC席で作業しているミリアリアを見た。
 その横ではサイが作業をしている。
「こんな時間にごめんなさいね」
 マリューが二人に謝った。
「別に構いませんよ」
 サイは、フレイとキラの関係を考えないために仕事をしているように見て取れる。
「先程の話なんですか?」
「どうしてですか」
「本人の目の前で言うのは何なんだが」
「僕のことですね。これは自分が望んで親に教えてもらったものですよ」
 キラはそう言うと自分の体を見つめる。
「君はどうしてそんなにぼろぼろになるまで続けているんだ?」
「親の復讐ですかね」
「復讐?しかし君の親は生きているのではないのかね?」
 キラは何も答えない。
「すまない。入らない事まで聞いているようだな」
 その後二人は何回か言葉を交わすと、ジェスは砂漠へ、キラは街へと進みだしだ。

「疲れた…」
 キラはカフェに椅子に座り込んだ。両サイドの椅子には買い物袋が置いてある。向かい側に
はカガリが座りその両サイドにも買い物袋が置いてある。そのおかげでミリアリアは別の席
でくつろいでいる。二人がいる角度からちょうど死角にってミリアリアの姿が見えない。カ
ガリは買い物のチェックリストを見て不満を漏らしていた。
「フレイってヤツの注文が無駄に多すぎる。それに比べて、他の女性クルーは必要最低限の
物しか頼んでたいな」
「ミリアリアはどうなんだい?」
「必要最低限の物しか買ってないな」
 ミリアリアは二人から離れた席で休憩をしていた。離れているのに二人の声が聞こえる。
 何か食べ物の事で争っているらしい。
「何やってんだか…」
 ミリアリアは買い物を素早く終わらせてアークエンジェルに帰りたいと思っていた。
 水を飲んでいたミリアリアに店員が近づいてきた。
「すいませんが、ご相席はよろしいでしょうか?」
 喫茶店の店員がミリアリアに聞いた。ミリアリアは店員に了承の返事をした。
 そしてテーブルに置いてあった水をまた飲み始めた。
「お邪魔かと思いますが、空いた席が無かったので」
 その声は何度も聞いている少年と同じ声だとミリアリアは感じた。
「別に構いませんよ」
 ミリアリアは顔を上げた。
 相席をしてきた人物の服装にミリアリアの口が開いたまま閉じなかった。
 ザフトの勢力圏の街の中で連合軍の服装を着ている大馬鹿者がいるのだから。
「なにを呆けているんだ、ミリィ」
 ミリアリアは突然呼ばれた名前に戸惑い、水が器官に入った咳がおさまるとミリアリアは
目の前の顔を見つめた。ミリアリアは顔から血の気が引くのを感じた。
「どうした、顔色が真っ青だぞ」
 目の前の少年は苦笑していた。
「キラ、どうしてここにいるの?しかも軍服で…。さっきまで違ったじゃない」
 ミリアリアの声は最後のほうになると声が小さくなっていた。
「いや、だって服がこれしかなかったから」
 キラの言葉にミリアリアは混乱した。先程の服とは違うのだから。
 キラは目の前にあるミリアリアの水が入ってあるコップを手に取った。
「この水もらうから」
 キラはそのまま水を飲み始めた。
「ちょっと、何をしているのよ。水ぐらい注文しなさいよ」
「お金がないからね。ちょっとトイレに」
 キラがその場を立ち上がろうとして急によろけた。ミリアリアはキラを支えた。キラの体
はとても軽いとミリアリアは感じた。
「キラこそ大丈夫なの?ふらふらじゃない、荷物運びに疲れたの」 
「先日まで入院していたから体力が落ちたんだよ」
 二人は言葉のキャッチボールができていない事に気が付いた。
「なんか話が噛み合ってないわね」
 ミリアリアの言葉にキラは頷く。
「ミリアリア」
 キラはミリアリアの名を呼ぶ。
「先日ザフトがアークエンジェルを襲撃したよな」
「ええ」
「あの時、ストライクを操縦していたのはムウ少佐なのか?」
「何を言っているの!?あれはキラが操縦して、撃退したじゃない」
「君こそ何を言っているんだ?その時僕はまだ、病院で入院していたんだよ」
 二人は険悪なムードになる。二人が口を開こうとするとき爆音が響いた。
 キラはミリアリアを抱き寄せテーブルの下に隠れた。
「死ね、コーディネータ!宇宙の化け物め!」
「青き清浄なる世界のために!」
 カガリがいる方向で襲撃者の声が聞こえた。その声を聞いたキラは体全体に力が入る。
 銃撃戦が展開されていた。あたりの物が蜂の巣になっていく。
「キラ、痛い」
 ミリアリアの声にキラは力を緩める。数分立つと、銃撃戦がやんでいた。
「カガリさんの所に行ってくるわね」
 ミリアリアはその場を離れカガリの所に向かった。
 ミリアリアはカガリを発見すると近づいた。ミリアリアの足が止まった。
 カガリがチリソース、ヨーグルト塗れになっていたからだ。
 カガリとその目の前にいるアロハシャツを着ている男になにやら叫んでいた。
 その横でキラが石像のように硬直していた。
(どうしてあそこにキラが?)
 二人がアロハシャツの男に連れて行かれる。男がミリアリアに歩み寄ってきた。
「二人の連れかい?」
 ミリアリアの男の言葉に頷く。
「君もついていくるかい?」
 キラとカガリがこちらを見つめる。
「結構です。」
 ミリアリアは即座に否定し、男に名前と住所を聞いた。カガリが男の後ろで裏切り者!と
叫んでいる。
「アンドリュー・バルトフェルド。ザフトの者だ」
「わかりました。二人が中々帰ってこなかったら、ザフトの基地に連絡します」
「すぐに返すよ」
 バルトフェルドはそう言うと、二人が乗った車に乗り込みその場を離れた。
 ミリアリアは先程座っていたテーブルに戻った。戻ると軍服の着たキラが椅子に座ってい
た。
「あなたは一体誰?」
 ミリアリアはキラに近寄った。
「僕はあの金髪の少女の横に居た、人物が気になるんだが?」
「見ていたの?」
 ミリアリアの言葉にキラは頷く。
「大体は想像がつくがな」
 ミリアリアはキラの笑みに恐怖した。
「ミリィ、君も勘付いているのではないのか?」
 ミリアリアはキラの言葉に何も答えない。
「わかっていないのか?」
 キラは君には失望したかのような瞳でミリアリアを見つめる。
 ミリアリアはその瞳に耐え切れず叫んだ。
「馬鹿馬鹿しいわ。SFじゃあるまいし、そんな事ありえないわ」
 ミリアリアの言葉にキラは満足の笑みを浮かべる。
「ミリィの思っている事はほぼ正解だ」
「あなたが何だろうと、もうどうでもいいわ。この後あなたは何をするの?」
 唐突の質問にキラは困惑する。
「両親に一度会い、その後真実を探る」
「そして復讐?殺された人達の」
「誰に聞いた!」
 キラがミリアリアを睨みつけた。
「あなたのご両親に…」
 キラは何も答えない。
「戻ってこないの?」
 ミリアリアはキラにアークエンジェルへ戻ってこいと行っている。
「やめておく。あいつの居場所を奪いたくないからな。戻ったとしても今の状態じゃコーデ
ィネータのあいつに勝てない。ザフトのスパイとか言われて独房行きさ。」
「優しいのね」
「いや臆病なだけさ。それにあいつがいるんだ。僕のときより確実に生存確率が上がる。そ
の方が僕にとっても嬉しいからな」
 キラは自分の言葉で心が締め付けるような感覚に包まれた。
「それじゃここでお別れなのね」
「ああ」
「戦争が終わったら、みんなでまた会えるかしら」
「そうだな」
 キラが握手を求めてきた。ミリアリアは握手に応じた。
「抱きしめたいんだが、まわりの目が気になるんでな」
 キラの言葉にミリアリアは苦笑する。この発言で目の前のキラが何なのか確信した。
「あなたがやはり本物の…」
 ミリアリアは途中で言葉を止める。
「その事は誰にも言わないほうがいい。」
 キラが真面目な口調でミリアリアに忠告した。ミリアリアは頷いた。
「またな」
「ええ」
 二人は握っている手を離すと喫茶店を離れ別の方向に向かって歩き出した。


第一話「熱砂の大地」 終
第二話に続く

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