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Lnamaria-IF_赤き月の鷹_第22話

Last-modified: 2013-10-28 (月) 02:49:54

天空の鎮魂歌

「ふー、疲れた! でもいい汗かいたわ」
「ルナ、この数日ですごい上達じゃないか! もう完璧にフリーダムに勝てるな!」
「ふふん、くっつく事が出来れば、ジ・エンドよ。シンもすごいじゃない。最初からコクピットを狙う設定のフリーダムに、ほとんど勝てて」
「なんか、妙に頭が冷静になってクリアーになる時があるんだよな。"ゾーンに入る"って言うのかな、相手の動きが読めるんだ。でも、まだまだ自分の力を100%出した気がしない! 俺はまだまだ強くなれる!」
「私も負けないわよ! アスランに強化ジャスティスで相手してもらったけど、まだまだだなぁ。アスランって、駆け引きの引き出しが多いって言うの? ためになったわ」
「大変だ!」
「え? 何?」

ショーンが血相を変えて駆けて来た。

「どうしたって言うんだ?」
「プラントが、プラントが攻撃された!」
「な、なんだってー!?」

あたし達は食堂のテレビの前に急いだ!
ヤヌアリウスが……そしてディセンベルが、被害を受けた状況が映っていた。

「何で……何でこんな……」
「ジブリールだな」

レイが情報端末で調べながら言う。

「月の裏側、ダイダロス基地から撃たれた。こっちがいつも通り表のアルザッヘルを警戒している隙に。ダイダロスにこんなものがあったとは……」
「何で!裏側からってそんなの無理じゃない!どうやって?」
「奴等は廃棄コロニーに超大型のゲシュマイディヒパンツァーを搭載してビームを数回に屈曲させたんだ」
「そんな……」
「このシステムならどこに砲があろうと屈曲点の数と位置次第でどこでも自在に狙える。悪魔の技だな」
「くっ!そんな、そんなことを……」

……

『みんな連戦で疲れてると思うけど、正念場よ。ここで頑張らなければ帰る家がなくなるわ。いいわね』

ミネルバはカーペンタリアから月艦隊と合流すべく発進した。

司令部との連絡がついたあたしたちを待っていたのはとんでもない命令だった。

「砲の本体を私達だけでですか?」
「だけかどうかは分からないけど。ともかくそれが本艦への命令よ」
「確かに、ここからではダイダロス基地の方が近い。そういう判断でしょう」
「ええ。あれのパワーチャージサイクルが分からない以上、問題は時間ということになるわ。駆け付けたところで間に合わなければ何の意味もないものね」
「敵が月艦隊に意識を向けているのならうまくいけば陽動と奇襲になるということですね」
「そういうことよ」
「奇襲……」
「厳しい作戦になることは確かよ。でもやらなければならないわ。いい?」
「はい。分かりました」
「了解しました! またあれを撃たれるなどもう絶対あってはならないことですから」
「頼むわね」
「「は!」」

……

「ブリーフィングを始める。第二射までに月艦隊が第一中継点を落とせれば辛うじてプラントは撃たれない。だが奴等のチャージの方が早ければ艦隊諸共薙ぎ払われるぞ。トリガーを握っているのがそういう奴だということは知っているだろう」
「はい、アスラン」
「そこで直接砲を狙う! もちろん相手の防御も厚いだろう。今までに出てきた陽電子リフレクターを備えたモビルアーマー、巨大モビルアーマーと言った物が出てくる事も考えられる。では作戦を話そう……」

それは、レジェンド、カオス、グフ、そしてミネルバのタンホイザーまで囮に使った陽動に、更に時間差をつけてインパルス、セイバーが攻撃に加わり、あたしがその混乱した隙に砲のコントロールルームを落とすという物だった。

『ブリッジ遮蔽。コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機してください』

「ではいいなルナ。タイミングを誤るなよ」
「ええ」
「俺達も可能な限り援護をする。だが基本的にはあてにするな。すれば余計な隙が出来る」
「分かってるわ。ご心配なく」
「では行こう!」
「「はい」」

「ルナ」
「急げよ」

「気を付けて、ルナ」
「シンこそ」
「でもやっぱり駄目だよ」
「ルナが一人で砲のコントロールを落とすなんて!危険すぎる!」
「シン……」
「やっぱりそれはアスランや俺かレイが……」
「シン! 同じ事よ! 陽動で基地を討つのだって同じくらい危険だわ! みんな一緒よ! 大丈夫よ私は。近接戦闘に優れたデスティニーが今回の任務には向いてるの。信じなさいよ。私はフェイスよ?」
「ルナ……」
「シン達こそ、気をつけて」
「大丈夫だ」
「え?」
「ルナも艦もプラントもみんな俺が守る!」
「ぁ…」
「絶対に!」
「うふ」

「じゃあ、お先に! ルナマリア・ホーク、デスティニー、行くわよ!」

あたしは発進すると、クレーターの影に隠れるように大回りしていく。
レジェンド、カオス、グフも発進したようだ。

注意深く様子を見守る。
やはり、敵はあのデストロイを始めとするモビルアーマー群を出してきた! タンホイザーが跳ね返されてる!

――インパルスとセイバーが戦闘に入った! 敵は混乱する!

さあ、いくわよ!

あたしは一気に、しかし慎重に進んでいく。

しかしまだ射出口のそばにモビルスーツが。 ――! 敵モビルスーツがやられた! これは! レジェンドのドラグーン!

「行け! ルナ! 射出口はもうすぐそこだ! 背後は任せろ!」
「ありがとう!」

「あれね!」

モビルスーツの射出口を見つけた! そこから中にもぐっていく!

センサーを目いっぱい働かせながら進む……ここか! 壁をぶち破る! 当たり! 広い空間に出た! 下の方には砲が! すでにエネルギーのチャージによる発光が始まっている。急がなきゃ

コントロールルーム……あそこか! スレイヤーウィップをぶち当てる!

「ええい!」
開いた穴にビーム速射砲をぶち込む!
爆発が起こる。やった!

――あたしは月面に帰還する。

「やったわ! アスラン!」
「よくやった! こちらもロード・ジブリールを今度こそ仕留めたぞ!」
「これで終わるのね!」
「ああ、これでやっと……」

その夜はみんなで祝杯を揚げた!

翌日、議長がまた演説をすると言う。
なにを話すんだろう?

『……今私の中にも皆さんと同様の悲しみ、そして怒りが渦巻いています。何故こんなことになってしまったのか。考えても既に意味のないことと知りながら私の心もまた、それを探して彷徨います。私達はつい先年にも大きな戦争を経験しました。そしてその時にも誓ったはずでした。こんなことはもう二度と繰り返さないと。にも関わらずユニウスセブンは落ち、努力も虚しくまたも戦端が開かれ、戦火は否応なく拡大して私達はまたも同じ悲しみ、苦しみを得ることとなってしまいました。本当にこれはどういうことなのでしょうか。愚かとも言えるこの悲劇の繰り返しは。一つには先にも申し上げたとおり、間違いなくロゴスの存在所以です。敵を創り上げ、恐怖を煽り戦わせてそれを食い物としてきた者達。長い歴史の裏側に蔓延る彼等、死の商人達です。だが我々はようやくそれを滅ぼすことが出来ました。だからこそ今敢えて私は申し上げたい。我々は今度こそ、もう一つの最大の敵と戦っていかねばならないと』

「ぁ?」

なんなの? ロゴス倒したばっかりなのに…… あの議長の事だからプラントの損になるような事だけはしないと思うけど。

『そして我々はそれにも打ち勝ち、解放されなければならないのです。皆さんにも既にお解りのことでしょう。有史以来、人類の歴史から戦いのなくならぬわけ。常に存在する最大の敵、それはいつになっても克服できない我等自身の無知と欲望だということを』

「え?」

『地を離れて宇宙を駈け、その肉体の能力、様々な秘密までをも手に入れた今でも人は未だに人を解らず、自分を知らず、明日が見えないその不安。同等に、いやより多くより豊にと飽くなき欲望に限りなく伸ばされる手。それが今の私達です。争いの種、問題は全てそこにある! だがそれももう終わりにする時が来ました。終わりに出来る時が。我々は最早その全てを克服する方法を得たのです。全ての答えは皆が自信の中に既に持っている! それによって人を知り、自分を知り、明日を知る。これこそが繰り返される悲劇を止める唯一の方法です。私は人類存亡を賭けた最後の防衛策としてデスティニープランの導入実行を、今ここに宣言いたします!』

……デスティニープランて、何?

「……で、なんでみんな揃って私の所に来るのかしら?」
「えーとぉ、それは、議長と昔なじみだそうですし、何か聞いてないかと」
「レイと話してても『議長を信じろ』だけで話にならないし」
「そう言う訳です。何か情報、お持ちじゃないですか?」
「私も詳しい事は知らないわよ。実は昨日早速連絡取ったんだけどね。大掛かりな遺伝子的『自分探し』システムにハローワークを組み合わせたものらしいわ。コーディネイターとナチュラルの確執を取り除く物、とも言っていたわ」
「取り除く? どうやって?」
「遺伝子ってね、結局能力値を決めるのにダイスを振るようなものだと思うのよ。能力値に付きダイスを二つ振れるとしたら、あたしたちコーディネイターは謂わば合計7以上になるまで振り直しをしてるような物ね。でも、ナチュラルにもコーディネイターに匹敵する能力を見せる者がいるのもまた事実よ。それは、まさに遺伝子のダイスが6ゾロを振ったようなね。そこまではいかなくても、優れた能力が人それぞれ何かどうかあるのよ。デスティニープランは、それを見つけてあげる事。自分の一番得意な分野で勝負すれば、ナチュラルだってコーディネイターに匹敵するわ。いい事? ファーストコーディネイターのジョージ・グレンでさえオリンピックで金メダルは取れなかったのよ」
「遺伝子の結果で仕事を強制される、とかは無いんですか?」
「無いらしいわよ。あくまで自分の意思でやりたい者はやればいい、と言っていたわ。上から強制するのではなくて、人々が自主的に賛同する形で実施するそうよ。遺伝子的にどうこう言われたって好きなものは好きだし、嫌いな物は嫌いだものね。だいたい……遺伝子であれこれ強制されるの、あの人嫌いだし。ふぅ……」

そう言えば、聞いたことがある。議長と艦長は昔付き合っていたけど、子供が出来る確率が低く、子供を欲しがった艦長が議長を振ったのだと……

「そうですよね。やってる事が楽しいからいいんだって人、いっぱいいますし、好きだから、素質はあるけどいい加減にやってる人より上達もする事だってあるだろうし、ハローワークにない新しい仕事考えつく人もいるだろうし」
「それに、プラントの婚姻統制だって強制ではないでしょ? 理屈じゃないのよ、理屈じゃね……」

艦長は、憂いを帯びた女の顔になる。子供を生む確率優先で結婚して、後悔したのだろうか? 艦長の結婚生活は長い物ではなかったとあたしは聞いていた。

「遺伝子でなんかわからない素質だってありますよね」
「そうね。芸術家とかね。それから例えば大切な仕事だけど、リーダー。これは、遺伝子でいじれるとしたらせいぜい外面や声とかになるのかしらね。むしろ経験とか育ってきた人格が占める部分が大きいわね。もし自分は遺伝子調整によって生まれながらにリーダーとしての資質が与えられている、なんて言う人がいたら木で鼻をくくっってやるわ」
「そうですよね!」
「……ごめんなさい、ちょっとお手洗いに行ってくるわね」

どうしたんだろう。なんか吐いているようだ。激戦続いて疲れているのかな? 心配だ。

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