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Lnamaria-IF_赤き月の鷹_第21話

Last-modified: 2013-10-28 (月) 02:49:34

糾弾

オーブのカガリ代表の声明が出されると言う。のんびりしていたあたしたちは自然に休憩室の大画面テレビの前に集まった。

『オーブ連合首長国代表首長、カガリ・ユラ・アスハです。今日私は全世界のメディアを通じ、プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダル氏にメッセージを送りたいと思います』

「あ! オーブの馬鹿姫!」

『過日、様々な情報と共に我々に送られたロゴスに関するデュランダル議長のメッセージは確かに衝撃的なものでした。ロゴスを討つ。そして戦争のない世界にというの議長の言葉は、今のこの混迷の世界で政治に携わる者としても、また生きる一個人としても確かに魅力を感じざるを得ません。ですが、議長は、ロゴスが意図的に『世界』とやらを操作し、戦争を起こしてきたという。これはつまり、ロゴスという、民間の一組織が、世界各国の世論を誘導し国家間紛争を誘導してきたという意味であると解釈している。個人的にはこれだけで既に大いに疑問があるが、仮にそうだとして、これを裏付ける証拠はどこにあるのか? 議長はまず、これを立証するべき……』

まともな事言うようになったじゃん。でも、それはプラント、議長にとっては突っ込まれたくない事なのよね。せっかくロゴスを共通の敵にして、まとまって、勝ち組になって……

「ん?」

画面が乱れ、ラクス・クラインの替え玉が現れる。

『わたくしはラクス・クラインです。過日行われたヘブンズベースでの戦闘はもう皆さんも御存じのことでしょう。プラントとも親しい関係にあったオーブが、何故ジブリール氏を庇うような発言をするのか理解することは出来ません。ブルーコスモスの盟主、プラントに核を放つことも巨大破壊兵器で街を焼くことも、子供達をただ戦いの道具とするこもと厭わぬ人間を、何故オーブはそうまでして庇うのでしょうか。わたくし達の世界に、誘惑は数多くあります。より良きもの、多くのものをと。望むことは無論悪いことではありません。ですがロゴスは別です。あれはあってはならないもの。この人の世に不要で邪悪なものです。わたくし達はそれを……』

『その方の姿に惑わされないでください』

「あ!」

また画面が乱れ、再びオーブのカガリ・ユラ・アスハが映る。そしてその横には……

『わたくしはラクス・クラインです』

まさか、今度は本物のラクス・クライン!?

『わたくしと同じ顔、同じ声、同じなの方がデュランダル議長と共にいらっしゃることは知っています。ですが、わたくし、シーゲル・クラインの娘であり、先の大戦ではアークエンジェルと共に戦いましたわたくしは、今もあの時と同じ彼の艦とオーブのアスハ代表の下におります。彼女とわたくしは違うものであり、その想いも違うということをまずは申し上げたいと思います。わたくしはデュランダル議長の言葉と行動を支持しておりません』

これは……一体どうなるんだろう!? 皆息を呑んでいる。画面はテレビ局のものが気を利かしたのだろう。左右に分割され、ラクス・クラインと、その替え玉が同時に映っている。

『戦う者は悪くない、戦わない者も悪くない、悪いのは全て戦わせようとする者。死の商人ロゴス。議長のおっしゃるそれは本当でしょうか? それが真実なのでしょうか?ナチュラルでもない、コーディネイターでもない、悪いのは彼等、世界、貴方ではないのだと語られる言葉の罠にどうか陥らないでください。無論わたくしはジブリール氏を庇う者ではありません。ですがデュランダル議長を信じる者でもありません。我々はもっとよく知らねばなりません。デュランダル議長の真の目的を』

……その時、一人の夫人が現れると、ラクス・クラインの替え玉の横に立ち、彼女を安心させるように、にこりと微笑んだ。

『ラクスさん、とりあえずラクスさんと呼ばせていただきます。わたしはロミナ・アマルフィと申します。前大戦時、あなたと共に戦ったというキラ・ヤマトに殺されたニコル・アマルフィの母です。いいえ、母でした』
『それは……それはお気の毒でした、おばさま、しかし……』
『いたわっていただく必要はありません。ラクスさん、わたしの息子はザフトの信頼を守って、戦友をかばうために崇高な戦死を遂げたのですから』
『そうですか、いえ、おばさまはまさにザフト軍人の母の鑑ともいうべき人です。おばさまの賞賛すべき精神は必ず厚く報われるでしょう』
『ありがとうございます。わたしはただ、ラクスさんにひとつ質問を聞いていただきたくて参ったのです』
『それはどんな質問でしょう、私が答えられるような質問だといいのですが……』
『あなたは今まで、どこにいました?』
『は、なんですって?』
『わたしの夫は息子を失った悲しみに耐え、プラントのために働きました。今も働いています。ラクスさん、あなたはどこにいました?夫が戦争の早期終結の祈りを託したフリーダムを強奪してまで、ご自分の理想を実現しようとなさったあなたはどこにいました?』
『おばさま……』
『あなたはどこにいました? プラント市民の多くは肉親、知り合いを失くしながらもプラント再建のために働いてきました。今、デュランダル議長の言葉に疑問を投げかけるあなたはどこにいました? あなたは、もしかしたら本当にラクス・クラインなのかもしれません。ですがご自分が犯罪を犯してまでなそうとした事の責任はどうなさったの? 人がしている事を横から批判するのはたやすい事です。あなたは、ご自分が主張したことの実現のために、戦後、何か実行なさったの?』

たぶん本物のラクス・クラインは絶句している。
――唐突に、オーブ行政府からの放送は中断された。

『……あ、あたしは、ラクス・クラインじゃあ、ありません!』

え?いきなりラクス・クラインの替え玉が正体ばらしちゃった? どうすんの? どうすんのよ!

『あたしは、プラントが混乱していた時に、プラントの混乱を静めるためだと言われ、ラクス・クラインの振りをしました。それからも、ラクス・クラインの振りをしてきました。プラントのために! ラクスさんは、「その方の姿に惑わされないでください」と言いました。じゃあ、あたしも言います。みなさん! 姿や名前ではなく、実際にしてきた行動で判断してください! あたしは知っています。先の大戦から、議長がどれだけ平和のために苦労してきたのか、プラントのために苦労しているのか! みなさんも知っているはずです! 今一度お願いします。あたしが言えた義理じゃないですが、姿や名前に惑わされず、行動で判断してください。今まで騙しててごめんなさい。ありがとうございました』

彼女は深々と頭を下げると、画面から去ってゆき……放送は終わった。

「レイ! ルナ、待てよ!」
「なんだ?」
「え…あいや…あの、あのオーブのラクス・クラインのこと、レイとルナはどう思う?」
「どう?とは?」
「いやだから……どっちが本物って話」
「なんだ。馬鹿馬鹿しい」
「ぇ……」
「まあ、本人が、ラクス・クラインじゃないって言ってんだから、こちらのラクス・クラインは本人じゃなかったって事でしょう?」
「ぁ……」
「だが何故かな。何故人はそれを気にする。本物なら全て正しくて、偽者は悪だと思うからか」
「?」
「俺はそれはどうでもいい」
「レイ……」
「議長は正しい。俺はそれでいい」
「シン」
「ん? なに? ルナ?」
「大事なのはどちらが本物のラクスか、じゃ無くてどちらが私たちのためになる人物か、でしょ? 今のところオーブのラクスは私たちプラントにとって害でしかないわ。せっかく議長がプラントのためにって動いてるのにそれに水を差すようなことして……綺麗事だけじゃ物事は動かないっての! 自分達の都合の悪い所は綺麗事で糊塗するくせにね!」
「う、うん」
「そんなことより俺達には考えておかねばならないことが他にあるだろう」
「え?」
「フリーダムよ」
「ああ」

「シン、いいか?」
「ん?」
「何をやってるんだ? 3人そろって」
「シン、アスランだ」
「え?ああ……」
「シン! アスランだってば! いったん止めなさい、それ」
「ん? フリーダム?」
「カメラが向いてからの反応が恐ろしく早いな。スラスターの操作も見事だ。思い通りに機体を振り回している」
「フリーダムのパワーはインパルスより上なんだ。それをここまで操るなんて……」
「シン! レイも何をやってるんだ?」
「シン、いいかげんにしなさい!」

ぽか!

「何をって、ご覧の通りフリーダムとの戦闘シミュレーションですよ。一体なんです?」
「何故そんなことをしているんだ?」
「強いからです」
「ふむ?」
「俺の知る限り、デスティニーとレジェンドを除けば、今モビルスーツで一番強いのはこいつです。なら、それを相手に訓練するのはいいことだと思いますが」
「ふんふん、それで?」
「何かあった時、あれを討てる奴がザフトにいなきゃ困るでしょ?まるっきりわけの分かんない奴なんだから」
「アスラン、シンの言っていることは間違っていないと思います」
「まぁね」
「フリーダムは強い。そしてどんな思惑があるかは知りませんが、我が軍ではないのです。シンの言うような事は想定されます」
「だろうな」
「いくら貴方がかつて共に戦った者だとしても……」
「いや、俺も混ぜろ」
「ええ!?」
「いいんですか!? アスラン」
「いいさ、確かにシンの言う通りだろう、ルナ。俺もいい加減あいつらに話しても話が通じないのに疲れた……シン、何をいつまでも鳩が豆鉄砲食らったような顔している? ふ……」
「では、よろしければアスランにもそのご経験からアドバイスをいただければと思いますが」
「ああ、前にも言ったが、フリーダムはとりあえず最初はコクピットを狙ってこない。追い込まれれば知らんがな。それから基本的にフリーダムは遠中距離砲戦用の機体だ。接近戦用の武装は連結する事もできる二本のビームサーベルだけだ。その意味ではデスティニーかインパルスが相手をし、他は牽制その他で援護するのがいいだろう」
「なるほど。参考になります」
「ただ……前大戦時は俺の近接戦闘重視のジャスティスと組んでたが……ユニウスセブン条約違反の機体を隠し持っていた奴等だ。新しい機体を開発しててもおかしくない。ジャスティスとのシミュレーションもやっておいたほうがいいだろうな」
「えぇ!?」
「そんなに驚く事でもないだろう、シン。いつの間にか大破してたフリーダムを修理してたんだ。ありえない話じゃない」
「そうだな、シン。アスランの言う通りだ」
「じゃあ、強化した機体を想定してシミュレーションした方がいいでしょうか?」
「そうだな、ルナ。よし、俺から戦闘シミュレーターの担当者に言ってとりあえず仮想のデータを追加させておこう」
「ありがとうございます!」

こうしてあたしたちは、力強い助けを得て対フリーダムのシミュレーションに専念することになったのだ。

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